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私が「ことばの間違い」を指摘しないので「優しい」とよく言われますが、べつに詭弁を弄して「間違い」を「正しい」と言いくるめているわけではありません。ことばの観察者として事実を提供するだけです。ことばを安易に正誤に分ける考え方については、むしろ厳しく批判していきたいと思います。 twitter.com/nagi9_14/statu…
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「大喪の礼」自体は、ことばとしては遅くとも明治時代からありましたが、人々に知れわたったのは昭和天皇の大喪の時で、一種の新語と言えるでしょう。この出来事に立ち会った大人にとってはなじみの語になりました。その当時子どもだった人々にとっては、今日でもなじみがないだろうと思います。
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「大喪」は昔はどう読んだかというと、辞書類には「たいそう」「たいも」の両方がありますね。昭和天皇の大喪の礼については、小渕官房長官が開式の辞で「ただ今から、たいそうのれい、おんしきを、きょきょう(と噛んで)、挙行いたします」とアナウンスした。小渕さんらしさが感じられました。
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「大喪」の昔の用例を見直していました。昭和天皇崩御の日、NHKアナウンサーが「政府は大正天皇のご葬儀を参考にいたしまして、たいものれいは……たいそうのれいは……参考にいたしまして、たいそうのれいは崩御後40日から50日後に行う方針で」と原稿を読んだ。アナウンサーでもそんな感じでした。
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ここで指摘したいのは、「ある用語について、ひとつの定義を、あらゆる時と場合に用いることは難しい」ということです。あることばが、ある定義に反するから使えないと考えると、言語活動がかなり限られてしまうことに注意が必要です。
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安倍元首相銃撃について、テロかテロでないかという議論が起こっています。私自身は、この事件はテロの条件を多く備えていると考えますが、政治の専門家ではなく、ここでどちらかの結論を出そうとするものではありません。それでも、ことばを扱う立場から述べられることはあると思います。(続く)
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元首相死去の報に接し、お悔やみ申し上げます。先ほどのツイートに付け加えることはないです。日本が要人テロの起こるレベルであることに愕然とし、犯人はテロで何か達成できると思ってるのか、むしろ愚かで有害な、さげすむべき行為でしかないのに、と茫然とするばかりです。
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安倍元首相狙撃のニュースに接する。元首相へのお見舞いの気持ちは言うまでもないとして、報道を聞いてまず思ったのは、言論がテロで封殺された昭和戦前まで、日本の水準が戻ってしまったということ。取り戻すのに何年かかるか、犯人は何を勘違いしてるのかと、残念さと怒りを感じるのが今の心境です。
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Vtuberの名取さなさん、配信で『三省堂国語辞典』第8版の項目を紹介してくださって、しかも購入してくださったんですね。ありがとうございます。ひとつひとつの新語を載せるかどうか、大真面目で議論してる私たちです。お勉強の書としてだけでなく、楽しめる書としてもご利用くださいませ。 twitter.com/sana_natori/st…
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『三省堂国語辞典』第8版のiOS版をApp Storeで探したが見つからなかった、という話をよく聞きます。辞書アプリは「辞書by物書堂」などの本棚アプリをまずダウンロードし、そのオプションとして買う方式が主流ですが、この方式が知られていないし、本棚アプリ自体も検索しにくい。周知が必要です。
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林太郎の記す「結婚」の語釈。「……愛し合う他人どうしがわかりあいたいと願い、共に歳を重ね、互いの変化を慈しみ、それでも尚わかりあえないことを知る営み(下略)」。ここは若干監修者として意見を言った以外、ほぼ脚本どおりです。作者および林太郎の実感がこもっているところです。#じぞ恋
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颯に事実を打ち明けられて、式場へ急ごうとした晴太、一瞬戻って颯をきつくハグ。あれっ、これ台本にあったっけ、などと、事前に台本をいただいている私は戸惑う。慌てて確認しましたが、ここは詳しく言わないほうがいいところですね、たぶん。#じぞ恋
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やばいでしょう? twitter.com/kaichosanex/st…
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芥川賞候補がすべて女性というのは文学史上画期的ですね。明治・大正の文学は、樋口一葉や与謝野晶子以外、主な書き手はほぼ男性でした。1980年代の『新潮現代文学』(作家別全集)全80巻のうちでも、女性作家の巻は倉橋由美子・田辺聖子ら全部で14巻しかありません。▽NHK www3.nhk.or.jp/news/html/2022…
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「確信犯」のうち「②そうするのが むしろ正しいと信じておこなう犯罪」で使う例は、現代の文章では非常に少ないという判断なんです。この②の意味は、ちまたの日本語誤用本などで「正しい」「本来」とされているのですが、はて「正しい」とはなんだろう、と考えてしまいます。 twitter.com/fudesakisanzun…
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英語の勉強をするときも、古文の勉強をするときも、ひとつの意味だけ覚えておけばいい、なんてことはありません。現代日本語を理解し、使用するときも、これとまったく同じです。この表のうち、特に「敷居が高い」には3つの意味を示してありますが、他の語だってさらに別の意味があります。
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ちなみに、この表は左右のどちらが古い意味、新しい意味というわけでもありません。一般的な文章を読むときは、まずは①の意味で、次に②の意味で解釈してみるといいのではないか、という観点で並べてあります。この順番は、将来的には変わる可能性があります。
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「恋」を『広辞苑』第7版で引くと、まずは〈一緒に生活できない人や亡くなった人に強くひかれて、切なく思うこと〉と出てきます。つまり「恋」は「恋い慕う」で、自分の手元にいない存在に対する感情が原義なんですね。お互い離れない安心感が生まれると、「恋」とは別物になるというわけです。#じぞ恋
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ネットニュースにもっと普通に「非難轟々」が出てくるようになれば、「非難轟々」も辞書に示す余地が出てくるとは思います。とすると、今回の例も重要な例のひとつです。黒田総裁の方針にまったくコメントしなくてすみません。
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「囂」の漢字は「かしがましい」「かまびすしい」の意味です。『三省堂国語辞典』では「囂々」は〈やかましいほどに高くなるようす。「非難―」〉、「轟々」は〈〔音が〕大きく ひびきわたるようす。「―たる水音」〉としています。でも、非難が水音のように響きわたるなら「轟々」になるのかも。