1
#twnovel 霊が視える人「半年前に近所の美容院のおばちゃんが急死したんだけど……」 視えない人「何かあったの?」 霊が視える人「近隣の霊がみんなちょっとお洒落になった……髪型が……」
2
#twnovel 行き倒れの魔法使いを助けたらお礼に魔法瓶を貰った。入れたお湯がいつまでたっても熱々である。ってだだの魔法瓶や。とはいえ折角なので珈琲を入れて持ち歩いていた。ある日、事故で電車に閉じ込められた。「珈琲でも如何ですか」他の乗客達に分けても分けても珈琲は尽きなかった。
3
#twnovel つい夫を殺してしまった私を助けてくれたのはホームレスの男だった。何の関わりもないのに。「なぜ優しいの」手際よく死体の始末をしながら男が答える。「旦那、浮気してたんだろ」「ええ」「あんたが作ったオニギリを毎朝公園のゴミ箱に捨ててた」「ええ」「オニギリ美味かったよ」
4
#twnovel 病院で知り合った老人と賭け将棋をする。元殺し屋だという老人に、僕は勝ちをためては人を殺して貰った。僕をズタボロにして病室に縫い付けた奴らを一人ずつ。あとは僕自身を殺して貰っておしまい、のつもりなのに、今日はなぜか全く勝てない。老人が笑う。「俺ァ仕事は選ぶのさ」
5
#twnovel 「海が綺麗だね」と教授。「わん」と犬。「空も綺麗だね」「わん」「空と海しか見えないね」「わん」「ボートにもっと食料を積んでおくべきだったね」「わん」「救助が来るといいね」「わん」「思うんだが、私が君を食べたら一生後悔するけど、逆なら良くないかね」犬は答えない。
6
#twnovel 山の遠足で迷子になって、そいつに会った。「あんた誰なの?」「さあ。神と呼ばれたり化け物と呼ばれたり」「本当は何よ」「呼ばれたものになるだけさ」「じゃあ、お兄ちゃんて呼んだらそうなるの?」「なるよ」そいつはあたしを背負って、麓まで運んでくれた。去年死んだ兄の姿で。
7
#twnovel 真夜中ふいに目が覚めた。小さい頃に買ってもらったぬいぐるみたちが棚から飛び出そうとしていた。似合わない重そうな鎧をまとい、ぴかぴか光る鋭い剣を手に。あたしはベッドを飛び出し、ぬいぐるみたちを抱きしめる。ごめんね、大丈夫。明日、あたしはちゃんと自分で戦うよ。
8
#twnovel 舟が来る。渡し守が告げる。「一人だけだ」友を押しのけて私は舟に乗る。「出して下さい」「あいよ」舟が出発する。友は岸に立って、呆然とこちらを見ている。その姿が薄れてゆく。炎上した事故車から、友が救出される。運転席の私はもう間に合わない。川を流れてゆく。静かに。