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今年もNHK「#紅白歌合戦」を見ながら、国語辞典の材料となることばを求めて「用例採集」(実際の使用例の採集)を行うつもりです。手近の資料ですぐ分かる範囲で、なるべく参考情報なども添えます。やむをえない離席、居眠りなどもあるかもしれません。あらかじめご容赦ください。
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発言の問題点とは別に、最後が〈的を射たご発信〉だったのか、〈きちっと的を射ており〉だったのか、〈お話もシュッとして、的を射た〉だったのかも気になります。「的を得た」だったかもしれない。「得た」「射た」のどっちが会話で主流か、関心を持つ身としては知りたい。一般にはどっちもあります。
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『三省堂国語辞典』に載った「漫画発のことば」についてインタビューを受けました。「黒歴史」「斜め上」のほか「正ちゃん帽」などという古い例も。この帽子は今もありますが、「ポンポン付きニット帽 」などとも表現されているかな。▽集英社オンライン shueisha.online/entertainment/…
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福山雅治「家族になろうよ」。歌の主人公は男性、女性どちらと考えても違和感ない。〈甘えてたの〉という口調から女性らしいと推察できますが、女性ならではの内容ではありません。「100年経っても好きでいてね」と言ったのは彼でも彼女でもいい。誰もが歌える内容になっているところがいいんです。
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『広辞苑』の引用中、「すわりこんで」が「すわりこで」になっていました。私の転記ミスです。失礼いたしました。
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ドラマにせよ、小説にせよ、私は「つまらない」と思いながら見続ける(読み続ける)ことはあまりない気がします。多くの作品は、たいていどこか面白いです。面白さを味わうコツのひとつは、自分から積極的に作品世界に入って行き、あちこち勝手に出かけたりして、その世界になじんでしまうことです。
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Kis-My-Ft2「We never give up!」は〈転んだだけ強くなれる!〉と、失敗を恐れずに幸せをつかみに行くという歌。失敗も逆境も無駄にならない、というメッセージを込めた歌としては、Hey!Say!JUMPの「Your Song」〈失敗は足掻(あが)いた証〉などがありますね。
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「誤りと考えてもいいし、正しいと考えてもいい」とはいい加減なようですが、ことばの正誤の基準は目に見えず、基準があるとすれば各人の頭の中にあるので、その頭の中で統一が取れていればノープロブレムです。ひとりの人の中で、月日とともに正誤の判断に変更があっても、これまたオーケーです。
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坂本冬美「お祭りマンボ」。美空ひばりソングは昔から歌っていますが、〈火事は近いよ スリバンだ〉とか、今ではなじみのない語句もありますね。「スリバン」は擦り半鐘で〈近火の時、続けざまに半焼を鳴らすこと(音)〉(『新明解国語辞典』)。現代語重視の『三省堂国語辞典』には載ってないです。
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この番組のような説明は、私なら避けるし、日本語を専門にする研究者や辞書関係者も、まあ避けると思います。ところが、番組では識者と称する人が出てきて、以上の説明をしていた。ご本人の反論をぜひ伺いたいところ。核心部分はご本人が説明していたので、編集で発言が歪曲されたとも思えません。
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「高輪ゲートウェイ」問題について、メディアは静かになっちゃいましたが、私は今後の動きを注視するつもりです。世の中の人々は案外イケズで、「新名称にはべつに反対しないが、単に使わずにすます」という道を選ぶ人も多いはず。私はどうかというと、「JR高輪駅で待ち合わせ」とか言いそうです。
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石川さゆり「天城越え」の〈くらくら燃える 火をくぐり〉。「くらくら」はめまいなどに使いますが、炎の描写の例もあります。たとえば、広津和郎の小説に〈くらくらと嫉妬に燃えた眼〉とある例などは、この歌での使い方に近いです。「天城越え」の炎も、情念の炎を表しているのでしょう。
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本日3/26、このあと20:15~NHK「突撃!カネオくん」にVTR出演します。辞書作りの作業の一端をご紹介できると思います。「やあ、カネオくん(棒)」と語りかけるやつも、カットされてなければ入っているはず。どうぞご覧ください。
nhk.jp/p/ts/ZV9LQ94Z3…
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AKB48の歌のおかげで、「フォーチュンクッキー」は誰もが知ることばになりました。ところが、主要な国語辞典にはまだ載ってない。日常的に実物に接する機会が少ないからでしょう。1978年の「刑事コロンボ」では、中華料理店で「クッキーの辻占(つじうら)」という名称で出てきました。
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『週刊文春』6/29号で能町みね子さんが「LGBT理解増進法」について述べた文章が勉強になりました。能町さんの見解を知りたかったところでした。〈理解なんかしなくていい、差別しないでくれればいいのだ〉〈〔『不当な差別』の文言に〕差別は本来全て「不当」である〉という部分に深く納得しました。
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『三省堂国語辞典』に「マリトッツォ」が載ることについて、「ブームはもう終わったんじゃないの」との指摘もあります。私の観察では今年7月にピークアウトしています。でも、いったん知られた食べ物はファンがつきます。かつてブームになったティラミスやナタデココも、今や一般的なスイーツです。
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手元の資料では「自粛要請」の古い例がありませんが、雑誌『言語生活』1961年4月号 p.59に〈今、自粛を要請されている「お」の付けすぎ現象〉と出てきます。「おサイダー」のように「お」をつけすぎることは、まあ自分でよく考えて控えてください、ということで、自粛を要請するのも分かります。
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Vtuberの名取さなさん、配信で『三省堂国語辞典』第8版の項目を紹介してくださって、しかも購入してくださったんですね。ありがとうございます。ひとつひとつの新語を載せるかどうか、大真面目で議論してる私たちです。お勉強の書としてだけでなく、楽しめる書としてもご利用くださいませ。 twitter.com/sana_natori/st…
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パートナーの呼び方について、「日経xwoman」の取材に答えました。このテーマについてはこれまでも発言していますが、多少考えが深まったところもあり、また、一方で舌足らずになったところもあり、です。ご参考になれば。 woman.nikkei.com/atcl/column/21…
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「自分も忘れ物をするA(あなた)が、B(私)の遅刻(またはCのドタキャン)を批判できない」「姿勢が首尾一貫していない」という主張も聞きます。一見もっともですが、BやCの行動を議論する際に、Aの行動は関係ない。泥棒も収賄を議論する権利があります。各人の問題を個別に議論すればいいのです。
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先ほどの「SmartFLASH」の記事では、せっかく辞書の説明について真面目に語ったので、再リンクします。写真を別に用意すれば、元記事の派手な写真は表示されないのでは。▽「座り込みの時間を辞書は定義できない」“ひろゆき騒動”に国語辞典編纂者が感じた“違和感” smart-flash.jp/entame/204532/1
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東京事変「緑酒」の〈膨満感に噦いてどこから 嚥下できようか〉の「噦く」は超絶難しいですね。「えずく」、つまり吐く、または吐き気をもよおすことですが、ちょっと見ない漢字。『三省堂国語辞典』では「噦」は「しゃっくり」の字として載っています。口から何か飛び出す点では共通します。