飯間浩明(@IIMA_Hiroaki)さんの人気ツイート(いいね順)

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「その言い方は変だから使うな」と断定的に言うべきでないのは、各人の考える「変」がそれぞれ異なるからです。書き手は周囲の人やネット、辞書などの記述も参考にしつつ、最終的には自分の言語感覚に基づいて書く自由があるし、責任があります。
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「お母さん食堂」という商品名が、ただちに大きな問題を引き起こすとは言えません。むしろこの名称は、料理する母への懐かしい気持ち、親愛の気持ちを呼び起こします。その一方で、「母=料理する人」という鮮明なイメージを与えてもいます。この点で、確かに性役割の固定化に貢献しています。〔続く〕
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小4のさくらこちゃんの『自分ことわざじてん』は、彼女の素朴なことばが微笑、苦笑、爆笑を誘う作品集です。私は解説者として、彼女の投げる変化球をどう打ち返そうかと苦心しました。お勉強ふうの解説では、彼女の個性に負けてしまう。この「お墓参り」などは、うまく打ち返したと思うのですが。
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「大変参考になりました」はだめで「勉強になりました」が正しいとの主張があります。前者は「あなたの話は参考に止める」ことになってだめだと言うのですが、べつに全部あなたの話に従わなくたっていい。「先生のお話は、とても参考になります」(森博嗣『εに誓って』)のように普通に使われます。
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国語辞典の特長の違いが鮮やかに分かる良記事。『三国』を取り上げてくださったからというわけでなく、お勧めです。なるほど「文化」「平気」「桜」を引き比べてみればよかったのか。なお、どのアプリも23日までセール中とのことですよ。▽物書堂の辞書アプリはこれを買え(1) note.mu/nishinerima/n/…
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かつて「ペレストロイカ」は日常用語だったのです。語釈に「〔もとソ連での〕政治・経済・社会などの改革路線」とあるように、「わが社もペレストロイカが必要だ」のように一般に使われた。だから『三国』に載った。でも、今や「ペレストロイカ」はそういう使い方はしないので、削ることになりました。
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日向坂46の歌の「キュン」という擬態語は、少し前までは「胸が緊張感にキュンとひきしまる」など、胸が締めつけられる様子を広く指しました。今では特に好きな人や可愛いものに対する気持ちを表し、「萌え」に近い用法も。一方、この歌では、胸が締めつけられる切ない意味合いで使われていますね。
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このネット検索万能時代に、国語辞典の役割は何か。私なりに表現すると「忙しいあなたに、パッと見るだけでことばの要点を分かってもらう。もし使用上の注意があれば、それもついでに書いとく」ということです。「何が正しいか分からん」とモヤモヤする人に、頼ってもらえる存在になることです。
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Foorin「パプリカ」は子どもの歌のようですが、歌詞が比喩に満ちていて難しい。たとえば、〈夏が来る 影が立つ〉はどういう状況でしょうか。人影が立っているわけではなさそう。この直後に一番星を見つける描写があるので、夕方で長く伸びた影が、塀などに映って立ったように見えたのでしょう。
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リアルな若い世代では、そもそもどちらも言わず、「とんでもないです」と言う人が多いと思います。「暑いです」「面白いです」と同じく「とんでもない」に「です」をつけるのは簡単な敬語で、若い世代はもう「とんでもございません問題」をクリアしているともいえます。
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ウィキペディア「エモい」に、「『ヤバい』と似た使われ方をされる」と飯間が言っているような記述があります。「そんなこと言ったかな」と思いました。どうやら元記事をウィキペディアの書き手が誤読したようです。「ヤバい」は新用法にも「危ない」の意味が残っていて、「エモい」とは異なります。
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言語変化がどれほど「あらゆるところ」で進行するか、説明は難しいのですが、辞書の改訂作業が、1回の版で何千、何万か所に及ぶという事実は参考になるでしょう。ある名詞がいつのまにか副詞や形容動詞の性質を示すようになる、などの変化はしょっちゅうです。変化の結果は辞書で報告されます。
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ああ、正確には「お父さん」という読みが入ったのは、音訓表の「付表」のほうです。この「付表」には「田舎(いなか)」「五月雨(さみだれ)」など、公に使って差し支えない当て字・熟字訓の類がまとめてあります。
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自分の主張を信じてもらうのでなく、当然だと思ってもらうためには、当然の話を論理で結んでいくことが必要です。地球が丸いと主張するためには、「海上を近づいて来る船は、へさきから見えますよね」などと、相手が論理的に「それは当然だ」と判断できる話をしなければならない。これが私の理想です。
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伊藤園の新しいCMでは、若い女性が、晴れた茶畑に向かって「おーいお茶」と爽やかに呼びかけていました(この映像を探しているのですが、出てきません)。「おーい」と人を呼びつけていたことばが、お茶に爽やかに挨拶することばに変わったのです。商品名のコンセプトの鮮やかなシフトが行われました。
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これと似ているのに「お湯を沸かしたら蒸発してしまう、『水を沸かして湯にする』と言うべきだ」という冗談があります。こちらは結果としてできるもの(お湯)を「~を」で表しているんでしょうね。「セーターを編む」と言い、「毛糸を編んでセーターにする」とは言わないのも同じです。
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朝ドラ「#エール」(5/22)で早慶戦を体験した音が「鳥肌まで立っちゃった。すごかったね」。「鳥肌が立つ」は「本来、寒さや恐怖を表す」と言われますが、感動や興奮を表すことは、この頃(昭和1桁)にありえたのか。実は、この頃にもあったし、平安~鎌倉時代の『宝物集』にもあります。〔続く〕
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最後に「おふくろの味」について。これは、「お母さん」以外が作った食事、つまりインスタント食品などが普及した戦後に広まったことばですね。土井勝の死亡記事に〈「おふくろの味」という言葉を生み出し〉とありますが、土井が発案者だったかはともかく、ことばを広めたひとりだったのでしょう。
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「月がきれいですね」が夏目漱石の逸話だという説(これ自体はガセネタ)を放送した番組として2008年2月25日の日テレ「深イイ話」がすでに紹介されていますが(「君といると月がきれいですね」の形で)、私はその1週間ちょっと前にNHK「クイズモンスター」の例を採集しています。ご査収ください。
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さだまさし「奇跡」に〈僕は神様でないから 本当の愛は多分知らない〉と、愛を知らないようなことを歌うのは一種の反語法ですね。その直後に〈けれどあなたを想う心なら 神様に負けない〉と、最初に言ったことよりむしろ強いメッセージを投げかける。さだまさしさんのことばの魔術です。
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アマゾンでの筋違いな低評価のことばかり述べましたが、一方で高評価への感謝を忘れていました。「人は不快については話すが、快については話さない」という、私がよく言っていることの実例になってしまいました。『三省堂国語辞典』第8版は実に7割の5つ星評価をいただいており、深く感謝しています。
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▽山田詠美「快楽の動詞」(1992)〈別の言葉について考えようとひとりごちる私であった〉▽水上勉「茄子の花」(1993)〈私のひとりごちる言葉が〉▽小林信彦「イーストサイド・ワルツ」(1994)〈(まさか……)と私は独りごちた〉――これらはすべて「ひとりごちる」の例と考えられます。〔続く〕
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「あなたに仕事を頼もうかと思います。まだ最終決定でなく、別の人に頼むかもしれませんが、ご都合どうですか?」みたいな依頼が来たら、断ったほうがいいです。「あなたでなくてもいい」という相手とは、ベストの仕事はできません。よほどお金に困ったら分かりませんが、私は原則、断る方針です。
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何分以上を「座り込み」と言うかは現在の辞書にも書いていないので、修正ポイントにはならないと思います。手元の資料では1時間未満の例も結構あるようです。今回、「座り込み」はどういう意味で使えとも使うなとも私は言っていないので、もっとことばの意味を大切にせよとのご指摘には当惑します。 twitter.com/tanetokio/stat…
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RADWIMPS「大丈夫」の「僕にだけは見えて 泣き出しそうでいると」は、口頭語なら「泣き出しそうになっていると」などと長くなるところですが、音数の関係でこうしたのでしょう。「君の『大丈夫』になりたい」と「大丈夫」を名詞で使うところも自由さがあって、いい感じです。