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影響力の大きい論者の発言に対しては、「いえ、小人数もありますよ」というリプライもついているのですが、元発言を訂正せず放置している論者もありました。「小人数」が間違いでないと認めることと、予防策の是非を論じることは別です。事実誤認については撤回してもいいのではないでしょうか。
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「自粛を要請」は矛盾した言い方、との声が多いようです。でも、「相手に自制を促す」のように、行動を求めつつ、細かい判断は本人に任せる、ということなら理解はできます。昔から珍しくない表現ですが、このたびの「自粛要請」は、要請にしては死活問題に直結するところが反発を呼ぶのかも。〔続く〕
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昔のドラマに出てくる文字を旧表記に忠実に書けば、時代考証的に正確になるだけでなく、ドラマの昔っぽい雰囲気を大いに盛り上げるはずです。衣服や家具調度とともに、文字というものは、その時代を明らかに映す大事な小道具です。ちょっとした表記も重要視してほしいのです。
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映画に誘った相手から「ごめんなさい、かぜで行けなくなった」と言われ、「それはがっかりだ」と言うのはよくない。「がっかり」は期待が外れて失望したときに使い、「映画に行けなくて落胆」という意味になるので、相手をすまない気持ちにさせてしまう。「映画はいいから、よく休んでね」がいいです。
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嵐「カイト」は「NHK2020ソング」なのですが、昨年歌った時とは状況が一変し、コロナ禍に苦しむ人々を勇気づける演出で歌われました。〈風が吹けば 歌が流れる 口ずさもう 彼方へ向けて〉。歌というのは文脈でメッセージがずいぶん変わるものです。
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Official髭男dism「Pretender」で「君とのロマンスは人生柄 続きはしないことを知った」。「人生柄」はあまり耳にしませんが、「人生というものの性質から言って」というほどの意味でしょうか。「仕事柄、飲む機会が多い」のような「~柄」の拡張用法で、面白い用例です。
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関西方言の女性語「ウチ」(=私)が、関東の少女に広まったという指摘があります。あなたの身近にいる関東出身の少女は、自分のことを「ウチ」と言いますか。
1. 以前からずっと「ウチ」と言う
2. 最近「ウチ」と言う
3. 以前「ウチ」と言ったが、今は言わない
4. 以前も今も「ウチ」と言わない
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安倍元首相狙撃のニュースに接する。元首相へのお見舞いの気持ちは言うまでもないとして、報道を聞いてまず思ったのは、言論がテロで封殺された昭和戦前まで、日本の水準が戻ってしまったということ。取り戻すのに何年かかるか、犯人は何を勘違いしてるのかと、残念さと怒りを感じるのが今の心境です。
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「~とマックで女子高生が言っていた」と、わざと発言の責任を曖昧にする語法は2010年に広まったらしい。これは私がマックで聞いてきた情報ではなく、すでに調べた人がおり、私もたどれる範囲で確認しました。現代の慣用句です。▽ジェット・リョー氏調査 togetter.com/li/1213684
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私の関心事は、この言い方が、実際のコミュニケーション上で、どのくらい誤解を生んでいるか、ということです。数列的な文脈でなく、一般に「花子さんの次に背が高い人は?」と言われたとき、花子さんより若干背の低い人を想起すると思うのですが、もしその逆の人も多いなら、表現に注意が必要ですね。
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「友人の女性たちはよく長話をする」は事実かもしれません。これが「一般に女性は長話をするものだ」となると、男女を型にはめている可能性があります。さらに「女性が多い理事会は、時間を規制しないと終わらなくて困るそうだよ」と責任者が言うと、選考での女性差別につながるおそれがあります。
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高輪ゲートウェイ駅、私もどうも違和感がありますが、それは、漢字駅名の中にぽつんとひとつ異質な駅名があるからです。渋谷パルコ駅とか、原宿ラフォーレ駅とか、秋葉原ヨドバシカメラ駅とか、現在の駅名をいろいろ新しくすれば、違和感が消えてよろしいかもしれません。一案としてお示しします。
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番組を少し褒めると、「わい」が関西以外の地域でも使われている様子を撮影しようとした点はいいと思うのです。私も、青森の「わい」は活字でしか知りませんでした。で、「青森にも撮影に行く」と聞いて期待したんですよ。しかし「青森方言が『わい』のルーツ」という放送になるとは。(褒めてないな)
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まとめサイトについての知識や、見たくない文章の回避策についてお教えいただきましたが、私のもやもやの中心は、どうも別の所にある感じがします。私たちが日常読む文章の水準は優劣さまざまですが、少なくとも意味を伝えようとしている。その姿勢が最初からない文章の出現に驚いているわけです。
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ギョーザ店での実例も示しつつ、漢字の字形には許容範囲があることがよく分かる記事。文字画像の切り貼りも手間がかかっていそうです。ぜひチコちゃんにも読んでほしい。▽ギョーザの漢字は? チコちゃん、それはないよ mainichi-kotoba.jp/blog-20201003 @mainichi_kotobaより
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私は「難しいことをやさしく」述べることを目標にしていますが、それを実現するのは本当に難しいですね。自分では「これでいい」と思っても、なお「難しい」と言われる。難しいことを難しく述べるのは誰にでもできます。分かりやすく述べるのは書き手・話し手の義務だと、自らに言い聞かせる毎日です。
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敬語というと、教科書に厳密なルールが示されているようですが、実際には、ルールがなくて自分で判断しなければならない局面が多いですね。グレーゾーンが大きく、だからこそ「敬語の研究」という学問が成り立つ。「日本語の敬語ではこう決まっています」と言い切る発言を目にしたら、ご注意ください。
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「離合」のような漢語の方言なんてあるのか、と思いますが、けっこう多いんですね。愛知の「勘考する」(考える)、山陰などの「莫大(ばくたい)」(たくさん)、高知の「片時(へんし)も」(急いで)など。郷里・香川の方言では、荒っぽい人を「がいな人」と言います。「我意な」の意味です。
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何が言いたいかと言うと、いわゆる「誤用」とされたことばのリストを参照しながら、元の文章を機械的に修正していくと、奇妙な文章になることがある、ということです。「誤用」のリストは、あくまで「ある場合には使用に注意したほうがいいことば」ぐらいに考えて、絶対視しないのがいいでしょう。
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「挽回」は「遅れを挽回する」(新明解)、「失点を挽回する」(明鏡)など、望ましくない状態を元に戻す場合に使われるので、「汚名挽回」も誤りではないといえます。この説は「飯間がソースである」「珍説の類である」という趣旨のツイートを見かけたので、説明しておきます。
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デマが何万回もリツイートされているとき、それを否定するツイートをどのくらい拡散させれば十分か、というのは難しい。情報の内容にもよります。デマの拡散者の大半は、その真偽には興味がなくて、すぐに忘れる人々と思われる。そうした層のことは無視してもいい気もしますが、本当にそうかな。
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Perfume「ポリゴンウェイヴ」の「ポリゴン」は、ステージにも実例が出てくることで分かるとおり、コンピューターグラフィックスで使う多角形です。これは『三省堂国語辞典』の新版には載せませんでした。専門的すぎる用語との判断からですが、こうして紅白で歌われると気持ちがぐらついてきますね。