弟は時速5kmで家を出ました。その30分後、弟の忘れ物に気付いた兄は時速15kmで追いかけました。兄が弟に追いつくと、弟は兄の彼女とキスしていました。兄は物陰で茫然と立ち尽くした後、弟の忘れ物をゴミ箱に捨て、時速1kmで家に帰りました。弟と兄の心の距離が縮まるには、何年かかるのでしょうか。
「~以上が、御社を志望した理由です」 よし、練習通り言えたぞ。面接官は満面の笑顔だし、手応えアリだ!憧れの大企業に入れるかもしれない。ただ、面接官がずっと指で机を叩いているのが気になるな。 トン・トーン・トン…… これはまさか…モールス信号? 『ニゲロ ココ ハ ブラック キギョウ ダ』
私には尊敬する作家さんがいる。彼の作品はどれも★2.0を切っており、レビューは酷評の嵐だ。なのに、彼は世間の評判を気にせず、息をするように作品を出し続けている。その尊敬すべき鋼の精神はどうやって培われたのか、本人にメールで聞いてみると、返信があった。『伝えないで欲しかった……』
宿題もせず遊ぶ息子に怒り、ゲームは鍵付きの箱に入れた。宿題を済ますまで鍵は開けない。それ以来、息子は必死に勉強した。そして見事にピッキングで鍵を開けられるようになった。思えば、それが奴の最初の〝盗み〟だった。 今や大泥棒となった奴を、俺は止めねばならない。 刑事として、父として。
「失礼、警察です。貴女の恋人に殺人容疑がかかっておりまして…」 「え?」 「逃走中の彼について、お話しを聞かせていただきたく…」 ショックで茫然とする私を見かねて、刑事達は質問もそこそこに帰っていった。 彼が…殺人鬼だったなんて……探されちゃう…彼をもっと遠くに…埋め直さないと……。
「変だな…味がしない…」 コロナを確信した俺は内心歓喜していた。これで仕事を休める。 しかし、医者の「コロナではありません」というセリフに俺は激しく落胆した。医者は続ける。「おそらく、鬱による味覚障害です。仕事は休んでください。そして、大事な人と、穏やかな時間を過ごしてください」
「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」 「いや、妻だよ」 「…失礼。今、なんと?」 「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
「HEY彼女!俺で妥協しなぁい?」 「気に入らない」 「…ですよね」 「違うよ。そうやってフザけて、断られても傷付かないよう予防線を張ってるのが気に入らないの」 「!?」 「失敗を恐れないで。ほら、もう1度真剣に言ってみて?」 「…お姉さん、俺とお茶してくれませんか?」 「僕、男です」
父は寡黙で照れ屋だから、大事な言葉はいつもお酒の力を借りて言う。 でも、酔った勢いで褒められても、心がこもって無いみたいで、少し嫌だった。 私が志望校に合格した日、父からビール片手に「よく頑張ったね」と言われた時も同じ気分だった。その手に持っていたのが、ノンアルだと気付くまでは。
私は小さい頃、ポケモンが大好きだった。将来の夢はポケモントレーナーになることだった。勿論、それは叶わなかったけど、私はポケモンから大事なことを学べた。おかげで今、ずっと好きだった人と付き合えているの。本当にゲットしたい時は、相手をとことん弱らせてから、手を差し伸べるのが大事。
彼女の母姉父は、プロゲーマーだった。 結婚を認めてもらうために、某格ゲーで家族全員に勝つ条件が課せられた。死に物狂いで特訓した結果、なんとか、俺は母姉父に勝つ事が出来た。恋人を抱き締めようとしたら、彼女はコントローラーを手に取った。 「黙っててごめんなさい。一番強いのは、私なの」
なぜ〝休日〟なんて呼び方するんだ? まるで仕事への充電時間じゃないか。休日こそ本来の人生の時間なのに。オフなんかではない、休日こそオンなのだ。休日を休日と呼んでる限り、労働のための人生は無くならない。来世では、休日が無くなってますように。 破り捨てられた遺書には、そう書いてあった
僕の友人は紛れもない天才俳優だ。 役に没入するあまり、日常生活の中ですらその役になりきってしまう程だ。そんな友人と飲んでいた僕は、つい愚痴を漏らした。「僕も君みたいに、何か才能があればなぁ…」 「何言ってんだ、お前は天才だろ。役作りは順調か?確か今度は『天才俳優の友人』役だっけ?」
下校中の男女がいた。2人は友人同士だ。 「猫って可愛いなぁ」 「なんだよ急に」 「私、将来は猫飼いたいんだ」 「猫はやめとけ」 「どうして?」 「俺、猫エレルギーなんだよ」 「え??なんで私と一緒に住む前提なの??」 「……」 「1つ、聞いてもいい?」 「はい」 「犬なら大丈夫?」
息子がonlineゲーム中毒になった。叱るよりも、まず子供の目線に立つべきかと、私も始めてみる事にした。 その甲斐あって、息子のオンゲー中毒は改善された。息子曰く「自分の姿を、客観的に見れたから」らしいが、今やそんな事はどうでもいい。向こうの世界で今日も、仲間達が私を待っているのだ。
先輩は私の憧れだ。 物怖じせず上司に意見するし、堂々と定時で帰るし、飲み会も「気分じゃない」と断れる。 「私も先輩みたいになりたいです」 「ふーん…じゃあ私の師匠を紹介してあげるよ」 後日 公園に案内された。 「この方が私の師匠」 そこには、1匹の猫が気持ちよさそうに寝転がっていた。
あれ?俺は今、車にはねられたはずじゃ…? 振り返ると、地面に倒れてる俺の姿が見えた。そうか…今の俺は霊体ってやつか。俺の身体の周りには人が集まり、AEDで心肺蘇生を試みてくれている。 頼む!助けてくれ…!お、やった!俺が息を吹き返した!意識も回復したみたいだ!…じゃあ俺はなんだ?
Q1:小学校の頃どんな技を練習しましたか? という質問に、様々な解答が寄せられました。 波紋・かめはめ波・霊丸・二重の極み・螺旋丸・ギア2・月牙天衝・領域展開・水の呼吸… しかし Q2:それは習得できましたか? という質問に97%もの人がNOと答えました つまり、挫折は決して恥じでは無いのです
幼馴染と俺の中身が入れ替わって5日になる。いつになったらお互いの体に戻れるんだろう。 「お母さん。俺…あ、私 今日 晩ご飯いらないから」 「懐かしいわね」 「?」 「覚えてないわよね。アンタ小さい頃、1人称をよく間違える時期があったの」 もしかして… 今、俺達は入れ替わってるんじゃなくて…
「母さん?オレオレ」 「え、この声…ツヨシ?」 「そうそう、ツヨシ」 「そんな…どうして…ちゃんと産め…!」 「は?」 「…そんなハズない。アンタ、詐欺でしょ?」 「チッ」 そこで俺は電話を切った。 さっさと次行こ。 だが、向こうの言いかけた言葉が気になった。 産め…… ……………埋め?
「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」 通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。 翌日、× ×駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。
自分の顔がネット上に残るの嫌がる奴多いけど、別によくね? 顔写真だけじゃ住所も学校もわからんし。有名人でもない限り、誰も一般人の顔なんて気にしねぇよ。 試しに、以前SNSに投稿した俺の変顔で画像検索かけてみた。そしたら、俺の変顔をアイコンにしたアカウントがめっちゃ政治批判してた。
「お前、逆突き以外も使えよ」 空手部でそう言われ続けて2年。それでも俺は逆突きだけを磨き続けた。毎日1000回の逆突きを欠かした事は1度も無い。いつしか俺の逆突きは神速の域に達し、他校からも〝逆突きの池田〟と恐れられた。そして迎えた決勝戦、あり得ないほど美しく、俺の回し蹴りがキマった。
「私、隣の者なんだけどねぇ…アンタんとこの赤ちゃん!毎晩夜泣きがうるさいのよ!」 「ウチ…猫はいるけど、赤ちゃんなんていません」 「…え?」 お隣さんは、青ざめて帰っていった。 夜、夫が帰ってくる。 「はぁ疲れた…大人は辛ぇわ」 夫はそう呟くと、オムツを穿き、おしゃぶりを咥えた。
朝登校すると、親友は裸足だった。 「…お前もしかして、イジメられてんの?」 親友は首を横に振る。 「じゃあ上履きは?」 「下駄箱、見てないんだ」 「なんで?」 「俺が確認しない限り、チョコが在るのと無いの、2つの可能性が共存するだろう?」 なるほど。 確認したら、チョコは無かった。