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アベノミクスの6年間で、企業利益は顕著に増加した。一般には、その原因は、円安や輸出増による売り上げ増だと言われる。しかし、それより大きかったのは、人件費の圧縮だ。 #野口悠紀雄の経済データ分析講座
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この6年間に企業の売上高が目立って増加したわけではない。つまり、日本経済は量的に拡大していない。経済が拡大しないにもかかわらず利益が増えたのは、企業が人件費を圧縮したからだ。 #野口悠紀雄の経済データ分析講座
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2012年から18年にかけて、大企業の売上高は12.2%増加したのに対して、零細企業では1.7%しか増加しなかった。消費税増税の影響を除けば、売り上げは減少したことになる。 #野口悠紀雄の経済データ分析講座
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企業利益が伸びた大きな要因は、人件費の伸びが抑えられたことだ。営業利益は55%も増加した。しかし、人件費は7%しか増加しなかった。売上高の増加率が16%だったことと比べても、人件費の伸びは低い。 #野口悠紀雄の経済データ分析講座
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小売業の「零細企業」では、売り上げが4割近く減少するという惨状だ。この階層だけで、人員は147万人から113万人へと34万人減少した。資本金5000万円未満を見ると、人員は、小売業で約72万人減、サービス業で約98万人減少した。この2業種の合計で約170万人。 #野口悠紀雄の経済データ分析講座
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利益増は、日本企業の生産性が向上し、新しい事業やビジネスモデルが開発されたことの結果ではない。それは、人件費の圧縮でもたらされた。この結果、労働分配率は43年ぶりの低水準に落ち込んだ。 #野口悠紀雄の経済データ分析講座