そろそろ夫を毒殺することにした。 しかし、料理に毒を入れても「調味料変えた?」と言われるだけでピンピンしている。話を聞くと、夫は幼少期から毒見要員として育てられた生き残りらしく、毒耐性が強いらしい。 「今、人生で一番幸せなんだ」 そう言われた私は、すっかり毒気を抜かれてしまった。
『はい、消防署です。火事ですか?救急ですか?』 「助けて下さい!大火事です!!」 『すぐに向かいます。場所はどこですか?』 「https://XXXXです!」 『? なんですって?』 「僕のブログです!大炎上してます!鎮火してください!!!」 『こういう事するから炎上するんですよ』
公園の子供達がうるさいので注意しに行った。 「お前らうるせぇんだよ!」 すると子供達は俺を見つめて言った。 「オジさんもサッカーやる?」 「やる!」 その日は最高に楽しかった。生きる希望を見出したし、再就職もした。あの子供達はもういないけれど、今は俺の子供達と、あの公園で遊んでいる。
深夜遅く、やっと晩飯のカップ麺にありつけたかと思えば…急患だ。 帰宅途中、赤信号を渡って車に轢かれた残業帰りの会社員らしい。 看護師は言う。 「いっそのこと、会社に泊まればよかったのに」 俺は答えた。 「せめて、子供の寝顔だけでも見たかったのかもな」 それを叶えるのが、俺の仕事だ。
「息子よ…俺も、もう長くない」 「親父…」 「お前に、言わなきゃらなんことが…」 「なんだ?」 「いや…やめておく。代わりに、俺が逝ったらこの封筒を開けてくれ」 「遺書か?」 「辞世の句を記してある」 少しして、親父は他界した。 辞世の句にはこうあった。 隠し事 死ぬまで言えず 隠し子と
「私達にも拒否権があっていいと思います!」 その一言で、業界初の、アイドル側が握手を10人まで拒否できる握手会が開かれた。ファン達は、自分が拒否られたらどうしようと、怯えながら列に並ぶ。 10人目が拒否られた瞬間、会場は安堵の息で溢れ、アイドルは叫んだ。 「すみません!追加20人で!」
娘のSNSアカウントを見ていたら、最近、娘に彼氏が出来たとわかった。そうか、もうそんな年頃か。 「彼氏が出来たようだな」 「え!?」 「大事にしなさい。彼は良い青年だ…」 「会ったことないのに?」 「パパな、6つの女の子アカウントを持ってるんだが、そのどれで誘惑しても、乗らなかったんだ」
「お前、逆突き以外も使えよ」 空手部でそう言われ続けて2年。それでも俺は逆突きを磨き続けた。毎日1000回の逆突きを欠かした事は1度も無い。いつしか俺の逆突きは神速の域に達し、他校からも〝逆突きの池田〟と恐れられた。そして迎えた決勝戦、あり得ないほど美しく、俺の回し蹴りがキマった。
「今日こそ吾輩の勝ちだアンパ○マン!もう新しい顔も来ないぞ!」 「仕方ない…〝僕〟はここまでだ」 「ん?」 「今まで色んな人に僕の顔を食べてもらったのは、なぜだと思う…?」 「ま、まさか…」 「そう…1番食べた人が〝次の僕〟になるんだ」 同時刻のカバ○ 「ゲン…キ……100…倍………」
父は寡黙で照れ屋だから、大事な言葉はいつもお酒の力を借りて言う。 でも、酔った勢いで褒められても、心がこもって無いみたいで、少し嫌だった。 私が志望校に合格した日、父からビール片手に「よく頑張ったな」と言われた時も同じ気分だった。その手に持っていたのが、ノンアルだと気付くまでは。
親友(新郎)の結婚式で、新婦さんの顔を見たら、まさかの元カノだった。招待状で名前を見た時、どうせ同姓同名だろうと甘く考えていた俺が馬鹿だった。挨拶済みのご両親と目が合う。めちゃくちゃ気まずい。 新郎新婦には既に3歳になる子供がいた。 式場にいたその子は、なんとなく、俺に似ていた。
「お爺様、お婆様、ただいま戻りました」 「おぉ、桃太郎…!鬼は退治できたかい?」 「…お爺様。鬼がどのように産まれるか、ご存知ですか?」 「?」 「鬼ヶ島には、大きな大きな桃の木が1本、ございました」 「……」 「…最後の鬼を、退治致します」 そう言って、桃太郎は己の首に、刀を添えた。
「質問ある人は?」 「お母さ…あ…先生!」 クラス中に笑い声。 「タケシ君!これで4回目よ?先生はお母さんじゃありません」 「ご、ごめんなさい…」 タケシは真っ赤になって俯く。それでも、タケシの間違いは卒業するまで続いた。 先生が本当の母だったとタケシが知るのは、卒業した後の事だった。
コンビニ強盗は銃を突き付けた。 「金を出せ」 「お客様、大変です!」 「あ?」 「銃にセーフティー(安全装置)がかかったままです」 強盗は鼻で笑う。 「そうやって隙を作ろうってか?クラシカル(古典的)だな…その手には乗らねぇよ」 強盗は勝ち誇り、続けた。 「モデルガンにそんなモン無ぇからな」
「助手君、ついにタイムマシンが完成したぞ!」 「本当ですか博士!?」 「ただし注意点がある…これは5回しか使えないんじゃ」 「わかりました!」 僕はさっそく江戸⇒弥生⇒白亜紀を時間旅行した。そこでタイムマシンは起動しなくなった。 「あれ?」 ……あ 博士が〝完成〟を確認したってことは…
「私はランプの精。さぁ願いを3つ叶えてやる」 「お願い!私の彼氏を生き返らせて」 「うむ」 後日 「残る願いは2つだ」 「私の彼氏を生き返らせて」 「また死んだのか?いいだろう」 後日 「最後の願いを言え」 「彼を生き返らせて」 「またか?」 「えぇ。あの男は、何度殺っても足りないから」
緊急停止ボタンを押して、線路の上の子犬を救った青年が話題になった。 しかし「子犬をどかせば済む話だった」という批難の声が目立ち、青年は炎上した。 『押しちゃいけないモノほど押してみたかった』 それが青年の秘めたる本音だった。 今、駅のホームにて、青年は、利用客の背中を見つめている。
Q1:小学生の頃どんな技を練習しましたか? という質問に、様々な解答が寄せられました。 波紋・かめはめ波・霊丸・二重の極み・螺旋丸・ギア2・月牙天衝・領域展開・水の呼吸… しかし Q2:それは習得できましたか? という質問に97%もの人がNOと答えました つまり、挫折は決して恥じでは無いのです
「娘さんを僕にください」 「その言い方は極めて不適切だ。娘は私のものではない。そして君のものでもない」 「…まさか」 「そう。〝蛇神様〟のものだ」 「生贄…ですか」 「村の安寧のため…仕方ないのだ」 その夜。 僕は彼女をつれて村を出た。 その後、風の噂で、1つの村が水害で滅んだと聞いた。
「俺達、親友だよな」 「どうした改まって」 「戦場に行く前に、お互いだけの秘密を共有しないか?」 「いいぜ」 「じゃあ俺からな。実は俺の姉、血が繋がってないんだけど、好きになっちまったんだ」 「マジなのか?」 「あぁ。次は、お前の秘密を教えてくれ」 「お前の姉ちゃんと付き合ってる」
大好きな人に告白した。 「私より背の低い人はちょっと…」 フラれた俺は骨延長手術を受けてリトライした。 「私より年収低い人はちょっと…」 出世を繰り返し、役員になった。 「太ってる人は…」 痩せた。 「顔が好みじゃなくて…」 整形した。 「私より年下はちょっと…」 僕の方が、年上になった。
ヤンデレの女の子に好かれてしまった。女友達と話してるだけで静かに発狂するし、朝起きたら42件もメッセージが届いてるなんて普通だった。風邪で寝込んだ時も当然のようにいつの間にか部屋にいて、看病してくれた。 「ゴホッ…いいって。病気うつるぞ」 「いいの。私はもう、貴方に病んでるから」
僕の友人は紛れもない天才俳優だ。 役に没入するあまり、日常生活の中ですらその役になりきってしまう程だ。そんな友人と飲んでいた僕は、つい愚痴を漏らした。「僕も君みたいに、何か才能があればなぁ…」 「何言ってんだ、お前は天才だろ。役作りは順調か?確か今度は『天才俳優の友人』役だっけ?」
ピンポーン チャイムに出ると、知らない人が立っていた。 「どちら様でしょうか?」 「私、隣に越してきた者です。ご挨拶に来ました」 「あぁ、ご丁寧にどうも」 「こちら、つまらないものですが…」 渡されたのは、お隣さんの自作小説だった。 本当につまらなかった。
デートで終電が無くなった私は、彼氏の家に初めてお泊まりする事になった。 そしたら、まさかの実家。 まぁいいか。 と思ってあがると、居間に服を着たマネキンが2体座ってた。顔にはクレヨンで笑顔が描かれている。額にはそれぞれ、父・母とあった。立ち尽くす私の後ろで、チェーンを閉める音がした。