一流企業に入る奴は馬鹿だね。 優秀な場所には、優秀な奴が集まる。世の中、上には上がいるんだ。自分が築いたチンケなプライドは、ズタズタに引き裂かれる。だから、そこそこの会社で無双してる方が、ずっと幸せな人生を築けると俺は考えた。それが御社を志望した理由ですって言ったら落とされた。
最近どういう訳か、20代後半の男女グループの宿泊客が増えている。どれも30人くらいの大所帯だった。旅館側が言うのもなんだけど、大人ならもっと、良い旅館に泊まれるだろうに。気になったので、どういう集まりなのか聞いてみた。 「昔、コロナで行けなかった修学旅行を今、取り戻してるんですよ」
【青春の回収】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 まだ少し熱はありますが、お陰様で復活しました!😊 皆様の暖かいコメント、全て読ませていただだきました! 誠にありがとうございます😭
久々にDMが来た。知らないアカウントからだ。 『ワシじゃよワシ。最近、SNSってのが流行ってるんじゃろ?ワシも始めてみたんでよろしゅうな』 ワシワシ詐欺かと思ったけど、お母さんに確認したら本当にお爺ちゃんだった。その歳で新しいモノに挑戦するお爺ちゃんを私は心底尊敬した。でもそれmixi。
夕日がさす放課後の廊下。 生徒指導室に、意外な生徒が入っていくのが見えた。 「ん?いまの2年A組の委員長だよな。あんな真面目な子でも、生徒指導室に呼ばれたりするんだな」 俺はそれが少し嬉しかった。人間、誰でも過ちはあるんだな。 生徒指導室の前を通り過ぎる時、中から鍵をかける音がした。
勇者の剣は2度、王の血に染まった。 1度目は魔王の血に。 2度目は勇者の祖国、その王の血に。 臆病な王は恐れたのだ。 魔王と、それをも超えた勇者の力を。 しかし宴の席で振る舞われた毒酒は、家臣の裏切りにより、勇者の喉を通る事は無かった。 そして王は、平和の時代、その最初の死者となった。
『俺と……………付き合ってくれない?』 『その前に、言いたい事が5つあるの。 1: LINEで告白はやめようね。 2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。 3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。 4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。 5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』
私には一流企業で働く彼氏がいる。イケメンでエリート。でも私は他の人を好きになってしまった。平日だけど、今日はその人の家でデート。彼氏は今頃一生懸命働いているのに、私は他の男に会っている。その罪悪感が私の心をスパイスした。頼んでたUberが来たみたい。ドアを開けると、彼氏が立っていた。
ぐっ……滑って打った頭から、血が止まらない…。 まずいぞ…意識が薄れてきた。救急車は呼べたが、間に合うだろうか…。万が一……俺が死んでも家族が処理に困らないよう…PCや銀行のパスワードを遺さねば……ペン……無い……仕方ない、血文字で残すか……パスは…最愛の…弟の…名……『masayuki』
------------ 田 中 無 敵 山 太井秋中神 郎美川一近 ------------ 人名テトリスか…俺、歴史苦手だから、人物のフルネームとか全然わかんね。いいや、適当に友達の名前揃えるか。お、消えた。 ……なんで? 嫌な予感がした俺は田中に電話した。出なかった。田中は未だに、見つかっていない。
「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」 「いや、妻だよ」 「…失礼。今、なんと?」 「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
AIが奪える人間の仕事には、限界がある。 俺はたった今読み終えた小説を閉じ、涙を拭いた。そう、例えばこういった心を打つ物語は、AIには創れない。なぜなら、AIには心が無いから。文字をどう羅列すれば人の心は動くのか、それは人間にしかわからない世界なのだ。検索すると、小説の作者はAIだった。
「またお腹が痛くなったのかい?」 「うん!でももう治った!」 そう言ってこの母子はいつも帰っていくのだ。看護師曰く「多分あの子、待合室の鬼滅の刃が読みたくて、仮病使ってるんですよ」との事だ。 後日、いつもの母子が来ると、奥さんはひっそりと私に聞いた。 「あの…先生って独身ですか?」
ウチのPS2はすっかりボケてて、毎日勝手に起動する。だけど今日はやけに静かだ。1度も起動しない。 「PS2…?」 そして、PS2が起動する事は二度と無かった。もしかしたら、PS2は最期に遊んで欲しかったのかもしれない。だから俺は、せめてPS2と一緒に遊んだ日々を、心のメモリーカードに保存した。
「兎と亀の話は妙だよママ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
お婆ちゃんが亡くなってから、家の市松人形の髪が伸び始めた。 しかも、一晩経つと勝手に移動している。何度直しても、翌日にはお婆ちゃんの仏壇の傍に移動してる。きっと、髪の毛は伸び始めたんじゃなくて、お婆ちゃんがこっそり切ってあげてたんだ。 今では、私が髪の毛を切ってあげている。
「今日は皆に転校生を紹介する…が、その前に転校生の鈴木さん、君に言っておく事がある」 「なんですか先生?」 「パンを咥えながら登校するな。朝食は家でとりなさい」 「はぁい」 「あとバイク通学は禁止だ。いいな?」 「はぁい」 「よし。じゃあ君の席は、今朝病院に運ばれた安田の隣だ」
「見ろよ。『底無し沼』だって。本当かな?」 「試してみれば?ヤバかったら引き上げてやるよ」 すると、友人は「ヨシ」と言って底なし沼にドボンした。 「…あ、やべ、これやべぇ!引っ張って!早く!早くぅ!!」 「わかったから落ち着け、ビビリ過ぎだろ」 「違う!何かが俺の足引っ張ってる!!」
「トロッコ問題、アナタならどうする?」 サイコパス「トロッコは一台しか来ないのですか?」
ある、雪の日の事だ。 チャイムに出ると、お隣の奥さんが立っていた。 「あの…作りすぎちゃったんで、よければ」 そう言って奥さんは、抱っこしている赤ちゃんを僕に差し出した。 「はは…冗談ですよね?」 「……」 「冗談ですよね?」 奥さんは俯いて、無言で帰っていった。 もう、5年も前の話だ。
「ねぇパパ、大人になると幽霊って怖くなくなるの?」 「うん、昔よりは怖くないな」 「どうして?」 「そうだなぁ…大事な人とか結構 向こうにいっちゃったからかな。幽霊を怖がってちゃ 可哀想だろう?」 仏壇の前で、そんな父の言葉を思い出していた。 お盆くらい、姿見せてくれてもよかったのに。
俺の目の前で、おっちゃんがひったくりにあった。俺は急いで犯人を追いかけ鞄を取り返してやった。 後日 就活の面接に向かうと、あの時のおっちゃんがいた。志望会社の役員だった。 「君のような若者と私は働きたい」と言われ内定ゲット。その夜、俺はひったくり犯を演じてくれた友人と祝杯をあげた。
社内のネットワーク管理者である俺には、社員が業務PCでどんな検索をしてるのか丸わかりだ。すると こんな検索結果が並んだ。 『見ているな?』 『貴様見ているな?』 『この覗き魔が』 『わかってるぞ』 『見るんじゃねぇ』 『仕事辞めたい』 『その仕事代わって』 うるせぇ。 いいから仕事しろ。
「タケシ!宿題ばっかして!ゲームはやったの!?」 「ち、ちゃんとやったよ!」 「エビデンスは?マイルストーンは把握してる?まだ進捗報告を受けて無いんだけど?」 「オ、オンスケです…」 「本当?」 「……」 「はぁ…これはパパにエスカレーションが必要ね」 そうして僕は、科学者になった。
描いた絵を投稿していると、憧れの絵師さんがイイネをくれた。 私はそれが嬉しくて、沢山絵を描いた。 自分でも、昔より大分上手くなったと思う。フォロワーさんもかなり増えた。でも、憧れの絵師さんは、いつの間にか私にイイネをくれなくなっていた。 私はそれが嬉しくて、もっと沢山絵を描いた。