初版道(@signbonbon)さんの人気ツイート(リツイート順)

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今日は芥川龍之介の命日「河童忌」です。昭和2年7月は連日猛暑で、今年も東京は真夏日でした。「僕は一番暑い日に死んで、みんなを困らしてやるんだ」と言っていた芥川は、天国で微笑んでいるでしょう。ちなみに内田百閒は「あんまり暑いので、腹を立てて死んだのだろうと私は考えた」と語っています。
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秋の読書週間が始まり、明日は多くの小中高の集会で校長が「読書の大切さ」について話すでしょう。しかし、その言葉に感化されて図書室に行く児童・生徒は極めて少ないのです。それよりも、担任教師がHRで「私のとっておきの1冊」を紹介する方が、はるかに子どもたちの興味・関心を惹くと思います。
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大学入学共通テスト国語(現代文・評論)に宮沢賢治『よだかの星』が登場しました。2つある文章の1つで、テーマは「食べることについて」ですが、内容はさながら『よだかの星』論。賢治の原文も引用されています。高校国語教育における近代文学の地盤沈下が心配な今、心強い出題(しかも評論!)でした。
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97年前の今日、関東大震災当日の芥川龍之介の様子。沈着冷静に見えますが、妻子をおいて外に飛び出し「赤ん坊が寝ているのを知っていて、自分ばかり先に逃げるとは、どんな考えですか」と文夫人に激怒され、「人間最後になると自分のことしか考えないものだ」とひっそり言ったことは記されていません。
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芥川龍之介の甘いもの好きは有名ですが、次の文章がよくそれを伝えています。「芥川氏はこゝまで一気に語つて菓子をつまんで口の中へ入れ、いつまでも口中菓子だらけにしてもがもがする。」(「芥川龍之介氏縦横談」大正8年) もがもがしている芥川が目に浮かんでくるようです。
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室生犀星の詩「本」。季節違いだけれど、美しい詩はいつ読んでも美しいです。そして「新しい頁をきりはなつ」(アンカットのこと)と書いた時、意識せずとも犀星は初版本を思い描いたに違いありません。それは、あるいは盟友・萩原朔太郎の詩集だったのでしょうか。この詩に心から共感できて幸せです。
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漱石も谷崎も芥川も川端も太宰も三島も、多くの近代作家のかなりの数の作品は古典の素養がないと面白さが半減するので、「近代文学は本当に必要なのか」と問われているのに近いと思います。 #古典は本当に必要なのか
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太宰治の墓前にいます(お供え物は『桜桃』初版本)。桜桃忌に来たのは久しぶりですが、日曜日ということもあってか既に混雑。もちろん、向かいにある没後100年の森鷗外の墓にも手を合わせました。尊敬する鷗外を喧騒に巻き込んで、太宰は恐縮しているでしょう。#桜桃忌
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芥川龍之介は、未来の妻である塚本文に微笑ましいラブレターを何通も送りましたが、個人的には「この頃ボクは文ちやんがお菓子なら頭から食べてしまひたい位可愛いい気がします。嘘ぢやありません」が秀逸だと思います。「お菓子」というところが、いかにも甘党の芥川らしいですね。
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恋愛小説に対する批判は昔からあったようですが、泉鏡花は「恋愛小説を陳腐だと云つて攻撃する者がありますが、地球の形だつて何時も円いではありませぬか」と反論しました。さすがは鏡花小史、「地球の形」を例に挙げるとはスケールが違います。
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梶井基次郎に『伊豆の踊子』の校正をしてもらった川端康成は、自分の作品が裸にされた恥かしさを感じ、「彼は私の作品の字のまちがひを校正したのでなく、作者の心の隙を校正したのであつた」と語っています。「作品のごまかしはすつかり掴んでしまつた」とも。川端にこう言わせるとはさすが梶井です。
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「人生は狂人の主催に成つたオリムピツク大会に似たものである。」 こんな言葉を百年近く前に残した芥川龍之介は、やはり天才です。
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菊池寛は、横光利一の葬儀で弔辞を読んだ2か月後の昭和23年3月6日、狭心症で急死しました。葬儀委員長は久米正雄。菊池の恩に何度も謝する川端康成の弔辞は、「私は菊池さんの生前一度も先生と呼んだことがありませんでしたのでここでもやはり菊池さんと言わせていただきました」で結ばれています。
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本日、川端康成や三島由紀夫など多くの作家が愛し、檀一雄『火宅の人』の舞台となった御茶ノ水の山の上ホテルが新装オープンしました。超絶美味しいマンゴープリンも健在。もちろん綺麗になったけれど、落ち着いた雰囲気はそのまま。オリンピックもインバウンドも無縁なところが大きな魅力なのです。
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川端康成『少年』(新潮文庫)の見本が届きました(28日発売)。巻末に宇能鴻一郎さんのエッセイ「川端康成の少年愛」を収録。この小説を読むために、わざわざ図書館で全集を借りる方が多くいることを知り企画したので、文庫本にできて本当に嬉しいです。ノーベル賞作家の絶妙な筆致を堪能してください。
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初版道の発案により川端康成『少年』(新潮文庫)が3月28日に発売されます。今年、没後50年を迎えた川端の少年愛に溢れる名作の初文庫化。巻末エッセイの宇能鴻一郎さんも推薦しました。ちなみに、新潮社からのお礼は当該文庫本3冊とのこと。さすがは文芸の新潮、実に太っ腹で感謝の言葉もありません。
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世の中は偏見に満ち溢れているもので、夏目漱石が好きと言って真面だと思われ、谷崎潤一郎が好きと言って変態と疑われ、太宰治が好きと言って軟弱だと批判され、三島由紀夫が好きと言って右翼と誤解を受けてきました。しかし泉鏡花が好きと言っても人はまず無反応です。多分よく知らないのでしょうね。
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高校国語教師の知人によると、『羅生門』「下人の行方は、誰も知らない」の続きを考える問いに、「下人は反省して老婆に着物を返した」と答える生徒が最近増えたそうです。初出誌で「下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつゝあつた」と書いた芥川龍之介が知ったらさぞ驚くでしょう。
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一般に古本屋で聞かない方がよい(聞いてはいけない)質問 ①「本は消毒してありますか?」 ②「この署名は本物ですか?」 ③「もっと安くなりませんか?」 ④「何でこんなに高いんですか?」 ⑤「仕入れ値はいくらですか?」 ⑥「いつ入荷しますか?」 店によっては怒られたり、出入り禁止になります。
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将棋をさす作家たち。太宰治vs井伏鱒二、川端康成vs横光利一、江戸川乱歩vs吉川英治です。
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昭和2年の今日、芥川龍之介の葬儀がありました。友人総代の弔辞を読んだ菊池寛は、溢れる涙を抑えられず「友よ、安らかに眠れ!」の後は言葉になりませんでした。当時の新聞には「氏は遂に慟哭しばし霊前に泣き伏して仕舞つた」と。近代作家の葬儀でこれほど満場が涙で包まれた瞬間を他に知りません。
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数年前、ある高校国語教科書に江戸川乱歩「押絵と旅する男」が採録され拍手喝采を送ったものの、すぐに消えました。理由は高校の先生からの評判が良くなかったとのこと。教科書教材の選定では常に教師の意見が重視されますが、生徒の意見も「教育現場の声」だということを、忘れないでほしいものです。
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太宰治くらい行状が批判される作家も少ないですが、「谷崎も大学除籍だし、啄木も借金まみれだし、芥川も妻以外の女性がいたし、有島も心中しています」と擁護する人には、「全部当てはまるのは太宰だけ」などと混ぜ返さないで、「小説家は小説の魅力がすべてだから気にしないで」と言ってほしいです。
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『140字の文豪たち』(秀明大学出版会、税込千円)が完成しました。来週末から発売ですが、小出版社による少部数の本なので、紀伊國屋書店(全国に配本)と神保町の東京堂書店以外は大きな店舗しか置かれません。お近くの書店にない場合は、お手数をかけますが店舗かネットでご注文いただければ幸いです。
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芥川龍之介は大正時代に文壇で流行ったスポーツやゲームが嫌いでしたが、菊池寛の家で川端康成とピンポンをさせられる羽目に。どちらも非常に下手だったので、中々勝負がつかなかったそうです。芥川と川端がラケットを持つ姿を想像するだけで可笑しくなります。画像は久米正雄のピンポン姿であります。