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水森かおり「いい日旅立ち」に出てくる〈あゝ 日本のどこかに〉の「あゝ」の表記。「ゝ」は昔は「こゝで」「このまゝ」などと普通に使われましたが、今の歌ではなぜか「あゝ」とか「おゝ」とかにしか使われません。ほかの例があれば、それは珍しい例です。
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まふまふ「命に嫌われている。」は生きることにネガティブな歌かと一瞬思うけど、最後に〈生きて生きて生きろ〉とあるので、これは生きろソングですね。〈命に嫌われている〉は「命を嫌っている」と同義でしょう。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」(ニーチェ)ではないけど。
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KAT-TUN「Real Face #2」で〈退屈な夜にドロップキックしたつもり〉と出てくる「ドロップキック」は、新しい『三省堂国語辞典』第8版にはありません。でも、たとえばMr.Children「everybody goes」にも〈秩序のない現代にドロップキック〉と出てくるなど、反抗する意味で多く使われている気がします。
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SixTONESのアンニュイな雰囲気の「マスカラ」。〈馴染みの景色を/喰らえど喰らえど〉と出てくる「食らう」は、平安時代から例のあることばですが、当時から下品な語感があったらしい。「食う」から派生したとすると「ら」がどうして入ったのか不思議。「語る」→「語らう」の変化とは別のようです。
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日向坂46「君しか勝たん」の「~しか勝たん」は「~が最高だ」などの意味ですが、私が初めて見たのは2019年のことでした。『現代用語の基礎知識』では2021年版(2020年発行)から載っています。こうして「紅白」で歌われると、全国的定着までもう一歩。坂道シリーズの歌は現代語観察では欠かせません。
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櫻坂46「流れ弾」で〈今宵もどっかしらで顔隠してリンチパーティー〉という表現が出てきた。「リンチパーティー」は、ネットで匿名で誰かをリンチする現象を指すものと思います。そういう風潮に反対し、愛の気持ちで語り合おう、と呼びかけている曲ですね。
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今年の「紅白」テーマは「カラフル」ということですが、男女に分かれて戦うというコンセプトから転換しつつあるということですね。ロゴも、紅白をグラデーションで表現しており、境界がないという考え方をビジュアルで表現したもの受け取りました。
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冒頭のトークもそこそこにLiSA「明け星」。この「明け星」は大きな国語辞典にもない語で、この作品での造語かと思われます。東の地平空高く輝く「明けの明星」(金星)ということでしょうか。古代に同じ意味で「あかほし(明星)」ということばもありました。
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「NHK紅白歌合戦」の放送が始まりました。今回は「有観客」の紅白となりました。この「有観客」も、コロナ禍で「無観客」ということばが一般化してから、その後に広まった、一種の新語ですね。
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『三省堂国語辞典』にある「難しめのことば」の読みの解答編です。①「慇懃」だけは読めるという人が多かった印象。常用漢字外ですが、ことば自体はよく聞くからでしょうか。一方、②「矍鑠」もことば自体はよく聞くけれど、分かる人が少なそうだったのは興味深いことです。twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…
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「#マー姉ちゃん」で驚くのは母親の描かれ方です。夫の遺産をみな困った人に施し、家の貯金はゼロに。娘の収入にも手を付ける。今のドラマなら間違いなく迷惑キャラの立ち位置です。掲示板でも「母親に腹が立つから脱落した」との意見が。でも、ドラマでは「信念ある母さん」的な位置づけのようです。
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江戸時代から生き延びてきた「ダンチ」が、今になって、意味がかなりよく似た「レベチ」に座を追われそうになっているのは、ちょっと気の毒な気もしますね。
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若い世代ではご存じない方もいるかも。レベチの実力差がある場合、昔は「優秀な彼は、私とはダンチの差がある」なんて言ったわけです。「ダンチ」とは段違いのこと。一昔前の俗語っぽいですが、実は江戸時代からあることばです。
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若い世代が「してください」の意味で「してもろて」と言うのは、「してもろて(もいい?)」という気持ちと理解しています。西日本などで「してもろて」は本来「してもらってください」の意味で、郷里の香川県でもそうでした。「してください」の意味で使った記憶はないですが、今はどうなのでしょう。
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ある語や用法、たとえば「その服ヤバい」の「ヤバい」を『三省堂国語辞典』が載せているからといって、「『三国』はこの用法を認めた」とか「認めてない」とかいう話ではまったくありません。現代日本語として、この語・用法が編纂者の目に止まる程度には勢力がある、と示しているにすぎません。
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あることばを辞書に載せたからメディアなどで使っていいとか、載せてないから使うべきでないとかいうことは、編纂者としては1ミリも考えていません。少なくとも『三省堂国語辞典』はそう。早い話が、「うんこ」は『三国』に載っていますが、「うんこ、うんこ」と連呼する新聞記事は見たくないです。
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「分からないことばはスマホで引きゃいい」と言うブッコローを相手に、三省堂の山本さんが手を焼く様子が微笑ましい。新しい『三省堂国語辞典』第8版は、笑いはないかもですが、けっこう小ネタも仕込んでいます。辞書好きの方はにんまりされるかも。楽しみにしてください。youtube.com/watch?v=wY6rsB…
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おっ、まとめてくださっていますね。ありがとうございます。▽改訂に伴い三省堂国語辞典から「コギャル」や「スッチー」が削除されることに関して、飯間浩明氏による解説ツイート - Togetter togetter.com/li/1814713.
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一時期広く使われた「コギャル」「スッチー」などの俗語も、『三省堂国語辞典』では涙を飲んで削除しました。この類を時代の足跡として残すなら、「オペチョコガール」「トテシャン」「ワンサガール」(戦前のことば)なども収録するのが筋、となる。現代語辞書としては、どこかで線引きが必要です。
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「コギャル」「スッチー」などの項目が『三省堂国語辞典』から消えると報道されました。現代語辞書でこれらの項目を残す場合、「何年頃に使われたことば」など、過去のことばとして説明する必要があります。重要語はそうやって残す場合もありますが、「そこまでしなくても」と削った項目も多いです。
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ある番組で識者が「ことばは時代の足跡。辞書から消してはいけない」という趣旨の発言をしていました。でも、辞書もいろいろです。歴史的に確認されることばはなるべく多く載せる、全13巻の『日本国語大辞典』もあります。一方、実用を旨とする『三省堂国語辞典』は、まずは現代語を重視したいのです。
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昔、大学内の集まりで「最先端の研究者に講演を頼もう」という話が出ました。思わず「最先端でない研究やってる人いるの?」と言って苦笑されたことがあります。「最先端科学」の反対は、一般向けに解説する「身の回りの科学」で、研究ではありません。研究者なら何かしら最先端のことをやっています。