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和食の出汁は昆布・かつお、一方フレンチは肉が要。これは水が原因。日本の軟水は昆布の旨味を引き出し、フランスなど大陸の硬水のCa+Mgは獣臭さ(タンパク質)と結合して灰汁を作る。軟水では灰汁が少なく獣臭が取りきれず、硬水では昆布の表面に上記成分の幕ができて旨味を抽出できない。#美食地質学
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麹菌が快適に澱粉糖化作用を行うには鉄分が禁忌。酒造りには可能な限り鉄を含まない水が必須。3大酒どころを見ると、いずれも背後には約1億年前に形成された花崗岩類分布。この岩石、鉄はほとんど含まず、リンやカリウム(麹や酵母にとってはサプリ)に富む。この伏流水が酒造水に。#美食地質学
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江戸深大寺ソバと同様に、# 黒ボク土地帯とソバ名産地の親和性は高い。ソバはリン欠乏に強い上に土中の難溶性リンを分解するとも言われ、耕作不適度でも育つ救荒作物(命を繋ぐ食物)として広がる。#蕎麦 を単なるグルメと勘違いしている人たちも、このことは認識した上で味わって欲しい! #美食地質学
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硬水軟水の成因:フランスでは大河がゆっくり平野を流れて石灰質地盤中のCa+Mgを溶かすので硬水に。一方山国日本では急流で溶かす暇がなく軟水となる。ただし、平野が広がる関東やサンゴ礁の石灰岩が多い沖縄は硬水系。和食には不向きだが、酵母発酵が進むので関東では力強い醤油が誕生。#美食地質学
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「日本人」が唯一経験した超巨大噴火が、7300年前に九州南方沖、現在の薩摩硫黄島付近で起きた「鬼界アカホヤ噴火」。火砕流は海上を渡り南九州へ到達、火山灰は関東まで及んだ。南九州で発達した先進的な縄文文化は壊滅した。一説にはこの超巨大噴火が天岩戸神話を生んだとも言われる。#美食地質学
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硬水vs軟水の代表格が #醤油。関東濃口は石灰岩由来のCa, Mg多い利根川水系の水。一方湯浅・小豆島は軟水でじっくり熟成。たつの薄口は軟水で発酵が遅いことを逆手にとって塩を加え発酵を止めて甘酒でまろやかに。地質由来の水の違いが関西昆布出汁淡口vs関東カツオ出汁濃口文化を育む。#美食地質学
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サンゴ礁由来の硬水系沖縄では、昆布の旨味は抽出しにくい。だから琉球そばの出汁は豚骨と鰹節ベースが多い。獣肉の臭み成分(タンパク質)と水のCa, Mgが結合した「アク」を取ればすっきりした旨味が出る。軟水文化の関西うどんと対照的。おいしいものを食べたいという人間の情熱に脱帽!#美食地質学
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関東ローム層はリンを固定するためススキやササしか育たない。これが腐食すると有機物の多い「黒ボク」に。一見腐葉土的だがやはりリンを供給できず不毛地帯に。リン系肥料で土地改良が行われ、今やローム・黒ボク地帯は野菜生産量全国の4分の1、落花生は7割強を占める一大畑作地帯に。#美食地質学
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#美食地質学 が新書として出版されました。日本特有の食材や料理、和食は日本列島からの恩恵に感謝し、あるいは試練と闘いながら、変動帯の民が作り上げてきたものです。だから、これらの変動現象や人々の営みに思いを馳せながらいただくと、より味わい深くなると思います。よろしければどうぞ。
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きっちり調べると、高温プレートが沈み込むとちょうど有馬温泉直下で水(熱水)を絞り出してしまい、通常九州のように火山ができる深さで出る水が少なくなる。これが、火山が少なくその代わりに有馬温泉が湧くヒミツ。有馬で「プレート直結温泉」に浸かって下さい!#美食地質学 #兵庫 #郷土料理
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超巨大噴火はここ7300年間起きておらず、火山災害とは認識されていない。だから対策も考えられたこともない。しかしその被害や危険値の大きさ(↓)をみると、切迫性の高い災害として考えるべき。起きたらどうしようもないやろ、と諦めるのは簡単だが、国も民族も消滅しかねないのですよ。#美食地質学
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「関東ローム層は富士山など近隣火山からの火山灰」という誤った考えは、いまだにあちこちで見かける。当時の日本の大御所火山学者が唱えた説だからか?しかし距離と粒径の相関などはなく、火山近郊の荒地からの風塵堆積物である。#江戸野菜 #美食地質学 #関東ローム
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日本海が #カニ の生息域であるのは、2500-1500万年前に大陸から分裂移動した日本列島が日本海の冷水を貯めるため。また大陸の破片である大和堆はベニズワイにちょうど良い深さに。これらの大陸片は古地磁気(岩石に残る過去の地球磁場の化石)を頼りに戻すとジグソーパズルが完成。#美食地質学
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みなさんの関心が高かった「蕎麦と火山」の関係。140字ではあまりに短いので、Yahoo個人ニュースに公開しました。よろしければご覧ください。#美食地質学 #蕎麦 #火山 #黒ボク土 news.yahoo.co.jp/byline/tatsumi…
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#ちむどんどん もそろそろ終わり。琉球料理の本質はサンゴ礁の硬水に根ざす事。典型が生搾りの島豆腐や沖縄そば。そば出汁は硬水Ca,Mgが豚の生臭い成分(タンパク質)を灰汁として取り去るのでコクがあり旨い。この旨さは川崎や大阪大正区の水では出せない。奥の手はエビアン使用。#美食地質学 #沖縄
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伊勢湾が異様に内陸まで入り込む原因は、伊勢湾-琵琶湖-若狭湾沈降帯の存在。この辺りは、フィリピン海プレートの沈み込み角度が極端に小さい(原因は私には不明)ために、高角だと海溝近くまで入り込める補償流が届かず、マントルは削られる一方で薄くなり地殻が沈降。#美食地質学 #郷土料理 #愛知
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現在の霞ヶ浦には近隣から河川が流入しているが、江戸時代初期には栃木日光から鬼怒川(常陸川)が流れこみ広大な香取海を形成していた。利根川のなど江戸から東京湾へ流れ込む河川の洪水対策として「利根川東遷」が1654年まで行われ、その結果霞ヶ浦は現在の姿となった。#美食地質学 #郷土料理 #茨城
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太平洋へ突き出す紀伊半島。多雨による森林からの栄養分が育むマグロ、山岳・森林・巨石が生んだ #熊野信仰、非火山性地帯に点々と湧く高温泉。これらが生まれた根本的な原因は、1500万年前の巨大カルデラ火山活動と残存マグマが固まった高温岩体隆起による山地形成。#美食地質学 #郷土料理 #和歌山
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地殻変動とマグマ活動で山国日本の川は急流、地盤中のCa,Mgを溶かす暇なく #軟水 に。一方平原+石灰質土壌のヨーロッパは #硬水。軟水は昆布の旨味成分を抽出、硬水はCaが昆布のネバネバ成分アルギン酸と結合、表面に膜を作り旨味が出ない。昆布出汁(=和食)は火山地震列島の恩恵です。 #美食地質学
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江戸人口集中で上質醤油や酒などは関西からの「下りもの」が菱垣廻船で運搬。中硬水醸造の灘・伊丹の高アルコール男酒は腐敗しにくく隆盛。一方軟水龍野酒は衰退。そこで発酵を抑え、乾燥気候特産品の塩や小麦・大豆と酒醸造技術を用いて1666年円尾孫右衛門が #薄口醤油 を発案。#美食地質学 #龍野
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ソバの生育には冷涼な気候と水はけの良い土壌が必須。また痩せた土地でもOK。これらの特性を持たすのは火山地帯。涼しい北海道や他の要因で高地のソバ産地もあるが、多くの所は火山の近隣。火山体が高いだけでなく、過去数百万年間の活動で地下に残された軽い岩石が隆起して山地を形成。#美食地質学
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アナゴの産卵地はなんと「九州パラオ海嶺」の沖ノ鳥島海域。2500万年前の火山列島の1つ。親は産卵のために来た道を戻らずに、海底山脈に沿って南下。塩分濃度を頼りにこの島に集結、逢瀬するらしい。ロマンティック!こんな大移動をするアナゴ。いただくときは心して味わいましょうね!#美食地質学
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長野県が蕎麦処となった理由は、火山活動と300万年前以降に中部〜東日本に働く東西圧縮。東日本の蕎麦名産地の多くも同様に、または圧縮で説明できるし、西日本は主に火山性の高地。火山と蕎麦産地の分布が重なるのはなかなか見事。蕎麦は火山列島日本からの恩恵と言える。#美食地質学 #蕎麦 #火山
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超巨大噴火の頻発地帯は九州。他地域なら大丈夫だろう、なんて高を括っていませんか?超巨大噴火が起きると、降灰は広い範囲におよびます(↓)。約90万年前の猪牟田アズキ噴火では、関西で数十cm、関東でも20cm程降り積もりました。今これが起きたらインフラ完全停止でほぼ日本喪失です。#美食地質学
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国内大豆の3割を生産する北海道。冷涼な気候と平坦な丘陵地で大規模栽培が可能。火山が密集し火山性土壌が広がるので一般的には作物に必須のリンを固定し耕作には不向き。一方で大豆は比較的このような土壌でも育つ。主要産地は火砕流や火山灰が覆う丘陵地。豆腐や醤油は火山の恩恵。#美食地質学