社内のネットワーク管理者である俺には、社員が業務PCでどんな検索をしてるのか丸わかりだ。すると こんな検索結果が並んだ。 『見ているな?』 『貴様見ているな?』 『この覗き魔が』 『わかってるぞ』 『見るんじゃねぇ』 『仕事辞めたい』 『その仕事代わって』 うるせぇ。 いいから仕事しろ。
俺の目の前で、おっちゃんがひったくりにあった。俺は急いで犯人を追いかけ鞄を取り返してやった。 後日 就活の面接に向かうと、あの時のおっちゃんがいた。志望会社の役員だった。 「君のような若者と私は働きたい」と言われ内定ゲット。その夜、俺はひったくり犯を演じてくれた友人と祝杯をあげた。
「ねぇパパ、大人になると幽霊って怖くなくなるの?」 「うん、昔よりは怖くないな」 「どうして?」 「そうだなぁ…大事な人とか結構 向こうにいっちゃったからかな。幽霊を怖がってちゃ 可哀想だろう?」 仏壇の前で、そんな父の言葉を思い出していた。 お盆くらい、姿見せてくれてもよかったのに。
ある、雪の日の事だ。 チャイムに出ると、お隣の奥さんが立っていた。 「あの…作りすぎちゃったんで、よければ」 そう言って奥さんは、抱っこしている赤ちゃんを僕に差し出した。 「はは…冗談ですよね?」 「……」 「冗談ですよね?」 奥さんは俯いて、無言で帰っていった。 もう、5年も前の話だ。
「トロッコ問題、アナタならどうする?」 サイコパス「トロッコは一台しか来ないのですか?」
「見ろよ。『底無し沼』だって。本当かな?」 「試してみれば?ヤバかったら引き上げてやるよ」 すると、友人は「ヨシ」と言って底なし沼にドボンした。 「…あ、やべ、これやべぇ!引っ張って!早く!早くぅ!!」 「わかったから落ち着け、ビビリ過ぎだろ」 「違う!何かが俺の足引っ張ってる!!」
「今日は皆に転校生を紹介する…が、その前に転校生の鈴木さん、君に言っておく事がある」 「なんですか先生?」 「パンを咥えながら登校するな。朝食は家でとりなさい」 「はぁい」 「あとバイク通学は禁止だ。いいな?」 「はぁい」 「よし。じゃあ君の席は、今朝病院に運ばれた安田の隣だ」
お婆ちゃんが亡くなってから、家の市松人形の髪が伸び始めた。 しかも、一晩経つと勝手に移動している。何度直しても、翌日にはお婆ちゃんの仏壇の傍に移動してる。きっと、髪の毛は伸び始めたんじゃなくて、お婆ちゃんがこっそり切ってあげてたんだ。 今では、私が髪の毛を切ってあげている。
「兎と亀の話は妙だよママ」 「どうして?」 「そもそも亀はなぜ不利な勝負を仕掛けたんだろ?兎が寝たのも亀に都合が良すぎる。亀が仕組んでたんじゃ…」 「そうね。でもママはこう思うの」 「?」 「亀は万年だから…きっと、兎が生きてる内に遊びたかっただけなのよ。大事なのは、勝敗じゃないの」
ウチのPS2はすっかりボケてて、毎日勝手に起動する。だけど今日はやけに静かだ。1度も起動しない。 「PS2…?」 そして、PS2が起動する事は二度と無かった。もしかしたら、PS2は最期に遊んで欲しかったのかもしれない。だから俺は、せめてPS2と一緒に遊んだ日々を、心のメモリーカードに保存した。
「またお腹が痛くなったのかい?」 「うん!でももう治った!」 そう言ってこの母子はいつも帰っていくのだ。看護師曰く「多分あの子、待合室の鬼滅の刃が読みたくて、仮病使ってるんですよ」との事だ。 後日、いつもの母子が来ると、奥さんはひっそりと私に聞いた。 「あの…先生って独身ですか?」
AIが奪える人間の仕事には、限界がある。 俺はたった今読み終えた小説を閉じ、涙を拭いた。そう、例えばこういった心を打つ物語は、AIには創れない。なぜなら、AIには心が無いから。文字をどう羅列すれば人の心は動くのか、それは人間にしかわからない世界なのだ。検索すると、小説の作者はAIだった。
「素敵なお写真ですね。可愛らしい女の子だ。お孫さんですか?」 「いや、妻だよ」 「…失礼。今、なんと?」 「笑ってくれたまえ。私はね、『君のお嫁さんになりたい』と言ってくれた幼馴染の言葉を、未だに守っているのだよ。私の方が、ずっとずっと年上になってしまった、今になってもね」
------------ 田 中 無 敵 山 太井秋中神 郎美川一近 ------------ 人名テトリスか…俺、歴史苦手だから、人物のフルネームとか全然わかんね。いいや、適当に友達の名前揃えるか。お、消えた。 ……なんで? 嫌な予感がした俺は田中に電話した。出なかった。田中は未だに、見つかっていない。
ぐっ……滑って打った頭から、血が止まらない…。 まずいぞ…意識が薄れてきた。救急車は呼べたが、間に合うだろうか…。万が一……俺が死んでも家族が処理に困らないよう…PCや銀行のパスワードを遺さねば……ペン……無い……仕方ない、血文字で残すか……パスは…最愛の…弟の…名……『masayuki』
私には一流企業で働く彼氏がいる。イケメンでエリート。でも私は他の人を好きになってしまった。平日だけど、今日はその人の家でデート。彼氏は今頃一生懸命働いているのに、私は他の男に会っている。その罪悪感が私の心をスパイスした。頼んでたUberが来たみたい。ドアを開けると、彼氏が立っていた。
『俺と……………付き合ってくれない?』 『その前に、言いたい事が5つあるの。 1: LINEで告白はやめようね。 2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。 3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。 4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。 5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』
勇者の剣は2度、王の血に染まった。 1度目は魔王の血に。 2度目は勇者の祖国、その王の血に。 臆病な王は恐れたのだ。 魔王と、それをも超えた勇者の力を。 しかし宴の席で振る舞われた毒酒は、家臣の裏切りにより、勇者の喉を通る事は無かった。 そして王は、平和の時代、その最初の死者となった。
夕日がさす放課後の廊下。 生徒指導室に、意外な生徒が入っていくのが見えた。 「ん?いまの2年A組の委員長だよな。あんな真面目な子でも、生徒指導室に呼ばれたりするんだな」 俺はそれが少し嬉しかった。人間、誰でも過ちはあるんだな。 生徒指導室の前を通り過ぎる時、中から鍵をかける音がした。
久々にDMが来た。知らないアカウントからだ。 『ワシじゃよワシ。最近、SNSってのが流行ってるんじゃろ?ワシも始めてみたんでよろしゅうな』 ワシワシ詐欺かと思ったけど、お母さんに確認したら本当にお爺ちゃんだった。その歳で新しいモノに挑戦するお爺ちゃんを私は心底尊敬した。でもそれmixi。
【青春の回収】 ※140字以内で完結する小説でした。 ※再掲 まだ少し熱はありますが、お陰様で復活しました!😊 皆様の暖かいコメント、全て読ませていただだきました! 誠にありがとうございます😭
最近どういう訳か、20代後半の男女グループの宿泊客が増えている。どれも30人くらいの大所帯だった。旅館側が言うのもなんだけど、大人ならもっと、良い旅館に泊まれるだろうに。気になったので、どういう集まりなのか聞いてみた。 「昔、コロナで行けなかった修学旅行を今、取り戻してるんですよ」
一流企業に入る奴は馬鹿だね。 優秀な場所には、優秀な奴が集まる。世の中、上には上がいるんだ。自分が築いたチンケなプライドは、ズタズタに引き裂かれる。だから、そこそこの会社で無双してる方が、ずっと幸せな人生を築けると俺は考えた。それが御社を志望した理由ですって言ったら落とされた。
私はいつも、やろうと思った事を後回しにする癖がある。いい加減、治さないとなぁ…。 決めた! 次にやろうと思った事は、絶対即実行しよう! ソファーでくつろいでいる夫が私の名前を呼ぶ。 「ねぇ晩飯まだ?てか洗濯も出来てないよね?1日家にいるのに、なにしてんの?」 私はまず包丁を握った。
小・中学校では、運動が出来る奴がモテると知り、俺は必死に体を鍛えた。 高校・大学では、勉強が出来る奴がモテると知り、俺は必死に勉強した。 社会では、金を持ってる奴がモテると知り、俺は必死に稼いだ。 あの世では、生前の徳を積んだ奴がモテると知り、俺は後悔した。