弟は時速5kmで家を出ました。その30分後、弟の忘れ物に気付いた兄は時速15kmで追いかけました。兄が弟に追いつくと、弟は兄の彼女とキスしていました。兄は物陰で茫然と立ち尽くした後、弟の忘れ物をゴミ箱に捨て、時速1kmで家に帰りました。弟と兄の心の距離が縮まるには、何年かかるのでしょうか。
父は寡黙で照れ屋だから、大事な言葉はいつもお酒の力を借りて言う。 でも、酔った勢いで褒められても、心がこもって無いみたいで、少し嫌だった。 私が志望校に合格した日、父からビール片手に「よく頑張ったね」と言われた時も同じ気分だった。その手に持っていたのが、ノンアルだと気付くまでは。
「私、隣の者なんだけどねぇ…アンタんとこの赤ちゃん!毎晩夜泣きがうるさいのよ!」 「ウチ…猫はいるけど、赤ちゃんなんていません」 「…え?」 お隣さんは、青ざめて帰っていった。 夜、夫が帰ってくる。 「はぁ疲れた…大人は辛ぇわ」 夫はそう呟くと、オムツを穿き、おしゃぶりを咥えた。
最近の世の中は、映画も音楽も服も、果てはExcelまでなんでもサブスクだなぁ。俺はサブスクが苦手だ。課金をやめたら手元に何も残らないって点が、なんだか虚しいからだ。 なけなしの金で買ったパンを見つめ、気付いてしまった。 「あぁ…そもそも、命がサブスクだった」 貯金はもう、残り少なかった。
妻と録画番組を見てると、画面の中で仮面の催眠術師が芸人を眠らせた。 「今のシーン 巻き戻せるか?」 目を凝らすと、恐ろしく速い手刀が、芸人の首筋をとらえているのが見えた。つまり、インチキだ。 「俺でなきゃ見逃しちゃうね」 突如 首筋に衝撃が走り、意識が遠のいた。 「勘の良い夫は嫌いよ」
「母さん?オレオレ」 「え、この声…ツヨシ?」 「そうそう、ツヨシ」 「そんな…どうして…ちゃんと産め…!」 「は?」 「…そんなハズない。アンタ、詐欺でしょ?」 「チッ」 そこで俺は電話を切った。 さっさと次行こ。 だが、向こうの言いかけた言葉が気になった。 産め…… ……………埋め?
「博士。進化したポケモンを、元に戻す事は出来ませんか?」 「残念じゃが、それは不可能じゃ。なぜそんな事を聞く?」 「…ヒトカゲからリザードンって、大分、大きくなりますよね」 「そうじゃな」 「ピカチュウを抱っこしていると、リザードンが時々、羨ましそうな目でこっちを見ているんです」
天国にも酒場ってあるんだな。 フラリと立ち寄ってみると、常連っぽい中年が声をかけてきた。 「見ない顔だな。天国へようこそ」 「ども」 「生前は何やってたんだ?」 「しょぼいコソ泥さ」 「おいおい、それでよく天国に来れたな」 「駅に置いてあった鞄を盗んだんだが、中身が爆弾だったんだ」
筋トレはマジでオススメ。 上司に怒鳴り散らされても「お前が無事でいられるのは、俺が我慢してやってるからだぞ?」と精神的優位を築ける。 だがもう限界だ。 俺は上司に殴りかかる。 上司は掌で俺の拳を受け止め、恐ろしい握力で握り、こう呟いた 「お前に本当のパワーハラスメントを教えてやろう」
イイネが欲しい。 どうすればもっとイイネが貰える? 動物モノが簡単にイイネを貰えると聞いた。俺はさっそくペットショップに向かう。チワワ、君に決めた。名前は〝イイネ〟にしよう。仕事から帰るとイイネが出迎えてくれる。それだけで毎日幸せだ。いつしか、俺の中の承認欲求は消え失せていた。
「マッチ…いりませんか…」 マッチ売りの少女に、淑女が声をかける。 「マッチくださります?」 「はい!おいくつをご希望ですか?」 「30前後で」 「では、こちらへ」 少女は淑女の手を引き 待合室へと連れて行く。そこには1人の紳士がいた。 「どうぞ、ごゆっくり」 そして少女は街道に戻っていった
私はバズるのが怖い。 面白かった事を投稿してるだけなのに、嘘つきだの嘘松だの言われるからだ。おかしいよね。誰でも1度は、信じて貰えない辛さを味わった事があるはずなのに。お願いだから、嘘つきと決めつける前に、人を傷つける可能性を考えて欲しい。確かに私は嘘松だけど、ガチ松のためにも。
「ねぇパパ、地球は時速1700kmで自転してるのよね?」 「君は物知りだね」 「じゃあ、どうして飛行機は、お空に浮いてて地球において行かれないの?」 「よく気付いたね。君には私の〝地動説否定教〟に入る資格があるようだ」 「…遂に、尻尾を出したわね」 私は涙を堪え、実の父に銃を向けた。
なぜ〝休日〟なんて呼び方するんだ? まるで仕事への充電時間じゃないか。休日こそ本来の人生の時間なのに。オフなんかではない、休日こそオンなのだ。休日を休日と呼んでる限り、労働のための人生は無くならない。来世では、休日が無くなってますように。 破り捨てられた遺書には、そう書いてあった
私事で恐縮ですが、この度、結婚しました。娘と息子を授かり、2人とも今では立派な社会人です。子供達が自立し、趣味の裁縫に没頭する老後は、とても穏やかでした。娘と息子は今、孫達と共に私の周りで泣いています。そろそろお迎えが来たようです。久しぶりに夫に会えます。では皆様も、良い人生を。
「HEY彼女!俺で妥協しなぁい?」 「気に入らない」 「…ですよね」 「違うよ。そうやってフザけて、断られても傷付かないよう予防線を張ってるのが気に入らないの」 「!?」 「失敗を恐れないで。ほら、もう1度真剣に言ってみて?」 「…お姉さん、俺とお茶してくれませんか?」 「僕、男です」
息子がonlineゲーム中毒になった。叱るよりも、まず子供の目線に立つべきかと、私も始めてみる事にした。 その甲斐あって、息子のオンゲー中毒は改善された。息子曰く「自分の姿を、客観的に見れたから」らしいが、今やそんな事はどうでもいい。向こうの世界で今日も、仲間達が私を待っているのだ。
【子供の目線】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 マシュマロを始めてみました! 質問でもなんでも、お気軽にどうぞ☺ フォロワーさんのTLを流さないよう、@ 0宛てに返信する形で返答するので、「ツイートと返信」からご確認下さい!(※~4/1分、全返答済み) marshmallow-qa.com/hojo_kai
「先生って、作家になる前は何をされてたんですか?」 「詐欺師です」 「…え?」 「物語って、言ってみれば全部嘘じゃないですか。僕、嘘つくのは得意だったんで。特に、説得力のある背景を捏造するのが」 「え…本当ですか?」 「勿論、嘘ですよ」 先生の腕時計を見ると、パテックフィリップだった。
医者を辞めた理由? いや、別に激務とか人間関係じゃない。 忙しいのは好きだったし、人から感謝されるのは良い気分だった。 強いて言えば…虚しくなったからかな。 あれは、例年より暑い夏だった。 治した患者が、退院してすぐ、自殺したんだ。 退院する時の、彼の笑顔は、今でも忘れられない。
「この部屋だけ家賃が高いのはなぜですか?」 「この部屋は、幽霊がいると評判なので」 「じゃあ普通、安くなりません?」 「例えば、TVが勝手についたり、流行りの曲が流れ始めたり、エアコンが適温で作動したり、明日7時に起こしてと言うと、ラップ音で起こしてくれるそうです」 「アレ○サかな?」
ゲーム配信をしていると、毒舌アンチに粘着された。調べると、そいつもゲーム配信者らしい。悔しくて、俺はとっておきのプレイ動画の録画を配信した。 『うっわ下手すぎ…ホント才能無ぇな…死んだ方がいいよマジ』 今日も奴の毒舌が冴え渡る。まぁ、その動画、昔のお前のプレイ動画なんだがな。
「お前、逆突き以外も使えよ」 空手部でそう言われ続けて2年。それでも俺は逆突きだけを磨き続けた。毎日1000回の逆突きを欠かした事は1度も無い。いつしか俺の逆突きは神速の域に達し、他校からも〝逆突きの池田〟と恐れられた。そして迎えた決勝戦、あり得ないほど美しく、俺の回し蹴りがキマった。
撮られると死ぬ。 このカメラには、そんな迷信があるらしい。しかしその真相は、撮った相手をターゲットにする殺人鬼がいたというわけだ。そいつを検挙した俺は、撮られて生き残った記念すべき最初の一人だ。これで、思い残す事は無い。俺はビルの屋上から晴々とした気持ちで飛び降りた。
「SNS見てるとバズって流れてくるのって、子育ての大変さとか夫への不満ばかりで…なんか、結婚願望無くなっちゃった」と友は語る。 SNSはユーザーが見たいものを優先的に見せる。 友の話は、順序が逆なんじゃないか? つまり、結婚しない理由を求めてるだけなんじゃ…。 少なくとも、俺はそうだった。