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アイルランドの貧農出身のオケイリーは、イギリスの名門貴族達からどうか種付けをと懇願されるようになった。
オケイリーは名士となる。しかしイギリスのジョッキークラブは意地でもオケイリーを正会員とは認めない。どう考えたって生まれも卑しく、また、立身出世も賭場でのものではないか。
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出獄後、ワースはライバルのピンカートンに連絡を取った。
「不思議なものだ。今となっては友達と言えるのはお前しかいないような気がする」
名探偵と犯罪王は和やかに語り合い、ピンカートンはワースの伝説を事細かに記録した。
「最後に頼があるんだ」
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イギリス飯がなぜ不味いのか……
それは遥か氷河期まで遡る……。太古の昔よりイギリスはメシマズを運命付けられていたのだった。
と言うと陰謀論かオカルトか、って感じだけど、中世においてイギリスはとても作物の多様性に欠けており、その原因は紀元前数千年前の氷河期にあった。 twitter.com/elizabeth_munh…
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ただの都市から大都市に脱皮し、火災と無縁でなくなった街を密かに守り続けた英雄は、今も組織や体制を通じて世界中の人達を炎から守っている。
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身分階層の異なる者が、異なる知見をそれぞれ持ち込み、酩酊するでなく、逆にクリアな頭で話し合う。コーヒーには軽い覚醒効果と興奮作用があった。時には激しく議論になることもある。世界が広がる。知らない事が知れる。
楽しい。
コーヒーハウスはたちまち大人気となった。
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オケイリーのもと、エクリプスは文字通り孤独な勝利を重ねた。エクリプスが強すぎて誰もマッチしたがらない。単独でレースを走るエクリプス。
「エクリプス何するものぞ!」
と言う強気のオーナーもいたにはいたけど、オケイリーは親指を逆さに命じる。
「殺せ。エクリプス」
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調教師の他に乗りこなせる騎手もない程で、デビュー戦もそのまま引き続き調教師がやる事になった。
エクリプスはデビュー戦前に未勝利の馬とテストレースを済ませていた。
結果は虐殺とでも表現すべきもので、エクリプスは興奮し、デビューずみの相手を地平線の彼方へと突き放す。
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「あの時のジャンパーか? 丁度いい、今度こそ捕まえて、これまでの借りを返させてもらおう!」
ピンカートン探偵だった。流石のワースも名探偵には分が悪い。
「ええい! しつこい男だ。何故あいつは俺様を認識できる!?」
ワースはイギリスに逃げ、ピンカートンを撒いた。
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ヴィクトリア朝時代初期、一般的な労働者の勤務時間は12時間を下回ることがなく、しかも週6日勤務だった。
家事労働が機械化されていない時代でこの労働条件は過酷としか言いようがなく、賃金の安い女子供が主力として使われ、片っ端から労災死して行く。
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愛飲した富豪がいるんだけど、髪という髪が全部抜け落ち、骨はスカスカ、内臓もボロボロと言う凄まじい死に方をしたそう。
遺体は高濃度に汚染されてて、鉛の棺に入れて埋葬されたとか。この人は極端な愛好家だけど、市販されてたからどれだけの人が影響受けたのか……
幽霊より怖い。
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イギリスの貴族たちは権威を示すため、また、地元に雇用をもたらしたり、政治的な会合のために豪壮華麗なカントリーハウスを建てた。
しかし中にはとんでもない変わり者もいる。それが第五代ポートランド公爵ウィリアム・キャヴェンディッシュ。
彼は地下に住んだ。 twitter.com/elizabeth_munh…
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ヴィクトリア朝時代のイギリスでは教育需要が高まった。政府としても帝国を支える労働者の質を高めるため、教育を推奨して学校に補助金を出す。
しかし教師がそもそも希少なので、特に貧しい現場では字も読めない無学者が無意味な体罰で子供を躾けるようなところも出る。
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珍妙な名前を聞いて噴き出さない人はいないポテイトーズだけど、走らせると忽ち周囲を戦慄させる。
「あんな名前で父はエクリプスかよ!? 詐欺だろ!」
ポテイトーズは同世代最強の一角で、数多いるエクリプスの子の中でも最優の馬の一頭だった。
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お昼のTIPS。
1981年、スウェーデンの領海でソ連の潜水艦が座礁し、行動不能になった。
よりによってそこは海軍基地の目の前で、しかも先だって度々スウェーデンの漁業網が何者かに切り裂かれる事件が起こっていたことから、スウェーデンは緊張状態に陥る。
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執念の名探偵ピンカートンが大西洋を渡ってワースの店に入ってきた。ワースは生まれて初めて恐怖する。
「絶対偶然じゃない……! 奴は俺様を地の果てまで追い詰める気だ! ねぐらを知られた以上、ここにはいられない!」
ワースは店を放棄し、イギリスに逃げる。ピンカートンは地団駄踏んだ。
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終戦までマルベリー港は機能し、臨時の港は250万の大軍とその補給物資を大陸に送り続ける連合軍最大の港となる。
奇想兵器スレスレだけど、その実態は戦争の決定力たるに相応しい、正に戦略兵器。
ドイツの移動要塞ラーテなんて可愛いもの。
移動港ほど恐ろしいものはないでしょう。
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クリスマスシーズンだけど、イギリスでは不思議な伝統があって、この時期に怖い話をするのが習慣になってる。幽霊ばなしね。
冬至の時期、夜は長く陰鬱で寒い。中世の人達は月もない凍える夜に暖炉の側で想像力を働かせ、超自然的な現象を空想し、やがて各村や町ごとに怪異譚が生まれた。