「組長、ウチの組員が殺し屋〝ルシファー〟に殺られました…」 「クソッ!またあの中二病野郎かッ!」 「ですが、腕は確かッス。調べようにも、奴の顔を見て生き残ってる奴がいないんスよ…」 「うるせぇ!必ず捕まえてぶっ殺せ!ところでおめぇ、見ねぇ顔だな。新入りか?」 「ルシファーと申します」
現代文の問題用紙を開くと、我が目を疑った。俺の書いた小説が載っていたからだ。 なんで?? これは夢か?? しかし夢ではなく、俺はその問題を解くしかなかった。当然 全問正解だ。 後日、入試問題に著作物を利用する場合、作家への許可は不要で大抵は事後報告だと、俺の担当編集者が教えてくれた。
「1024円か…キリの悪い数字ですね」 「いえ、2の10乗ですので、とてもキリの良い数字です」 「では、343は?」 「7×7×7。7は神秘的な数字です」 ふと気になったので、聞いてみる事にした。 「博士の1番好きな数字は何ですか?」 「1029です」 「どんな計算なのです?」 「私と妻が出会った日です」
結婚の報告をすると「これが俺からの精一杯の贈り物だ」って作家志望の友人が俺達のために1編の小説を書いて贈ってくれたんだ。でも絶対こいつ売れないなって思った。不謹慎過ぎる。ミステリだからって嫁さん殺しちゃダメだろ。しかも犯人俺だし。意味わかんねぇ。なんで俺の計画バレてんだよ。
「失礼、警察です。貴女の恋人に殺人容疑がかかっておりまして…」 「え?」 「逃走中の彼について、お話しを聞かせていただきたく…」 ショックで茫然とする私を見かねて、刑事達は質問もそこそこに帰っていった。 彼が…殺人鬼だったなんて……探されちゃう…彼をもっと遠くに…埋め直さないと……。
こんな惨めな新郎がいるだろうか。 なぜかって、俺側の友人席は、全員レンタル友達だからだ。席を埋める程の友人なんて俺にはいない。スピーチをしてくれる親友もレンタルだ。俺との架空の思い出を語る姿に、涙が出そうになる。結婚2年目にして知った事だが、妻の側も、全員レンタルだったらしい。
「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ?」 「はい。ですので、今日は辞表を持ってきました」 懐から辞表を取り出すと、課長は悲しそうな顔を見せた。 「…でもな、俺にとってはお前しかいないんだ」 そう言って、課長は俺の辞表を破り捨てた。 「課長…」 俺は懐から代わりの辞表を取り出した。
母校で、旧友たちとタイムカプセルを掘り出し、皆で開いた。 「聡君は何入れてたの?」 「昔、君に渡せなかった物だよ」 聡はカプセルの中から小箱を拾い上げる。開くと、手作りの拙い指輪が入っていた。 「僕と結婚して下さい」 「ふふ…もう1度、式も挙げる?」 彼からの、2度目のプロポーズだった。
俺は今、落下するエレベーターの中にいる。イチかバチか、こうなったら1Fに激突する直前にジャンプするしかない。俺はフワフワと自由落下している状態だが、落下速度を相殺する程の威力で床を蹴れば助かるはずだ。 ……よし、今だッ‼ おかげで1つ、わかった事がある。 天国って意外と湿度が高い。
『もしもし?今、402号室の前にいるの』 スマホの位置情報をオンにしてれば使えるホラー系ジョークアプリ "メリーさん" 段々近づいてくるcallを面白がっていたが、ふと思った。 (なんで、位置情報だけで俺の部屋の番号までわかったんだ?) 再びcallが鳴る。 「もしもし?今、アナタの後ろにいるの」
濡れながら帰宅してると、男の人が傘を差し出してきた。 「あの…よかったらコレ使って下さい」 「え?いえそんな、悪いですよ」 「僕の家すぐそこなんで、遠慮せず。まだ歩きますよね」 「えっと…じゃあ、ありがとうございます」 傘を受け取ると、男の人は去っていった。 親切な人もいるんだなぁ。
近所の屋敷に、莫大な遺産を相続した盲目の未亡人が住んでいる。これはチャンスだ。今から懐に潜り込んでおけば、後々、美味しい思いを出来るに違いない。 「マダム。私は貴女の目になりたいのです」 「…貴方も、遺産目当て?」 「神に誓ってNoです」 マダムは笑う。 「心臓の音は、正直ね」
へー。今時は、外出中でもペットの様子を見れるカメラなんてあるんだ。いくつか買って家に設置した。さっそくスマホで確認してみる。目を覚ましたポチが私を探して家の中をウロついている。可愛い。ポチは玄関まで来ると、施錠した扉を叩きながら叫んだ。「誰かぁ!頼む!ここから出してくれぇ!」
「パパの小説が国語の問題に出たの!『作者の気持ちを答えよ』って!パパはどんな気持ちだったの?」 「嘘をつくな」 「え?」 「よく話には聞くが、実は、そんな問題は普通あり得んのだ」 怯える私の頭にパパの手が乗る。 「嘘なんかに頼らず、いつでも気軽に私に話しかけなさい。学校は楽しいか?」
『辛いのは皆一緒だよ。もう少し頑張ろう?辞めてどうするの?』 母なら絶対にそう言う。 わかってる。 母は私の将来を心配してるだけだ。でも、母の言葉にトドメを刺されるのが怖かった。私が本当に欲しい言葉は『いつでも辞めていいんだよ』だったのに。だから今でも、 仕事を辞めたと言えていない
「ドラ〇えもん、日誌なんてつけてるのか…ちょっと見ちゃえ」 【1月5日】 の〇太君の経過は非常に順調。今回こそセワシ君の未来を変えられそうだ。タイムマシンで戻る度、〇び太君の『初めまして』を聞く事に僕はもう堪えられない。どうか…今回こそ… 「……表紙の〝81回目〟って、もしかして…」
『総プレイ時間:292時間』 これ程の時間ゲームしてしまったのか…と凹むゲーマーも多いらしい。全く共感できない。俺はむしろ「そんなに楽しんだのか」と そのプレイ時間に充実感を覚えるタイプだ。俺の目の前にケーキが運ばれる。「82歳の誕生日おめでとう!」そうか、もう、そんなに楽しんだのか。
「歴史の勉強なんかして、生活になんの得があるの?」 と、姉が言う。 「確かに。でも過去から学ぼうという姿勢そのものには、得がある」 「どんな?」 僕は 通算13回ダイエットに失敗している姉のたるんだ腹を無言で指さした。 この後どうなったかって? 僕も、過去から学べない人間だったらしい。
ハンターハンターが連載再開されたと聞く度に、月曜日が待ち切れなくて、日曜の深夜、早くから陳列してるコンビニを友と一緒に探し回った。そして、朝まで2人で語りあった。それくらいあの漫画は魅力的だったのだ。今だからわかる。ハンター以上に、友とのそんな日々こそが、何よりの宝だったのだと。
彼女を亡くした友人は、ギャルゲーに没頭していた。まるで、彼女を亡くした悲しみを埋めるように、彼女と同じ名前のヒロインにのめり込んでいた。 「…おい、辛いと思うけど現実見ようぜ。いい人がきっと見つかるよ」 友人は画面を撫で、呟いた。 「そうだね。また この子と同じ名前の子を探さなきゃ」
前人未到の世界最難関の山。 その頂に俺は遂に到達した。 人類未踏の地を単独で踏みしめた栄誉と快感に酔いしれていると、視界の端に入るものがあった。 「…俺は、2番手だったのか」 そこには登山者の遺体があった。 俺は遺体から、何か名前がわかるものを探した。 生きて、彼の栄誉を伝えるために。
家に見知らぬ女物の下着が落ちていた。夫が浮気をしているのは間違いない。私は現場を押さえようと、今日は友人の家に泊まると嘘をついた。隙を見せれば必ず連れ込むはず。そして日も暮れたころ、LINEも送らず、私は家のドアを開けた。そこには、女装している夫と、夫とキスしている見知らぬ男がいた。
「お前、まだあんな陰キャとつるんでんの?悪い事言わねぇからあんなのと縁切れって。スクールカースト底辺に落ちてねぇの?最近のお前が死んだ魚の目してんのも、ぶっちゃけアイツのせいだろ(笑」 ついに我慢の限界を迎えた俺は、この男を殴った。 「友の侮辱は構わないが、俺を侮辱するのは許さん」
奇妙な光景だった。 その作家は、丹精込めて世に出した作品への批難をネット上から探し、それが多いほど喜んでいた。 「なぜ、自分の作品をボロクソに言われて喜んでいるのですか?Mなんですか?」 作家は答えた。 「だって、趣味が合わない人にまで届くことこそ、人気の証でしょう?あと、Mです」
本日夕方頃 XX駅のホームにて、中年男性が女子高生に暴行を加えたところを、周りの乗客に取り押さえられました。中年男性は駅員に連行され、暴行の理由について以下の通り供述しました。 「ついカッとなってしまった。今では反省している。彼女が2度と、自殺未遂なんて馬鹿な真似をしない事を祈る」