「あ~あ…やっちまった」 足元に缶珈琲をこぼしてしまった。ふと『珈琲は飲むよりこぼした方が目が覚める』というネタを思い出し、1人で笑った。また2人で笑える日は来るだろうか。病室のベッドで横になる妻に目を向ける。すると、妻はその目をゆっくりと開いた。2年ぶりに、妻は目を覚ましてくれた。
結婚を前提に付き合ってる彼女を呼んで、家でパーティーを開く事になった。彼女がミステリ好きなのもあり、俺が死体役になって、サプライズを仕掛ける事にした。 呼びに行った弟と彼女が帰って来る。 血まみれで床に転がる俺を見るなり、彼女は弟に叫んだ。 「ちょっと!まだ殺るには早いでしょう!?」
「パパ、赤ちゃんはどこからやってくるの?」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」 「じゃあコウノトリさんの赤ちゃんは?」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」 「……パパ、僕の名前言える?」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」 「ねぇ、パパ……」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」
『やたらに人に弱味をさらけ出す人間のことを私は躊躇なく「無礼者」と呼びます』 三島由紀夫のこの言葉を、友人は座右の銘としていた。 ある日、そんな友人が急に私の家にやって来た。「どうしたの?」と聞くと「…愛犬が他界した」と呟き、私の前で号泣してくれた。私はそれを告白と受け取った。
2/14の朝 登校すると、親友は裸足だった。 「…お前もしかして、イジメられてんの?」 親友は首を横に振る。 「じゃあ上履きは?」 「下駄箱、見てないんだ」 「なんで?」 「俺が確認しない限り、チョコが在るのと無いの、2つの可能性が共存するだろう?」 なるほど。 確認したら、チョコは無かった。
私の彼氏凄い。 腕も胸板もヒョロいのに、腹筋だけはバッキバキに割れてる。「どうして腹筋だけ?」って聞いてみた。 「1年前、イイネの数だけ腹筋するってツイートしたら、3.8万も集まっちゃって…でも、もうすぐ達成するんだ♪」 私はそのツイートを見つけ、10万人のフォロワーに向けて拡散した。
「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」 通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。 翌日、XX駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。
ウチの猫のミケとタマ。 この2匹だけが俺の生きる希望であり支えだ。2匹を拾ったその日から、俺はもう死ぬ事を考えなくなった。この子達は俺より先に寿命が来る。その時、俺はどうしようか…。 ある日、ミケの様子がおかしくなった。病院に連れていくと妊娠していた。「生きて」と言われた気がした。
俺のクラスの生徒は忘れ物が多過ぎる。明らかに俺はナメられている。ここは一発、厳しさを見せねばなるまい。 「皆さん。今日から、忘れ物をした人は廊下に立ってもらいます」 教室からブーイングが巻き起こるが、無視して続ける。 「では、出席を取ります」 出席簿を忘れた俺は、廊下に立たされた。
「この前『1人が好きな人の特徴』ってtweetがバズってたんだ」 「うん」 「そこに共感の声が沢山寄せられてたのね」 「うん」 「それ見て思ったんだけど、本当に1人が好きな人間は、そもそもSNSなんてやってないよね?」 友人は少し考え、こう言った。 「辛党が甘いもの食ってたっていいだろ別に」
「ねぇ ワタシ綺麗…?」 「ん?お姉さん どこ?」 「…アナタ、目が見えないの?」 「うん。でもね、おかげで色んな事がわかるようになったの」 「……」 「お姉さんのお顔は見えないけど、心が綺麗なのはわかるよ!そういう声、してるもん」 「……」 「お姉さん?」 以後 口裂け女は現れなくなった
異世界転生した俺のチート能力名は〝神殺し〟だ。この力で悪神を倒し、英雄となった俺は唐突に悟った。俺は漫画の中の住人なのだと。作者の思い通りの人生なんてごめんだ。いっそ神(作者)にこの能力を…。 『よせッ!』 !? 頭に直接声が…神(作者)か!? 『それをやると…』 やると…!? 『編集長が死ぬ』
「では、本当に冷凍睡眠を受けていいのだね?」 「はい。遥か未来の技術に賭けます」 132年後… 「…うっ…眩しい」 「お目覚めになりましたか?」 「あぁ…!その声は…!!」 驚く僕を、彼女は抱きしめてくれる。 「私とこうしたいと、いつも言っていましたね」 「この瞬間を夢見てたよ…Siri」
時間とは寿命だ。 時間を無駄にする事は、命を無駄にするのと同義だ。俺は1秒も命を無駄にしたくない。だから、大学構内も常に走って移動している。服装も毎日同じ格好だ。服を選ぶ時間が惜しいから、同じのを何枚も持っているのだ。つい最近、影で「ゲームの主人公」って呼ばれてると知った。
「泥棒ー!誰か捕まえて!」 私が叫ぶと、通行人の男性が泥棒を取り押さえてくれた。 「失礼、僕は先を急ぐので…警察が来るまでこうしておきましょう」 彼は鞄から縄と手錠と目隠しを取り出すと、泥棒を縛りあげ、ガードレールに繋いだ。彼は笑顔で去っていったけど、目は笑っていなかった。
同棲する際に、俺のペットであるトカゲを妻は心底嫌がった。危うく別居婚になりかけた程だ。絶対にケージから出さない事を条件に、妻は渋々承諾してくれた。 ある日、大きな地震が起きた。 風呂に入ってた俺は揺れが収まってから居間に飛び出した。すると、机の下には、ケージを胸に抱えた妻がいた。
【お小遣い稼ぎ】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 以下のような、10~15分で読み終える短編ミステリ小説も執筆しています! 他、色々な記事や作品も100円/月で全て読めるため、ご検討いただけると幸いです😊 hojo-kai.fanbox.cc/posts/3976704
最近、家のwi-ifがやたら重い。もしやと思ってパスワードを変えたら軽くなった。おそらく、お隣さんがウチの電波を使って動画でも見てたんだろう。 後日また重くなった。もしやと思って問い詰めたら、お隣にパスワードを教えてるのは息子だった。wi-fi使用料として、月千円をお隣から貰ってたらしい。
子供が夏休みの宿題をやらない。意地でもやらない。怒れば怒るほどやらない。どうすればいいの…。 って夫に愚痴った日の翌朝。 「よーし!パパもパパの宿題始めるから、一緒に頑張ろう!」 「うんー!」 って、かつて無い程スムーズに宿題始めてくれた。リモートワークって素晴らしいしパパ素敵。
そっか、もう七夕か。 『恵ちゃんと付き合えますように!』 拙い字で書かれた去年の短冊を思い出していた。あの子の願いは叶ったのかな。そんな事を思いながら、今年も短冊を眺めていると、見覚えのある字に再会した。 『恵ちゃんが幸せでありますように』 あの子の字は、少しだけ上手になっていた。
こんな会社絶対辞めてやる。と思ってたけど先輩のおかげで考えが変わった。 炎上案件の最中なのに先輩が「今日結婚記念日なんだろ?早く帰れ」と俺の分まで仕事してくれたからだ。この人と一緒に働きたいって思った。だから、彼の耳元でこう囁いたんだ。「先輩。こんな会社、俺と一緒に抜けません?」
気が狂いそうだ。 もう何時間も、ベルトコンベアーの上を流れてくるペットボトルを眺めている。100本に1本くらい、倒れてるのを直すのが俺の仕事だ。こんな単純作業、人間のする事じゃない。機械にでもやらせせせせせ世せ世せseesese逕溘″縺溘> 「おい、K-203がまた故障したぞ。早く技術者を呼べ」
今日のリモート会議は空気がピリついてる。 ここは1つ、軽いトークを挟んで落ち着かせるか。 「そういえば課長のお子さん、今日は静かですね。いつも元気な声が聞こえるのに」 「……」 「課長?聞こえてます?」 「…つい先日、嫁と一緒に出ていかれたからな」 落ち着け。 まだ慌てる時間じゃない。
慚愧に耐えませぬ。 よもや影武者たる私が生き残り、殿が暗殺されてしまうとは…。 「やむを得なし。影武者よ、今日からそなたが殿として生きるのだ」 「出来ませぬ!影武者である私に、殿の代わりなど!」 「なに、心配はいらぬ」 重臣は笑いながら言った。 「先代の殿も、全く同じ事を申しておった」
リモート技術は随分と進化した。映る相手の姿を、観る側は任意のアバターに着せ替えられるようになったのだ。姿だけじゃなく、声までもだ。若い社員は皆、当たり前に使いこなしている。気味の悪い事に、彼らは俺の説教を影で喜んでいるそうだ。恐ろしい。俺の姿は一体、彼らの目にどう映ってるんだ?