初版道(@signbonbon)さんの人気ツイート(リツイート順)

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『文藝別冊 永遠の太宰治』(河出書房新社)に「初版本『晩年』をめぐる物語」を寄稿しました。土井雅也さんの「資料で読み解く太宰治の生涯」、斉藤壮馬さんのインタビュー「朗読する太宰治」など、とても読み応えがあります(中の画像のアップは版元の許可を取得済)。5月11日発売です。
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今は昔、ある学生に「ら抜き言葉は使わない方がいいよ」と言ったら、「でも太宰治も使っていますよ」と「道化の華」の一節を指摘されました。太宰で返してくるとは憎いですね(画像は『晩年』より当該箇所)。
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新型コロナウイルスに最高の警戒が必要なのは当然ですが、過度のストレスは免疫力を弱めるので注意してください。「恐るべき神経衰弱はペストよりも劇しき病毒を社会に植付けつつある。」夏目漱石の言葉です。
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萩原朔太郎は谷崎潤一郎の妹(末)とそれとなく見合いをしたものの、その先に進みませんでした。佐藤春夫によれば、朔太郎は「ドイツの少女のやうな趣は悪くなかつたが、何しろあまりに潤一郎と似てゐるのがいやであつた」そうです。確かに子どもの頃の写真ですが、面差しが谷崎に似ている気がします。
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3月1日は芥川龍之介の生誕日であると共に親友久米正雄の命日です。芥川が自死に際し「或旧友へ送る手記」を書き「或阿呆の一生」の原稿を託した久米が、脳出血で倒れたのは昭和27年2月29日。芥川の誕生日を待っていたかのように、翌1日午前0時30分(小谷野敦『久米正雄伝』による)に亡くなっています。
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昔から初版本で読むと、復刻本で読むよりも目が疲れませんでした。本への愛着の差かと思っていたのですが、かつて印刷所を営んでいた方から「活版は微妙な紙の凹凸と、僅かな文字のかすれがあるので目に優しいんですよ」と伺い納得。活版の魅力は陰影や温もり・懐かしさだけではないことを知りました。
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家蔵の島崎藤村が菊池寛に送った書簡(昭和18年1月)がNHKのニュースに登場しました。藤村と徳田秋聲の深い親交がよくわかります。ちなみに、二人に賞金を贈ることを菊池と相談したのは武者小路実篤でした。 島崎藤村が菊池寛に宛てた直筆の手紙見つかる | NHKニュース www3.nhk.or.jp/news/html/2020…
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佐藤春夫の名言。「若さは、夢であり、花であり、詩である。永久の夢といふものはなく、色褪せない花はない。また詩はその形の短いところに一層の力がある。若さも亦、それが滅び、それがうつろひ、それが長くないところに一しほの魅力がある」。若さの魅力をこれほど的確に表現した言葉を知りません。
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檀一雄の『花筐』の装丁者は佐藤春夫ですが、表紙の絵柄が中々決まりません。そこで同席した太宰治が「花だから蝶。先生、蝶はどうかしらん・・・」と。春夫が「うむ。蝶がいいね。蝶を描こう」と応じ、この絵柄になりました。なお絵が完成したのに檀は取りに行かず、春夫は太宰に文句を言っています。
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留年した学生に「あの夏目漱石だって、落第して進級できなかったことがあるんだよ」と言って励ますのは結構ですが、漱石がその後一念発起して、卒業まで首席を通したことも伝えるべきだと思います。
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大正時代の「文壇人女見立之図」です。文豪を女性に見立てることは昔から行われていました。武者小路実篤ー尼僧、田山花袋ー女流教育家、島崎藤村ー聖母マリア、正宗白鳥ー隠居、久米正雄ーアナウンサ(モダン・ガール)、久保田万太郎ー下町娘、徳田秋聲ー未亡人とあります。あまりピンと来ませんが・・
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芥川龍之介の葬儀における泉鏡花の弔辞とその下書きです。夥しい修正が、年下ながらも心から敬愛する芥川への別れの言葉に、鏡花が心血を注いだことを物語っています。「生前手を取りて親しかりし時だに、その容を見るに飽かず、その声を聞くをたらずとせし」まさに恋人の死を悼むが如しです。
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凄い写真集が出ました。『素顔の文士たち』(田村茂、河出書房新社)です。太宰治の「最期の27枚」を初めて完全収録。鎌倉文庫前の川端と久米、猫と戯れ破顔一笑する若き三島、煙草をくゆらす春夫、実篤の絵を飾った光太郎、息子を肩車する安吾など81人が登場。本棚がたくさん写っているのも嬉しいです。
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ご依頼を受け、(仮称)芥川龍之介記念館の令和4年度開設に向けて、色々とご協力することにしました。芥川の名を冠する初めての記念館が、彼や彼の文学を愛するすべての人の聖地になるように、微力ですが努力します。
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梶井基次郎を見舞った三好達治は余命いくばくもないことを悟り、淀野隆三らと小説集の出版に奔走。彼らの友情により、梶井は生前に自著を手にすることができました。そして、その『檸檬』は「君の本が出る。永久の本、確かにこれは永久に滅びない本だ」と三好が語った通り、昭和の古典となったのです。
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夏目漱石とシャーロック・ホームズが殺人事件に挑む画期的な小説が、島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』(昭和59年、集英社)です。漱石とホームズの性格が実によく描かれ(特に初対面のシーン)、文庫本で読めます。人に小説を薦めることは滅多にありませんが、2人を愛する人に読んでほしい傑作です。
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芥川龍之介に作家を食物に見立てた随筆があります。菊池寛「あの鼻などを椎茸と一緒に煮てくへば、脂ぎつてゐて、うまいだらう。」谷崎潤一郎「西洋酒で煮てくへば飛び切りに、うまいことは確である。」など皆褒められて(?)いる中で、なぜか室生犀星だけは「干物にして食ふより仕方がない。」でした。
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大学入学共通テスト初日の近代作品 ①国語の評論文の小問に芥川龍之介『歯車』が登場 ②国語の小説文に加能作次郎『羽織と時計』が登場 ③日本史の近代女性史に福田英子『妾の半生涯』が登場 ①に注目が集まるのは当然ですが、②と③の渋さに感動します。
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太宰治は音痴だったようで、知人に「先生のお歌には、かいもくリズムといふものがありません。密林のなかでライオンが吠えてゐるやうなものです」と指摘され、「さては見破られたか。何をかくさう。俺は音痴なのだ」と認めたそうです。どんなに音痴でもいいから太宰の歌を聴いてみたかったと思います。
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さいたま文学館の開館25周年記念特別展「永井荷風」(9月17日~11月27日)の監修をします。複製・復刻の展示は全てNGという提案にOKが出たので引き受けました。伝説の発禁本『ふらんす物語』の5冊展示(過去最多は2冊)や新出自筆資料、「文豪とアルケミスト」とのコラボもあります。どうぞお楽しみに。
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「親の蔵書数と子どもの学力は比例する」という説が定期的に話題となりますが、過剰な蔵書はむしろ子どもの学力に悪い影響を与えるかもしれません。廊下・階段といった共用スペースまで本が侵食すると、親(ほとんど父親)と共に本を憎むようになるからです。そして親が死んだらすぐに本は処分されます。
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コロナ禍で人はどう生きていけばよいのか。次の言葉が心に響きます。「上のそらでなしに、しっかり落ちついて、一時の感激や興奮を避け、楽しめるものは楽しみ、苦しまなければならないものは苦しんで生きて行きませう。」死の10日前に宮沢賢治が書いた、現存が確認されている最後の手紙の一節です。
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「小説の神様」と称され、同時代の作家はもちろん、後世の作家にも絶大な影響を与えた志賀直哉。その没後50年に、出版社が企画や特集を組むこともほぼなく、コロナ下とはいえ大きな展覧会もありませんでした。昨年の三島由紀夫との比較は無理ですが、芥川龍之介や谷崎潤一郎の時と比べても気の毒です。 twitter.com/signbonbon/sta…
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どの自治体も今年度は税収不足なので、来年度の公的な文学館・記念館の予算はいずこも厳しくなります。そこである文学館の学芸員の方が館独自のクラウドファンディングを提案したら、役所の人から「コロナ禍の今、文化的な事業は後回し」と言われたそうです。誠に文化果てる国を実感する話であります。
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萩原朔太郎が与謝野晶子に贈り、晶子が自宅の書庫から持ってきて佐藤春夫に渡し、春夫がその場で読み耽った『月に吠える』初版原本です。一読した春夫は「神経で詩を作ろうとしているらしい」と感じたと回想しています。今からちょうど100年前の話です。