201
同棲する際に、俺のペットであるトカゲを妻は心底嫌がった。危うく別居婚になりかけた程だ。絶対にケージから出さない事を条件に、妻は渋々承諾してくれた。
ある日、大きな地震が起きた。
風呂に入ってた俺は揺れが収まってから居間に飛び出した。すると、机の下には、ケージを胸に抱えた妻がいた。
202
『総プレイ時間:292時間』
これ程の時間ゲームしてしまったのか…と凹むゲーマーも多いらしい。全く共感できない。俺はむしろ「そんなに楽しんだのか」と そのプレイ時間に充実感を覚えるタイプだ。俺の目の前にケーキが運ばれる。「82歳の誕生日おめでとう!」そうか、もう、そんなに楽しんだのか。
203
「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ?」
「はい。ですので、今日は辞表を持ってきました」
懐から辞表を取り出すと、課長は悲しそうな顔を見せた。
「…でもな、俺にとってはお前しかいないんだ」
そう言って、課長は俺の辞表を破り捨てた。
「課長…」
俺は懐から代わりの辞表を取り出した。
204
社内のネットワーク管理者である俺には、社員が業務PCでどんな検索をしてるのか丸わかりだ。すると こんな検索結果が並んだ。
『見ているな?』
『貴様見ているな?』
『この覗き魔が』
『わかってるぞ』
『見るんじゃねぇ』
『仕事辞めたい』
『その仕事代わって』
うるせぇ。
いいから仕事しろ。
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「予告通り、今日、お前の命を取り立てる」
死神が鎌を振り上げるのを見て、俺は目を瞑る。
「あぁ。おかげで、人生で最も充実した1年間だったよ」
「どうだ?まだ『死にたい』か?」
「…いや、生きたい」
俺達の間に、沈黙が流れた。
「今までのお前は、今、死んだ」
目を開くと、死神の姿は無かった
206
「Youtuberで食べていけてるのかね?」
「はい、一応…」
「だが、収入に安定も保証も無いのだろう?」
「そうですね…」
「不安は無いのか?」
「もう慣れました…」
「話にならんな。もっと将来を見据え、危機感を持ったらどうだね?」
「すみません…」
「貯金はどの程度なんだ?」
「2億です」
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「今日こそ吾輩の勝ちだアンパ○マン!もう新しい顔も来ないぞ!」
「仕方ない…〝僕〟はここまでだ」
「ん?」
「今まで色んな人に僕の顔を食べてもらったのは、なぜだと思う…?」
「ま、まさか…」
「そう…1番食べた人が〝次の僕〟になるんだ」
同時刻のカバ○
「ゲン…キ……100…倍………」
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気が狂いそうだ。
もう何時間も、ベルトコンベアーの上を流れてくるペットボトルを眺めている。100本に1本くらい、倒れてるのを直すのが俺の仕事だ。こんな単純作業、人間のする事じゃない。機械にでもやらせせせせせ世せ世せseesese逕溘″縺溘>
「おい、K-203がまた故障したぞ。早く技術者を呼べ」
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「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」
「いや、妻だよ」
「…失礼。今、なんと?」
「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
210
道端に財布が落ちていた。
俺の中の悪魔が囁く。
「貰っちまえよ…!」
次に天使が囁く。
「無理しないでいいの…貴方は頑張ってる。これは神様からのご褒美なの。だから、貰っていいのよ」
隣の娘が囁く。
「パパ、どうしたの?」
俺は笑顔で答える。
「なんでもないよ。さ、警察に届けに行こう」
211
戦友の戦死報告を受けても、彼は眉1つ動かさなかった。
「お前、何も思わないのか?」
「当然だ。もう慣れたよ」
そんな彼だが、死んだはずの戦友と再会できた時、別人のように泣いていた。
「安心したよ。お前も人の子だったんだな」
「…生還してくれる事には、まだ慣れてないだけさ」
212
ノートとペンが道端に落ちていた。ノートは真っ黒で異様な存在感を放ってる。ページを捲るとびっしり人名が書かれていた。調べると全て犯罪者の名前で、全員死亡済だ。僕は怖くなってノートを燃やした。後日 学校のテストで名前を書くと、意識が薄れ僕は倒れた。使ったのは、あの時 拾ったペンだった。
213
妻と付き合い始めた経緯ですか?
高校の頃、カンニング疑惑で呼び出されたんですね。テストで、間違った箇所が隣の女子とぴったり一致してたんです。勿論、カンニングなんてしてません。ですが、あまりに息がぴったりで、これは運命だと感じましたね。ええ、その時僕を叱ってた先生が、今の妻です。
214
私事で恐縮ですが、この度、結婚しました。娘と息子を授かり、2人とも今では立派な社会人です。子供達が自立し、趣味の裁縫に没頭する老後は、とても穏やかでした。娘と息子は今、孫達と共に私の周りで泣いています。そろそろお迎えが来たようです。久しぶりに夫に会えます。では皆様も、良い人生を。
215
上司に呼び出された。
「なぜ呼び出されたか、わかるな?」
「いえ全く」
「君 仕事中に小説書いてるだろ」
「!?」
「社内の共有フォルダで見つけたんだ」
(ヤバイ、保存先間違えてたのか…)
「続きは?」
「え?」
「続きはないのか?」
筆を折るつもりだったが、もう少しだけ続けることにした。
216
【Goodbye World】
※140字以内で完結する小説でした。
※再掲
今までに投稿してきた140字小説は、溜まり次第、以下のブログに格納していくので、ちょくちょく覗いていただけたら嬉しいです☺
hojokai.blog/?cat=2
217
長年付き合った彼氏にフラれた姉は、死ぬほど凹んでいた。心配になって部屋に様子を見に行くと、泣きながらPCのキーボードを一心不乱に叩いていた。
「何してるの?」
「今の気持ちだからこそ書ける文章が、ある気がするの」
姉が作家志望だと、初めて知らされた。
きっと、姉ちゃんならなれるよ。
218
女友達のマンションで、3Fから落下して大怪我をした男性が出た。男の手は、なぜか油でヌルヌルだった。
女友達は語る。
「女の一人暮らしって、色々怖いのね」
「そうだな」
「私の部屋、3Fだけどまだ安心できなくて…。ベランダの手すりに油を塗ってみたの。そしたら、こんな事になるなんて…」
219
曰く付きの物件だったが、結婚を諦めてる俺としては幽霊は歓迎だった。これで、孤独が少しは紛れるかもしれない。が、不思議な現象は全く起きず、ガッカリしていた。
ある日呼吸が苦しくなり、自室で倒れた。
目が覚めると、俺は病室にいた。
スマホにはなぜか、覚えの無い119番の履歴が残っていた。
220
父の訃報が届いた。
俺が歌手を目指して家を飛び出したその日から、俺は勘当されてると言うのに、今更どの面下げて葬式に出ろって言うんだ。
出棺される父を見送る。話によると、出棺の際に流す曲は、予め指定できるらしい。それは、父の遺言の1つだったそうだ。流れたのは、俺のデビュー曲だった。
221
「N〇K受信料の集金です」
「ウチ TV無いんで」
「嘘。一緒に住んでたんだからわかるよ」
「君が出てってから、捨てちゃったんだよ」
「どうして?」
「…このTVで一緒に映画とか見てたなぁ…って思い出すの、辛くて」
「…また一緒に、映画見よ?」
後日 一緒にTVを買いに行った。
受信料は払わされた
222
同窓会でAさんに会った。俺の初恋の人だ。友人が俺とAさんの前で軽口を叩く「そう言えばお前、Aの事好きだったよな」酒の席とは言え、本人の前でかつての恋心を暴露されるのは良い気分じゃない。Aさんも反応に困ってる風で、苦笑いを浮かべていた。
帰り際、Aさんは俺の耳元でこう囁いた。
「今は?」
223
「ねぇ、スマホの動きが遅いんだけど見てくれる?」
機械に疎い姉が、またなんか言ってきた。見てみると、重いアプリをいくつも同時に立ちあげてるし、ブラウザのタブもめちゃくちゃ開いてる。
「あぁ…明らかにメモリ不足だね」
「え?友達との写真や動画は一杯あるよ?」
「そのメモリーじゃくてね」
224
最近、俺は幽霊に悩まされていた。
テレビが勝手についてたりするし、風呂場の曇りガラスの向こうに奴は立ってたりする。仕方なく霊媒師を呼んだら、怨念が強過ぎてどうしようも無いと言われた。今夜もラップ音で嫌がらせしてくる幽霊に俺はキレた。「うるせぇええええ!!もう1度殺されてぇのか!?」
225
「HEY彼女!俺で妥協しなぁい?」
「気に入らない」
「…ですよね」
「違うよ。そうやってフザけて、断られても傷付かないよう予防線を張ってるのが気に入らないの」
「!?」
「失敗を恐れないで。ほら、もう1度真剣に言ってみて?」
「…お姉さん、俺とお茶してくれませんか?」
「僕、男です」