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「君と秋」
あの日の君は 今何処に
幾年過ぎても
忘れない
秋たけなわの
燃ゆる里
繋いだ君の手 温もりを
ともに見つめた 花の園
思い出します
遠い日々
長い睫毛の
横顔に
やわい口づけ 過ぎた秋
コスモス畑の その中で
あの日の君に
逢ったなら
摘んだ一輪
黒髪に
飾ってあげよう 花の秋
#詩紺碧
28
「忘れ得ぬ君」
そこに君が 居るのなら
僕は直ちに
駆けて行く
花野の径か
城山か
教えて欲しい 秋景色
もしも君に 逢えたなら
両手広げて
迎えたい
果てなく広い
青空と
優しい雲の その下で
澄んだ瞳に 片えくぼ
時は過ぎても
忘れない
爽やか秋は
束の間に
思い出残し 行くけれど
#詩紺碧
29
「秋の里」
錦秋の里は 透き通り
日差しは白く
降り注ぐ
温もり遠き
父母よ
クヌギに泪の 我が家跡
連なる山の 頂の
先は紺碧
秋の空
友らを思いて
名を呼べば
声の限りの 木霊かな
黄昏なれば 鳴く虫の
悲しさひびく
幾年か
思い出だけの
山里に
ポツポツ灯る 軒明かり
#詩紺碧
30
「君は蜻蛉」
君は蜻蛉と同じだと
僕はいつも
思ってた
寄れば逃げるが
又来ては
僕の周りを飛び回る
時には側で立ち止まり
僕を見つめて
居るのかと
思えばやがて
遠ざかる
何と不思議な君だった
秋が進んで行く中で
いつか君は
居なくなり
真っ赤で麗し
アキアカネ
僕の目先でホバリング
#詩紺碧
31
「あの夏」
もしも僕が鳥ならば
過ぎた夏の日
追いかけて
南に向かい
飛ぶでしょう
海原見下ろしただ一路
はるか南の砂浜で
あの夏の日を
見つけたら
直ぐに思い出
探すでしょう
あの日の君とあの海の
やがて夏が暖流と
ともに日本に
向かうなら
僕も一緒に
帰ります
思い出連れて君連れて
#詩紺碧
32
「晩夏」
森の木立は 風に揺れ
旅立つ夏に
サヤサヤと
ともに行くのか
法師蝉
空には夏と 秋の雲
何方の声か 古里の
歌が流れる
丘の上
帰らぬ君の
囁きも
歌って欲しい 行く夏に
君は何処ぞ 空の果て
待つ当もなく
陽は落ちて
軒端の燈
君恋ひて
夏の名残の 夕べかな
夏の名残の夕べかな
#詩紺碧
33
「星空に泪」
私永遠に 生きたいと
言ってた君は
なぜ死んだ
美人薄命と
言うけれど
数奇な運命 君までも
あの日嵐が 来なければ
あの日あの道
避けてれば
今頃君は
しあわせに
星空眺めて 僕のそば
儘にならない 運命に
翻弄されて
星となり
見つめているのか
僕のこと
瞬きながら 何年も
#詩紺碧
34
「君恋ひて」
君が帰って来た様な
そんなに気がして
窓を開け
外を眺めては
見たけれど
君は帰らぬ里の夏
里の稲田はサワサワと
風に靡いて
綺麗だと
言っても君には
届かない
夏のむなしき独り言
蝉は時雨て鳴くけれど
君は泣かぬか
里恋ひて
あれから何年
時は過ぎ
もはや僕さえ忘れたか
#詩紺碧