タイトルバックのコンテで迷いの森に入った刈谷仁美と私に、制作統括の磯プロデューサーから「アニメーションだからこそ出来る表現で描いてほしい」とアドバイスをいただきました。実写映像は色々制限があり手間や予算がかかり過ぎて不可能だけれどアニメーションなら出来る事。4月1日、見てください!
2019年4月1日「なつぞら」初回の放映は是非ご覧いただきたいです。リアルタイムで見れそうにない方は今からビデオで録画予約をお願いいたします。クレジットには関わったスタッフ全員は出せない事情のため、NHKのホームページなどで順次公表される予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
「なつぞら」でササユリ担当分のアニメパートの撮影監督は泉津井陽一さんにお願いしました。ジブリのコマーシャルも手がけられる多才な方です。過去にNHKの小道具のお仕事も経験があるということで、場の空気や流れをよくご存知でした。いつも助けていただいています。
アニメの巨匠たちが口々にほめるのがロシアの画家ビリービン。絵本は長く高値がついていましたが、ソフトカバーの画集が東京美術から出ています。2500円+税。大胆な構図、繊細でロマンティックな植物の飾り罫に縁取られたロシア民話の世界。シックで上品な色使いには独特の美意識を感じます。
アニメーション現場がドラマ化され、あでやかな俳優の面々が魅力的にアニメ界を演じてくださる事で例年よりもアニメーターやアニメ関係の仕事に志望者が増加すると見込まれます。受け入れるアニメーション業界の待遇改善に向けての本気が問われます。良い才能を逃さず潰さず、豊かに育ててほしい。
このアカウントは若い頃の自分に向けて語りかける気持ちで、現在思うあれこれを書き留めてきていますが、実は1年と2ヶ月前に今回の朝ドラのお仕事の依頼がきっかけで始めたとも言えます。未だ未熟な私ですが、もう一仕事してごらんとアニメーションの神様がチャンスをくださったと思っています。
早逝されたアニメーション監督の今敏さんの絵コンテが復刊ドットコムから複数出版されています。遥かな高みに思うかもしれませんが、目標は高いに越したことはありません。併録されたスタッフインタビューも必見。演出や絵コンテの勉強のための教科書にもなると思います。
平面に絵を描く意識ではなく、空間に存在するイメージを切り取る感覚で絵を描く。だから光や影、反射、空気感、温度、奥行きが感じられる絵になる。頭の中では3Dで考えて、描くのは2Dに落とし込む感じ。落とし込む時のフィルターが自分の感性、特に大事な部分。どんな風に感じられるか、見せたいか。
動きのタメの美しさを知る。丁度今、「若おかみは小学生!」の公式で、お神楽の線撮りを見ることができます。踊りを作画する時に難しいポーズを描くより高度なのが動きのタメをつける事。わざとらしくなく、引っかからずに絶妙な間合いで踊りの流れとタメを表現する事の素敵さを感じてみてください。
昔「カリオストロの城」が劇場公開された時も「となりのトトロ」の時も、最近では「夜明け告げるルーのうた」の時も、すごくいい作品なのに早期終了してしまって悔しかった。もっと宣伝したら沢山の方に観ていただけるのかな。「若おかみは小学生!」をロングランさせませんか、まだ間に合うはず!
監督の高坂希太郎さんはジブリ作品なら「耳すま」や「風立ちぬ」の作画監督としてもお馴染みかと思います。監督もアニメーターも出来てしまう才人です。ジブリ作品がお好きな方が観たらきっときっと気に入っていただけます。でもあえてジブリっぽくならないように意識されて作られている気がします。
劇場「若おかみは小学生!」色々素晴らしいのですが特に食べ物の作画は秀逸です。食べ物を美味しそうに描く事は至難の技なのです。当たり前ををさりげなく表現する生活芝居も凄く良いのです。和装の足運びや所作にも注目したいからタイトルで気後れしないで今のうちにスクリーンで観ておきませんか?
デッサンを独習したい方へ。上田耕造さんの「イチバン親切なデッサンの教科書」新星出版社。各種デッサン、クロッキー、陰影法、透視図法、風景画に至るまでこの一冊で学べます。項目が多岐に渡り正に教科書の仕様。デッサン教室に通いたくても余裕の無いアニメーター志望者に特におススメいたします。
アニメーターは速くうまく描く事が要求されます。ゆっくり丁寧に描きたい人は苦しみます。時間をかけて綺麗に描きたくても、ぐっと歯をくいしばってサクサク描く事を優先してみてください。同じ時間を使って1カットしか出来ない人よりも、少し荒くても2カットこなせる人が認められる世界なのです。
好きな事を仕事にすると好きだった事が嫌いになるかもしれません。好きな仕事には必ず辛い側面も隠れているものです。絵を描くのが苦痛になる。心がくたびれて仕事を離れるケースも沢山見てきました。好きな事は大切な趣味として守り仕事は割り切って適性と経済性で選ぶという選択肢も忘れない事。
若い時代から自分の器を広げる努力をする。経験が浅く実績が足りないうちは他者から信用されません。仕事を積み重ねること、学びを続けること。信頼を得るためにルールを守ること。思いやりは忘れないこと。本当の意味で強くたくましくなること。全てが熟成された時に訪れるチャンスを逃さないこと。
アニメーターは好き放題に絵を描いたり動かす仕事ではありません。必ずオーダーに沿って場面を作りキャラクターに演技をさせる仕事です。描く事で照明や小道具大道具の仕事も兼ねます。演出の意図をクリアした上で作品のバランスを考えながらオリジナリティを加味するのが真っ当なプロの心得です。
つけPANの作画法②続きです。田中敦子さんの世代の方々はつけPANだけでもこんな苦労や工夫を重ねていらしたのかと思うと、とても貴重な資料だと思います。繰り返しますが、フィルム撮影時代のノウハウであることをご理解の上ご覧ください。(全部で6枚あります)
つけPANの作画法①田中敦子さんが以前作られた資料です。本人ご了解の上でアップしました。フィルム撮影時代のノウハウである事をご理解の上ご覧ください。(全部で6枚あります)デジタル撮影に詳しい方が最新の情報で補足して下さると嬉しいです。現在はしなくて済む処理があればぜひご指摘下さい。
これからアニメーターを目指す方へ。一番ベーシックな教本としておススメなのが合同出版の「アニメーションの本」です。40年前から版を重ねている名著です。尊敬する先輩アニメーターお二人からこの本で最初に学んだと最近うかがいました。図書館にもあるかも。気に入ったら是非購入してください。
四六時中描く。上達が早い方は呆れるくらい大量に描く人。ためらわず多少上手く描けなくてもどんどん描くうちに自然に腕を上げてしまう。難しい角度やモチーフでも臆せずに挑戦する、良い意味の図々しさがあります。上手に描けないからと遠慮せずに色々な物を果敢に描く事が何よりの近道のようです。
制作進行に必要な素養。忍耐力、気配り。リーダーシップ、計画性、物事を俯瞰したり先読みする力。良い意味での駆け引きのうまさ。広い見識。メインと討議できる賢さ。心に反して時に優しく、時に厳しく。体力。辛い仕事ですがプロデューサー志望なら是非!
若くして才能を発揮できる天才は極まれです。大抵の人はまだ見えない才能をどう伸ばしていくか、人生においてのリアルな大冒険をしているのです。ゲームよりも辛い試練が襲うはず。自分を育てるとはそんなことの繰り返しなのです。自分の中に眠る秘めた才能を磨く旅に出かけてみませんか。
仕事に集中しないアニメーターをどうしたら良いかなんて会議は無駄。嫌われるのを覚悟して席近くで見張るしかない。それでも仕事しない人の拘束費は削る。ちゃんと仕事をしてる人にはより手厚く、さぼる人には毅然とした対処を。才能があると甘やかして人を堕落させない事。アニメの神様は見ています。
きつい言い方になりますが、憧れの存在に認めてもらうことは仲良くなることと同義ではありません。クリエイターは自分が誰よりも一番輝きたいのです。自分より輝こうとする存在には恐れを抱くはず。優しくされているうちは自分はまだまだと思いましょう。上手くなればなる程見えない溝が現れるのです。