中野智之・古川邦之・芳賀拓真・福田宏:マルタニシの「自動脱殻」. マルタニシ生貝が飼育下で突然殻を脱ぎ捨てたので,この現象を自動脱殻と命名し,同様の既存事例を回顧しつつ原因や意義を考察しました。もしこれに再現性があるなら「肉抜きの煩雑さを軽減する福音」とも論じた爆笑必至報告です。
【SOS】広島県竹原市「ハチの干潟」の危機! 当地は瀬戸内海全体でも屈指の生物多様性を誇り、環境省レッドリスト掲載種も66種確認されています。よりによってそこへ、液化天然ガス火力発電所と関連施設の建設計画が急浮上しました。しかも、環境影響評価もなされないまま着工されようとしています。
建設がなされれば同地の自然環境と生物多様性が大きく損なわれる可能性は高く、保全上の観点から看過できません。そこで当会の自然環境保全委員会では他の4学会と連名で、行政及び事業者((株)JBGエナジー)に対し、環境影響評価の実施や事業の見直し等を求める要望書を提出する方向で調整中です。
現時点での情報は、当会自然環境保全委員会の安渓遊地委員長によるブログに明快にまとめられています。併せてご覧ください。 ankei.jp/yuji/?n=2523 当会では今月中に開催される総会において、会全体としてどのように保全運動に関わるか、議論がなされる予定です。今後の続報にもご注目下さい。
同地で確認された貝類の環境省RL掲載種 絶滅危惧I類:イソチドリ、イセシラガイ、ヒナノヅキン、オキナノエガオ、イソカゼ他3種 絶滅危惧II類:サナギモツボ、ヤセフタオビツマミガイ、シナヤカスエモノガイ他10種 準絶滅危惧:ナギツボ、エドイトカケギリ、マゴコロガイ他26種 情報不足:ウズツボ
つい先日公表された「88年ぶりサナダユムシ本体の採集成功」の報告も、この干潟で採集された標本を用いてなされたものです。 kyoto-u.ac.jp/ja/research-ne…
#ハチSOS 遂にラスボス降臨! オキナノエガオ。環境省RLで絶滅危惧I類。ハチの干潟の全貝類中で最も稀少性の高い種。最初にあえて殻(岡山県玉野市産)だけ挙げます。殻長約8 mm。二枚貝類なのに紙の如くペラペラに薄くて脆く、生時はどこに軟体が収まっているのか不思議なほど平たい板状。和名は...
おおお、これは正真正銘、日本在来のハマグリ! シナハマグリやチョウセンハマグリなど同属の別種ではない。しかもこの大きさだと相当お高そう。産地が知りたい。やはり熊本か杵築あたりだろうか? 在来ハマグリの保全はまさにSDGs的課題です。 twitter.com/chiakikuriyama…
昨晩、当会会員のumiroroさんが挙げられたクロガシラコシボソクチキレツブは、これまで実物を見た人が世界で数人しかおらず、この名前に同定できる人となると更に少ないウルトラレア種です。しかもこの種には知られざるエピソードがあるので、この機会に簡単に紹介します。 twitter.com/sitokairui/sta…
先ほど社寺林さん@Amphidromusと微小陸貝の肉抜きの情報交換をしていて、また飯島元会長の下記ツイートなど拝見しつつ、貝人にとって肉抜きは必須キーワードと再認識しました。因みに「貝人」とは、貝類に強い愛着と継続的な執着を併せ持つ研究者+愛好者の総称で、茶人・歌人・俳人等に似た響き.. twitter.com/a_iijimaa1/sta…
貝人は洋の東西と時代を問わず存在し、一つの社会を形成するため、必然的に独自の文化と多くの流儀・作法・unwritten rulesが存在します。その典型例が肉抜きで、曰く「肉抜きは貝人の嗜み」。肉抜きとは、殻を持つ貝類の生きている個体に対し、殻と軟体部(肉)の両方を、共に無傷で分離する手法の...
ことです。本来は貝殻の造形美に魅せられた蒐集家が伝承してきたもので、生貝を死亡後もそのまま放置すると悪臭が酷く、黴や様々な昆虫などを呼んで標本を劣化させるため、これを避けるべく完全に肉を除去するのが目的でした。逆に研究上はむしろ軟体部の検討が必須であり、この場合も殻と軟体部両方..
を保存するのが理想的です。特に、滅多に出逢えない稀少種など、僅かな個体数で結果を出さねばならない時、肉抜きは大きな援けとなります。生きたまま殻ごとホルマリンやアルコールに浸けてしまったらもはや軟体は抜きにくくなるので、いずれは殻を塩酸で溶かすか、物理的に破壊せねばなりません。...
いわば「殻を取るか肉を取るか」のジレンマです。しかも厚い殻と蓋を持つ種の場合、固定液が中まで浸透せず軟体が腐ることすらあり、これだと殻も肉も両方失うことになります。肉抜きすればこの問題は一挙に解決できるのです。このため日本では、貝殻愛好者のみならず研究者間でも、肉抜きは日常的な..
ルーティンとして定着しています。その方法は単純で、生貝を茹でるなどで熱を加え、殻から軟体部を引き離すのです。有殻貝類の軟体部は、一部分に集中した筋肉によって殻と繋がっているので、加熱してこの筋肉を硬化させ、殻から外してしまえばよいわけです。煮沸または焼いたサザエやアサリなどの..
肉が難なく殻から外れるのと同じ理窟です。ただ、ここで常に貝人の前に立ちはだかる大きな問題は、肉抜きが容易な種とそうでない種が存在することです。二枚貝類なら単に二枚の殻を開かせれば何とかなりますが、巻貝の、しかも細長くて巻数の多い種はそうはいきません。手荒に茹でて引っ張ると肉が..
途中で切れ、殻の奥に残ってしまいます。また異なる種ごとに、大きさや形によらず、最適な茹で時間と温度とが儼然と存在します。むしろこの最適条件を見抜くことこそが、肉抜きの成否を決定すると言ってよいでしょう。中には特殊な工夫や道具を必要とする種もあります。細長くて巻数の多い巻貝は、..
筋肉は外せたとしても単純に引っ張ると力が奥まで伝わらないので、殻頂近くにケガキ針という硬い針を用いて、肉眼で見えないほどの小さな孔を開けます。この孔から注射器などで水を勢いよく注入すれば、軟体は殻口方向へ降りてくるのでやがて無傷で取り出せるわけです。日本の貝人は昔から、...
肉抜きだけで延々何時間も熱い議論が続くのは、ごく普通に見られる光景です。 (長くなりすぎたので、別のスレッドにつづく)
このような技術開発に余念がありません。散々苦労して入手した激レア種の虎の子1個体に対し、気合を入れて肉抜きに臨んだにもかかわらず、無惨に失敗した時以上の絶望はこの世にないからです。貝人が学会等で集まると、「遂に俺はあれを抜けた」だの、「頼むからあれの抜き方を教えてくれ」だの、...
肉抜き話の続き。先にご紹介した通り、我々日本の貝人にとって肉抜きは日常の一齣であり、改めて説明するまでもない当たり前のこととして受け止められてきました(画像は最近私が肉抜きした南三陸産エゾチグサとホソウミニナ)。日本の貝類図鑑の多くも、巻末で肉抜き方法を紹介するのが定番でした。..
ところが、20年ほど前から海外の研究者とコラボする機会を持つうちに気付いたのは、どうやら肉抜きを行うのは日本の貝人だけで、他国の人は、殻と軟体の両方を同時に理想的な状態で得るなんて、不可能なこととして最初から諦めていたのです。だから論文にするには同じ種をとにかく多数得ないと何も...
始まらないと彼らは決め付けていました。私が海外での野外調査で湯沸かし器具を持ち歩き、目の前で肉抜きを披露すると、他国の研究者は例外なく驚嘆しました。そうするうち、2007年にベルギーで世界軟体動物学会 World Congress of Malacology が開かれた際、「微小貝類の研究方法」というシンポが...
企画され、私も何か喋れと誘われたので、今こそ肉抜きを国外に広める好機と考えて迷わず題材に選びました。昨日のツイートで挙げた英語入りの画像は、その際のプレゼンに用いたものから転用しています。この時の私の最終目標は「niku-nukiを世界共通語にすること」でした。一方、私が発表する直前も...
他国の研究者が「DNAで複数種存在すると判明したが、もはや殻を割ってしまって標本がないので、すぐに論文にできないのが頭が痛い」などとぼやく発表が実際にあり、そのような状況下で、私と共著者の芳賀拓真会員(現、国立科学博物館)は、二人で漫才形式で発表すべく、揃って壇上に上がりました。...