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「妖精」 頃は錦秋の 山の里 黄金のリボンの 女の子 木の葉を眺め 微笑んで なぜに独りで 森の中 木の葉が風に 揺れる時 真っ赤なモミジの 樹の下で あの子が踊る ヒラヒラと 木の葉が風に 舞う様に やがて枯れ木の 森の中 カサコソ落ち葉と 戯れる 夢か現か 幻か もしやあの子は 妖精か #詩紺碧
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「君と秋」 あの日の君は 今何処に 幾年過ぎても 忘れない 秋たけなわの 燃ゆる里 繋いだ君の手 温もりを ともに見つめた 花の園 思い出します 遠い日々 長い睫毛の 横顔に やわい口づけ 過ぎた秋 コスモス畑の その中で あの日の君に 逢ったなら 摘んだ一輪 黒髪に 飾ってあげよう 花の秋 #詩紺碧
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「忘れ得ぬ君」 そこに君が 居るのなら 僕は直ちに 駆けて行く 花野の径か 城山か 教えて欲しい 秋景色 もしも君に 逢えたなら 両手広げて 迎えたい 果てなく広い 青空と 優しい雲の その下で 澄んだ瞳に 片えくぼ 時は過ぎても 忘れない 爽やか秋は 束の間に 思い出残し 行くけれど #詩紺碧
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「秋の里」 錦秋の里は 透き通り 日差しは白く 降り注ぐ 温もり遠き 父母よ クヌギに泪の 我が家跡 連なる山の 頂の 先は紺碧 秋の空 友らを思いて 名を呼べば 声の限りの 木霊かな 黄昏なれば 鳴く虫の 悲しさひびく 幾年か 思い出だけの 山里に ポツポツ灯る 軒明かり #詩紺碧
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「君は蜻蛉」 君は蜻蛉と同じだと 僕はいつも 思ってた 寄れば逃げるが 又来ては 僕の周りを飛び回る 時には側で立ち止まり 僕を見つめて 居るのかと 思えばやがて 遠ざかる 何と不思議な君だった 秋が進んで行く中で いつか君は 居なくなり 真っ赤で麗し アキアカネ 僕の目先でホバリング #詩紺碧
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「あの夏」 もしも僕が鳥ならば 過ぎた夏の日 追いかけて 南に向かい 飛ぶでしょう 海原見下ろしただ一路 はるか南の砂浜で あの夏の日を 見つけたら 直ぐに思い出 探すでしょう あの日の君とあの海の やがて夏が暖流と ともに日本に 向かうなら 僕も一緒に 帰ります 思い出連れて君連れて #詩紺碧
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「晩夏」 森の木立は 風に揺れ 旅立つ夏に サヤサヤと ともに行くのか 法師蝉 空には夏と 秋の雲 何方の声か 古里の 歌が流れる 丘の上 帰らぬ君の 囁きも 歌って欲しい 行く夏に 君は何処ぞ 空の果て 待つ当もなく 陽は落ちて 軒端の燈 君恋ひて 夏の名残の 夕べかな 夏の名残の夕べかな #詩紺碧
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「星空に泪」 私永遠に 生きたいと 言ってた君は なぜ死んだ 美人薄命と 言うけれど 数奇な運命 君までも あの日嵐が 来なければ あの日あの道 避けてれば 今頃君は しあわせに 星空眺めて 僕のそば 儘にならない 運命に 翻弄されて 星となり 見つめているのか 僕のこと 瞬きながら 何年も #詩紺碧
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「君恋ひて」 君が帰って来た様な そんなに気がして 窓を開け 外を眺めては 見たけれど 君は帰らぬ里の夏 里の稲田はサワサワと 風に靡いて 綺麗だと 言っても君には 届かない 夏のむなしき独り言 蝉は時雨て鳴くけれど 君は泣かぬか 里恋ひて あれから何年 時は過ぎ もはや僕さえ忘れたか #詩紺碧