(Davila, 1867: pl. 5, fig. I)で、この図(画像左:原図を左右反転)に対して𝘛𝘶𝘳𝘣𝘰 𝘤𝘰𝘳𝘯𝘶𝘵𝘶𝘴の名が与えられたことになります。しかし、私はこれを見たとき我が目を疑いました。なぜなら棘は狭くて間隔が狭く、肩に2列描かれており、明らかにサザエではありません。...
肉抜きだけで延々何時間も熱い議論が続くのは、ごく普通に見られる光景です。 (長くなりすぎたので、別のスレッドにつづく)
別の新種ヤシマイシン(カクメイ科)を見出したため、事業者中国電力が山口県の勧告を受け、私に調査を依頼してきました。カクメイ科は巻貝の進化におけるミッシングリンクと呼びうる稀有な存在で、八島と大分県姫島が北太平洋全体で当時2つだけの産地であり、原発予定地の環境影響評価の一環で…
何なのでしょうか? 私は18世紀後半以降の𝘛𝘶𝘳𝘣𝘰 𝘤𝘰𝘳𝘯𝘶𝘵𝘶𝘴が登場する全文献の見直しを余儀なくされました。しかし、その時代のどの文献を見ても、肩の棘が短くて複数列あり、中国産であると記されています。つまり例外なくナンカイサザエで、サザエは登場しません。初めて西洋の文献に..
できなくなりました。さらにその後、𝘛𝘶𝘳𝘣𝘰 𝘫𝘢𝘱𝘰𝘯𝘪𝘤𝘶𝘴は実はインド洋のモーリシャス周辺の固有種と判明しています。しかしいくら名前が実態にそぐわないとしても変更の理由にはなりません。結局𝘛. 𝘫𝘢𝘱𝘰𝘯𝘪𝘤𝘶𝘴はモーリシャスの種の学名であり、日本のサザエには使えません。…
瀬戸内海特別展で展示されました。環境省レッドリストでは絶滅に最も近い状態にある種を対象とする絶滅危惧I類に選定されています。しかし、その後も私はこの種を全国で執念深く探しているにも関わらず、2個体目に出逢えず、いまだに「世界に一つだけの貝」のままです。これはむしろ悲しい称号であり…
同じ学名を同時に与えてしまったわけです。複数の別種に対する同じ学名、つまりホモニムです。また、同一文献で複数の名が同時に記載された場合どちらが優先されるかは、その後に刊行された文献のうち、最初にどちらかを選んだ著者の決定に基づく、と国際動物命名規約で定められています。それに相当…
なんと、今朝からワスレガイ論文が全文フリーアクセスとなりました! PDFダウンロードもできます: doi.org/10.1080/132358… 3日前のツイートの反響を受けての出版社の計らいで、ひとえに、いるかさんと会えるかなさん@jhansuka のおかげです。多分1ヶ月限定。MR史上3作目・5度目の快挙です。 twitter.com/SocStudMollDiv…
𝘛𝘶𝘳𝘣𝘰 𝘫𝘢𝘱𝘰𝘯𝘪𝘤𝘶𝘴という学名とともに2つの図があり、その一方(左下、fig. 33b)は日本のサザエの無棘型で、シーボルト採集と記されています。ところがもう一つの図(左上、fig. 33)は似ても似つかぬもので、日本のどこを探してもこんな種はいません。つまりReeveは、異なる2種に…
#新種発見のエピソード 山と溪谷社から遂に書籍化! タグの考案者馬場先生@Baboon_saiとともに、僭越ながら編者を仰せつかりました。多様な分類群の新種記載経験者による珠玉の「すべらない話」19篇に加え、記載命名小講座から豪華顔触れの座談会まで盛り沢山。12月17日発売! amazon.co.jp/dp/4635063208/
これは凄まじい! 親指を約5cmとすれば殻長13cmくらいでしょうか。シジミ科全体でも世界記録レベルでないかと思い Huber (2015) の掲載種にざっと目を通したら、最大値はインドネシア産 Batissa violacea (Lamarck, 1806) の15cmとあります。日本でもそれに迫る巨大個体の出現を期待したくなりますね。 twitter.com/kamagettyo/sta…
何と、当時大英博物館にいた貝類分類学の超大物研究者が査読者となり、「我々も茹でたら抜けることぐらい知っている。西欧の貝人をなめるな」との指摘が届いてしまいました。ただ同時に「最近の、DNAからこの世界に入るような若手は肉抜きを知らない。このことは研究者とアマチュアの交流が減り、...
中野智之・古川邦之・芳賀拓真・福田宏:マルタニシの「自動脱殻」. マルタニシ生貝が飼育下で突然殻を脱ぎ捨てたので,この現象を自動脱殻と命名し,同様の既存事例を回顧しつつ原因や意義を考察しました。もしこれに再現性があるなら「肉抜きの煩雑さを軽減する福音」とも論じた爆笑必至報告です。
肉抜き第5回(昨日のタクミニナを4として)。本日は「電子レンジ国際論争勃発篇」。我々がベルギーでの発表を終え、翌2008年に論文を刊行して以来、世界各国の研究者も肉抜きを試し、様々な報告中に niku-nuki の語が踊るようになりましたが、6年後の2014年、突然奇妙な表題の論文が世に出されました。
昨日の肉抜き第2話に思いがけず多大な反響を戴き、昨朝は500人台だったフォロワーさんの数も、一夜にして3倍以上になりました。皆様本当にありがとうございます。第3話は今宵、ご披露する予定です。 一つお願いがございます。目下差し迫った脅威として、固定ツイートとしているハチの干潟の問題が...
説明するのが面倒だったので、「我々は抜けます!」と言い切ったら、また場内全体に特大の爆笑が起こり、質問者も満面の笑みで、親指を真上に向けた腕をまっすぐ我々の方へ掲げてくれたのを今も鮮明に思い出します。 以上、肉抜き話あとがきでした(短く終わるつもりがまた長くなってしまった)。
広東住血線虫症は九州以南のみならず北海道・本州・四国各地でも症例(髄膜炎・脳障害等)が知られています。アフリカマイマイやアシヒダナメクジが主な中間宿主とされますが、潜在的には多様な陸産貝類に見られる可能性があるので、生きたカタツムリ・ナメクジに触れたら念入りに手を洗いましょう。.. twitter.com/VetPara_Nvlu/s…
その日の夜、私は持ち帰った砂をトレイに広げ、海水を張って、這い出してくる貝類を待ちました。しばらく後、長さ約3 mmの赤っぽい細長い巻貝が一匹、水面の表面張力を利用して逆さまに浮いているのに気づきました。掬い上げて見ると、殻の特徴からワカウラツボ科に属すことはすぐにわかりましたが..
両種の分布は、サザエは北海道南部〜九州(岩手県を除く)と韓国南部に固有で、ナンカイサザエは中国南部と台湾に限って産出します。その間の南西諸島や、黄海・渤海にはどちらも見られません。両種はDNAの解析の結果、互いに姉妹種(共通祖先から分かれた2種)の関係にあると判明しています。…
一刻も早くそこから脱するよう私は望んでいます。いずれにしてもこの一件は、肉抜きの持つ最大の長所が発揮された例だったとは言えると思います。また原発建設計画は、福島の事故以後事実上凍結されてはいますが、撤回されたわけではありません。目下世界唯一のナガシマツボ産地の未来がどうなるのか…
波部忠重先生は晩年重度の白内障+緑内障で、日常生活にも苦労されていた反面、僅か数mmのカワザンショウ科を肉眼で瞬時に正確に同定され、当時の私は信じられない思いでしたが、今や私も酷い老眼で同じ状態になりました。同定は脳内に予め備わった情報との照合なので、視力は限定的でも可能なのです。 twitter.com/oikawamaru/sta…
本日未明、サザエ新種記載論文が全文フリーアクセスになりました! 2017年の公表直後に次ぎ2回目。先日のツイートを拡散戴いたお蔭で、出版社が動きました。本当にありがとうございます。PDFも無料ダウンロードできます。多分1ヶ月限定。よろしければご利用ください。 doi.org/10.1080/132358…
信じ難いから状況をもっと詳細に書くように」と注文がつきましたが、新種であるとの判断や、解剖所見に対して修正要求は来ませんでした。この時の結論は今に至るまで訂正を強いられず維持されています。タイプ標本は山口県立山口博物館に所蔵され、2017年の夏には、大阪市立自然史博物館で開催された..
はできません。つまり、肉抜きの失敗が絶対に許されないのです。たった1個体ですから後がありません。肉抜きを知らない海外の研究者なら最初から諦めていたはずですが、日本で育った私に逃げは認められないでしょう。しかし、全く初めて見る種を一発で完璧に抜けるものか? 私はだんだん、事態の..
解剖はむしろそこからです。私はすぐ着手しました。立派に成熟した雌で、貯精嚢は精子で満たされ、つまり同じ場所に遠からぬ過去、雄がいたことを示していました。何かの幼貝という可能性は棄却できました。生殖器だけでなく鰓や消化器、中枢神経系まで、全て問題なく把握できました。歯舌も無事摘出..