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マサチューセッツでは特に19世紀の半ばになるまでクリスマスは非公認状態で、最終的には宗教的情熱を商業主義が上回った。
キリスト教徒でもないのに日本人はクリスマスではしゃいで……。とはよく聞くけど、そもそもキリスト教ともあんま関係ないイベントだし、目鯨立てんでもいいと思うよ。
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1681年、ものすごく嫌そうにアメリカの植民都市でクリスマスが再開される。彼らは本国からの政治的圧力に負けたのだった。
それでも熱心な清教徒の牧師達はクリスマスを拒否し、祝ってる家を妨害して外から呪いの言葉を浴びせたりした。
「異教の祝祭だぞ! 騙されるな!」
「知るか!」
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再び、植民都市で、クリスマスは禁止!
この日はキリスト教と関係のない日なんだから休むな。教会はむしろ閉鎖。
熱心な清教徒はともかく普通の人にとっては耐え難い。本国イギリスも苦々しく思う。お前ら、また反逆でもやる気か。
クリスマスは政治問題と化す。
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普通の人にはついていけないレベルで真面目で理想主義的な清教徒達の政権は行き詰まり、豪腕クロムウェルが亡くなるとたちまち清教徒達の革命政権は崩壊し、国王が復帰する。クリスマスも復活した。
しかしど根性の清教徒達はイギリスが無理ならと新天地アメリカ目掛けて漕ぎ出す。
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後発組の宗教であるキリスト教は既存宗教の祝祭日をハックし、巧みに自らに取り込んだ。ハロウィンもそうね。あれもキリスト教以前からある習慣。
カトリックはこの他、各地の民族神や英雄を天使として取り込んだり、聖人に仕立て上げてのし上がってきた歴史がある。
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そもそも聖書内にイエスが12月25日に復活したとか生誕したとかはどこにも書いてない。冬至の日を祝う習慣は遥か昔からあった。
「翳り続けていた太陽が、この日を境に再び現れる」
故に復活や誕生と自然と結び付けられていたわけで、イランの民族宗教ゾロアスター教のミスラ神の日が原型とも。 twitter.com/elizabeth_munh…
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クリスマスは禁止!
モテないアラサーの心の叫びではない。17世紀のごく短い間、イギリスではクリスマスは禁止だった。それはモテない男たちの恨みのためではなく、寧ろガチガチに真面目で熱心な人達が引き起こした理想主義と論理性の結実だった
「大体キリスト教と12月25日に何の関係があるんだ?」
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1889年、アメリカ、ペンシルバニア州の大都市、ジョンズタウンを大洪水が襲った。1600万トンの水が時速60キロ超で街を飲み込む。列車は吹き飛ばされ、家屋は基礎から流され、洪水の後は火災が街を襲う。2000人以上が死んだ。洪水の原因はダムの整備不行き届きで、これは半ば人災だった。
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オリエンテーションって、オリエント(東方)と何か関係あるのかと思ったら、昔は太陽が登るところ即ち東方に教会の教壇を置いて、聴衆を東の方向に向けるところから来てるのね。
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歳喰ってドラえもんとか読み返すとたまに衝撃受けるのよね。インターネットもない時代に専門家でもないのにこの情報を何故知り得たって。
大作家は読者と向き合う姿勢が違う。可能な限り誠実であるんとしてる事に気付く。たとえ相手が子供でも。
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そうして、今でもノーフォーク大隊失踪の話はオカルティストの間で囁かれる有名な神隠しとなっている。
事実が分かったのは戦場を調査した結果、確かに遺骨や徽章が見つかったからだけど、イギリス・トルコ両国ともに依然として歯切れが悪くなる事件だけに、このオカルトはまだよく引用されてる。
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オカルトブームから派生したUFOブームがこのミステリーを引用した。戦争当時、誰も証言しなかった『奇妙な形の雲』がこの話に付け加えられ、あたかも一個大隊が丸々アブダクションされたかのように使われる。
こうしてノーフォーク大隊失踪の話はオカルトに強く結びつけられた。
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戦後、突然トルコはこの件に関してしらばっくれた。捕虜虐殺に当たる。
イギリスもあまり大きな話にしたくない。まさか杜撰な作戦に訓練不十分な部隊を突っ込ませて1人残らず全滅させましたなんて言えない
かくしてこの件は戦場のミステリーとして放置される。しかし、20世紀半ば、再び脚光を浴びた
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こうして一個大隊が丸々ネギを背負った鴨のように重武装されたトルコ軍の陣地のど真ん中に迷い込み、集中砲火を受けて全滅する。
わずかな生き残りもトルコ軍はどうやら捕虜にしなかった。彼らも極限状況で戦争をしてる。捕虜を取る余裕がなかった。
「殺せ」
かくして一個大隊が僅かな時間で消滅。
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そんな中、ノーフォーク連隊に突撃命令が下る。その先鋒であった第五大隊にサンドリンガムズは属し、共に突撃した。
前日に偵察がなされており、丘の向こうには敵はいない筈だった。しかし素人なのはサンドリンガムズに限らず、偵察隊は巧妙に隠された敵の陣地を見つけられなかった。
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味方がやられているとつい助けに行ってしまう。職場の同僚で、家族ぐるみの付き合いだったりする。
あるいは味方の弱音に共感してしまう。怒鳴りつけられない。本当の職場ではいい奴なんだ。帰った時に関係を悪くしたくない。
こうしてサンドリンガムズは凄まじく損耗した。
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しかしガリポリ方面のトルコの主将はムスタファ・ケマル。後にケマル・アタテュルク(トルコの父ケマル)と称される大戦屈指の名将で、火力に秀でるイギリス軍を翻弄。
サンドリンガムズは疲弊した。敵が強い。味方の作戦がおかしい。疫病が蔓延する。土地勘もない。訓練は不十分。
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こうして即成訓練を受けた後、サンドリンガムズはトルコ方面に派遣された。
たちまち地獄の熱射と凍える夜の寒さ、赤痢、風土病、飢え、乾きが戦に不慣れな彼らを襲う。
作戦は根本から出鱈目で、イギリス軍はトルコを甘く見て杜撰な作戦を立てていた。