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補足もしくは蛇足です。「男の人ってコーラが好きですね」のような発言を何と呼べばいいか。実害を伴わないので差別ではなく、軽蔑していないので蔑視でもありません。これは「偏見」と分類すべき発言です。偏見は罪のない「独断と偏見」から、差別につながる深刻な偏見まであります。
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谷川俊太郎さんとの対談では、現代のポップスの歌詞にも話題が及びました。たとえば、関ジャニ∞の「Re:LIVE」に〈変わり採(ど)る夢/時代に/君は未来持ってんだ〉と歌われた「変わり採る」。ツイッターで、ファンの方から「遊び心を入れて作った造語」と教えていただいたことがあります。
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ことばの話題で穏当な説明をすると、テレビ番組の担当者は「それでは数字が取れない」と即座に判断すると思います。テレビ番組はバズることが最優先課題。ところが、穏当な説明は、誰もが「そりゃ当然だ」と思うもので、バズる要素がない。かくして、ことばの話題はトンデモ説と隣り合わせになります。
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もともと、SNSの大喜利で「○○したやつが優勝」とお題を出して競わせるタイプのものがあった。これはべつに1位を判定する人はいないわけで、自分が優勝と思えば優勝なんですね。そういうところから、「最高」「大満足」という意味が出てきたのではないかと推測します。
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デマというのは拡散したくなる要素を持っています。一方、デマを否定する情報は多くは常識的で、拡散力ではデマに負けます。元情報の真偽に興味がない人には、なかなか届かないものです。でもせめて、「元情報が真実かどうか知りたい」と思っている人には、確かな判断材料が届くようにしたい。
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「エモい」よりもさらに漠然とした感情を表す語(意味が広い)を挙げれば、たとえば、感動詞「ああ」です。気がついたとき、落胆したとき、安心したとき、悲しいとき、うれしいとき……全部「ああ」ですます。「ああもう、現代人は何でも『ああ』だな。語彙力の低下を憂えるよ」「ああ、そうですね」
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三省堂「今年の新語2018」は11月14日締め切りです。実は、応募が昨年より少ないんだそうです。たしかに今年は「これ」ということばを思いつきにくいですよね。でも、周囲の人が最近使うことば、気がついたら自分も使ってることば、ないでしょうか? お誘い合わせてご応募を! dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/shingo20…
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「男の人って○○だよね」「女性は○○だ」という発言は、個人レベルではそんなに問題にならないでしょう。ただ、個人でも、根拠なくこの表現を連発するのは避けたいです。「男の人ってコーラが好きですね」などと、何かというとこの文型で語る人がいて驚いた経験があります。twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…
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↑私の発言はまとめサイトにも引用していただき、その後に言うのも何ですが、ラ行音云々はやや舌足らずです。ラ行音で「始まる語」が和語になかったということで、「さくら」など語頭以外に来る語は普通でした。さらに、擬音などで、語頭がラ行の語は昔もあったかも。今なら「るんるん」がそうですね。
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Kis-My-Ft2「Everybody Go」は、これでもかと意識的に口頭語を盛った歌詞。「ヤバイ時代」「超盛って」もそうだし、「上がってGO GO!」も「アガって行こう!」、つまり、気分を高めよう、アゲアゲで行こうということですよね。この用法の「あがる」は、現代語の辞書でも十分説明されてない気がします。
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ちなみに、「ひとりごつ」のような五段活用(古文では四段活用)と、「ひとりごちる」のような一段活用が、互いに変化する例は多くあります。「足る」と「足りる」、「済ます」と「済ませる」、「任せる」と「任す」など。現象としてはさほど珍しくないことなのです。〔続く〕
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大森洋平さんの『考証要集』(文春文庫)によると、江戸後期の『北越雪譜』では、鮭を「頭」と数えた例もあるんですね。岩波文庫で見ると、たしかに〈手も濡{ぬら}さず二三頭{とう}のさけをうる事あり〉(p.134)とあります。もちろん鮭の頭も食べられます。これは日本での例ということになります。
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櫻坂46「流れ弾」で〈今宵もどっかしらで顔隠してリンチパーティー〉という表現が出てきた。「リンチパーティー」は、ネットで匿名で誰かをリンチする現象を指すものと思います。そういう風潮に反対し、愛の気持ちで語り合おう、と呼びかけている曲ですね。
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個人の場合はともかく、企業や公的機関が謝罪するとき、「誤解を与えたとすればおわびします」と仮定法を使ったり、「ご不快な思いを……」と快・不快の話にしたりするときは、問題を分かってるのか確かめたくなります。「ご迷惑をおかけし」も、けっこう問題をぼかしていることがありますね。
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以前の「お~いお茶」に関する論争で、男尊女卑的か否かで紛糾してしまったのは、発言者の世代ごとに、商品名のイメージが異なったためと考えられます。まとめると、元のコンセプトのままでは難しくなった商品名が、鮮やかなコンセプトシフトによって長寿ブランドになったのです。参考にすべき例です。
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男性は『三省堂国語辞典』を検討し終え、もう一冊の辞書の検討に移る。検討は微に入り細にわたり、私としては目が離せなくなった。もう一冊の辞書もよくできているし、選ばれるのはそっちかな、と諦めに似た心境。ところが最終的に、男性は『三国』を選び、レジに向かいました。心の中でガッツポーズ。
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読書案内。「これっす」「そうっす」の「っす」だけで一冊の敬語論になることに驚嘆しました。このことば遣いを著者は「ス体」と命名。丁寧体や普通体とは別の役割を持つことを論じていきます。▽新敬語「マジヤバイっす」 社会言語学の視点から 中村桃子著 bookbang.jp/review/article…
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新聞でも、この1年の全国紙の使用例を見るかぎり、「ひとりごちる」は、ぱらぱら使われています。結論として、このことばは文学などでも現に使われていて、辞書に載っておかしくない。多くの辞書が、この語を収録し、解説するようになれば、人々は安心するでしょう。
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この授業のクラスは外国人留学生など日本語学習者を対象とするもので、学生はいろいろな国、地域から集まってきます。2010年代半ばに私が「(恋愛の中には)同性愛もありますよね」と言うと学生が笑ったのは、当時、「恋愛=異性間の感情」という意識が日本だけのものではなかったからでしょう。