同棲する際に、俺のペットであるトカゲを妻は心底嫌がった。危うく別居婚になりかけた程だ。絶対にケージから出さない事を条件に、妻は渋々承諾してくれた。 ある日、大きな地震が起きた。 風呂に入ってた俺は揺れが収まってから居間に飛び出した。すると、机の下には、ケージを胸に抱えた妻がいた。
『総プレイ時間:292時間』 これ程の時間ゲームしてしまったのか…と凹むゲーマーも多いらしい。全く共感できない。俺はむしろ「そんなに楽しんだのか」と そのプレイ時間に充実感を覚えるタイプだ。俺の目の前にケーキが運ばれる。「82歳の誕生日おめでとう!」そうか、もう、そんなに楽しんだのか。
「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ?」 「はい。ですので、今日は辞表を持ってきました」 懐から辞表を取り出すと、課長は悲しそうな顔を見せた。 「…でもな、俺にとってはお前しかいないんだ」 そう言って、課長は俺の辞表を破り捨てた。 「課長…」 俺は懐から代わりの辞表を取り出した。
社内のネットワーク管理者である俺には、社員が業務PCでどんな検索をしてるのか丸わかりだ。すると こんな検索結果が並んだ。 『見ているな?』 『貴様見ているな?』 『この覗き魔が』 『わかってるぞ』 『見るんじゃねぇ』 『仕事辞めたい』 『その仕事代わって』 うるせぇ。 いいから仕事しろ。
「予告通り、今日、お前の命を取り立てる」 死神が鎌を振り上げるのを見て、俺は目を瞑る。 「あぁ。おかげで、人生で最も充実した1年間だったよ」 「どうだ?まだ『死にたい』か?」 「…いや、生きたい」 俺達の間に、沈黙が流れた。 「今までのお前は、今、死んだ」 目を開くと、死神の姿は無かった
「Youtuberで食べていけてるのかね?」 「はい、一応…」 「だが、収入に安定も保証も無いのだろう?」 「そうですね…」 「不安は無いのか?」 「もう慣れました…」 「話にならんな。もっと将来を見据え、危機感を持ったらどうだね?」 「すみません…」 「貯金はどの程度なんだ?」 「2億です」
「今日こそ吾輩の勝ちだアンパ○マン!もう新しい顔も来ないぞ!」 「仕方ない…〝僕〟はここまでだ」 「ん?」 「今まで色んな人に僕の顔を食べてもらったのは、なぜだと思う…?」 「ま、まさか…」 「そう…1番食べた人が〝次の僕〟になるんだ」 同時刻のカバ○ 「ゲン…キ……100…倍………」
気が狂いそうだ。 もう何時間も、ベルトコンベアーの上を流れてくるペットボトルを眺めている。100本に1本くらい、倒れてるのを直すのが俺の仕事だ。こんな単純作業、人間のする事じゃない。機械にでもやらせせせせせ世せ世せseesese逕溘″縺溘> 「おい、K-203がまた故障したぞ。早く技術者を呼べ」
「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」 「いや、妻だよ」 「…失礼。今、なんと?」 「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
道端に財布が落ちていた。 俺の中の悪魔が囁く。 「貰っちまえよ…!」 次に天使が囁く。 「無理しないでいいの…貴方は頑張ってる。これは神様からのご褒美なの。だから、貰っていいのよ」 隣の娘が囁く。 「パパ、どうしたの?」 俺は笑顔で答える。 「なんでもないよ。さ、警察に届けに行こう」
戦友の戦死報告を受けても、彼は眉1つ動かさなかった。 「お前、何も思わないのか?」 「当然だ。もう慣れたよ」 そんな彼だが、死んだはずの戦友と再会できた時、別人のように泣いていた。 「安心したよ。お前も人の子だったんだな」 「…生還してくれる事には、まだ慣れてないだけさ」
ノートとペンが道端に落ちていた。ノートは真っ黒で異様な存在感を放ってる。ページを捲るとびっしり人名が書かれていた。調べると全て犯罪者の名前で、全員死亡済だ。僕は怖くなってノートを燃やした。後日 学校のテストで名前を書くと、意識が薄れ僕は倒れた。使ったのは、あの時 拾ったペンだった。
妻と付き合い始めた経緯ですか? 高校の頃、カンニング疑惑で呼び出されたんですね。テストで、間違った箇所が隣の女子とぴったり一致してたんです。勿論、カンニングなんてしてません。ですが、あまりに息がぴったりで、これは運命だと感じましたね。ええ、その時僕を叱ってた先生が、今の妻です。
私事で恐縮ですが、この度、結婚しました。娘と息子を授かり、2人とも今では立派な社会人です。子供達が自立し、趣味の裁縫に没頭する老後は、とても穏やかでした。娘と息子は今、孫達と共に私の周りで泣いています。そろそろお迎えが来たようです。久しぶりに夫に会えます。では皆様も、良い人生を。
上司に呼び出された。 「なぜ呼び出されたか、わかるな?」 「いえ全く」 「君 仕事中に小説書いてるだろ」 「!?」 「社内の共有フォルダで見つけたんだ」 (ヤバイ、保存先間違えてたのか…) 「続きは?」 「え?」 「続きはないのか?」 筆を折るつもりだったが、もう少しだけ続けることにした。
【Goodbye World】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺ hojokai.blog/?cat=2
長年付き合った彼氏にフラれた姉は、死ぬほど凹んでいた。心配になって部屋に様子を見に行くと、泣きながらPCのキーボードを一心不乱に叩いていた。 「何してるの?」 「今の気持ちだからこそ書ける文章が、ある気がするの」 姉が作家志望だと、初めて知らされた。 きっと、姉ちゃんならなれるよ。
女友達のマンションで、3Fから落下して大怪我をした男性が出た。男の手は、なぜか油でヌルヌルだった。 女友達は語る。 「女の一人暮らしって、色々怖いのね」 「そうだな」 「私の部屋、3Fだけどまだ安心できなくて…。ベランダの手すりに油を塗ってみたの。そしたら、こんな事になるなんて…」
曰く付きの物件だったが、結婚を諦めてる俺としては幽霊は歓迎だった。これで、孤独が少しは紛れるかもしれない。が、不思議な現象は全く起きず、ガッカリしていた。 ある日呼吸が苦しくなり、自室で倒れた。 目が覚めると、俺は病室にいた。 スマホにはなぜか、覚えの無い119番の履歴が残っていた。
父の訃報が届いた。 俺が歌手を目指して家を飛び出したその日から、俺は勘当されてると言うのに、今更どの面下げて葬式に出ろって言うんだ。 出棺される父を見送る。話によると、出棺の際に流す曲は、予め指定できるらしい。それは、父の遺言の1つだったそうだ。流れたのは、俺のデビュー曲だった。
「N〇K受信料の集金です」 「ウチ TV無いんで」 「嘘。一緒に住んでたんだからわかるよ」 「君が出てってから、捨てちゃったんだよ」 「どうして?」 「…このTVで一緒に映画とか見てたなぁ…って思い出すの、辛くて」 「…また一緒に、映画見よ?」 後日 一緒にTVを買いに行った。 受信料は払わされた
同窓会でAさんに会った。俺の初恋の人だ。友人が俺とAさんの前で軽口を叩く「そう言えばお前、Aの事好きだったよな」酒の席とは言え、本人の前でかつての恋心を暴露されるのは良い気分じゃない。Aさんも反応に困ってる風で、苦笑いを浮かべていた。 帰り際、Aさんは俺の耳元でこう囁いた。 「今は?」
「ねぇ、スマホの動きが遅いんだけど見てくれる?」 機械に疎い姉が、またなんか言ってきた。見てみると、重いアプリをいくつも同時に立ちあげてるし、ブラウザのタブもめちゃくちゃ開いてる。 「あぁ…明らかにメモリ不足だね」 「え?友達との写真や動画は一杯あるよ?」 「そのメモリーじゃくてね」
最近、俺は幽霊に悩まされていた。 テレビが勝手についてたりするし、風呂場の曇りガラスの向こうに奴は立ってたりする。仕方なく霊媒師を呼んだら、怨念が強過ぎてどうしようも無いと言われた。今夜もラップ音で嫌がらせしてくる幽霊に俺はキレた。「うるせぇええええ!!もう1度殺されてぇのか!?」
「HEY彼女!俺で妥協しなぁい?」 「気に入らない」 「…ですよね」 「違うよ。そうやってフザけて、断られても傷付かないよう予防線を張ってるのが気に入らないの」 「!?」 「失敗を恐れないで。ほら、もう1度真剣に言ってみて?」 「…お姉さん、俺とお茶してくれませんか?」 「僕、男です」