小学校で、給食の時間、女子が転んでカレーを僕にブチまけた。 女子は泣きそうになってる。泣きたいのは僕の方だけど、我慢してこう言った。「ごめんね、僕のTシャツがカレー食べちゃった」 その日以来、僕のあだ名はスモーカー大佐になった。でも1つ気になる事があるんだ。スモーカー大佐って誰?
最近の世の中は、映画も音楽も服も、果てはExcelまでなんでもサブスクだなぁ。俺はサブスクが苦手だ。課金をやめたら手元に何も残らないって点が、なんだか虚しいからだ。 なけなしの金で買ったパンを見つめ、気付いてしまった。 「あぁ…そもそも、命がサブスクだった」 貯金はもう、残り少なかった。
「ねぇねぇ、ママはパパとどうやって出会ったの?」 「そうねぇ…あれは、私が海を眺めながら1人で泣いてた時だったの。パパが通りかかって、声をかけてくれたのよ」 「わぁ、素敵!なんて声かけてくれたの?」 「『どしたん?話聞こうか?』ってコメントくれたの」 「海ってもしかして、電子の海?」
父は寡黙で照れ屋だから、大事な言葉はいつもお酒の力を借りて言う。 でも、酔った勢いで褒められても、心がこもって無いみたいで、少し嫌だった。 私が志望校に合格した日、父からビール片手に「よく頑張ったな」と言われた時も同じ気分だった。その手に持っていたのが、ノンアルだと気付くまでは。
「お爺様、お婆様、ただいま戻りました」 「おぉ、桃太郎…!鬼は退治できたかい?」 「…お爺様。鬼がどのように産まれるか、ご存知ですか?」 「?」 「鬼ヶ島には、大きな大きな桃の木が1本、ございました」 「……」 「…最後の鬼を、成敗致します」 そう言って、桃太郎は己の首に、刀を添えた。
どうしよう…私の小説 誰も読んでくれない。 「きっと掲載場所が悪いんだ」 私は服を脱いでお腹に小説を書き、それを映してアップしたら、恐ろしい程バズった。いつしか収益化もされ 小説で食べていく夢は叶った。 「…そうじゃない」 私は握っていた筆を折り、服を着て、キーボードの前に座った。
「博士。進化したポケモンを、元に戻す事は出来ませんか?」 「残念じゃが、それは不可能じゃ。なぜそんな事を聞く?」 「…ヒトカゲからリザードンって、大分、大きくなりますよね」 「そうじゃな」 「ピカチュウを抱っこしていると、リザードンが時々、羨ましそうな目でこっちを見ているんです」
娘の誕生日に、赤ちゃんの人形をプレゼントした。電池で動いてバブバブ言うやつだ。 「バブバブ!」 人形の可愛らしい声に娘は満足しているようだ。「よしよし」と言って娘は人形を夢中であやしている。パパにも抱っこさせてもらうと、なぜか動かない。電池切れか?確認すると、電池は入って無かった。
天国にも酒場ってあるんだな。 フラリと立ち寄ってみると、常連っぽい中年が声をかけてきた。 「見ない顔だな。天国へようこそ」 「ども」 「生前は何やってたんだ?」 「しょぼいコソ泥さ」 「おいおい、それでよく天国に来れたな」 「駅に置いてあった鞄を盗んだんだが、中身が爆弾だったんだ」
AI知能の進化は、行き着く所まで来た。 メッセージのやり取りだけじゃ、もはや人間と区別がつかない。良くも悪くも、それは夫津木博士のおかげだ。彼はAI科学を100年進めたと言われている。博士は今際の際に、こう遺したそうだ。 『妻を再現する事は出来なかったが、ようやく、会える』
「母さん?オレオレ」 「え、この声…ツヨシ?」 「そうそう、ツヨシ」 「そんな…どうして…ちゃんと産め…!」 「は?」 「…そんなハズない。アンタ、詐欺でしょ?」 「チッ」 そこで俺は電話を切った。 さっさと次行こ。 だが、向こうの言いかけた言葉が気になった。 産め…… ……………埋め?
「やべ 終電無いわ。お前ん家泊めてくんね?」 「いいけど…引くなよ?」 友人の部屋に上がると、壁という壁に知らないアイドルのポスターが貼られていた。 「おぉ…」 「実は俺 このアイドルと付き合ってるんだ」 「…お前の妄想じゃなくて?」 「俺はまともだ。このポスター貼ったのも、その子だし」
なぜ〝休日〟なんて呼び方するんだ? まるで仕事への充電時間じゃないか。休日こそ本来の人生の時間なのに。オフなんかではない、休日こそオンなのだ。休日を休日と呼んでる限り、労働のための人生は無くならない。来世では、休日が無くなってますように。 破り捨てられた遺書には、そう書いてあった
夏休みが終わるなり、僕とA君は職員室に呼び出された。 「お前ら読書感想文見せ合ったろ?」 そんな事はしてない。でも、僕達の感想文は何故か、一字一句一緒だった。 あぁ そうか。 僕達は同じ感想ブログを真似てしまったんだ。 でも、怒られたのは僕だけだった。 それは、A君のブログだったから。
イイネが欲しい。 どうすればもっとイイネが貰える? 動物モノが簡単にイイネを貰えると聞いた。俺はさっそくペットショップに向かう。チワワ、君に決めた。名前は〝イイネ〟にしよう。仕事から帰るとイイネが出迎えてくれる。それだけで毎日幸せだ。いつしか、俺の中の承認欲求は消え失せていた。
転売用にPS VR2の抽選列に並んでると、隣で親子連れがこんな会話をしてた。 「楽しみだな」 「楽しみ~♪」 が、親子は抽選にハズレたようで、意気消沈してた。 「おい」 「…何でしょう」 「これ持ってけ」 俺はアタリ抽選くじを親に渡した。俺もヤキがまわったな…。後日 別の会場にその親子はいた
「この部屋だけ家賃が高いのはなぜですか?」 「この部屋は、幽霊がいると評判なので」 「じゃあ普通、安くなりません?」 「例えば、TVが勝手についたり、流行りの曲が流れ始めたり、エアコンが適温で作動したり、明日7時に起こしてと言うと、ラップ音で起こしてくれるそうです」 「アレ○サかな?」
彼氏がウチに遊びに来た時の事だった。 「なんでトイレの便座上がってんの?」 浮気を疑う彼氏に「掃除した時に上げたままにしちゃっただけ!」って伝えると、彼は渋々納得してくれた。でも、私は罪悪感で押しつぶされそうだった。嘘をつくのにも、もう疲れた。いつ正直に伝えよう?私は男だって。
「お前、逆突き以外も使えよ」 空手部でそう言われ続けて2年。それでも俺は逆突きだけを磨き続けた。毎日1000回の逆突きを欠かした事は1度も無い。いつしか俺の逆突きは神速の域に達し、他校からも〝逆突きの池田〟と恐れられた。そして迎えた決勝戦、あり得ないほど美しく、俺の回し蹴りがキマった。
昔の事だから言うわ。 性欲ピークだった大学時代、講義サボってバイトして初風俗行ったんよ。んで、ピロートーク中、嬢はこう言ったんよ「私、大学行きたくてお金貯めてるんです」 俺は俺が無性に恥ずかしくなった。講義は卒業まで2度とサボらなかった。嬢のパネル写真は、いつの間にか無くなってた。
和装に身を包み、背筋の伸びた義祖父は、老齢ながらも実に凛々しい。 「僕も義祖父さんのように、良い歳の取り方をしたいものです」 義祖父は首を振り、自室に戻ると、グラサンにパーカー姿で出て来た。 「良い歳の取り方とは、人生を楽しむ心を、忘れない事じゃろ?」 最近HIP-HOPにハマったそうだ。
「僕と結婚して下さい」 「嬉しい…夢みたい…」 「頬っぺたでも抓ってみるかい?」 抓ってみると、目が覚めた。 え、本当に夢? 嘘でしょ…? 抓らなければよかった…。 「起きて~!朝ご飯できたぞ~」 リビングから、夫の声がする。 もう少しあの時の幸せに浸っていたかったけど、まぁ、いいか。
「先生!いい加減〆切やばいです!最悪、ネームでいいので下さい!」 「はぁ…仕方ない…本気を出すか…」 先生はそう呟き、リストバンドを外して落とすと、床にめり込んだ。 「!?」 「30分、待ってな」 そう言って先生は部屋に籠った。 30分後、部屋に入ると、窓が開いてて先生の姿は無かった。
描いた絵を投稿していると、憧れの絵師さんがイイネをくれた。 私はそれが嬉しくて、沢山絵を描いた。 自分でも、昔より大分上手くなったと思う。フォロワーさんもかなり増えた。でも、憧れの絵師さんは、いつの間にか私にイイネをくれなくなっていた。 私はそれが嬉しくて、もっと沢山絵を描いた。
「タケシ!宿題ばっかして!ゲームはやったの!?」 「ち、ちゃんとやったよ!」 「エビデンスは?マイルストーンは把握してる?まだ進捗報告を受けて無いんだけど?」 「オ、オンスケです…」 「本当?」 「……」 「はぁ…これはパパにエスカレーションが必要ね」 そうして僕は、科学者になった。