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AKB48の歌唱中に内村光良さんが「指原放牧」という看板を持っていました。意味分からなかったけど、メンバーの指原莉乃さんが卒業することを指したんですね。「いきものがかり」が使った表現を踏まえたもの、というとでいいでしょうか。とすると、「放牧」の新しい意味が一般化するかもしれないわけ。
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King & Prince「シンデレラガール」は、一般に言うシンデレラガール(若くして認められた女性)とは違い、門限の時間にシンデレラのように去って行く女性を描いた。一般に言うシンデレラガールは、もとはシンデレラボーイ(ボクシングの若いヒーロー、西城正三選手を呼んだことば)から出たものです。
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「歌や踊りの後に拍手をする理由」について専門家の説を紹介しつつ、「諸説あります」と言い添える場面がありました。私はテレビでこれを見るたびに残念に思います。諸説あるなら有力説を放送すべきだし、専門家が名前を出して説明しているなら、「あくまで諸説のひとつ」と軽く扱うのは失礼です。
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西野カナ「トリセツ」は、2015年の紅白の実況ツイートでも取り上げましたが、改めて読むと、夫として配慮しなければならない項目が多く、震えが来ます。これ、さだまさしさんの「関白宣言」のような曲に対するアンサーソングなんでしょうね。
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乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」は、曲がったことのない横丁を曲がって帰るのが好きな私も共感します。「行きたい 行きたい……」は「ゆきたい」と発音してますが、「生きたい」と区別するためですね。斉藤由貴「悲しみよこんにちは」も「悩んでちゃ 行けない」を「ゆけない」と歌ってました。
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EXILEのメドレーのうち「Heads of Tails」で、「ステージだけが真実」の「ステージ」に「ここ」とルビ。カタカナにひらがなで振り仮名というのは珍しい。活字でこう書いてあった場合、「ここ」と音読するか「ステージ」と音読するか迷います。この曲では「ここ」と歌っていました。
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EXILE「Heads of Tails」の歌詞では、「半座を分かつ 運命を今生き急ごう」の「半座」というのも難しいですね。『大辞林』では「半座を分く」を「浄土で一つの蓮の台(うてな)に一緒に座ること」と説明しています。仏教的な歌詞なんですね。
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Superfly「Gifts」の「いつか 眩いあなたに気づくといいね」という歌詞の「眩い」は読み方が難しいですね。「まばゆい」です。「眩しい」は読めるとして、「眩む」「眩めく」「眩う」なんかも読むのは難しそう。それぞれ、くらむ・くるめく・まうです。
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椎名林檎・宮本浩次「獣ゆく細道」は、旧仮名遣いで意味を取るのに一苦労。あとで確認しようっと。「本物」に「モノホン」、「贋物」に「テンプラ」、「無意味」に「ナンセンス」など、ルビもすごい。たしかに授業にもぐりこんでいる偽学生のことを「テンプラ学生」と言ったりします。
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米津玄師「Lemon」は(機会がなかったので)聴きたかった曲のひとつです。ラブソングと言っていいのでしょうが、明示されない「言えずに隠してた昏い過去」が気になります。漢字辞典を見れば「暗い」「昏い」などの違いは一応分かりますが、歌詞では別の意味を込めているかもしれませんね。
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石川さゆり「天城越え」には作詞者の造語かなと思われることばが多いですね。「隠れ宿」「揺れ墜ちる」……など。調べたら他に用例があるかもしれず、興味が深まります。「隠れ径(みち)」は辞書にありました。
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「勝手にシンドバッド」を初めて聴いたのは小学生の時。歌詞が半分ぐらいしか聞き取れない歌が出現したことに度肝を抜かれたもんです。「ちょいと瞳の中に消えたほどに」の「消えたほどに」が解釈できなかった。「殿、用意はできておりますほどに(=ので)」とは違うし。いまだに自信ありません。
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高齢者を「シルバー」と言うことは、座席の「シルバーシート」以前からあったのでは、という杉村喜光さんの指摘。私がテレビでコメントした際は、過去の辞書類の記述の変遷なども参照して、通説には十分根拠があると判断した次第でしたが、杉村さんはそれ以前の例を指摘されました。脱帽します。
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高齢者を指す「シルバー」の語源はシルバーシートから、と言っても差し支えないとは思いますが、その前史も無視してはならないと、杉村さんの指摘を受け止めました。「国鉄で高齢者(関係のもの)を『シルバー』と呼ぶことが以前からあり、『シルバーシート』を機に普及した」と言えば正確でしょうか。
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「分かる」を漢字で書くと、仮名の「わかる」にするよう編集部から求められることがあります(一般向け・子ども向けを問わず)。場合によって応じますが、謎ルールです。「分かる」の読みは小学校で習うし、堅くも難しくもない。「分かれる」と区別するためともいいますが、送り仮名で区別できます。
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「分かる」に限らず、漢字よりひらがなのほうが柔らかくなります。また、読み誤りを考慮すれば、「下(おりる・くだる・さがる)」など、仮名で書くべきことばは多くなります。でも、よりによって「分かる」の場合だけ、仮名にするよう、複数の編集部から求められたので、不思議に思いました。
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「分かる」を「わかる」にするよう強制されたことはなく、私に不満はありません。純粋に、この方針の由来に関心を持つわけです。深く調べないままの感想としては「単に最近の流行ではないか」と思います。だとすれば、いつ頃からの流行か知りたい。多くの編集部で採られている方針かどうかも不明です。
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柔らかさを出すために、漢字でなくひらがなで書きたいことばというのはあります。私の場合は「ことば」がそうで、これは「言葉」をあて字と考えるからでもあります。ただ、「わかる」については好みの問題でなく、どうもルールにしている編集部があるらしい、その理由が謎だ、というわけです。
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「わかる」には分割の意味がなくなっているので、「分かる」に違和感があるという意見も聞きました。曖昧模糊としたものが文字通り分かれるのが「分かる」だからこれでいいんですがね。拡張した意味が漢字表記できないとなると、記憶する意味の「覚える」(本来、気づくの意)なども使えなくなります。
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「分かる」「判る」「解る」の使い分けについてですが、「分かる」は常用漢字表にあって、学校で教えます。「わかる」全般に使える表記です。「解る」は理解・了解できる場合、「判る」は判別・判読・判断できる場合に使いますが、学校では教えない表記です。
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家族と「忖度じゃんけん」というのをやりました。挑戦者は必ず負ける手を出さなければならず(例、パーに対してグー)、もし勝つ手(チョキ)を出してしまったら、0.1秒ぐらいの間に負ける手(グー)に変えなければならない。相手が喜ぶように忖度するじゃんけん。反射神経が必要で難しい。
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1/16頃、ポプラ社から『ことばハンター』という本が出ます。ことばを観察する面白さ、辞書づくりの喜び苦しみ、また、私が成長する中でどんなふうにことばに関心を深めていったかなど、子どもにも楽しんでもらえるように書きました。子どもさんも大人さんもご一読ください。poplar.co.jp/book/search/re…
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影響力ある前澤社長の発言なので、私も一言。物事の区切りの「一段落」を「ひと段落」と読むのは、誤りと考えてもいいし、正しいと考えてもいいでしょう。『岩波国語辞典』のように誤りとする説明もあれば、『大辞林』『三省堂国語辞典』などのように「いちだんらく」の同義語とする説明もあります。 twitter.com/yousuck2020/st…
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「誤りと考えてもいいし、正しいと考えてもいい」とはいい加減なようですが、ことばの正誤の基準は目に見えず、基準があるとすれば各人の頭の中にあるので、その頭の中で統一が取れていればノープロブレムです。ひとりの人の中で、月日とともに正誤の判断に変更があっても、これまたオーケーです。