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したがって「英語の成績を上げるには?」という質問の答えは「左頁に英文、右頁に語注がある、面白い英文を乱読してください」ということになるのですが、今もそういう本、あるでしょうか。中学・高校生向けで、ラノベふうの内容のそんなシリーズがあれば、読む人は多いと思うのですが、目にしません。
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「国語に関する世論調査」の報道は、最近、抑制が利いています。文化庁も注意してるのでしょう。「間違った言い方をする人がこんなに!」みたいな記事は減りました。調査結果でも「国語が乱れている」と思う人は若干減った。自分と人とのことばの違いに寛容になっているとすれば、けっこうなことです。
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文化庁に恨みはないけど、毎回「国語に関する世論調査」については批判的な発言ばかりしています。今回、「~活」「~ハラ」について〈他人が言うのが気になるか〉を聞くという、その真意が分かりませんでした。すでに定着した言い方なのに、違和感を持たせたいのかな。昨年度はなかった聞き方です。
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25日に「国語に関する世論調査」が出て、私も取材にコメントしました。特に「〇活」「〇〇ハラ」ということばが今の日本語にどんなに貢献しているかを力説しました。その部分は有料会員でなくても見られると思います。▽朝日新聞デジタル asahi.com/articles/ASN9T…
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辞書編纂についてロングインタビューを受けました。日々、文章や会話の中で、適切な表現が見つからず、そのつど独自の表現を工夫することがありますよね。「昨日(既存)のことばで今日を語れない」というのはそういうことです。▽朝日新聞デジタル&M(アンド・エム) asahi.com/and_M/20200917…
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つまり、悟空の口調をまねたののではないか、というのは分かるのですが、そうだとしても、「てぇてぇ」の変化は特筆すべきだということです。
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「てぇてぇ」は悟空の口調をまねた、との意見が多いですが、悟空のことばは江戸なまりに一致しているように見えます。勝てない→勝てねえ(ai→ee)、お前→おめえ(ae→ee)、驚いた→おどれえた(oi→ee)、悪い→わりい(ui→ii)など。「とうとい」前半のouがeeになるのは独特だと思います。
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「てぇてぇ」。「とうとい」の変化形。「推しが尊い」などという「尊い(=神々しいほど素敵)」を変化させて言う。江戸なまりなら「とうてぇ」になるはずですが、後部の「てぇ」に引かれて前部も「てぇ」になった模様。#今年の新語2020
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「アーティー」。学生に教わったことばで面白かったもの。〈水彩絵の具で描いたようなアーティな花柄〉などと使う。「アートっぽい」という意味のようですが、artyを英和辞典を引くと〈芸術品まがいの〉〈芸術家気取りの〉と説明されいる。ここでは日本語用法なんですね。#今年の新語2020
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「三省堂 #今年の新語2020 」の候補語を募集します。今年あたりから広く使われだして、将来国語辞典に載るかもしれない語を選びたいのです。まずはどうぞ気楽に、最近よく見る、よく聞くことばをお教えください。公式のツイートにもあるように、今年はコロナ禍関連のことばが多いですね。〔続く〕
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対立する考え方A・Bのうち、一方のAを主張しようとして、Bの論者をからかい、非難し、人格攻撃しても、Aに意見を変えさせることは難しい。何ごとも「北風と太陽」です。「Bの理屈は分かるが、問題なのはこの点だ」と、認める所は認め、相手側が反論しにくい部分に絞って主張すると効果的です。〔続く〕
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ああ、正確には「お父さん」という読みが入ったのは、音訓表の「付表」のほうです。この「付表」には「田舎(いなか)」「五月雨(さみだれ)」など、公に使って差し支えない当て字・熟字訓の類がまとめてあります。
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……などと書きましたが、私はこの先生にとてもお世話になっていて、今でも深く感謝しています。その感謝の文章を雑誌に発表したこともあります。だから、こういう例に挙げるのは恩知らずなのですが、まあ許していただけるだろうと書いちゃいました。先生、すみません。
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ところで、この一件は、私が小1の1974年のこと。前述のように、実はこの前年に「お父さん」の読みは音訓表に入っていたのです。先生はその新情報を知らなかったのだと思う。このように、ルールなんてすぐ変わるもの。子どもが知っている知識を「使うな」と制限をかけないほうがいいです。〔続く〕
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ちなみに、当用漢字は今の常用漢字の前身で、制限色が強かった。だから、先生はある意味、当時の漢字表の精神に忠実だったわけです。とはいえ、世間ではいくらでも「お父さん」と書かれていたのは事実。子どもが書いた漢字に赤字を入れる必要は当時もなかったと、現在の私は思います。〔続く〕
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こう書くと、「ははあ、『父』は2年生で習う字なので直されたのね」と思われるかもしれません。そういうことではなく、先生は「これはあて字」と言いました。かつて「お父さん」はあて字扱いだったんです。「当用漢字音訓表」にない読みだったから。「お父さん」が認められるのは1973年です。〔続く〕
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小1の時、作文で「お父さん」と書いたら、先生が「父」を漢字で書いてはいけないと赤字を入れた。「よく見る字なのに」と不満でした。今にして思う。教員の大人の事情で「教えない事項」があるのは分かるけど、子ども本人に「学んではいけないことがある」とのメッセージを与えるのはまずい。〔続く〕
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「『県をまたぐ』は誤りで『県境をまたぐ』が正しい」という呟きがありますが、「県をまたぐ」は問題ない言い方です。「またぐ」は「枕をまたぐ」のように物を飛び越える意味も、「日をまたいだ午前2時」のように区切りを越える意味もある。「県をまたぐ」は後者です。〔続く〕news.yahoo.co.jp/articles/e68a7…
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安倍首相が辞任。一国民として、この内閣に感想はあるけれど、病気悪化とのことなので、お大事に、治療に励んでいただきたいと思います。それはともかく、私の関心は変なところに向かう。2007年と2020年、2度の辞任会見を比べてみると、首相個人のことばにはどんな違いが現れているか。〔続く〕
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少々記述が混乱してますが、国語辞典に「中年は何歳から」という記述があろうがなかろうが、どのみち番組で女性タレント(と視聴者)へのセクハラは起こったかもしれない。少なくとも確かなのは、「誰々はおじさんか」と、スタジオにいる人もいない人も対象に、辞書を基に年齢差別が行われた事実です。
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「中年は何歳から」「老人は何歳から」「おばさんは何歳から」……などは、しばしば話題になります。その話題の行き着く先は、えてして、該当する年齢層の人をいじったり、からかったりすることだっりする。要するに年齢差別に辞書が使われるわけです。その点をよく考えてみたいと思った一件でした。