1
「君恋ひて」 君が帰って来た様な そんなに気がして 窓を開け 外を眺めては 見たけれど 君は帰らぬ里の夏 里の稲田はサワサワと 風に靡いて 綺麗だと 言っても君には 届かない 夏のむなしき独り言 蝉は時雨て鳴くけれど 君は泣かぬか 里恋ひて あれから何年 時は過ぎ もはや僕さえ忘れたか #詩紺碧
2
「星空に泪」 私永遠に 生きたいと 言ってた君は なぜ死んだ 美人薄命と 言うけれど 数奇な運命 君までも あの日嵐が 来なければ あの日あの道 避けてれば 今頃君は しあわせに 星空眺めて 僕のそば 儘にならない 運命に 翻弄されて 星となり 見つめているのか 僕のこと 瞬きながら 何年も #詩紺碧
3
「晩夏」 森の木立は 風に揺れ 旅立つ夏に サヤサヤと ともに行くのか 法師蝉 空には夏と 秋の雲 何方の声か 古里の 歌が流れる 丘の上 帰らぬ君の 囁きも 歌って欲しい 行く夏に 君は何処ぞ 空の果て 待つ当もなく 陽は落ちて 軒端の燈 君恋ひて 夏の名残の 夕べかな 夏の名残の夕べかな #詩紺碧
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「あの夏」 もしも僕が鳥ならば 過ぎた夏の日 追いかけて 南に向かい 飛ぶでしょう 海原見下ろしただ一路 はるか南の砂浜で あの夏の日を 見つけたら 直ぐに思い出 探すでしょう あの日の君とあの海の やがて夏が暖流と ともに日本に 向かうなら 僕も一緒に 帰ります 思い出連れて君連れて #詩紺碧
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「君は蜻蛉」 君は蜻蛉と同じだと 僕はいつも 思ってた 寄れば逃げるが 又来ては 僕の周りを飛び回る 時には側で立ち止まり 僕を見つめて 居るのかと 思えばやがて 遠ざかる 何と不思議な君だった 秋が進んで行く中で いつか君は 居なくなり 真っ赤で麗し アキアカネ 僕の目先でホバリング #詩紺碧
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「秋の里」 錦秋の里は 透き通り 日差しは白く 降り注ぐ 温もり遠き 父母よ クヌギに泪の 我が家跡 連なる山の 頂の 先は紺碧 秋の空 友らを思いて 名を呼べば 声の限りの 木霊かな 黄昏なれば 鳴く虫の 悲しさひびく 幾年か 思い出だけの 山里に ポツポツ灯る 軒明かり #詩紺碧
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「忘れ得ぬ君」 そこに君が 居るのなら 僕は直ちに 駆けて行く 花野の径か 城山か 教えて欲しい 秋景色 もしも君に 逢えたなら 両手広げて 迎えたい 果てなく広い 青空と 優しい雲の その下で 澄んだ瞳に 片えくぼ 時は過ぎても 忘れない 爽やか秋は 束の間に 思い出残し 行くけれど #詩紺碧
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「君と秋」 あの日の君は 今何処に 幾年過ぎても 忘れない 秋たけなわの 燃ゆる里 繋いだ君の手 温もりを ともに見つめた 花の園 思い出します 遠い日々 長い睫毛の 横顔に やわい口づけ 過ぎた秋 コスモス畑の その中で あの日の君に 逢ったなら 摘んだ一輪 黒髪に 飾ってあげよう 花の秋 #詩紺碧
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「妖精」 頃は錦秋の 山の里 黄金のリボンの 女の子 木の葉を眺め 微笑んで なぜに独りで 森の中 木の葉が風に 揺れる時 真っ赤なモミジの 樹の下で あの子が踊る ヒラヒラと 木の葉が風に 舞う様に やがて枯れ木の 森の中 カサコソ落ち葉と 戯れる 夢か現か 幻か もしやあの子は 妖精か #詩紺碧
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「人生街道」 苦しいだとか辛いとか 不平不満や 愚痴ばかり 言っていないで 腹据えて 元気に歩こう前向いて 生きてる限り人間の 歩む道には 苦難あり 平々凡々 いいけれど 苦難に勝てば輝くさ 性根を据えて歩くなら たとへ躓き 転んでも 立ち上がれるさ 君ならば 人生街道なんの其の #詩紺碧
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「風に願いを」 どれ程縁があったのか 仮想の世界の その貴女 不治の病に 冒されて 病床だとは 聞いたけど 貴女の歩いた長い旅 楽しい語りの 続きさえ 最早聞けない 幻か 何とも切ない 秋の昏れ 貴女の帰り手を広げ いつの日までも 待ってると 伝えて欲しい そよ風よ 海山越えて 窓開けて #詩紺碧
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「望郷」 都会の街に 憧れて 上京しては みたけれど 喧騒渦巻く 人の波 右住左住の 日々ばかり ビルの谷間に 囲まれて この身を削り 幾年か 望みは叶わず 街角で 故郷をしのび 空あおぐ 華やぐ心は すでになく 望郷の念は 募るのみ 遠い故郷の 父母の 老いは如何にと 泪する #詩紺碧
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「過ぎた恋」 学生当時を 思い出す 授業の席で ただ一途 ノートを取ってた 女学生 凛々しい横顔 目に浮ぶ クラスの中でも 一際に さわやか君は 気立てよし 頭も切れるが 控え目な 皆のマドンナ 窓の際 体育祭で 繋いだ手 握り返して 頷いた そのときめきを 生かせずに 蛍の光で 過ぎた恋 #詩紺碧
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「春の夢」 夢を見ました 春の夢 桜の花の 木の下に 少女の儘で 変わらない お下げの髪の君が居た 僕に気付いて 駆けて来る 桜の花びら 身に纏い すでに薄れて いた筈の 里の景色や お下げまで 昔の儘でよみがえり 帰っておいで と ささやいた 長閑な春の 夢を見た 可愛い君の 夢を見た #詩紺碧
15
「お月様」 広い夜空のお月様 独りぽっちで 淋しかろ 泣いたあの子も 今夜から 独りぽっちさ 恋失くし あの子の家の屋根の上 冬の十五夜 お月様 あの子を明かりを 注いだら 似た者同士と 包みなよ やがて薄れるお月様 独りのあの子を 思うなら 月の女神や かぐや姫 合わせて夢を 語りなよ #詩紺碧
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「夢を見た」 夢を見ました 君の夢 可愛い笑顔の 夢を見た くれない春の 陽のような ほのぼの君の 夢を見た 夢を見ました 旅の夢 優しい君と 旅をして 春の日差しの 長閑さに 君と同じと 知った夢 夢を見ました 嫁ぐ夢 綺麗な君の 嫁ぐ夢 潤ませ 僕を見て 花嫁衣裳で 行った夢 #詩紺碧
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「雪の子」 鉛色した 大空に 少女の声が 木霊する 冬将軍の 靴音に 合わせて北から 雪景色 昨日も今日も 降る雪と 白い少女が 戯れる もしや雪ん子 妖精か 将又将軍の 姫さまか 残雪かがやく 峰越えて 将軍少女は 北へ去り 里はほどなく 花便り #詩紺碧
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「いい女」 君は素敵ないい女 誰もが慕って 来るでしょう くれない春の 陽のような 長閑さ想わす 人だから 君は可愛いいい女 誰もが寄って 来るでしょう 黄色い帽子の 菜の花の 温もり感じる 人だから 君は綺麗でいい女 誰もが恋を するでしょう 爛漫春を 然とする 色彩兼備な 人だから #詩紺碧
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「ひ弱じゃない」 僕が歩いた この道を 一人で歩いて みてごらん 山坂茨も 多いけど 汗と涙の その先に 苦労の成果が 待っている 光輝き 待っている 君を伴い アルプスの 表銀座の 縦走だ 岩壁ガレ場の 稜線に 臆病風は 吹かすなよ 見事縦走 幾峰で もうひ弱な 君じゃない #詩紺碧
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【桜の花・卒業】 幾年過ぎても 忘すられぬ 白い校舎の 仲間たち ともに学びし 青春は 桜の花と あった日々 友情きずいた 通学路 桜の蕾 さようなら 君も泣いてた 卒業日 花の開花を 見ぬ儘に 町を見下ろす 駄馬の丘 白い校舎を 眺めては 仲間と語らい 組んだ肩 最後の校歌の 懐かしき #詩紺碧
21
「縁があったら」 別れとなれば 仕方ない サヨナラなんて 言わないで 黙って行けば いいものを 名前も呼ばず 声掛けず 後ろ姿に 手を振ろう またも何処で 知らぬ間に ふたたび袖が 触れたなら 手繰り寄せましょう 赤い糸 縁は異なもの 味なもの 何処で泣くやら 笑うやら #詩紺碧
22
「さすらい」 桜の花は咲いたけど あの日の君は もう居ない ああ やがて散る 儚さに 別れを重さね眺めいる 想い出たどり行く旅は 先の見えない 長い旅 ああ 面影を 忘れ得ず 独りとぼとぼ何十里 続く旅のその途上 水面に浮かぶ 花びらを ああ 見つめては 涙する この世のさだめ悲しかな #詩紺碧
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「君が育まれた町」 君が育まれたその町に 行ってみたいな 是が非でも 今頃桜も 満開で 君を彷彿させてかな 君の暮らした幾年が 何処にあるのか その町の 君の歴史の 走馬燈 回って見せて欲しいもの 君がいつか言っていた 鄙びた町が 故郷と それはそれでも 構わない 君の面影あるのなら #詩紺碧
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「昔に戻れたら」 もしも昔に戻れたら 逢ってみたいな お下げの子 僕の姿を 見掛けたら 初な顔して照れるかな 幼なじみの二人にも 仄かな恋も あったやら あれから何年 お下げの子 駆けて来るかな僕の側 共に語るも遊ぶのも それも有りだが 春の夢 桜の花の 一枝を 飾って上げたいお下げ髪 #詩紺碧
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「晩春」 あれから随分過ぎたから もう覚えては いないだろ 広げた僕の 腕の中 駆けて来た頃深い春 長閑に春は行くけれど 僕は行けない 君おいて そんな昔の 一言に 皐月の花も燃えていた 春を名残りて又惜しみ あの日の君は 煌めいて 呼び名は はつな 漢字では 初夏 と書くのと急ぎ足 #詩紺碧