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「君恋ひて」 君が帰って来た様な そんなに気がして 窓を開け 外を眺めては 見たけれど 君は帰らぬ里の夏 里の稲田はサワサワと 風に靡いて 綺麗だと 言っても君には 届かない 夏のむなしき独り言 蝉は時雨て鳴くけれど 君は泣かぬか 里恋ひて あれから何年 時は過ぎ もはや僕さえ忘れたか #詩紺碧
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「過ぎた恋」 学生当時を 思い出す 授業の席で ただ一途 ノートを取ってた 女学生 凛々しい横顔 目に浮ぶ クラスの中でも 一際に さわやか君は 気立てよし 頭も切れるが 控え目な 皆のマドンナ 窓の際 体育祭で 繋いだ手 握り返して 頷いた そのときめきを 生かせずに 蛍の光で 過ぎた恋 #詩紺碧
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「恋の欠片」 いつか壊れた恋だけど 欠片がひとつ 残ってた 繋いだその手 温もりが 欠片の中に残ってた 欠片はぽつり呟いた ほかの欠片に 会いたいと そうかと僕は 目を閉じた 僕も逢いたいあの人に 二人の恋が戻らなきゃ 罪ない欠片が 可哀想 僕らに撚りが 戻ったら 欠片と僕に燃ゆる夏 #詩紺碧
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「君よ」 遠くの君に逢えたなら 抱いて上げよう この胸に きっと君の ことだから 瞳潤ませ泣くだろう 忘れはしない君のこと 指切り拳万の 細い指 胸寄せ合った 時めきを 何で忘すれるこの僕が 二人に翼があったなら 一緒に空を 翔びながら 僕の住んでる 都会まで 来てはみないか今直ぐに #詩紺碧
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「常夏の人」 僕の知らない遠い島 ブーゲンビリアが 咲くという 寒さ知らない 常夏の 遥か南に在るという 君が生まれて今も住む 風光明媚な 青い島 珊瑚の海の 人魚姫 もしや君かと思いきや 白い砂浜海見つめ ハイビスカスも 咲くという リボン代わりに 付けたなら お似合いだろう君の髪 #詩紺碧
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「恋の行方」 いつか誰かが言っていた 恋は魔物で 厄介と 楽しさなんて 脆いもの 時に苦しみあるんだと 現を抜かした恋ならば 何も言うまい 語るまい どうせ聞く耳 持たぬだろ 蚊帳の外から眺めよう もしも失恋したとても 愚痴を溢して 嘆くなよ 切れた縁だと 諦めて 笑顔で消しなその炎 #詩紺碧
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「村のアイドル」 何年経っても忘れない 三つ編み長い 可愛い子 君はアイドル 輝いた 僕らのあこがれ村娘 時にアイドル歌ってた 小高い丘の 一里塚 梢が風に サワサワと リズムを奏で聞こえてた 僕が旅立つその日には 見送りくれた アイドルの 潤んだ瞳 しょんぼりと 陽炎揺れて恋揺れて #詩紺碧
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「春から夏へ」 季節は常に 移ろいて 春から夏も 駆け足で 端午の節句 過ぎたなら 暦で立夏 最早初夏 五月の空に 風薫り 青葉若葉の 芽吹く頃 木立を撫でる 涼風に 木の葉が揺れて ソヨソヨと 清々しきは 野も山も 川も海もが キラキラと 春の日名残る 五月雨は 降りつ止みつを 繰り返し #詩紺碧
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「山吹」 時は流れてしまったが 忘れはしない 君のこと 陰で支えて 居てくれた 優しい気遣い忘れない 僕は遠くに旅立つと 告げたあの日の 昼下がり シトシト雨の 降る中で 傘に隠れて泣いていた 別れの径で振り向けば 棚田の脇で 手を振った 山吹の花が 咲いていた 僕は忘れない別れさえ #詩紺碧
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「素敵な女性たち」 君は可憐な山の人 残雪脇の イワカガミ 僕のピッケル 見つめては ヒラヒラ蝶に揶揄われ 君は麗し海の人 しあわせ運ぶ サクラ貝 渚でポッリ 僕を待つ コロコロ波と遊びつつ 君は淑やか里の人 都会を知らぬ ユリの花 僕の帰りを ジッと待つ ユラユラ風の便り待ち #詩紺碧
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「君が育まれた町」 君が育まれたその町に 行ってみたいな 是が非でも 今頃桜も 満開で 君を彷彿させてかな 君の暮らした幾年が 何処にあるのか その町の 君の歴史の 走馬燈 回って見せて欲しいもの 君がいつか言っていた 鄙びた町が 故郷と それはそれでも 構わない 君の面影あるのなら #詩紺碧
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「晩春」 あれから随分過ぎたから もう覚えては いないだろ 広げた僕の 腕の中 駆けて来た頃深い春 長閑に春は行くけれど 僕は行けない 君おいて そんな昔の 一言に 皐月の花も燃えていた 春を名残りて又惜しみ あの日の君は 煌めいて 呼び名は はつな 漢字では 初夏 と書くのと急ぎ足 #詩紺碧
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「晩夏」 森の木立は 風に揺れ 旅立つ夏に サヤサヤと ともに行くのか 法師蝉 空には夏と 秋の雲 何方の声か 古里の 歌が流れる 丘の上 帰らぬ君の 囁きも 歌って欲しい 行く夏に 君は何処ぞ 空の果て 待つ当もなく 陽は落ちて 軒端の燈 君恋ひて 夏の名残の 夕べかな 夏の名残の夕べかな #詩紺碧
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「果てなき青春」 青春とはと問うならば 心に若さ ある限り 幾年その身 重ねるも 青春なりと答うなり めざす航海幾海里 青春名乗る 者ならば 血潮は滾り 湧きいでて 舵取り怒涛越えらるや 愛や恋やの青春は 一喜一憂の 夢語り 望み叶わず 潰えても 燃ゆる気迫は永遠なるや #詩紺碧
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【桜の花・卒業】 幾年過ぎても 忘すられぬ 白い校舎の 仲間たち ともに学びし 青春は 桜の花と あった日々 友情きずいた 通学路 桜の蕾 さようなら 君も泣いてた 卒業日 花の開花を 見ぬ儘に 町を見下ろす 駄馬の丘 白い校舎を 眺めては 仲間と語らい 組んだ肩 最後の校歌の 懐かしき #詩紺碧
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「君は蜻蛉」 君は蜻蛉と同じだと 僕はいつも 思ってた 寄れば逃げるが 又来ては 僕の周りを飛び回る 時には側で立ち止まり 僕を見つめて 居るのかと 思えばやがて 遠ざかる 何と不思議な君だった 秋が進んで行く中で いつか君は 居なくなり 真っ赤で麗し アキアカネ 僕の目先でホバリング #詩紺碧
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「さすらい」 桜の花は咲いたけど あの日の君は もう居ない ああ やがて散る 儚さに 別れを重さね眺めいる 想い出たどり行く旅は 先の見えない 長い旅 ああ 面影を 忘れ得ず 独りとぼとぼ何十里 続く旅のその途上 水面に浮かぶ 花びらを ああ 見つめては 涙する この世のさだめ悲しかな #詩紺碧
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「雪の子」 鉛色した 大空に 少女の声が 木霊する 冬将軍の 靴音に 合わせて北から 雪景色 昨日も今日も 降る雪と 白い少女が 戯れる もしや雪ん子 妖精か 将又将軍の 姫さまか 残雪かがやく 峰越えて 将軍少女は 北へ去り 里はほどなく 花便り #詩紺碧
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「いい女」 君は素敵ないい女 誰もが慕って 来るでしょう くれない春の 陽のような 長閑さ想わす 人だから 君は可愛いいい女 誰もが寄って 来るでしょう 黄色い帽子の 菜の花の 温もり感じる 人だから 君は綺麗でいい女 誰もが恋を するでしょう 爛漫春を 然とする 色彩兼備な 人だから #詩紺碧
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「風に願いを」 どれ程縁があったのか 仮想の世界の その貴女 不治の病に 冒されて 病床だとは 聞いたけど 貴女の歩いた長い旅 楽しい語りの 続きさえ 最早聞けない 幻か 何とも切ない 秋の昏れ 貴女の帰り手を広げ いつの日までも 待ってると 伝えて欲しい そよ風よ 海山越えて 窓開けて #詩紺碧
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「ひ弱じゃない」 僕が歩いた この道を 一人で歩いて みてごらん 山坂茨も 多いけど 汗と涙の その先に 苦労の成果が 待っている 光輝き 待っている 君を伴い アルプスの 表銀座の 縦走だ 岩壁ガレ場の 稜線に 臆病風は 吹かすなよ 見事縦走 幾峰で もうひ弱な 君じゃない #詩紺碧
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「君と秋」 あの日の君は 今何処に 幾年過ぎても 忘れない 秋たけなわの 燃ゆる里 繋いだ君の手 温もりを ともに見つめた 花の園 思い出します 遠い日々 長い睫毛の 横顔に やわい口づけ 過ぎた秋 コスモス畑の その中で あの日の君に 逢ったなら 摘んだ一輪 黒髪に 飾ってあげよう 花の秋 #詩紺碧
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「秋の里」 錦秋の里は 透き通り 日差しは白く 降り注ぐ 温もり遠き 父母よ クヌギに泪の 我が家跡 連なる山の 頂の 先は紺碧 秋の空 友らを思いて 名を呼べば 声の限りの 木霊かな 黄昏なれば 鳴く虫の 悲しさひびく 幾年か 思い出だけの 山里に ポツポツ灯る 軒明かり #詩紺碧
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「あの夏」 もしも僕が鳥ならば 過ぎた夏の日 追いかけて 南に向かい 飛ぶでしょう 海原見下ろしただ一路 はるか南の砂浜で あの夏の日を 見つけたら 直ぐに思い出 探すでしょう あの日の君とあの海の やがて夏が暖流と ともに日本に 向かうなら 僕も一緒に 帰ります 思い出連れて君連れて #詩紺碧
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「縁があったら」 別れとなれば 仕方ない サヨナラなんて 言わないで 黙って行けば いいものを 名前も呼ばず 声掛けず 後ろ姿に 手を振ろう またも何処で 知らぬ間に ふたたび袖が 触れたなら 手繰り寄せましょう 赤い糸 縁は異なもの 味なもの 何処で泣くやら 笑うやら #詩紺碧