棲息の有無を調べる必要が生じたのです。もし予定地内でカクメイ科が見つかれば、無視して建設を進めるわけにはいくまいというのが当時の通産省や山口県の判断でした。 1999年8月23日、私は7人の研究者と共に中電の担当者に案内され、小舟で島の先端の予定地へ向かいました。当時そこへは満足な道も..
要するに、巻貝を食す際にわざわざ完璧に抜こうとするのは日本人ぐらいです。ただし西欧でも、貝人(貝殻蒐集家)だけは昔から肉抜きをしていました。殻の奥に肉が少しでも残るのを嫌うからです。私は肉抜き論文の原稿作成段階ではこれを知らず「肉抜きは日本独自の技法」と書いて投稿したところ、...
#ハチSOS #拡散希望 今朝刊行!LNG火力発電所建設問題で渦中にある、広島県竹原市ハチの干潟と同地の生物の自然誌をまとめた書籍です。現地の最新情報、分類群ごとの解説に加えて干潟環境の特性や保全など普遍的な記述も満載の必携書。詳しくは下記サイトへ:amazon.co.jp/dp/4802082584/… @AmazonJP
種レベルでは初めて見るものでした。大学へ戻って散々文献を繙いても、一致する既知種は見当たりません。新種の可能性は濃厚でした。しかしそれを実証するためには、外見の観察だけでなく、解剖して少なくとも生殖器や歯舌の形態を把握せねばなりません。もちろん同時に、殻も無傷で残さねば論文発表..
【拡散希望】#ハチSOS ハチの干潟の発電所計画と環境保全問題に関して、このほど、5学会連名の要望書が行政(環境省・広島県・竹原市)と事業者へ郵送されました。要望書の全ファイルは当会HPのトップ(URLは上記プロフィール欄参照)に挙げてありますので、情報共有と拡散をお願い申し上げます。 twitter.com/SocStudMollDiv…
深刻さに重圧を感じ始めました。もし新種なら、原発予定地はその時点で世界唯一の産地です。他で一切記録がない以上、カクメイ科以上に重視すべきかもしれないのです。その同定は原発計画の行く末にも影響を及ぼしかねません。だのに、ろくな検討もできずみすみす無駄にしてしまっては、この先私は..
途中で切れ、殻の奥に残ってしまいます。また異なる種ごとに、大きさや形によらず、最適な茹で時間と温度とが儼然と存在します。むしろこの最適条件を見抜くことこそが、肉抜きの成否を決定すると言ってよいでしょう。中には特殊な工夫や道具を必要とする種もあります。細長くて巻数の多い巻貝は、..
環境省とヤフオク両者の声がはっきり世に出たのは貴重です。節度なき乱獲へ拍車がかかる一方だったところへ、やっと歯止めがかけられた形で、SNS上の批判も大きく貢献したようですね。 なお、記事中のカワシンジュガイ写真は3枚とも岡山県蒜山産です。小坪さん、使って戴きありがとうございました。 twitter.com/SciKotz/status…
図鑑とは、山溪さんご指摘の通り入門書と専門書を兼ねた稀有な媒体。時にその作成に関与する立場としては利用者のニーズを知るべしと思い立ち、学生相手の単純な聞取調査を行いました。その結果、依頼講演等で意外に好評な持ちネタとなったのでご笑覧下さい。いつも通り考察が飛躍しまくりですが。… twitter.com/Yamakei_ikimon…
両者間の溝が深まりつつある反映で、嘆かわしい」とも書き添えてありました。「溝の深まり」は原文では「growing gulf」(英語では溝ではなく湾なのですね)で、かっこいいのでありがたく修正稿で使用させて戴きました。結局、近年の西洋で主に肉抜きをしていたのは、貝類を食材や研究対象と見る人々..
つい先日公表された「88年ぶりサナダユムシ本体の採集成功」の報告も、この干潟で採集された標本を用いてなされたものです。 kyoto-u.ac.jp/ja/research-ne…
エスカルゴは私が知る限り、力任せに肉をブチ切ってます。食卓では常に前半分しかなく、全体が揃ったものを見た試しがありません。内臓塊はどうせ食わんから要らん、という合理主義でしょうか。日本では内臓を食べない場合でも綺麗に抜くのと対照的です。こういうのをお国柄というのかもしれません。..
ルーティンとして定着しています。その方法は単純で、生貝を茹でるなどで熱を加え、殻から軟体部を引き離すのです。有殻貝類の軟体部は、一部分に集中した筋肉によって殻と繋がっているので、加熱してこの筋肉を硬化させ、殻から外してしまえばよいわけです。煮沸または焼いたサザエやアサリなどの..
ことです。本来は貝殻の造形美に魅せられた蒐集家が伝承してきたもので、生貝を死亡後もそのまま放置すると悪臭が酷く、黴や様々な昆虫などを呼んで標本を劣化させるため、これを避けるべく完全に肉を除去するのが目的でした。逆に研究上はむしろ軟体部の検討が必須であり、この場合も殻と軟体部両方..
いわば「殻を取るか肉を取るか」のジレンマです。しかも厚い殻と蓋を持つ種の場合、固定液が中まで浸透せず軟体が腐ることすらあり、これだと殻も肉も両方失うことになります。肉抜きすればこの問題は一挙に解決できるのです。このため日本では、貝殻愛好者のみならず研究者間でも、肉抜きは日常的な..
建設がなされれば同地の自然環境と生物多様性が大きく損なわれる可能性は高く、保全上の観点から看過できません。そこで当会の自然環境保全委員会では他の4学会と連名で、行政及び事業者((株)JBGエナジー)に対し、環境影響評価の実施や事業の見直し等を求める要望書を提出する方向で調整中です。
被災地の長大な防潮堤全てを無下に否定するつもりはないですが、地元の意向を県や国が押し切り、単調なコンクリで潰されたままの自然海岸も多いのです。津谷川は環境補償が奏功した貴重な例で、今後もお手本にすべきでしょう。画像は一昨年の同地にいたヒラドカワザンショウと私(阿部拓三先生撮影)。 twitter.com/SocStudMollDiv…
人の都合で滅ぼしてしまった生きものを供養する、という発想は、生物多様性保全の根源的動機付けの一つとしても不可欠と思います。外来種も含め、人や他の生物に害をなす存在であっても、そのものに罪はないのですから。久留米の筑後川河畔には「宮入貝供養碑」があります。 miyairikinenkan.com/seiatsu/chikug… twitter.com/oikawamaru/sta…
相も変わらず繰り返される、杜撰で胡乱なアセスの調査。貝類の場合頻発するのは①酷い誤同定で稀少性評価を誤ったり、居ないはずの種を臆面もなく挙げる、②調査手法自体が不適切で多産する種すら把握失敗、など。今回も両方の謗りを免れ得ず、「細けぇこたぁいいんだよ」的な丼勘定で拙劣の極みです。 twitter.com/wwfjapan/statu…
以前「揉めた」六角川のヨシ刈取は、『有明海の生きものたち』でも論じたので、当該部分の全文を挙げます。お時間のある方や、今回の件で取材をお考えの報道関係者の皆様、ご一読いただけると幸いです。今回はムツゴロウは直接関係ないですが、文の後半はヨシ原の生物に関して普遍的に言えることです。 twitter.com/SocStudMollDiv…
倉敷市自然史博のお宝百選、今月の貝類は岡山県産ハマグリ。県内最後の生貝標本はまたしても #畠田和一(1965年歿)まで遡らねばならず、私もこの22年間県内で相当探しましたが、著しく古い半片数個が関の山でした。放流も失敗続き(環境が悪いので当然)で、県RDB2020では絶滅したと判断しました。 twitter.com/kura_n_h_museu…
ではなく、貝殻を集めて愛でる人だけだったことになります。ちなみに、上記の辛口査読コメントをくれた人は私も面識があり、対面では常に素晴らしく社交的で親切なことで世界中に知られています。ベルギーでの我々の発表の時もその場にいて、質疑応答の際に「僕の経験では新腹足類(バイ、ツブ等)を..
肉が難なく殻から外れるのと同じ理窟です。ただ、ここで常に貝人の前に立ちはだかる大きな問題は、肉抜きが容易な種とそうでない種が存在することです。二枚貝類なら単に二枚の殻を開かせれば何とかなりますが、巻貝の、しかも細長くて巻数の多い種はそうはいきません。手荒に茹でて引っ張ると肉が..
佐世保市在住の当会会員川内野善治さんから、宇久島の最新情報をお寄せいただきましたので、ご本人の諒解を得て転記します: 宇久島は太陽光パネルで島の1/3が敷き詰められ、風力発電40数機が建設される予定です。風力については県が世界遺産委員会の視察の際に風力発電の予定があること伝えていない..
を保存するのが理想的です。特に、滅多に出逢えない稀少種など、僅かな個体数で結果を出さねばならない時、肉抜きは大きな援けとなります。生きたまま殻ごとホルマリンやアルコールに浸けてしまったらもはや軟体は抜きにくくなるので、いずれは殻を塩酸で溶かすか、物理的に破壊せねばなりません。...