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#twnovel 「生まれて初めてラブストーリーを書いた」友人の作家がそう言って本を渡してきた。いつも以上にたいへん面白かったのだが、ラブの欠片も見当たらなかった。「どこがラブストーリーなんだ?」「1から10まで君の好みに合わせて書いた。これを書くことこそが私にとってラブストーリーだった」
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#twnovel 舟が来る。渡し守が告げる。「一人だけだ」友を押しのけて私は舟に乗る。「出して下さい」「あいよ」舟が出発する。友は岸に立って、呆然とこちらを見ている。その姿が薄れてゆく。炎上した事故車から、友が救出される。運転席の私はもう間に合わない。川を流れてゆく。静かに。
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⚡️ "1Kペット可 備考:事故物件"
僕が事故物件に引っ越して、初めて幽霊が出た晩こそ悲鳴をあげたが、そいつが顔もスタイルも抜群のイケメンだったので、なんとなくそのまま暮らしている話。
twitter.com/i/moments/1021… #twnovel
まとめました。今後もゆるゆる増えると思います。
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#twnovel 推理小説を書くのはもうやめると言うと、友人は「それは困る」と喚いた。僕の小説の殺人トリックはすべて友人が発想したものだ。「書いてくんなきゃ、俺、実際に試したくなる……」泣きながら言われて、渋々もう少し続けることにした。後日、友人が持ってきたネタの被害者は推理作家だった。
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#twnovel 美人だが男が変わる度に趣味も服装も化粧も変わる友人と久しぶりに会ったら、ピンクの髪で現れたので驚いた。「どこで待ち合わせしてもすぐ見つけられるでしょ?」今の彼氏は相貌失認で人の顔が覚えられないのだそうだ。「私が綺麗でなくても好きでいてくれるんだ」友人はすっぴんだった。
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#twnovel 「そんなに愛していたなら、なぜその人を仲間にしなかったんだ?」友である吸血鬼に訊くと、彼は答えた。「人と吸血鬼では寿命が違いすぎる」「それが理由?」「寿命が違うと生きる速度も感情の速度も違う。愛してると気づいたのは、その人が寿命を全うして百年ほどたった頃だったよ」
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父の遺品を整理していたら、携帯のフォルダに1枚、真っ黒な画像があった。「母さんこれ何かな?」「あらやだ、父さん保存してたのね」母が自分の携帯を取り出し、送信メールを見せる。父宛のそれにはさっきの画像と共に、『綺麗な星空を見せたかったけど、うまく撮れませんでした』 #twnovel
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事故物件に引っ越して、初めて幽霊が出た晩こそ悲鳴をあげたが、そいつが顔もスタイルも抜群のイケメンだったので、今は出るたび替わる着こなしを参考にしたりもする。「そんな見た目なら人生勝ち組だったろうに」と言ったら困った様に眉を下げて微笑むので、なんかごめん、と慌てて謝った。 #twnovel
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#twnovel 王都の広場中央には岩に刺さった剣があり、「抜いた者は王になる」と伝えられていました。その隣には小さなガラスの靴があり、「履けた者は王子様と結婚する」と伝えられていました。聡明な読者はお気づきでしょう。そうです。いま現れた少女が、みごと剣を抜き、なおかつ靴も履いたのです。
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#twnovel 生まれつき予知能力があって、来年、世界が滅びることを知っていた。でも翌年になっても滅びるのは《来年》だった。他の予知はすべて当たっている。滅びの予知だけが毎年毎年延期される。たぶん、世界のどこかで懸命に戦っている誰かがいるのだ。だから世界はまだ捨てたものじゃないのだ。
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#twnovel 久しぶりに帰省すると、昔ケンカ別れした友人から連絡があった。「漫画家になったんだって? どんなのか知らないけど、姪っ子がファンらしいからサインしてやってくれよ」その子が母親と共に家に来た。「僕の漫画を好きになってくれたきっかけって何?」「叔父さんの部屋に全巻揃ってたから」
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#twnovel 猫は人が知らないだろうことをいろいろ知っている。たとえば、人がやって来られるはずのない高い屋根のてっぺんで昼寝しているとき、ふいに撫でてくる柔らかな手(明らかな人の手)があること。背中に羽があればそれは天から降りてきた人だし、羽がなければこれから天へのぼる人なのだ。
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#twnovel 子供たちが密室トリックについて議論を交わしている。『犯人』はどうやって鍵を開けて閉めたのか? それとも始めからどこかに隠れていた? そもそも本当に密室だったのか? 秘密の抜け穴や共犯者の存在の可能性は?「とにかくプレゼントの包みを開けたらどう?」クリスマスの朝のことである。
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#twnovel 霊が視える人「半年前に近所の美容院のおばちゃんが急死したんだけど……」 視えない人「何かあったの?」 霊が視える人「近隣の霊がみんなちょっとお洒落になった……髪型が……」
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#twnovel 台所の床磨きをしていたら突然見知らぬマダムが現れた。ドレスや宝石を出して、華やかなパーティーに連れていってくれた。物凄く楽しかった。「なぜこんなことしてくれるの?」「証明するためよ」「女の子は誰でもシンデレラになれるって?」「女は誰でも魔法使いのおばあさんになれるって」
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#twnovel 真夜中ふいに目が覚めた。小さい頃に買ってもらったぬいぐるみたちが棚から飛び出そうとしていた。似合わない重そうな鎧をまとい、ぴかぴか光る鋭い剣を手に。あたしはベッドを飛び出し、ぬいぐるみたちを抱きしめる。ごめんね、大丈夫。明日、あたしはちゃんと自分で戦うよ。
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#twnovel 花魁の前に現れたのは狐だった。怪我して死にかけたのを、人の男に救われた。人に化けて恩返ししたいが人の美醜がわからない。美しいと評判の貴女の姿に化けてもよいか。「いいとも」花魁は言う。「私の顔と姿で、愛する男と添い遂げるといい。私には叶わぬ望みを叶えてくれたら私も嬉しい」
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#twnovel 行き倒れの魔法使いを助けたらお礼に魔法瓶を貰った。入れたお湯がいつまでたっても熱々である。ってだだの魔法瓶や。とはいえ折角なので珈琲を入れて持ち歩いていた。ある日、事故で電車に閉じ込められた。「珈琲でも如何ですか」他の乗客達に分けても分けても珈琲は尽きなかった。
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#twnovel メイドロボの修理をしていた若手が「えっ」と声をあげた。「どうした」「中の部品が一つだけ違うメーカーのなんスよ」「お前、初めてか」親方は説明する。ときどきそういうのがいるんだ。仲良くなったロボット同士でこっそり部品を交換するらしい。指輪みたいにさ。信じられないか。ハハハ。