シルエットで見せる。アニメーター志望ならクロッキーをたくさん練習してください。いろいろなポーズを描く中で、はっとさせる輪郭をとらえられるように。いいな、上手だなと瞬時に感じてもらえる絵を描く訓練です。一目で観客の心をさらうようなシルエットを描く力を育ててください。
今、アニメーションに一番必要なのは良い脚本だと考えます。絵は本当に綺麗な作品が増えました。作品世界や物語がもっともっと充実していったら素敵だと思います。若い方の進路はアニメーターばかりでなく、アニメーションの脚本家も考えてほしいのです。両方できる人?それを目指すのも勿論ありです。
理解したふりはいけません。わからなかったら素直にその相手に聞き直しましょう。疑問は無くしておくに限ります。他の聞きやすい人に聞くのはやめましょう。間違いのもとです。馬鹿だと思われる?それはありません。真っ当な相手であれば、確認を徹底する人を信頼してくれるはずですから。
好きな絵を描いて暮らせたら幸せ、とアニメーターの仕事を考えていると後で辛い思いを味わうかもしれません。キャラクターばかり描ける訳でもなく、好きな作品だけを選ぶこともほぼできません。自分の絵を描く時間を減らして他人の作った絵を描く日々が続きます。それでもなりたいと思えますか。
アニメーターになることだけを目的にしてしまうと、絵を描くことだけの知識に特化されていませんか。雑学や一般常識もある程度は身につけましょう。歴史や政治、経済や音楽。仕事中に監督に「○○って何のことか知ってる?」と常識を試されることもあるかもしれませんから。
有名アニメーターじゃないと教わりたくないと夢見る方へ。原画の方全員が教えるのが上手とは限りません。身近におられる、教え上手な方を見つけましょう。日常芝居が巧みな方、レイアウトの上手な方に教わると色々応用のきく事を教われます。見た目が派手な方ばかりに心を奪われませんように。
原画志望のアニメーターの方へ。原画は見よう見まねでは描けません。出来るだけ堅実な仕事をされているベテランの原画の方に弟子入りをしてください。学ぶことは原画の大切な決まり事や作法。熱意をもってお願いすれば時間を割いてくれるはず。なぜならその方もかつてそうして教わったはずですから。
アニメーション作品はトップクリエイターがいれば成立しているように見えますが違います。ユニットまたはチームなのです。完全な人などいません。プロデューサーであれ監督であれ、お互いに欠けている部分を補い合っているのです。そして輝く人の後ろには必ずそれを支えるスタッフが隠れているのです。
趣味のファンアートをやめなさいという話ではありません。本気で自分の作品を世の中に出していく時に達したなら、誰かに熱狂するエネルギーを自作に傾けなさいという意味です。「消費者になるな」は監督が周りにいるクリエイターの卵たちに向けて、しばしばつぶやいていた言葉です。
消費者にならない。これから作品を生み出そうとしている方は、誰かまたは何かの大ファンであることを一旦卒業しましょう。消費者にならないというのは、お買い物だけのことではありません。今まで好きだったものたちを礎にしながらも、今度は自分が新たに創り出す段階に来たのです。
速い、安い、上手いがいいんだ。監督が新人アニメーターに対して激励に使った言葉です。「安い」は勘弁して貰いたい所ですが、「 速 い」はとても大切です。時間をかけて丁寧に描く事は一定の人に可能ですが、 速くしかも上手く描く事は至難の技だからです。意識的に速く描く訓練が必要です。
映画公開日は金曜日か土曜日。最初の週末の動員数が勝負です。このたった三日間ほどでその映画をあと何週間公開するか決められてしまいます。それが興行の世界の掟です。ですから応援したい作品はなるべく公開第一週の週末に行かねばなりません。海外で有名な賞でも取らない限り挽回はないのです。
アニメーションの仕事の中で絵は描かなくても大切な仕事が制作です。中でも制作進行は仕事の要です。演出やプロデューサー、制作会社の社長になる方は制作進行からステップアップする方が多く、クリエイター達のスケジュール管理、上がりの回収、時には演出助手として撮出しも行う激務です。
頑張りすぎると心を壊すと世間は言うけれど神作画クラスで頑張りすぎていない人はたぶんいません。狂気の沙汰と言われても描き続けられることこそが天分なのかもしれません。そんな危険なことを万人にお勧めはできません。紙一重の境地を歩む覚悟がある者だけが神作画の域に到達できるのです。
若いうちから品格ある作画を知ってください。もし身につけることができたら、それは武器になります。安っぽい流行りや自意識に惑わされず自分の美意識を磨きあげるのは簡単ではありません。しかし何年も洗い晒されても色褪せることないアニメーションには、品格ある描き手が必要なのです。
年始なので、いにしえの名作を観ませんか?東映動画の昭和時代の長編作品は特におすすめです。歩き、走り、風、波、炎。贅沢でかつ上品。アニメーションの品格を感じてほしいのです。キャラクターの所作やたたずまいにただならぬ美意識があります。今は決して作れない素晴らしい遺産なのです。
絵コンテも大切な設計図ですが個人外注動画の時は渡してはもらえませんでした。絵コンテが読めないと自分がどういうシーンを担当しているのか理解できないまま作画することも多いでしょう。ペラ一枚でいいからいつかこういうことも改善してもらえたらと思います。内容を知ることは仕事の質を上げます。
制作費が少ない作品が大化けすることもあるでしょう。それは決して偶然ではありません。骨身を惜しまず献身したスタッフたちのおかげです。つらくても良い作品にしようという気迫や執念が結実しただけなのです。今も昔もアニメーションはお金と手間がかかるものということを忘れないでください。
届かないかもしれないけど、上級管理職の皆様へ。現場は畑のようなもの。収穫だけを望んでいても痩せた実りしか生まれません。水や肥料や太陽も必要です。どうか末端にまで栄養を与えてください。でないといつか畑は枯れてしまうでしょうから。
遠大な計画になりますが、もっといい企画をアニメーションに持ち込みたいなら、銀行員を目指してください。出世を重ねてのぼりつめたらよい企画に出資するためです。その場合野望はできるだけ人に知られてはいけません。周到に準備をしてくださいね。
制作の方へ。沢山描きこみがある動画や仕上げにはプレミアをつけてもらえませんか。外で切る食事の領収書を何回か減らしてはどうでしょう。固定給や拘束料をもらえる立場になって、大切なことを忘れてしまっていませんか。制作管理とは何か、改めて考えてほしいのです。
作品の打ち上げパーティーなど、他の部署の方と会える機会を逃してはいけません。勇気を出していつもお世話になっております、勉強中なので色々教えてくださいとご挨拶しましょう。連絡先をうかがったら名刺をいただけるかもしれません。仲間と固まってご馳走食べてばかりではいけませんよ。
若葉マークの原画の方へ。動画はあなた方の味方です。どうか失礼な態度をしないでください。大切にしてください。素晴らしい腕を持つ動画の方がいるのです。彼らは誇りを持って仕事をしてきたのです。元の原画を何倍も素敵にして完成させてくれていることがあることを知ってほしいのです。
新人アニメーターのかたへ。わたしは小さなスタジオも個人外注も経験しています。もしフリーや歩合で仕事をするなら請求書の書き方をまず覚えてください。カットの発注書は保存して実作業の枚数と違っていたら正しい枚数で請求します。請求しないとギャラはもらえません。請求までがお仕事です。
アニメーターは俳優であり、衣装や舞台美術であり、照明係でもあります。動物や植物、水や風にさえなれるのです、色々なことを知りましょう。見ましょう。一枚絵だけでなく、動きでも表現できるようになるために。身近な場所からでいいのです。見て、記憶で描けるように訓練を始めましょう。