イカの解剖図も描きやすい上に簡単に可愛くなるので、お得感があって割と好き。
まだ誰にもはっきりとはわからないのです。ただ、論文を世に出せた直後の2000年初春、地元で長年原発の建設に反対してきたお年寄りの一人が私の手を取り、「あの貝は、ここの全生物を代表して、あんたの前に現れてくれた」と涙ながらに訴えたことを、私はきっと、いつまでも忘れることはないでしょう。
それと「全ての生物は役に立つ」なら、役に立たない生物は存在しないわけですから、有用/無用の区別自体がそもそも意味を成しません。だからその線引きに対し、常に距離を置くのが大切ではないでしょうか。有用性が局在的に重要な場合は確かにあるものの、それを過度に一般化すべきでないと思います。
𝘛𝘶𝘳𝘣𝘰 𝘤𝘰𝘳𝘯𝘶𝘵𝘶𝘴の原記載を見ようなどとは思わなかったに違いありません。相互にまるで無関係で、時代も場所も関与する人物も異なる様々な出来事が、まるで惑星直列並みの奇蹟で連なったことで初めてサザエは学名を獲得しました。しかし考えてみれば、あらゆる新種は、様々な奇蹟の…
番宣が現れたので、私は「なら視るか」と横になりました。始まった映画は、1945年春から8月15日の終戦まで、太平洋戦争末期の日本の軍部・政府そして昭和天皇の状況を史実に基づいて描いたものでした。私は作品の完成度の高さに引き込まれ、退屈せずに視続けました。.. eiga.com/movie/81487/
つまり全生物を見渡しても「世界一稀少な種(タイ記録)」です。この種は、山口県南東部の上関町長島に建設が計画されている、原発の予定地内で発見されました。地元ではその時点で、30年近くにわたり原発推進・反対両派が激しい対立を続けていました。 私はその2年前(1997)、予定地の南東の八島で…
この記事(及び「参考文献」の英文2記事)には看過できない誤りがあります。既に(1903年)記載されていた亜種が、このたび種へと階級が変更されたのであって、「新種」ではありません。それに何度も言いますが新種は「認定」でなく「記載」するものです。 twitter.com/NazologyInfo/s…
植物学者でもある彼はベンティンク夫人とガーデニングについて頻繁に情報交換していました。もう一人は世界一周に2回成功し、ハワイ諸島を発見した探検家ジェームス・クック船長です。伯爵夫人が持っていた標本の多くは、クックから貰ったとされています。ところが、この本は無記名で出版されたため…
謎のまま、闇から闇へと消え去ってしまうかもしれません。ヒミツナメクジはとても愛らしい、小さなお化けの子どもみたいな外見を呈するものの、同時に、触れようとするとふっとかき消えてしまいそうな、言い知れぬ儚さを私は感じずにいられないのです。
マーガレット・ベンティンクという伯爵夫人が私設博物館を設けていたのですが、彼女が世を去ったあと閉館され、所蔵標本はオークションにかけられました。この本はその販売目録です。因みにこの人のお友達が凄いメンツで、一人はフランス革命の功績者ともいわれる哲学者ジャン・ジャック・ルソーで、..
よく考えたら、ヒミツナメクジ・「ウミウシ」・「ナメクジ」等の系統関係についてご紹介していませんでした。改めて系統樹をご披露します。ヒミツナメクジはスナウミウシ類、普通のナメクジは柄眼類です。以上は黄色く塗った部分(汎有肺類)ですが、「ウミウシ」は緑色の部分(真後鰓類)です。
#ハチSOS 遂にラスボス降臨! オキナノエガオ。環境省RLで絶滅危惧I類。ハチの干潟の全貝類中で最も稀少性の高い種。最初にあえて殻(岡山県玉野市産)だけ挙げます。殻長約8 mm。二枚貝類なのに紙の如くペラペラに薄くて脆く、生時はどこに軟体が収まっているのか不思議なほど平たい板状。和名は...
1960年代になってアメリカの貝類学者たちが検証し直し、伯爵夫人の歿後、博物館の後片付けに関与した僧侶ジョン・ライトフットこそ真の著者と結論づけました。この人は植物・貝類学者で、ソランデルの書き残したメモを整理していたことがわかっています。このため現在ではライトフットの著作と見なす…
のが通説です。つまりこの本は、時代によって誰が書いたかの解釈が変化したわけです。画像は Ozawa & Tomida (1996) によるサザエの論文にある学名の異名表で、歴代の文献がサザエの学名と命名者をいかに表記していたかをまとめたものです。1934年以後、戦後しばらくはソランデルが命名者とされて…
とても悲しいお知らせ。たった今、撮影者の川内野会員からメールがあり、画像の産地では環境悪化で既に絶滅しただろうとのことです。同じ長崎県内でかつて記録があった別の場所でも見つからないそうです。ヤベガワモチは今、本当に風前の灯です。
肉抜き第6(最終)回。肉抜きは電子レンジから原発まで様々な事象に思いがけず関連してしまい、今後も何が起こるか予測できませんが、根本はやはり貝類の多様性を理解するためによい標本を得ることです。また、ベルギーでの我々の発表は「微小」貝類の研究方法のシンポでなされたことをもう一度強調…
本当の著者が誰かわからないという問題がありました。その著者は長い間、やはり伯爵夫人の生前に親交があり、リンネの弟子でクックの探検にも同行したダニエル・ソランデルだろうとされてきました。しかし彼はこの本の刊行の4年前(1782)に亡くなっており、著者となることは不可能です。その後、…
アニメでその名を聞いているはずのサザエすら、つい最近までアイデンティティを把握し切れていなかったのです。しかし同様の例は他の分類群でも少なくはありません。誰かの命名や同定が、多数の人を介して伝えられる間に、思い込みや勘違いが混入して伝言ゲーム化することもあります。目の前の生物…
これは凄い! 現生オウムガイの3新種を米領サモア・バヌアツ・フィジーからそれぞれ記載。ここ数年、従来のオウムガイは複数種を含むらしいとの噂が伝わってきて、2018年には真のオウムガイのネオタイプが指定される等の動きもありましたが、今回の論文との関連についてはこれからじっくり拝読します。 twitter.com/TylerGreenfieI…
物語の背景は画像に示した通り、日本人なら誰もが知る歴史です。映画では中盤で、連合国に降伏を迫られて極限状況に追い込まれた日本の首脳の描写がなされ、やがて8月9〜10日未明にかけての御前会議で、天皇がポツダム宣言受諾を決意する光景が現れます。その翌11日、その決定を不服として、…
「九十九里産ハマグリ」は別種チョウセンハマグリ(左)です。和名の由来は朝鮮でなく潮線・汀線と言われています。主として外海に面した砂浜に産します。一方、真のハマグリ(右)は内湾奥部河口附近の砂泥干潟を好み、同様の環境の多くが近年の埋立・干拓や水質汚染等で悪化したため、激減しました。 twitter.com/SocStudMollDiv…
しまった、原記載の書名を間違えていました。正しくは「カタログ・オブ・ポートランド・ミュージアム」でした。訂正してお詫びします(他にも誤字脱字はありそうですが)。
なお名前に「タマノ」とあるのでタイプ産地も玉野市と誤解されがちですが、実際は香川県高松市小槌島・坂出市室木島と岡山県倉敷市堅場島の3箇所なので注意が必要です。瀬戸内海では今も場所によっては多産しますが、個体群の動態が精査されたわけではなく、環境悪化の影響もないとは断定できません。
この記事、事実誤認だらけというか、記者に分類学の基礎知識が皆無なことだけが明らかで、酷い。原著を読んだら 𝘋𝘪𝘧𝘧𝘭𝘶𝘨𝘪𝘢 𝘣𝘪𝘸𝘢𝘦 Kawamura, 1918 のネオタイプを指定して再記載したとあり、新種ではない。それに新種は「登録」でなく「記載」するものです。 mainichi.jp/articles/20210…
昨晩、当会会員のumiroroさんが挙げられたクロガシラコシボソクチキレツブは、これまで実物を見た人が世界で数人しかおらず、この名前に同定できる人となると更に少ないウルトラレア種です。しかもこの種には知られざるエピソードがあるので、この機会に簡単に紹介します。 twitter.com/sitokairui/sta…