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新型コロナウイルスに最高の警戒が必要なのは当然ですが、過度のストレスは免疫力を弱めるので注意してください。「恐るべき神経衰弱はペストよりも劇しき病毒を社会に植付けつつある。」夏目漱石の言葉です。
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3月1日は芥川龍之介の生誕日であると共に親友久米正雄の命日です。芥川が自死に際し「或旧友へ送る手記」を書き「或阿呆の一生」の原稿を託した久米が、脳出血で倒れたのは昭和27年2月29日。芥川の誕生日を待っていたかのように、翌1日午前0時30分(小谷野敦『久米正雄伝』による)に亡くなっています。
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昔から初版本で読むと、復刻本で読むよりも目が疲れませんでした。本への愛着の差かと思っていたのですが、かつて印刷所を営んでいた方から「活版は微妙な紙の凹凸と、僅かな文字のかすれがあるので目に優しいんですよ」と伺い納得。活版の魅力は陰影や温もり・懐かしさだけではないことを知りました。
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家蔵の島崎藤村が菊池寛に送った書簡(昭和18年1月)がNHKのニュースに登場しました。藤村と徳田秋聲の深い親交がよくわかります。ちなみに、二人に賞金を贈ることを菊池と相談したのは武者小路実篤でした。
島崎藤村が菊池寛に宛てた直筆の手紙見つかる | NHKニュース www3.nhk.or.jp/news/html/2020…
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佐藤春夫の名言。「若さは、夢であり、花であり、詩である。永久の夢といふものはなく、色褪せない花はない。また詩はその形の短いところに一層の力がある。若さも亦、それが滅び、それがうつろひ、それが長くないところに一しほの魅力がある」。若さの魅力をこれほど的確に表現した言葉を知りません。
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留年した学生に「あの夏目漱石だって、落第して進級できなかったことがあるんだよ」と言って励ますのは結構ですが、漱石がその後一念発起して、卒業まで首席を通したことも伝えるべきだと思います。
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ご依頼を受け、(仮称)芥川龍之介記念館の令和4年度開設に向けて、色々とご協力することにしました。芥川の名を冠する初めての記念館が、彼や彼の文学を愛するすべての人の聖地になるように、微力ですが努力します。
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芥川龍之介に作家を食物に見立てた随筆があります。菊池寛「あの鼻などを椎茸と一緒に煮てくへば、脂ぎつてゐて、うまいだらう。」谷崎潤一郎「西洋酒で煮てくへば飛び切りに、うまいことは確である。」など皆褒められて(?)いる中で、なぜか室生犀星だけは「干物にして食ふより仕方がない。」でした。
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大学入学共通テスト初日の近代作品
①国語の評論文の小問に芥川龍之介『歯車』が登場
②国語の小説文に加能作次郎『羽織と時計』が登場
③日本史の近代女性史に福田英子『妾の半生涯』が登場
①に注目が集まるのは当然ですが、②と③の渋さに感動します。
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太宰治は音痴だったようで、知人に「先生のお歌には、かいもくリズムといふものがありません。密林のなかでライオンが吠えてゐるやうなものです」と指摘され、「さては見破られたか。何をかくさう。俺は音痴なのだ」と認めたそうです。どんなに音痴でもいいから太宰の歌を聴いてみたかったと思います。
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「親の蔵書数と子どもの学力は比例する」という説が定期的に話題となりますが、過剰な蔵書はむしろ子どもの学力に悪い影響を与えるかもしれません。廊下・階段といった共用スペースまで本が侵食すると、親(ほとんど父親)と共に本を憎むようになるからです。そして親が死んだらすぐに本は処分されます。
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コロナ禍で人はどう生きていけばよいのか。次の言葉が心に響きます。「上のそらでなしに、しっかり落ちついて、一時の感激や興奮を避け、楽しめるものは楽しみ、苦しまなければならないものは苦しんで生きて行きませう。」死の10日前に宮沢賢治が書いた、現存が確認されている最後の手紙の一節です。
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「小説の神様」と称され、同時代の作家はもちろん、後世の作家にも絶大な影響を与えた志賀直哉。その没後50年に、出版社が企画や特集を組むこともほぼなく、コロナ下とはいえ大きな展覧会もありませんでした。昨年の三島由紀夫との比較は無理ですが、芥川龍之介や谷崎潤一郎の時と比べても気の毒です。 twitter.com/signbonbon/sta…
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どの自治体も今年度は税収不足なので、来年度の公的な文学館・記念館の予算はいずこも厳しくなります。そこである文学館の学芸員の方が館独自のクラウドファンディングを提案したら、役所の人から「コロナ禍の今、文化的な事業は後回し」と言われたそうです。誠に文化果てる国を実感する話であります。
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