「でね、3泊4日で旅行に行くって言ったらこう言われたの『俺の飯はどうするんだ?』って」 「うわぁ出た!いるよね、そういう夫。そんなの無視して旅行いっちゃいなよ」 「うん…もう飽きたし、そうするね」 後日 彼女の家から夫の死体が見つかった。夫は首輪で繋がれ〝飼われていた〟様子だった。
会社をクビになったと言えず、妻の弁当を、今日も公園のベンチで食べる。なんて惨めなんだ。無職の夫など、捨てられるに違いない。弁当を食べようと、包みを開くと、カードが落ちた。そこには一言、こう書かれていた。 『辛い時こそ、一緒にいようね』 大人になって初めて、声を上げて泣いた。
父の訃報が届いた。 俺が歌手を目指して家を飛び出したその日から、俺は勘当されてると言うのに、今更どの面下げて葬式に出ろって言うんだ。 出棺される父を見送る。話によると、出棺の際に流す曲は、予め指定できるらしい。それは、父の遺言の1つだったそうだ。流れたのは、俺のデビュー曲だった。
あれ?俺は今、車にはねられたはずじゃ…? 振り返ると、地面に倒れてる俺の姿が見えた。そうか…今の俺は霊体ってやつか。俺の身体の身の周りには人が集まり、AEDで心肺蘇生を試みてくれている。 頼む!助けてくれ…!お、やった!俺が息を吹き返した!意識も回復したみたいだ!…じゃあ俺はなんだ?
「この病院 "出る"んだってよ」 入院初日から 隣のベッドの爺さんが脅してくる。 「冗談ですよね…」 翌日 目が覚めると 隣のベッドは空だった。看護師曰く そのベッドの人は既に亡くなっていたらしい。 恐怖に怯えていると 昨夜の爺さんは向かいのベッドでニヤニヤしていた 故人のベッドで悪戯するな
幼馴染と俺の中身が入れ替わって5日になる。いつになったらお互いの体に戻れるんだろう。 「お母さん。俺…あ、私 今日 晩ご飯いらないから」 「懐かしいわね」 「?」 「覚えてないわよね。アンタ小さい頃、1人称をよく間違える時期があったの」 もしかして… 今、俺達は入れ替わってるんじゃなくて…
どうしよう…私の小説 誰も読んでくれない。 「きっと掲載場所が悪いんだ」 私は服を脱いでお腹に小説を書き、それを映してアップしたら、恐ろしい程バズった。いつしか収益化もされ 小説で食べていく夢は叶った。 「…そうじゃない」 私は握っていた筆を折り、服を着て、キーボードの前に座った。
「チッ 腹減ったなぁ」 ノック音が聞こえる。 「おっせぇんだよババア!」 ドアを開けるといつも通り飯が床に置かれていた。今日は紙切れが2つ添えてあった。 1つは『お願いだから、働いて』と震えた字で書かれていた。もう1つは、幼い俺の字でこう書かれていた。 『なんでもママのいうことをきく券』
泥棒をしていると、玄関で音がした。 まずい! 見つかる前に、俺は身を隠す。 「……いるんだろ?出てこいよ」と 家主の声。 バレている…だと!? 俺は観念し、家主の前に姿を現した。 「え!?」と驚愕する家主。 「え…?」と困惑する俺。 パトカーの中で、俺は考える。 え、毎日あのセリフ言ってたの?
「私はランプの精。さぁ願いを3つ叶えてやる」 「お願い!私の彼氏を生き返らせて」 「うむ」 後日 「残る願いは2つだ」 「私の彼氏を生き返らせて」 「また死んだのか?いいだろう」 後日 「最後の願いを言え」 「彼を生き返らせて」 「またか?」 「えぇ。あの男は、何度殺っても足りないから」
「リア充爆発しろってよく聞くけど、この期に及んでなんで他力本願なんだろうな」 「そりゃ爆破するって言ったら捕まるからな。本物はただ、黙々と実行するのみだよ」 友人が懐からスイッチを取り出して押すと、遠くで大きな爆発音がした。 「……今のは?」 「福音さ」 「……」 「Xmasの夜に、乾杯」
「ママ 兎と亀の話は妙だよ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
「リア充爆発しろってよく聞くけど、この期に及んでなんで他力本願なんだろうな」 「そりゃ爆破するって言ったら捕まるからな。本物はただ、黙々と実行するのみだよ」 友人が懐からスイッチを取り出して押すと、遠くで大きな爆発音がした。 「……今のは?」 「福音さ」 「……」 「Xmasの夜に、乾杯」
シゲルは、ゲームのボス戦で負けそうになると、すぐリセットする困った奴だった。 そんなシゲルが受験に落ちたらしい。家に行くと、シゲルは意外と元気そうだった。でも、机の上の新品のカッターが気になった俺は、それを盗んだ。 大人になって、同窓会で彼にこう言われた 「あの時は、ありがとう」
天国にも酒場ってあるんだな。 フラリと立ち寄ってみると、常連っぽい中年が声をかけてきた。 「見ない顔だな。天国へようこそ」 「ども」 「生前は何やってたんだ?」 「しょぼいコソ泥さ」 「おいおい、それでよく天国に来れたな」 「駅に置いてあった鞄を盗んだんだが、中身が爆弾だったんだ」
「豚さん壊したくない…」 娘は豚型貯金箱に愛着が湧いてしまったらしい。しかし、壊さねばお金は取り出せない。 「娘ちゃん」 「?」 「お金を取るか、豚を取るか、選ぶんだ」 「……」 月日は流れ、娘は高校生になった。 「あ~…お金欲しい…」が娘の口癖だが、豚さんは今も、娘の机の上にいる。
おかしいな。 そろそろ、子供達がお菓子を貰いに来るはずなのに、全然来ない。引率の方に電話すると『え、いただきましたよ?お婆様が出てくださいましたが…』と言われた。 そっか。 お婆ちゃん、毎年、この日を楽しみにしてたもんね。 遺影に目を向けると、お供えしていたお菓子が無くなっていた。
彼女を亡くした友人は、ギャルゲーに没頭していた。まるで、彼女を亡くした悲しみを埋めるように、彼女と同じ名前のヒロインにのめり込んでいた。 「…おい、辛いと思うけど現実見ようぜ。いい人がきっと見つかるよ」 友人は画面を撫で、呟いた。 「そうだね。また この子と同じ名前の子を探さなきゃ」
「なぜ何時間も考えた話がバズらなくて、1分で考えた話がバズるんだ…」 「先生、違います」 「!?」 「何時間も苦悩した日々があるから、たった1分で優れた発想が湧く日も来るのです。迷走と言う名の鍛錬無くして、名作は生まれません」 「……」 いきなり部屋に現れたコイツが怖くて、私は110番した。
「この度は弊社がご迷惑をおかけしてしまい…申し訳ありません…」 「誠意が感じられんなぁ…」 「誠意?」 「日本にはあるだろう?両手と頭を地面につける、伝統的な謝罪方法がさぁ…」 悔しさに歯を食いしばりながらも、俺は従った。 「この度は申し訳ありません!」 「うん、三点倒立じゃなくてね」
『俺と……………付き合ってくれない?』 『その前に、言いたい事が5つあるの。 1: LINEで告白はやめようね。 2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。 3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。 4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。 5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』
「1024円か…キリの悪い数字ですね」 「いえ、2の10乗ですので、とてもキリの良い数字です」 「では、343は?」 「7×7×7。7は神秘的な数字です」 ふと気になったので、聞いてみる事にした。 「博士の1番好きな数字は何ですか?」 「1029です」 「どんな計算なのです?」 「私と妻が出会った日です」
愛犬が死んだ。私の孤独を支えてくれた、大切な家族だった。有給理由を書いて申請すると、案の定却下された。上司から電話だ。 『犬が死んで1日休みたい?何言ってるんだ?』 もう、いっそ辞めてしまおうか。 『家族だったんだろう?もっと休め』 枯れたはずの涙が、また溢れて、愛犬の遺影に落ちた。
なぜ〝休日〟なんて呼び方するんだ? まるで仕事への充電時間じゃないか。休日こそ本来の人生の時間なのに。オフなんかではない、休日こそオンなのだ。休日を休日と呼んでる限り、労働のための人生は無くならない。来世では、休日が無くなってますように。 破り捨てられた遺書には、そう書いてあった
「N〇K受信料の集金です」 「ウチ TV無いんで」 「嘘。一緒に住んでたんだからわかるよ」 「君が出てってから、捨てちゃったんだよ」 「どうして?」 「…このTVで一緒に映画とか見てたなぁ…って思い出すの、辛くて」 「…また一緒に、映画見よ?」 後日 一緒にTVを買いに行った。 受信料は払わされた