エリザ(@elizabeth_munh)さんの人気ツイート(いいね順)

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そしてマジェスティック号を放り出されたジェソップは、まるで自分のために誂えられたかのような職場が今、まさに進水するのを見た。 「お、大きい! マジェスティック号の五倍はある! まるで海上の街みたい……!」 ホワイトスターラインの新鋭船、オリンピック号だった。
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生まれ育ちに恵まれる事なく、己自身の努力や才能で成功を成し遂げた人をself-made manと言う。18世紀半ばの実業家にして発明家、リチャード・アークライトこそは人類史にその名を残す最大のself-made manだった。
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48歳の若さで亡くなったソワイエだけど、食の大衆化を推し進めた功績はあまりに大きい。 かつて、美食は権力者やお金持ちの特権で、料理人はその奉仕者だった。 しかしソワイエ以後、どんな階級の人であれ、相応に美味しい料理を食べることができるようになる。
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1940年。イギリスの空をドイツ戦闘機が行く。メッサーシュミットbf109。ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の象徴で、幾多の武勲で諸国を震え上がらせた名機だった。 それに挑み掛かるはスーパーマリン・スピットファイア。王立空軍(RAF)の切り札で、後に救国機と呼ばれる名機。
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こうしてジェソップらオリンピック号のクルー達はホワイトスター社から改善点の聞き取り調査を受ける。『オリンピック級』は一隻だけではない。あと二隻が建造されており、それらはオリンピック号の欠陥を修正された形で就役する予定だった。 その二番船の名を、タイタニックという。
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皮肉な事に軍艦から体当たりを受けても無事で航行したオリンピック号は当て擦り気味に『不沈船』と呼ばれる。ヤケクソ気味のホワイトスター社もそのコピーライトを活かした。軍艦相手の海事裁判で負けてる。せめて頑丈さをアピールせねば ホワイトスター社はオリンピック号が扱い難い船であると知った
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デーモンコアは有名だけど、ゴイアニア事故も有名だよね。 廃病院に放置されてた放射線治療装置が盗難に遭って、何も知らない人達が格納容器を解体して青白く光って綺麗だなーって見せ物にしてたら、何百人も被曝したやつ。 わたしは確実に被曝する側だわ。物騒な物を放置するんじゃない。
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西部で彼らを迎える人達、特に女達はまるでアイドルでも迎えるように待ち構えた。 「来た、来た、私のジョニー!!」 一秒でも早くと馬を飛ばすメーラー達は痩身に無駄な肉もなく、心には使命一つ。手紙ポーチが失われるくらいなら死ねと言われて、笑ってそれを受け入れた人達。
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フランスからイギリスへ、エリート街道から、貧民の料理人、そして野戦陣地のコックへと。 波瀾万丈の人生は、最終的に貧しい者への燃える闘志となって結実した。
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「ミス・ジェソップ! この赤ん坊を頼む!」 タイタニック号のクルーの一人が赤ん坊を彼女に委ねた。 「船はもう持たない。親から逸れた子供だ、どうか助けてやってくれ!」 絶望間際のジェソップの胸に、この子を守らねばと言う使命感が燃える。
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1830年代のイギリスは産業革命を経験し、社会は豊かになっていたものの、貧富の差が拡大してもいた。 殆どの農民は囲い込みによって土地を失って零落し、地元の地主の土地を借りて働く安価な農業労働者となる。彼らは産業革命の恩恵に浴せず、にも関わらず物価は上昇し続けた。
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革命前、旧体制(アンシャン・レジーム)下のフランスは厳格な身分社会で、平民が一代で成り上がるのはとても難しかった。 しかし、唯一、完全な実力主義が貫かれていた世界がある。それが料理人。身分が高くても、お金があっても、コネがあっても、舌は誤魔化せない。
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17世紀、イギリスの道路はボロかった。 道路の整備と維持運営には不断の努力と巨額のお金が要る。ただでさえ辺境の二流国なのに、内戦を終えたばかりのイギリスにそれをなんとかするだけのお金がある訳がなかった。 こうして導入されたのが、ターンパイク。
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ヘレン・ダンカンは1940年台の霊媒師。 貧しい生まれだったものの、霊能力があると子供の頃から思われ、やがて口から雲のようなエクトプラズムを吐き出し、霊体を実体化させると評判になった。 あからさまに怪しいけど信じる人は信じるのは今も昔も変わらない。
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ポニー社は破綻した。しかし、ただ一人馬だけを友として、使命を胸に抱いて荒野を駆け抜けるポニー・エクスプレス社の騎手達はアメリカの伝説の一翼となった。
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暴動が終わると、群衆は自分達のやっていた事があまりにアホらしい事に気づき、この事を忘れたがった。渦中のチョーサーも2度とドリッピングに関して口にしたいとは思わなかった。暴動の参加者で逮捕されたのは1人で、僅か一週間で釈放される。 法は法として、民衆には独自のバランス感覚がある。
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裁判所は納得した。こうしてストラットン兄弟は有罪となり、絞首刑となる。 この一件はイギリスで初めて科学捜査法が導入され、成功を収めた事件となった。 今時は指紋法も古臭いけど、まだまだ現役のやり方。犯罪は高度化しても指紋は変えられぬ。 自白に頼らぬ確たる証拠に警察は一歩進んだのね。
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オリンピック号は大西洋交通の雄であるホワイトスター社がライバルであるキュナード社に対抗して建造した世界最大の船舶で、『速さ』でライバルに差をつけられたホワイトスター社が『快適性』と『規模』で盛り返そうと社運を賭けた超大型客船だった。 出来立ての豪華客船にジェソップは応募する。
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1780年ごろに指紋は一人一人違うのではないかと言われてから100年以上経過し、ついにロンドン警視庁は最新の捜査法として指紋鑑定を導入していた。きっかけの一つは日本の拇印だったと言うから面白い。 しかし現実は甘くない。徹夜を重ねて8万もの指紋全てをチェックしても該当者なし。
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イギリスがアメリカと敵対したことは3度ある。 一度はもちろんアメリカ独立戦争。 二度目はナポレオン戦争中の英米戦争。 そして三度目が豚戦争。
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長閑な風景に見えるけど、この煉瓦造りの小さな塔は中々しぶとい小さな要塞だった。 これはマーテロー塔。高さ12mで、三階建てであり、簡易の宿舎を内部に持ち、30人ほどの兵士が駐留できた。屋上には一門ないしは二門の重砲を持ち、360度どこにでも砲撃できる。
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こうしてポニー社は東西アメリカを繋ぐ最速の連絡手段として伝説になるけど、たった一年でその伝説は終わる。 割高な速達は庶民には敷居高く、ポニー社のメールを利用する者は少なかった。そして、程なく電信がカリフォルニアまでやってくる。 熟練の騎手と馬も電信には勝てない。
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排水量45000トンの巨大船舶を扱った経験が当時の人類にはなく、ヨーロッパ最良と呼ばれた船長ですらトラブルを避ける事は出来なかった。 就役したその年、オリンピック号の引き起こす大波にアメリカ海軍の軍艦が巻き込まれ、操舵不能に陥り、横から突っ込む。
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「ホワイトスター社も熱心なようだし、タイタニックはいい船に仕上がるわ。何より、オリンピック号に就役からずっと付き添ってるわたしをタイタニックに回すくらいだしね」 えへん、と胸張るジェソップ。ホワイトスター社はオリンピック号から大いに進歩したタイタニック号に万全の体制を布いていた。
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メアリーは密かにトルコにいた頃からの主治医であるメイトランド医師を呼び寄せた。彼女は自分がやろうとしている事がどれだけ社会的に危険なのかを知っていたので、手紙は万一開封された場合に備えて非常に婉曲的な表現だったものの、要は人痘を娘に接種するよう書かれた。