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新人漫画家「オチが弱い、ヒネリが足りないと言われたのですが」 編集「私はそう思わないけど…気になるならオチをわかりやすくするか、演出を派手にしよう」 「ヒネらなくていいんですか」 「人は理解できなかったり届かなかったりした時『オチが弱い』って言うことがあるんだ」 #新人漫画家と編集者
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#新人漫画家と編集者 編集「この主人公が魔法を撃つシーン、少しぎょっとする」 新人漫画家「というと」 「そこまでにこの世界は魔法があることを提示してどれほどのレアな行為かの描写がないから読んでて『え?魔法あるの』になる。序盤にモブが魔法を撃って騒動が起こるとかあれば違和感は消える」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「ネットでお仕事依頼ってありますか」 中堅漫画家「pixiv>Twitter>ブログの順であるなぁ。良くないのは『何でも描けます』て書くこと。作家探す時はピンポイントで『◯◯を描ける人』を探している時が大半だから『何でも描けます』は『得意分野はない』に見える」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「セリフがどうしても多くなるんですが…」 編集「セリフが多いこと自体はそんな悪くないよ。ただ、切り詰めるテクニックは磨いた方がいいと思う」 「切り詰めですか」 「同じニュアンスでも言い替えで短くできるし、テンポよく読めるリズムを作るのは慣れでできる」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「どうでしょう今回の50ページのネーム」 編集「…厳しいことを言うが認識が甘いと思う」 「と言うと?」 「50ページの漫画を描いたら、読者全員が50ページ全部読んでくれると甘く見積もってる節がある。この漫画の魅力的なポイントを提示するのが遅すぎるんだ」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「冒頭で少ないコマでテンポよく世界観を提示するいい方法はないでしょうか?」 編集「困った時はテレビニュースだ!ニュースで『怪物が現れました!』とか『今日もヒーローが大活躍です』って描くだけで大体その世界の常識ラインがわかる!ニュースオススメ!」
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新人漫画家「キャラデザで気をつけることはありますか?」 編集「…絶対にではないけど『色と髪型』かな。漫画のコマを最初に見た時に人は髪型と色でキャラを区別している部分が実は大きい…同じ画面によく出るキャラはそこを区別した方がいいね」 #新人漫画家と編集者
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「タイトルが決まらなくて…目を引くものが欲しいんですが…」 編集「これは裏技だけど…真逆のワードをくっつけるとビックリして目を引くというテクニックもあるとあると聞いた」 「その方の著作はどんなタイトルなんですか?」 「『死体は語る』」 「すげえ!」
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マンガの冒頭にニュースをつけるだけでどれだけカンタンに化けるか #新人漫画家と編集者
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「『共感させる』が分からなくて…主人公の職業とか変えた方が?」 編集「共感は環境や職業だけじゃなく状況でも作れる。たとえば奴隷の女の子を殴ってる奴隷商人を主人公がぶっ飛ばしたら?」 「超共感しますね!」 「ほら身分も世界も違うのに共感できただろ?」
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#新人漫画家と編集者 編集「ラブコメで連載目指すとして、付き合った後も描くの?描ける?」 新人漫画家「…考えてません」 「ラブコメは早く付き合えとかせっつかれるし、告白までが長いと飽きられる。付き合ったら付き合ったで読者が満足して離脱しちゃうとか、意外と構成が難しいんだ」
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#新人漫画家と編集者 中堅漫画家「…キミのネームよくない流れになってるね」 新人漫画家「…」 「編集会議に通らないことを気に病むあまり、そこで寄せられた色んな人の意見を聞きすぎ。これはもう読者が読むための漫画じゃなく会議用のための漫画だ。作家の相手は読者であって編集部ではないんだよ」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「魅力的な設定が浮かばなくて」 編集「『激しい筋トレで痩せる』と『バナナを食べるだけで痩せる』どっちが魅力的?」 「バナナですね」 「じゃ『LV99で魔王撃破』と『LV1短剣一本で魔王撃破』では?」 「あ…」 「『たったそれだけで◯◯できる』は強い魅力要素だよ」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「漫画家がなりやすい病気ってありますか?」 編集「まぁ精神的なものとか…腰とか…目とか…あと『肩幅ゴツく描いちゃう病』」 「?!」 「『首太く描いちゃう病』『頭デカく描いちゃう病』…厄介なとこは本人は適正に描いてると思ってて自分じゃ気づけないこと…」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「興味を引く設定が浮かばなくて」 編集「『筋トレで痩せた』と『大食いなのに痩せた』どっちが興味を引く?」 「大食いですね」 「じゃ『王太子が王に』と『市民のダメ息子が王に』では?」 「あ…」 「『どうやって!?』と思わせる設定は強く興味を引けるんだ」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「業界のオカルト話ってありますか?」 編集「…たとえば同じクオリティのストーリーを画力がとても高い人とやや画力が拙い人が描いたとする」 「すると?」 「なぜか絵の上手い方は『話が薄い』と評され拙い方は『話のクオリティが高い』と評される」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「色んなご意見もらってネームが詰まってきました」 編集「よく勘違いされるけど編集の言うこと全部聞かなくていいよ?」 「え?」 「言うこと全部聞かないと掲載されないと思って全部取り入れてネームがおかしくなるってあるあるだから…。取捨選択は作者の権限だよ」
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#新人漫画家と編集者 新人編集「作画の人をpixivであたりつけたんですけど」 漫画原作者「…その人、漫画描いたことは?」 「えと…わかりません」 「商業経験は?」 「ないと思います」 「一枚絵の上手さだけで選ぶの危ないよ…。漫画絵と一枚絵は違うんだから…」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「能力バトルを考えてるんですけど、いまいち展開に伸びしろがなくて」 編集「弱点と制限がないからじゃない?」 「弱点と制限?」 「本人にとってはネガティブだけど、それがあればピンチを描けたりドラマが生めるんだ。チートのみでなくそういう視点もあっていい」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「ここ、オマージュなんですけどパクリって思われたらイヤなんですね…」 編集者「『あえてネタ元を暗示する』といいよ。『まるで◯◯事件だな』とか元ネタを言わせるとか、『◯◯先生に捧げます』と欄外に書くとか」 新「後ろめたい流用じゃないと示すんですね」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「『最近つまらなくなった』ってコメントがついてて…」 編集「『最近』って具体的にどこから? 何話から?」 「そこまでは書いてなくて」 「最近って言葉は1話前からも半年前からも含まれることあって、曖昧すぎるから軽々にそれで作風を変えてしまうのは危ないよ」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「キャラも一通り考えたんですけど、シナリオが上手く回らなくて」 編集「どれどれ…うーん、これ、作中最強は主人公じゃなく脇役の方がいいね」 新「え、主人公じゃないのが最強でもいいんですか?」 編「何言ってるの。脇役が最強の名作は多いんだよ?」
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#新人漫画家と編集者 新人漫画家「シナリオ力をつけるいい訓練ってあります?」 編集「あるよ。じゃあ簡単なお題で。『知り合いじゃない男子高校生と女子高生を知り合いにする方法を考えなさい』ただし、できるだけありきたりではない方法で」 新「!?」 編「30個ぐらい考えてみようか」
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#新人漫画家と編集者 編集「キミは読者の理解度や詰められる情報量を高く見積もっているね…今が100だとすると40ぐらいと思って描いた方がいい」 新「…!そんなに低く?」 編「ただこれは『読者が馬鹿だから』とか読解力の問題では絶対ない。『人にものを伝えるのはそれほど難しい』という話なんだ」
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#新人漫画家と編集者 編集者「バッドエンドと胸糞の罠というものがあって…」 新人漫画家「罠?」 編集「バッドにするだけでなんか『レベル高くなった』と思っちゃう思い込みの罠がある。実際は胸糞展開の中にもちゃんと面白いもの面白くないものはあって、普通につまんない胸糞展開はあるんだよね…」