ケンジはどちらかと言うと、顔が良い方ではなかった。頭が良い方でも、トークが特別上手いわけでもない。それでもケンジは、今までに5人の彼女を作り、その全てはナンパで捕まえたと言う。 「一体どんなトリックなんだ?」 俺がそう問うと、ケンジは一言、こう答えた。 「5勝829敗」
「チッ 雨かよ…」 俺は傘立てから適当なビニール傘を選び盗る。ビニール傘はシェアするものなのだ。傘を開くと、内側にこう書いてあった。 『お父さん、誕生日おめでとう』 俺は泣いた。泣きながら傘立てにその傘を戻した。そして濡れながら帰った。 「誕プレ、コンビニのビニール傘かぁ…」
「呪いの140字小説ってのがあるらしい。読んだ人は必ず死ぬ。RTすれば助かるんだ」 「…お前、読んだんだな?」 友人は頷いた。 「早くRTしろ!」 「……その必要は無い」 「まさか…お前…自分が犠牲になって拡散を止める気か?」 「いや、作者のアカウント 貞子@sada_ko_dayoが凍結されたんだ」
「最近、英語のリスニング頑張ってるんだ」 「映画を字幕無しで見れるようになりたいって言ってたもんね」 「でも、相変わらず何言ってるか全然わかんねぇんだ」 「そんな難しいの?なんて映画?」 「これ」 俺はスマホで映画を再生する。 「わかる?」 「うん、これがフランス語ってのはわかる」
家に帰ると荷物が届いていた。僕はすぐに配達担当の人に電話した。 「なぜ荷物が家の中にあるんですか?」 『え?』 「不法侵入ですよね?」 『いえ…奥様が受け取られたのですが…』 意味がわからない。 僕は…独り暮らしだ。 後ろを振り向くと、クローゼットの隙間から、こっちを見てる人がいた。
「ママはどうしてパパと結婚したの?」 「私がレンタル屋でバイトしてた頃、パパは常連さんだったのよ。いつも借りたビデオは最初まで巻き戻してから返してくれた。それで、あぁ そういう気遣いが出来る人と結婚したいなぁ…って思ったの」 幸せそうに語るママに私は更に聞いた。 「巻き戻しって何?」
『Bot確認です。以下の問いに答えて下さい』 「なんだ?全問簡単な算数じゃないか…むしろBotの得意分野だろ」 選択肢の中から回答を選ぶ。 「…待て、全問答えがAになっちまった…どこか計算ミスってないか?」 暫く悩んでると画面が切り替わり、次に進めた。俺はBotじゃないと判断されたらしい。
トロッコ問題。分岐点の先で線路の上に寝かされている5人と1人。どちらを救うかレバーで決める。 「お前ならどうする?」 「寝かされてたっけ」 「そこはどっちでもいいだろ」 「人をどかせて救えないの?」 「無理」 「じゃあ1人を見捨てる。その代わり、トロッコが来る前に、僕も隣に寝てあげる」
アパートに帰ると、お隣の男子大学生が自室の前で体育座りしてた。 「鍵無くしたの?」 「いえ、終電逃した女友達を中に泊めてるので」 「それで君は外に?紳士過ぎない?」 「いえ、せめて床に寝せてって頼んだら『ダメ』って…」 「え、女の子に追い出されたの?」 「はい。そんな所に惚れたんです」
「俺達、親友だよな」 「どうした改まって」 「戦場に行く前に、お互いだけの秘密を共有しないか?」 「いいぜ」 「じゃあ俺からな。実は俺の姉、血が繋がってないんだけど、好きになっちまったんだ」 「マジなのか?」 「あぁ。次は、お前の秘密を教えてくれ」 「お前の姉ちゃんと付き合ってる」
「こら!パパのお供えモノ食べちゃダメでしょ!」 翔子は仏壇から豆大福をとって食べた息子を叱った。 生前、夫の大好物だったものだ。 シュンとして、息子が呟く 「パパならきっと、わけてくれたモン…」 「……そっか、そうだね」 遺影に目を向けると、夫は笑っていた。
「私はランプの精。さぁ願いを3つ叶えてやる」 「お願い!私の彼氏を生き返らせて」 「うむ」 後日 「残る願いは2つだ」 「私の彼氏を生き返らせて」 「また死んだのか?いいだろう」 後日 「最後の願いを言え」 「彼を生き返らせて」 「またか?」 「えぇ。あの男は、何度殺っても足りないから」
俳優の夢を諦めた時、人生が一気に色褪せた。 どうやって死のうかと毎日考えてた俺に友人が言った。 「死ぬ前に、この漫画読んどけ」 それが、尋常じゃないくらい面白い。あっという間に最新刊まで読んだが、まだ完結してないらしく、親友に聞いてみた。「なぁ、HUNTER×HUNTERの続きいつ出るんだ?↓
今日も会社と家の往復を済ませ、夢も希望も無い毎日から逃避するように、ゲームを起動する。 「そういや、川島の奴は夢を叶えたのかな…」 ゲームを全クリし、スタッフロールが流れる。 すると、見覚えのある名前が目についた。 〝ディレクター:川島 一〟 俺は泣きながら、ゲームの電源を切った。
初めて彼氏の家に行ったらなぜか洗面台の鏡にキスマークがついてて、口紅も置いてあって「なんなのこれ?」って思って問い詰めたら慌て始めて、余計に怪しくて強く聞いたら「初キスで緊張しないよう、女装して鏡の自分と向かい合ってキス練してた」って白状されたんだけどキスは死ぬほど下手だった。
ノートとペンが道端に落ちていた。ノートは真っ黒で異様な存在感を放ってる。ページを捲るとびっしり人名が書かれていた。調べると全て犯罪者の名前で、全員死亡済だ。僕は怖くなってノートを燃やした。後日 学校のテストで名前を書くと、意識が薄れ僕は倒れた。使ったのは、あの時 拾ったペンだった。
「自然恋愛出来るのは今だけだから、後悔の無いようにね」 と母に言われたけど、高校でも十分、打算ばかりだと思う。皆、ステータスとか外面ばっか気にして彼氏彼女作りに走り回ってる。だから私は母に言われたセリフを妹に伝えた。すると妹は「(´∀`*)?」みたいな顔して友達と鬼ごっこしにいった。
「…チェンジ」 後ろからポーカーを観戦していた俺は驚愕した。Aの4カードが揃ってたのにチェンジだと!? 何たる度胸…これが勝負師と言うものか… 「驚くのも無理はない」 常連らしきギャラリーが俺に耳打ちしてきた。 「あいつロイヤルストレートフラッシュしか知らないから、それしか狙えないんだ」
先輩は私の憧れだ。 物怖じせず上司に意見するし、堂々と定時で帰るし、飲み会も「気分じゃない」と断れる。 「私も先輩みたいになりたいです」 「ふーん…じゃあ私の師匠を紹介してあげるよ」 後日 公園に案内された。 「この方が私の師匠」 そこには、1匹の猫が気持ちよさそうに寝転がっていた。
「リア充爆発しろってよく聞くけど、この期に及んでなんで他力本願なんだろうな」 「そりゃ爆破するって言ったら捕まるからな。本物はただ、黙々と実行するのみだよ」 友人が懐からスイッチを取り出して押すと、遠くで大きな爆発音がした。 「……今のは?」 「福音さ」 「……」 「Xmasの夜に、乾杯」
家にいると痣が増えるから、私は近くの図書館に毎日足を運んでノートに小説を書いて過ごした。気分転換に好きな本を選ぶ。図書館に育てられた私は、いつかそこに自分の本を並べるのが夢だった。 そして、夢は叶った 意外と涙は出なかった でも、お世話になった司書さんが泣いてくれた時、涙が溢れた
「PS5欲しいんだよなぁ」 友人のその一言が嬉しかったんだ。最近じゃ、身近な友人はゲームなんてやらなくなって、語り合える相手は俺の周りにすっかりいなくなっていたからだ。 「あー、まだ入手困難だね…。でも大丈夫!再入荷の情報入ったらすぐに知らせるよ♪」 「マジ?悪いな…息子が喜ぶよ」
「ヘイSiri 今日の天気は?」 「……」 「ヘイSiri 今日の天気は?」 「……」 「ヘイSiri?」 「はい、なんでしょう?」 「今日の天気は?」 「雨です」 時々ウチのSiriは調子が悪くなる。修理に出しても異常なし。なんでだろうなと思い返してみると、全て、彼女とデートした翌日の事だった。
俺は子供嫌いだ。 常に泣くし喚くし我が儘だし、正直に言って嫌う要素の塊でしかない。姉夫婦が事故で他界して、遺された幼い姪を引き取ってからは地獄だった。 そんな日々も今日で最後だ。純白のドレスを着た姪が口を開く。 「今までありがとう、お父さん」 人前で泣いたのは、子供の時以来だった。
Q1:小学校の頃どんな技を練習しましたか? という質問に、様々な解答が寄せられました。 波紋・かめはめ波・霊丸・二重の極み・螺旋丸・ギア2・月牙天衝・領域展開・水の呼吸… しかし Q2:それは習得できましたか? という質問に97%もの人がNOと答えました つまり、挫折は決して恥じでは無いのです