福田家代々の墓は国東半島の海辺にあります。一昨年、父が白寿で往生したので納骨室を開くと内部の暗闇に無数のオカチョウジがいて、祖先の骨を殻の材料としているようでした。周囲の落葉間にはナタネガイ属や準絶滅危惧のウメムラシタラもいました。私もいずれ、ここで陸貝たちの殻になるのでしょう。
先月イタボガキに邂逅したラ・ムー大安寺店に昨夕寄ったら、香川県産ベイカ4個体が見切品3割引で300円でした。この種は国内の分布が瀬戸内海・有明海等内湾に限られ、環境省海洋生物RLに載った唯一のイカでもあるので前から気になっていたものの、標本もなく知識も乏しいのでこの機に購入しました。…
岡山県の貝類で忘れてはならないのは、殻は二枚貝状なのに実は巻貝のタマノミドリガイ。1959年、岡山大玉野臨海実験所の川口四郎教授(当時)が初めて生貝を報告して世界中を驚かせました。触角も眼も歯舌もあり、殻頂の胎殻は巻いているのでれっきとした巻貝です。潮下帯のイワヅタ類に着生します。…
しかし殻は一見二枚貝そのもので、川口先生が生貝を発見するまではイガイ科などに近縁とされてきました。肉抜きすると軟体部の中央あたりに「貝柱」(閉殻筋、他の巻貝の殻軸筋が変形したもの)があり、これまた二枚貝そっくりです。ただし殻頂附近に靭帯はあるものの鉸歯はありません。…
原記載は岡山大理学部生物学科の紀要というマイナー極まる媒体にひっそり掲載されましたが、何とこれをCox & Rees (1960)がNatureに長々と紹介し、以後世界各地から近縁種の報告がNatureに8回も載る事態となりました。真に価値ある報告はどこに書こうと読まれる好例です。... doi.org/10.1038/185749…
さらにKeen & Smith (1961)はこの類の再検討論文を公表し、その緒言では、タマノミドリガイの生貝発見は当時「20世紀貝類学最大の発見」と称された単板綱ネオピリナに匹敵するとまで讃えられています。画像は川口先生がKeen博士へ提供し、後に何度も転載された写真です。… biodiversitylibrary.org/page/15772457
なお名前に「タマノ」とあるのでタイプ産地も玉野市と誤解されがちですが、実際は香川県高松市小槌島・坂出市室木島と岡山県倉敷市堅場島の3箇所なので注意が必要です。瀬戸内海では今も場所によっては多産しますが、個体群の動態が精査されたわけではなく、環境悪化の影響もないとは断定できません。
いかん出遅れた、すまん芳賀君! エントツガイは彼が最も得意とするフナクイムシ科です。異様に長い棲管(殻ではない)が時折売られていますがそれらはフィリピンなど外国産で、まさか国内にもいたとは驚愕。同じ科の他種は木材に穿孔しますが、この種はマングローブの泥底に埋もれているとのこと。 twitter.com/nhk_news/statu…
巻貝の殻には右巻と左巻があります。殻口を手前に向けて右に位置するなら右巻、逆なら左巻です。両者は鏡像体なので1:1で現れても変ではないのですが、実際は巻貝の種の約9割が右巻で、左巻はキセルガイ科などごく少数です。この偏りは大きな謎で、かのスティーヴン J. グールドも挑み、日本では当会… twitter.com/100legs_NP/sta…
#ハチSOS #拡散希望 今朝刊行!LNG火力発電所建設問題で渦中にある、広島県竹原市ハチの干潟と同地の生物の自然誌をまとめた書籍です。現地の最新情報、分類群ごとの解説に加えて干潟環境の特性や保全など普遍的な記述も満載の必携書。詳しくは下記サイトへ:amazon.co.jp/dp/4802082584/… @AmazonJP
素晴らしいです。泥干潟に棲むドロアワモチ科の種の多くは自らすごい勢いで穴を掘って数十cmも潜り、この行動は例えばドロアワモチ等ではよく知られています(室内飼育でも観察できます)が、ヤベガワモチは出逢える機会自体が他種より圧倒的に少ないので、潜る様子を捉えたこの動画は貴重と思います。 twitter.com/Hy_minutus/sta…
著名・美麗な種は厚遇されるが、地味な無名の種は軽視される。画像は97年に豪州で開催された無脊椎動物多様性保全シンポ「The Other 99%」の趣旨イラスト。細々とした生き物たちが束になってもコアラ1頭に歯が立たないという風刺です。このシンポを主導したのは「貝人のラスボス」Ponder博士でした。
この絵のコアラは「人にとって都合の良い生物」の象徴だから、役に立つ・食える種などにも置き換え可能です。でも生物多様性の定義の一つは「地球上の全ての種」であり、役に立とうが立つまいが、害をなそうが本来は関係ない。役に立たんよりは立つ方がいいかもしれませんが、それはまた別の議論です。 twitter.com/SocStudMollDiv…
【拡散希望】芳賀副会長から緊急のお願いです。米国の有力な海洋科学掘削船が近々廃船となりそうで、標本の年代決定等にも影響する危機のため、船の継続または後継船の嘆願書署名を募集中です: j-desc.org/us-soda_petiti… 〆切は明日ですが、よろしければ署名(1分もかかりません)をお願いします。
イボウミニナ! 本州〜九州のウミニナ属3種のうち際立って稀少性の高い種です(環境省RLで絶滅危惧II類)。今なおこれほど大量に採れるならその場所には生物多様性の極めて高い干潟が広がっている可能性が高く、他の稀少種の産出も期待できます。この状態が今後も維持されるよう願ってやみません。 twitter.com/yoshiike_group…
16日の眼遊さん@ganyujapanによる万バズツイート「アワビの顔」について、朝日新聞withnewsから解説を依頼され、先ほど記事が配信されました。この機会に、様々な貝類それぞれの個性的な「顔」にご注目いただければ幸いです。 @withnewsjp withnews.jp/article/f02207…
77年前の今日8月11日、昭和天皇の前で東條英機が、ポツダム宣言受諾の是非を巡ってなぜかサザエに言及しました。その遥かなる反映として、サザエは2017年に新種記載されるに至ったのです。来週木曜(18日)19:30からのNHK #ダーウィンが来た 夏休みスペシャルでも、サザエの一件が紹介される予定です。 twitter.com/SocStudMollDiv…
人は生まれた後、どんな場面で「かたつむり」の存在を最初に認知するのでしょう? 私の場合は5歳の時、実家の前に転がっていたものを見たのが最古の記憶ですが、45年後、その種は新種とされました。18日の #ダーウィンが来た にも登場予定のチョウシュウシロマイマイです。… doi.org/10.1080/132358…
先ほど、サザエ新種記載論文が全文フリーアクセスとなりました! PDFも入手可。RTの冒頭ツイートのリンクから行けます。ここ数日の反響(altmetricsがまさかの4桁到達)を受けての出版元による計らいで、5年前・昨年に続き3回目。多分以前と同様、1ヶ月程度の期間限定でしょう。ぜひご利用下さい。 twitter.com/SocStudMollDiv…
#ダーウィンが来た 再放送もご視聴ありがとうございました。ヒミツナメクジかわいいとの声が多数届いていますので、未公開写真をご披露します。2009年6月与那国島産、深夜に海蝕洞で見つけてその夜のうちに撮影。与那国では私が知る限り唯一の発見個体です。2枚目の少し頭を擡げる仕草も愛らしいです。
シャコが激減なら、その腹面へ特異的に付着して生きる二枚貝コフジガイは尚更危機的な状況でしょう。前世紀までは、鍋で瀬戸内海産シャコを茹でると底へこの貝が多数転がっていたものですが、今や絶滅危惧種です。画像は2008年岡山市内のスーパーで購入したシャコ10個体中、1個体にのみ見られた個体。 twitter.com/KagawaTimes/st…
波部忠重先生は晩年重度の白内障+緑内障で、日常生活にも苦労されていた反面、僅か数mmのカワザンショウ科を肉眼で瞬時に正確に同定され、当時の私は信じられない思いでしたが、今や私も酷い老眼で同じ状態になりました。同定は脳内に予め備わった情報との照合なので、視力は限定的でも可能なのです。 twitter.com/oikawamaru/sta…
これはもっと周知・強調されるべきと思います。図鑑はあたかも「一家に一冊の決定版」として過度に信頼される傾向がありますが、どんな場合も完璧などあり得ないのです。他の分類群の事情は存じ上げませんが、貝類の「著名な」図鑑は大半のページに、何らかの点で事実に反する点を含むのが現状です。 twitter.com/Baboon_sai/sta…
オウムガイは一度だけ肉抜きしました。某博物館の生体展示個体が天寿を全うし、たまたまそこへ博物館実習に行っていた弊学の学生がご遺体を冷凍して、最終的に私が引き取ったのです。常温でしばし放置して解凍するだけで、簡単にごぼっと抜けました。内臓塊は螺旋状でなく、殻の奥まで届いていません。 twitter.com/tmss31/status/…
被災地の長大な防潮堤全てを無下に否定するつもりはないですが、地元の意向を県や国が押し切り、単調なコンクリで潰されたままの自然海岸も多いのです。津谷川は環境補償が奏功した貴重な例で、今後もお手本にすべきでしょう。画像は一昨年の同地にいたヒラドカワザンショウと私(阿部拓三先生撮影)。 twitter.com/SocStudMollDiv…