「諸君。近年、我が国の少子化は進む一方だ」 「なんと…それは本当ですか?」 「あぁ。実に素晴らしいことだ」 「このまま、子供が我が国に生まれなければいいのですが…」 「それは非常に難しい…が、いつかその日が来ることを、切に願うよ」 「子供には早過ぎますからね。この、天国は」
面接官やってると、就活生のSNSアカウントを裏で調査しておくなんて基本中の基本だ。いま俺の目の前にいる就活生は、SNS上でも真面目で、全く問題無かった。 「では最後に、何か質問はありますか?」 「面接官さんは先週からSNS上で女の子に猛アタックしてましたが、会えました?」 「…………いえ」
「俺達、卒業してもずっと友達だよな」 「………」 「友達だよな?」 「ごめん。君とはもう友達でいられない」 「え?」 「僕のことは、今日からお義父さんと呼んで欲しい」 「え?…………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
「近くで殺人事件があったらしいよ」 「マジ?」 「しかも、まだ凶器の包丁は見つかってないんだ」 「……待て、なんで見つかってないのに、凶器が包丁って知ってるんだ?」 「…頼む、犯人を見つけてくれ」 そこで目が覚めた。TVでニュースが流れた。被害者の名前に、夢に出て来た友人の名があった。
「おいおい、なぜ俺のスープに髪の毛が入ってる?シェフを呼べ」 しかし、シェフは自分の髪だと認めず、俺の髪の毛だと宣う。上等だ。俺達はその髪の毛をDNA鑑定にかけた。その結果、シェフは、幼い頃に生き別れた実の兄であると判明した。 「弟…」 「兄さん…」 やっぱり、お前の髪の毛じゃねぇか。
私には尊敬する作家さんがいる。彼の作品はどれも★2.0を切っており、レビューは酷評の嵐だ。なのに、彼は世間の評判を気にせず、息をするように作品を出し続けている。その尊敬すべき鋼の精神はどうやって培われたのか、本人にメールで聞いてみると『教えないで欲しかった……』と返信がきた。
「俺も、もう歳だ。そろそろ免許返納するかな」 「あなた…」 「その前に…最後のドライブに行かないか?」 「プロポーズも、車の中でしてくれたわね」 「覚えてたのか」 「当然よ」 ドライブを終え、家に戻ると、夫はしばらく運転席を離れなかった。そして「楽しかったなぁ…」と呟き、車を降りた。
彼氏と一緒に受験勉強を頑張った。 2人で同じ大学に合格するために! でも…私は落ちた…。 彼氏になんて言おうか泣きながら悩んでると、彼から連絡が来た。 「ごめん…俺…落ちた」 彼には悪いけど、正直ホッとした。 「私もだよ!一緒に滑り止め大学通えるなら、結果オーライ♪」 「全部落ちた」
妹と一緒にホラー映画を観た夜の事だった。 寝ようと電気を消すと、妹が「お兄ちゃん…一緒に寝てもいい?」と部屋に入ってきた。普段は生意気なくせに、可愛い所もあるじゃないか。 翌日、「今夜も一緒に寝てやろうか?」と妹を茶化したが、どうにも話が嚙み合わない。昨夜は一人で寝てたらしい。
「豚さん壊したくない…」 娘は豚型貯金箱に愛着が湧いてしまったらしい。しかし、壊さねばお金は取り出せない。 「娘ちゃん」 「?」 「お金を取るか、豚を取るか、選ぶんだ」 「……」 月日は流れ、娘は高校生になった。 「あ~…お金欲しい…」が娘の口癖だが、豚さんは今も、娘の机の上にいる。
お爺さんはある日 罠にかかっている鶴を助けた。別の夜 お爺さんの家に白い着物姿の若い娘がやって来た。娘は裾をまくって足を見せると、そこには酷い傷跡があった。娘は氷のような目で問う。 「あの罠を仕掛けたのは誰か、ご存知ですか?」 爺さんは滝汗をかき、答えた。 「ワ、ワシじゃないぞ…?」
友人の家に遊びに行ったら、無数のトロフィーが飾られていた。学術的なものから陸上競技まで、実に多種多様なトロフィーで溢れている。 「お前…実は凄い奴だったんだな」 「いや、まだまだ全然だよ」そう言って友人は照れ臭そうに笑い、こう続けた。「始めたばかりだからね、トロフィーの自作」
「なぜ何時間も考えた話がバズらなくて、1分で考えた話がバズるんだ…」 「先生、違います」 「!?」 「何時間も苦悩した日々があるから、たった1分で優れた発想が湧く日も来るのです。迷走と言う名の鍛錬無くして、名作は生まれません」 「……」 いきなり部屋に現れたコイツが怖くて、私は110番した。
バイトでレジしてると、お手本のような恋人繋ぎをしてるカップルが来た。会計の時ですら2人は手を放さない。彼氏が財布を取り出し、彼女が紙幣を抜き取ってあげる共同作業。ここはホームセンターだが、そういうのはホームに帰ってからやれ。イラつきながら商品を確認すると、接着剤を剥がす液だった。
小学校で、給食の時間、女子が転んでカレーを僕にブチまけた。 女子は泣きそうになってる。泣きたいのは僕の方だけど、我慢してこう言った。「ごめんね、僕のTシャツがカレー食べちゃった」 その日以来、僕のあだ名はスモーカー大佐になった。でも1つ気になる事があるんだ。スモーカー大佐って誰?
レジでお客さんの会計していると、スーツ姿の紳士は財布からブラックカードを取り出した。生で見るのは初めてなので驚いた。なぜか紳士も驚いている。紳士は照れ臭そうに言った。 「『パパの夢は?』と聞かれて、このカードを黒にすることだって答えたから、娘がこっそり塗り潰しちゃったみたいです」
「ねぇねぇ、ママはパパとどうやって出会ったの?」 「そうねぇ…あれは、私が海を眺めながら1人で泣いてた時だったの。パパが通りかかって、声をかけてくれたのよ」 「わぁ、素敵!なんて声かけてくれたの?」 「『どしたん?話聞こうか?』ってコメントくれたの」 「海ってもしかして、電子の海?」
「母さん?オレオレ」 「え、この声…ツヨシ?」 「そうそう、ツヨシ」 「そんな…どうして…ちゃんと産め…!」 「は?」 「…そんなハズない。アンタ、詐欺でしょ?」 「チッ」 そこで俺は電話を切った。 さっさと次行こ。 だが、向こうの言いかけた言葉が気になった。 産め…… ……………埋め?
昔の事だから言うわ。 性欲ピークだった大学時代、講義サボってバイトして初風俗行ったんよ。んで、ピロートーク中、嬢はこう言ったんよ「私、大学行きたくてお金貯めてるんです」 俺は俺が無性に恥ずかしくなった。講義は卒業まで2度とサボらなかった。嬢のパネル写真は、いつの間にか無くなってた。
「先生!いい加減〆切やばいです!最悪、ネームでいいので下さい!」 「はぁ…仕方ない…本気を出すか…」 先生はそう呟き、リストバンドを外して落とすと、床にめり込んだ。 「!?」 「30分、待ってな」 そう言って先生は部屋に籠った。 30分後、部屋に入ると、窓が開いてて先生の姿は無かった。
俺の目の前で、おっちゃんがひったくりにあった。俺は急いで犯人を追いかけ鞄を取り返してやった。 後日 就活の面接に向かうと、あの時のおっちゃんがいた。志望会社の役員だった。 「君のような若者と私は働きたい」と言われ内定ゲット。その夜、俺はひったくり犯を演じてくれた友人と祝杯をあげた。
僕は性善説を信じている。人間、悪いやつなんていないんだ。この前だって、電車で赤ちゃんの泣き声にマジギレしてるオジさんと冷静に話し込んだら「仕事続きで、ストレスが溜まってたんだ…すまなかった」って素直に謝ってくれた。やっぱり、人は話せばわかるんだ。そうでなかった奴は消してる。
「ねぇパパ、大人になると幽霊って怖くなくなるの?」 「うん、昔よりは怖くないな」 「どうして?」 「そうだなぁ…大事な人とか結構 向こうにいっちゃったからかな。幽霊を怖がってちゃ 可哀想だろう?」 仏壇の前で、そんな父の言葉を思い出していた。 お盆くらい、姿見せてくれてもよかったのに。
ある、雪の日の事だ。 チャイムに出ると、お隣の奥さんが立っていた。 「あの…作りすぎちゃったんで、よければ」 そう言って奥さんは、抱っこしている赤ちゃんを僕に差し出した。 「はは…冗談ですよね?」 「……」 「冗談ですよね?」 奥さんは俯いて、無言で帰っていった。 もう、5年も前の話だ。
息子がプロゲーマーになりたいと言い出した。 「馬鹿言わないの!叔父さんを知ってるでしょう?あの人もプロ目指した挙句、30超えて何の職歴も無いのよ?あんな風になりたくないでしょう?」 すると息子は俯き、呟いた。「うん…なりたくないよ」そしてこう続けた「夢に挑戦した人を、見下す大人には」