シゲルは、ゲームのボス戦で負けそうになると、すぐリセットする困った奴だった。 そんなシゲルが受験に落ちたらしい。家に行くと、シゲルは意外と元気そうだった。でも、机の上の新品のカッターが気になった俺は、それを盗んだ。 大人になって、同窓会で彼にこう言われた 「あの時は、ありがとう」
「なぜ何時間も考えた話がバズらなくて、1分で考えた話がバズるんだ…」 「先生、違います」 「!?」 「何時間も苦悩した日々があるから、たった1分で優れた発想が湧く日も来るのです。迷走と言う名の鍛錬無くして、名作は生まれません」 「……」 いきなり部屋に現れたコイツが怖くて、私は110番した。
お爺さんはある日 罠にかかっている鶴を助けた。別の夜 お爺さんの家に白い着物姿の若い娘がやって来た。娘は裾をまくって足を見せると、そこには酷い傷跡があった。娘は氷のような目で問う。 「あの罠を仕掛けたのは誰か、ご存知ですか?」 爺さんは滝汗をかき、答えた。 「ワ、ワシじゃないぞ…?」
「豚さん壊したくない…」 娘は豚型貯金箱に愛着が湧いてしまったらしい。しかし、壊さねばお金は取り出せない。 「娘ちゃん」 「?」 「お金を取るか、豚を取るか、選ぶんだ」 「……」 月日は流れ、娘は高校生になった。 「あ~…お金欲しい…」が娘の口癖だが、豚さんは今も、娘の机の上にいる。
「ひっ…!」 私は恐怖した。 捨てたはずのフランス人形が、今日も玄関前に戻ってきていたからだ。 私は監視カメラを設置して真相を確かめる事にした。 もう1度捨てると、やっぱり人形は戻ってきた。 映像を確認すると、人形を戻していたのは夫だった。 私は恐怖した。 夫は、もっと前に捨てたのに。
俺のサークル同期の女子に、チョロ過ぎて心配な子がいる。 普段、大人しくて目立たないくせに、男慣れしてないせいか飲み会で周りから「可愛い」って言われただけで終電逃すし、聞かれたらすぐLINE ID教えちゃってる。 「もう少し危機感持ちなよ」 「じゃあ…俺君が守って?」 俺はLINE IDを交換した。
私には尊敬する作家さんがいる。彼の作品はどれも★2.0を切っており、レビューは酷評の嵐だ。なのに、彼は世間の評判を気にせず、息をするように作品を出し続けている。その尊敬すべき鋼の精神はどうやって培われたのか、本人にメールで聞いてみると、返信があった。『教えないで欲しかった……』
「近くで殺人事件があったらしいよ」 「マジ?」 「しかも、まだ凶器の包丁は見つかってないんだ」 「……待て、なんで見つかってないのに、凶器が包丁って知ってるんだ?」 「…頼む、犯人を見つけてくれ」 そこで目が覚めた。TVでニュースが流れた。被害者の名前に、夢に出て来た友人の名があった。
34歳になった日の朝、男は唐突に予感する。 「あ…俺、近々死ぬかも」 男は亡くなる前に、疎遠になってた友人も含め、1人1人に会ってまわる事にした。それは、昔話に花を咲かせる事で『案外、悪くない人生だったな』と、己が人生を見つめ直す旅でもあった。その後、死は訪れた。97歳の大往生だった。
綺麗な写真を撮る人だった。 構図もレタッチも完璧で、その人が写し出す自然美の数々に私はすっかりファンになった。 でも最近のその人は自撮りしか投稿しなくなった。 もしかしてアカウント乗っ取られた?なぜ風景を撮らなくなったのかDMで聞くとこう返ってきた『1番美しいのは私だと気付いたので』
「N〇K受信料の集金です」 「ウチ TV無いんで」 「嘘。一緒に住んでたんだからわかるよ」 「君が出てってから、捨てちゃったんだよ」 「どうして?」 「…このTVで一緒に映画とか見てたなぁ…って思い出すの、辛くて」 「…また一緒に、映画見よ?」 後日 一緒にTVを買いに行った。 受信料は払わされた
ネットは怖いね。。 また、ニュースで殺人事件が報道されたよ。。ネットで知り合った人と会って、殺されちゃったんだって。。怖いよね。。犯人はまだ捕まってないんだって。。その犯人は、今日もネットを徘徊してるんだろうな。。文章が特徴的なんだって。。文末に「。」を2つ重ねるそうだよ。。
彼はスマホを眺めて、愛しそうに微笑んでいる。 ちょっとだけ、嫉妬してしまった。そんな微笑みを向けてくれるのは、私に対してだけだと思ってたから。 「ねぇ、何見てるの?」 「え?あー…コレ」 彼が照れ臭そうに画面を向けると、私の頬は熱くなった。画面には、雪の中の、私の写真が映ってたから。
面接官やってると、就活生のSNSアカウントを裏で調査しておくなんて基本中の基本だ。いま俺の目の前にいる就活生は、SNS上でも真面目で、全く問題無かった。 「では最後に、何か質問はありますか?」 「面接官さんは先週からSNS上で女の子に猛アタックしてましたが、会えました?」 「…………いえ」
デートで終電が無くなった私は、彼氏の家に初めてお泊まりする事になった。 そしたら、まさかの実家。 まぁいいか。 と思ってあがると、居間に服を着たマネキンが2体座ってた。顔にはクレヨンで笑顔が描かれている。額にはそれぞれ、父・母とあった。立ち尽くす私の後ろで、チェーンを閉める音がした。
『私は小さい頃、トランプタワーが大好きでした。高く積み上げたトランプが一気に崩壊していく様に、なんとも言えない快感を覚えたのです。もっとこの感覚を味わいたい。そのために、もっともっと高く…』 タワー専門建築家のインタビューが怖すぎて、高く積み上げられた彼の地位は、見事に炎上した。
「予告通り、今日、お前の命を取り立てる」 死神が鎌を振り上げるのを見て、俺は目を瞑る。 「あぁ。おかげで、人生で最も充実した1年間だったよ」 「どうだ?まだ『死にたい』か?」 「…いや、生きたい」 俺達の間に、沈黙が流れた。 「今までのお前は、今、死んだ」 目を開くと、死神の姿は無かった
俺が出世したくない理由は簡単だ。 俺より倍以上も長く勤めてる上司が毎日、自分のデスクで手作り弁当を食べているからだ。昼飯すら贅沢出来ない出世に何の意味があるのか。俺は皮肉も込めて上司に「お昼どっか行かないんですか?」と聞くと上司は言った「妻の弁当以上に、贅沢なものは無いからな」
「本当にいいんですか?この物件は、幽霊が出ると評判ですが…」 「いいんです」 俺は荷物の開封を終え、部屋の中を見て回った。柱にはペンで120cmと書かれてる。身長を測った跡だ。ふと、人の気配がして振り向いたけど、誰もいなかった。 母さん? ただいま 俺、今はもう178cmもあるんだよ
『SNSで他人の言葉にイラッとした事はありませんか? 報復、承ります。 私の用意してる97種のアカウントを駆使し、あなたの差し金と気付かれず、自然な流れで相手に不快な思いをさせてみせます。プランは以下。 暴言プラン:1000円 晒しプラン:2500円 住所特定プラン:1万円 』 …… 1万かぁ…。
幼馴染と俺の中身が入れ替わって5日になる。いつになったらお互いの体に戻れるんだろう。 「お母さん。俺…あ、私 今日 晩ご飯いらないから」 「懐かしいわね」 「?」 「覚えてないわよね。アンタ小さい頃、1人称をよく間違える時期があったの」 もしかして… 今、俺達は入れ替わってるんじゃなくて…
僕は昔から人前で怒られるのが大の苦手だった。恥ずかしくって情けなくて何もかも嫌になる。だから仕事でも、決して全体メールや人前では後輩を叱らず裏で怒る事にしたんだ。そしたら〝二重人格〟と恐れられるようになった。でも僕の逆バージョンの上司は人気者だ。いつの間にか、上司は亡くなってた。
父の訃報が届いた。 俺が歌手を目指して家を飛び出したその日から、俺は勘当されてると言うのに、今更どの面下げて葬式に出ろって言うんだ。 出棺される父を見送る。話によると、出棺の際に流す曲は、予め指定できるらしい。それは、父の遺言の1つだったそうだ。流れたのは、俺のデビュー曲だった。
地球を背に宇宙ステーションで外壁のメンテをしていると、奇妙なモノが漂っていた。 人骨だ。 持ち帰って検査してみたが、やはり、人骨で間違い無かった。どうして宇宙空間にこんなものが…? 調べると、すぐに真相はわかった。今頃地球では、宇宙葬のやり方について見直していることだろう。
「思えば、お前とは随分と旅したなぁ…ピカチュウ」 「ピカ♪」 「お前と山ではぐれた時は、もう2度と会えないかと思ったよ」 「ピカ!」 「もういいよ、ピカチュウ」 「ピカ?」 「ずっと…演じてくれてたんだろう?」 「……」 「もう、いいんだ。ありがとう、メタモン」 「…………モン」