「見ろよ。『底無し沼』だって。本当かな?」 「試してみれば?ヤバかったら引き上げてやるよ」 すると、友人は「ヨシ」と言って底無し沼にドボンした。 「…あ、やべ、これやべぇ!引っ張って!早く!早くぅ!!」 「わかったから落ち着け、ビビリ過ぎだろ」 「違う!何かが俺の足引っ張ってる!!」
ふざけて変な名前でギャルゲをプレイしてると、最後に奇妙な映像が流れた。暗い山中に主人公がヒロインの遺体を埋める映像だった。どうやらその名前限定の隠しイベントで、俺が最初の発見者だ。 調べると変な名前は実在した。 ゲームの製作者に。 ヒロインの名前も実在した。 行方不明者のリストに。
お婆ちゃんが亡くなってから、家の市松人形の髪が伸び始めた。 しかも、一晩経つと勝手に移動している。何度直しても、翌日にはお婆ちゃんの仏壇の傍に移動してる。きっと、髪の毛は伸び始めたんじゃなくて、お婆ちゃんがこっそり切ってあげてたんだ。 今では、私が髪の毛を切ってあげている。
「さぁ、貴様の願いを言え」 「魔人よ、俺を不老不死にしてくれ」 「断る」 「出来ないのか?」 「出来る。しかし、やめておけ」 「なぜだ?」 「その願いの行き着く先は、終わりなき絶望と後悔だからだ」 「なぜわかる?」 「同じ願いを叶えたからだ。かつて、私が人間だったころに」
「兎と亀の話は妙だよママ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
「あ、キャベツ安い」 久しぶりに自炊しようかと思ったけどやめておいた。最初は楽しかったが、疲れもあり、メンドくささが勝ってしまったのだ。 「早く奥さん見つけたいなぁ…」 そして1年後、俺は結婚した。 「美味しい?」 「最高♪」 やはり俺は、大切な人に食べてもらってこそ、料理を楽しめる。
「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」 「いや、妻だよ」 「…失礼。今、なんと?」 「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
自分で自分の足の骨を折る国民が相次いだ。俺も、いい加減に足を折らねば…。徴兵され、無駄な戦争に送り込まれるのを避けるためだ。そんな世で、ある時、誰かがこう言った。 「真に折るべき骨は、1つだけだ」 少しして、独裁を極めた我らが国王の訃報が国中に広がった。首の骨を折られていたそうだ。
課長は言った。「そういえば、今日はホワイトデーか…じゃあ、お返ししなくちゃな。俺にチョコをくれた女子社員は、定時で帰っていいぞ。〝ホワイト〟デーだからな」 俺はキレた。 「課長」 「なんだ?」 「定時上がりは普通です」 「え?」 「あと、課長の机に入ってたチョコは間違いだったそうです」
ぐっ……滑って打った頭から、血が止まらない…。 まずいぞ…意識が薄れてきた。救急車は呼べたが、間に合うだろうか…。万が一……俺が死んでも家族が処理に困らないよう…PCや銀行のパスワードを遺さねば……ペン……無い……仕方ない、血文字で残すか……パスは…最愛の…弟の…名……『masayuki』
「男ならハンカチは常に2枚持つものさ。女の子が泣いてる時、差し出すためにね」 ギャグならまだしも、大真面目にそう言う彼に、私は正直引いていた。でも、そんな彼を好きになってしまった。校舎裏で告白すると、返事は「ごめん…」だった。彼が差し出してきたハンカチを、私は目の前で破り捨てた。
俺は子供嫌いだ。 常に泣くし喚くし我が儘だし、正直に言って嫌う要素の塊でしかない。姉夫婦が事故で他界して、遺された幼い姪を引き取ってからは地獄だった。 そんな日々も今日で最後だ。純白のドレスを着た姪が口を開く。 「今までありがとう、お父さん」 人前で泣いたのは、子供の時以来だった。
『俺と……………付き合ってくれない?』 『その前に、言いたい事が5つあるの。 1: LINEで告白はやめようね。 2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。 3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。 4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。 5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』
酔った勢いでお地蔵様を倒してしまった。首が取れて大変なことになっている。 「僕、N山Y太と申します。XX市XX町7-1-2の●●荘の105号室に住んでます…どうか祟らないでください!」とお願いしておいた。 後日、俺の双子の弟であるN山Y太の部屋で、怪現象が相次いだ。祟りにも冤罪ってあるんだな。
「あ~あ…やっちまった」 足元に缶珈琲をこぼしてしまった。ふと『珈琲は飲むよりこぼした方が目が覚める』というネタを思い出し、1人で笑った。また2人で笑える日は来るだろうか。病室のベッドで横になる妻に目を向ける。すると、妻はその目をゆっくりと開いた。2年ぶりに、妻は目を覚ましてくれた。
女友達が手首を切って自殺を試みたが、失敗した。 あり得ない。彼女は敬虔な教徒であり、彼女の宗派では、自殺は地獄に行くほどの大罪なのに。 「なぜ自殺未遂を?」 「恋人に先立たれたの…」 「死に急ぐな。いつか天国で彼に会えるだろう」 彼女は首を横に振った。 「きっと、そこに彼はいないから」
「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」 通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。 翌日、XX駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。
とある新人作家が殺された。 その後、出版社に『奴の本をこれ以上刷ったら、会社を爆破する』との脅迫が続いた。 程なくして、作家を殺した犯人は捕まった。案の定、脅迫犯と同一人物だった。脅迫の動機を、犯人はこう語る。 「奴の本が誰かに読まれ続ける限り、奴が完全に死んだことにならないのだ」
私の彼氏凄い。 腕も胸板もヒョロいのに、腹筋だけはバッキバキに割れてる。「どうして腹筋だけ?」って聞いてみた。 「1年前、イイネの数だけ腹筋するってツイートしたら、3.8万も集まっちゃって…でも、もうすぐ達成するんだ♪」 私はそのツイートを見つけ、10万人のフォロワーに向けて拡散した。
「パパ見て!大きな雪だるま作ったの!」 「おぉ、凄いじゃないか」 息子に呼ばれ庭に出てみると、俺の背丈と同じくらいの立派な雪だるまがそこにはあった。 「お婆ちゃんにも見せてあげよう」 「うん!」 と家の中に駆け戻る息子。ふと嫌な予感がして雪だるまを削ると、中でお爺ちゃんが凍えていた。
「ねぇ ワタシ綺麗…?」 「ん?お姉さん どこ?」 「…アナタ、目が見えないの?」 「うん。でもね、おかげで色んな事がわかるようになったの」 「……」 「お姉さんのお顔は見えないけど、心が綺麗なのはわかるよ!そういう声、してるもん」 「……」 「お姉さん?」 以後 口裂け女は現れなくなった
とある新人賞を獲るのがずっと私の夢だった。だけど、書けども書けども、満足のいく作品は出来ない。こんな駄作ばかりでは、新人賞など夢のまた夢だ。試しに応募してみると、後日メールが届いた。新人賞、受賞の連絡だった。 「見る目が無い…」 かつて憧れた新人賞に失望した私は、賞を辞退した。
「泥棒ー!誰か捕まえて!」 私が叫ぶと、通行人の男性が泥棒を取り押さえてくれた。 「失礼、僕は先を急ぐので…警察が来るまでこうしておきましょう」 彼は鞄から縄と手錠と目隠しを取り出すと、泥棒を縛りあげ、ガードレールに繋いだ。彼は笑顔で去っていったけど、目は笑っていなかった。
「塾、行ってきまーす」と玄関から娘の声。掃除をしていた私は「いってらっしゃい」の声だけ返す。 さて、次は買い物だ…と、玄関を出た瞬間、引き返して家中を探した。娘のベッドの下に、塾をサボってスマホを弄っている娘がいた。 「どうしてわかったの?」 「家の前の雪に、足跡が無かったからよ」
異世界転生した俺のチート能力名は〝神殺し〟だ。この力で悪神を倒し、英雄となった俺は唐突に悟った。俺は漫画の中の住人なのだと。作者の思い通りの人生なんてごめんだ。いっそ神(作者)にこの能力を…。 『よせッ!』 !? 頭に直接声が…神(作者)か!? 『それをやると…』 やると…!? 『編集長が死ぬ』