76
自分を愛するとは、自分を甘やかすことではない。真に愛してくれる人が、必要なとき厳しくなるのと同じだ。自分を愛し始めると人は、自分と誰かを比べなくなる。他者を比較の視点で見なくなる。それだけで生きるのはそうとう楽になる。自分になるのに、どうして隣の人よりも秀でなくはならないのか。
77
アグネス・チョウ氏もジミー・ライ氏もともに釈放された。映像も確認したので寝ます。今日ばかりは、ゆっくり休んで欲しい。まずは、無事でよかった。
78
本は、師であり友でもある。生きる道に迷ったとき、歩き続ける勇気が湧かないとき、あるいは悲痛を噛みしめ語ることがままならないようなときでも、無言のまま寄り添ってくれるのは書物である。また、人生の危機だけだけなく、何気ないとき、共にあって、心に安らぎを覚えるのも師友である。
79
最近、再読してもっとも驚いたのがサン=テグジュペリの『星の王子さま』だ。これまでこの本を何度読み、何度語ったか分からない。だが、危機の時代を生きて、この物語が、作者の危機と時代の危機のなかで生まれた意味が実によく分かった。そして、この作品は死者たちへの贈り物でもあるのだ。
80
人生は短いと人は言うが、違う。人が時間を浪費し、人生をその質において「短く」しているのだ、と書いたのはローマ時代の哲学者セネカだった。確かに人生は様々な理由で短い。大切に思う人たちとの時間は、いっそう限られている。人はいつか逝くのではない。いつも思っているよりも早く逝くのである。
81
良い本があったので、アマゾンでレビューを書いた。同じ本で☆1つの評価をしている人がいたが、そこにあるのは良し悪しの判断ではなく、嫉妬や恨みに似た何かのように感じられた。他者を不自然に低く評価しない方がよい。その人はいつか気が付かないうちに、自分自身もそうした眼で見るようになる。
82
奇妙に聞こえるかもしれませんが人は、ある「解答」を手に入れたとき、大きく誤ることがあります。探求と探究を止めるからです。そのいっぽうで、真摯に問うとき、生きづらいのですが、大きな誤りからは遠いのではないでしょうか。「答え」は情報を与えてくれます。「問うこと」は叡知へと導きます。
83
一律10万円が支払われるなら電子マネーがよい、そう語った人も、よく勉強して、多くの人に「すごい」と言われてここまで来たのだろう。だが、苦しい人の痛みが、全く分からないのなら、どこからか人生をやり直した方がよい。こんな人が今、企業のトップにいるのだとしたら、経済は一層混乱するだろう。 twitter.com/gaitifuji/stat…
84
大型書店に行くといつも、もう本は書かなくてもよいかなと思う。本があまりに多いのだ。しかし小さな古書店で、意中の本に出会うと、自分がこの世をあとにしても、未知なる読者に会えるのは、本を書いたからではないか、と思い直している。
85
詩集は「読む」とは別の味わい方がある。「書き写す」ことだ。意中の詩集を一つ見つけ、ノートや原稿用紙に書き、「もう一冊」の詩集を作るのである。この素朴な営みに秘められているのは、単なる熟読を超えた、全身で「読む」という経験だ。そして、他者に書かれたとき新生する意味のうごめきだ。
86
今見ると、改めて恐ろしい。科学者が、良心の異名でもあった科学的精神を手放し、権力の熱波を浴びるとき。 twitter.com/news24ntv/stat…
87
人生の
浅いところでは
幸運な人たちの
姿が よく目に映った
できれば自分も
そうありたいと思ったから
でも 少し
深いところに行くと
真摯に
生きている人たちから
目が離せなくなる
そこにいるのは
人目も
気にせず
試練に立ち向かう
沈黙の勇者たち
涙も流さず
悲しみを生きる者たち
88
もしも意中の作家や芸術家がいて、その人の話や演奏を直に聴く機会があるなら、なるべく足を運んだ方がよい。もちろんZOOMでもかまわない。一度でよいので「時」を同じくする経験を持てれば、それが生涯の宝になる。学生時代、大学に行かずにそんなことばかりしていたが、その経験は今も消えない。
89
うまい文章とその人しか書けない文章は、全く違う。そして、世にあふれているのは「うまい文章」の方なのだ。だから、うまいだけの文章は消えて行く。「うまく」書いてはならない。それはいつも、誰かの言葉に似ているだけでなく、造られた、いのちの通っていない、ありふれたものに過ぎないからだ。
90
もう一言だけ。思うことを「うまく」書けても、あまり面白いことは起きません。「書く」醍醐味は、思ってもみないことを書き出す自分に驚くことにあるからです。「うまく」書く人は世に多くいます。「わたし」だけが書けるものを書きましょう。そうした言葉はどこか力強いものです。おやすみなさい。
91
自作が掲載された高校の教科書が2冊送られてきた。大学受験で国語があるところはすべて落ちたような人間の書いた文章が掲載されるのである。世の中、何があるか分からない。ついでに、毎年20~30校の高校大学の入試でも問題になっているのだが、書いている本人もじつは、答えは分かっていないのである。
92
私が弱いのかもしれない。だが、この記事全体にを流れている「ある人間が死んだ、これから注意します」という、トーンを認めるわけにはいかない。何かが根本的に間違っている。人は誰もが、誰かのかけがえのない存在である。「いのち」の本質は、一般化され、数量化されることを拒む。 twitter.com/nhk_news/statu…
93
どうして最も簡単な方法を選べないのだろう。「いのち」がかかっているのだ。政治家はもちろん、メディアの人たちも、こうした意味のない、権威主義的な悪習慣を断ち切るように動いて頂きたい。国は、外出を減らし、密集するのを避けろと言っているのではないのか。⇒this.kiji.is/62373357427566…
94
私が、「わたし」であろうとすることが、どうしてこれほど難しいのか。そう感じたところから文学も哲学も、そして現代では心理学も始まった。そして、「わたし」でありながら同時に「わたしたち」である道を探ったのが宗教だ。
95
人前で話す機会がある人は、見てみるとよいと思います。天才の誕生の秘密が、じつに素朴なところにあることが分かります。素晴らしい人は、いろんなところにいる。 twitter.com/brutjapan/stat…
96
本を読むのは、記述内容を理解することよりも、この世界、あるいは人間のありようを深く感じるためかもしれません。読書は、文字を通じてだけ行われるのでもありません。イメージや感触、直観による認識も意識下では生きています。よく理解できなかった、そんな本からも影響を受けるのはそのためです。
97
大切なことは
しばしば
ひとりのときに営まれる
本を読むこと
言葉を紡ぐこと
祈ること
そして
傷ついた
自分をいつくしむこと
98
詩を書き始めて驚いたのは、詩壇の人から強く批判され、詩の世界とは別なところで詩を愛するさまざまな人とつながりを持つことができたことだった。文壇、歌壇、俳壇など「壇」とは何と狭い世界だろう。芸術とは本来、そうした枠から自由になろうとする営みなのではないか。
99
祈っているだけではだめだ。何かをしなくてはならない、というような言葉をしばしば聞く。一面の真理だろうが現実はもう少し複雑で、祈るほかないときもあるし、祈ることから始めなくてはならないこともある。理知では不可能に感じられたことでも、祈りのうちにある決意が訪れることもあるのだ。
100
ひとは
悲しいから
泣くとは限りません
悲しみは むしろ
涙が涸れてから
深まるのです
ですから
忘れないでください
悲しみを生きるほかない
多くの人は
ほかの誰もが
気が付けない場所で 独り
心を震わせながら
生きているのです
だから簡単には
元気そうだね
なんて
言わない方がいいのです