飯間浩明(@IIMA_Hiroaki)さんの人気ツイート(古い順)

676
森会長の発言について「自分は女性だが、そのとおりとしか思えない」「そんなに女性蔑視かなと、女性の自分は思う」との意見があります。「友人の女性たちは、みんな長話をする」と個人が発言したのなら、必ずしも問題になりません。でも、決定権のある立場の人がこれを言うと、差別発言なんです。
677
「友人の女性たちはよく長話をする」は事実かもしれません。これが「一般に女性は長話をするものだ」となると、男女を型にはめている可能性があります。さらに「女性が多い理事会は、時間を規制しないと終わらなくて困るそうだよ」と責任者が言うと、選考での女性差別につながるおそれがあります。
678
すでに述べたように、蔑視は軽蔑の心を表すことなので、「蔑視のつもりはなかった」と言われると追及しにくい面があります。一方、差別というのは実害を与えるものです。この場合は女性理事にまさしく「ガラスの天井」を設ける発言であり、蔑視発言というよりは差別発言というほうが正確です。
679
メディアでは今回「女性蔑視発言」という表現が多い。「差別」よりも「蔑視」のほうがマイルドだと考えて使っているふしがあります。でも、両者は別物です。ニューヨークタイムズは「会長が会議での女性の制限を提案」と本質を突いた表現をしています。要するに実害を与える差別だと言っているのです。
680
「男の人って○○だよね」「女性は○○だ」という発言は、個人レベルではそんなに問題にならないでしょう。ただ、個人でも、根拠なくこの表現を連発するのは避けたいです。「男の人ってコーラが好きですね」などと、何かというとこの文型で語る人がいて驚いた経験があります。twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…
681
補足もしくは蛇足です。「男の人ってコーラが好きですね」のような発言を何と呼べばいいか。実害を伴わないので差別ではなく、軽蔑していないので蔑視でもありません。これは「偏見」と分類すべき発言です。偏見は罪のない「独断と偏見」から、差別につながる深刻な偏見まであります。
682
「うまい」が「うまっ」となるのは、「尊(とうと)し」を「あな、尊(とうと)!」(=アア、尊イナア!)というのと同じ語幹用法です。日本語では「あな、暗!」とか何とか、昔から言っていますので、日本語から「い」が消えていっているとはいえません。▽ヨミドクター news.yahoo.co.jp/articles/edd1b…
683
「いやだ」が「やだ」になるのと同じ現象も、昔からありましたよね。「いだく(抱く)」を「だく」と言ったり、「いばら(茨)」を「ばら(薔薇)」と言ったり。というわけで、語頭の「い」が落ちるのも、昔からの伝統です。心配なさいませんように。
684
古典で習う「あり・をり・はべり・いまそかり」のうち、「いまそかり」という動詞は、実際にはほとんどお目にかからない。古典17作品のうちで、「あり」は1万例以上、「はべり」は千例以上出てくるのに、「いまそかり」はわずか6例です。これを一生覚えているなんて、記憶力の無駄遣いかな。
685
もっとも、数がすべてでないのが古典の面白さ。「いまそかり」の6例は、みんな大好き「伊勢物語」に集中して出てきます。「崇子(たかいこ)と申す、いまそかりけり」のように。入試にも出るだろうし、「いまそかり」を覚えておいて損はないわけです(「いますかり」は、他の古典にもちらほら)。
686
この古典17作品以外でも、「いまそかり」は芭蕉の俳文などにも出てきます。「猶(なほ)父母のいまそかりせばと」(「としのくれ」)というふうに。結論としては、あまり見かけない奇妙なことばでも、覚えておくとやっぱり役に立つかもしれない、ということです。
687
「~とマックで女子高生が言っていた」と、わざと発言の責任を曖昧にする語法は2010年に広まったらしい。これは私がマックで聞いてきた情報ではなく、すでに調べた人がおり、私もたどれる範囲で確認しました。現代の慣用句です。▽ジェット・リョー氏調査 togetter.com/li/1213684
688
人前で発言していて、「まずいことを言った」と思うことがあります。そんなとき、「~とマックで女子高生が言っていた」「~と言っておられた。だれが言ったとは言わないが」と逃げるのはひとつの手です。でも、元発言がたどれない引用は、基本的に、引用した発言者が責任を問われるべきです。
689
以前、教育者が公式の場で問題発言を行い、「~と言った人がいるが、私も同意見だ」という趣旨のことを言い添えました。報道では要約されていましたが、実際は「~とマックで女子高生が言っていた」と同じ語法だったかもしれません。ただ「私も同意見だ」と責任の所在を明らかにしたのはいいことです。
690
森会長発言の報道で、女性の発言時間の規制に言及した部分は、多く見過ごされた印象があります。元発言が伝聞形式のせいもあるかもしれません。海外メディアでは、「『時間制限を設けないと困るだろう』と付け加えた」(CNN、2/4、拙訳)のように、発言責任を本人とみなす報道が複数あり、対照的です。
691
時代物の漫画で、「~と、あなたを中傷している者がいます」と親玉に報告した人物がいました。親玉は「それをわしに言うとは、さだめしお前も同意見であろう」と、その人物を罰します。というのをふと思い出しましたが、これこそ記憶が曖昧で情報ソースが示せません。どなたかご記憶でないでしょうか。
692
ちくまプリマー新書『伝わる文章の書き方教室』が、刊行10年目にしてようやく重版を迎えました。文章力アップのために、クイズふうのトレーニングを提案する内容です。図書館や学校現場で好意的に取り上げていただきました。初級から順を追って進んでいく構成です。お気軽に挑戦してみてください。
693
Aに遅刻を批判されたBが「Aこそよく忘れ物するじゃないか」「Cだってドタキャンしたよ」と責任逃れするのを whataboutism と言う。“What about...”(じゃあ…はどうなんだ)と話をすり替える論法だからです。ネットでは冷戦期に生まれたことばとされていますが、普及は2010年代後半と考えられます。
694
この whataboutism の日本語訳は難しい。ウィキペディアでは「そっちこそどうなんだ主義」と見出しを立てていますが、これは長いし、Bが「Aこそよく忘れ物するじゃないか」と逆襲する場合だけがイメージされます。でも、実際は、「第三者のCのドタキャン」を持ち出す場合も多い。他の訳語が必要です。
695
英語の whataboutism をそのまま「ホワットアバウティズム」とするのも現代風ですが、10字を超えるのは長いですね。「ホワットアバウト論法」という例もあり、やや分かりやすい。単に「ホワットアバウト」「ワッツアバウト」もあります。訳語が定着すれば、すり替えもしにくくなるでしょう。
696
議論の方法として、Aが「Bの遅刻」について問題にしているとき、Bは「Aの忘れ物」を同時に持ち出すべきではない。もし持ち出したら、Aは「よし、私の忘れ物の話は次に議論しよう」と述べ、議論を戻すのがいい。その際、「ホワットアバウト論法は避けよう」などと短く指摘できる用語があれば便利です。
697
「自分も忘れ物をするA(あなた)が、B(私)の遅刻(またはCのドタキャン)を批判できない」「姿勢が首尾一貫していない」という主張も聞きます。一見もっともですが、BやCの行動を議論する際に、Aの行動は関係ない。泥棒も収賄を議論する権利があります。各人の問題を個別に議論すればいいのです。
698
ネットスラングの「おまゆう」が近いのでは、というご意見が複数あります。ただ、これだと、BからA本人に逆襲する「そっちこそどうなんだ主義」と同じで、「Cだってやってるよ」と第三者のことをいう場合をカバーできないと思うのです。
699
「ひとりごちる」という現代語があるかどうか、ツイッターで話題になり、飯間の意見が聞きたいという声もあります。私の率直な感想としては「文章語としては、まあまあ使うのでは」というところです。すでに解説があるかもしれませんが、私なりに説明してみます。〔続く〕
700
ことの経緯はこうです。まず、「ひとりごちる」は古語であり、「現代の辞書には載ってない」というツイートがあった。さらに「厳密には古語は『ひとりごつ』で、『ひとりごちる』は最近作られた造語らしい」と補足された。それに対し「そんなはずはない」という意見があがった、と。〔続く〕