201
私事で恐縮ですが、この度、結婚しました。娘と息子を授かり、2人とも今では立派な社会人です。子供達が自立し、趣味の裁縫に没頭する老後は、とても穏やかでした。娘と息子は今、孫達と共に私の周りで泣いています。そろそろお迎えが来たようです。久しぶりに夫に会えます。では皆様も、良い人生を。
202
「私達にも拒否権があっていいと思います!」
その一言で、業界初の、アイドル側が握手を10人まで拒否できる握手会が開かれた。ファン達は、自分が拒否られたらどうしようと、怯えながら列に並ぶ。
10人目が拒否られた瞬間、会場は安堵の息で溢れ、アイドルは叫んだ。
「すみません!追加20人で!」
203
『惚れ薬』をゲットした。小瓶に入った無色透明の液体だ。私はそれを、彼が席を立った隙にそっと飲み物に入れた。そして私達は付き合う事になった。でも、罪悪感から私は全てを白状し「本当に…ごめんなさい」と言って小瓶を見せた。すると、ラベルの用法欄を見た彼は言った。「これ塗るタイプだよ」
204
ボクシングに全てを捧げて来たが、ボクシングの神は、俺を見放した。病に蝕まれ引退を余儀なくされた俺は、生を奪われたも同然だった。しかし多額の寄付金により手術を受けられた俺は、再びリングの上で好敵手と相まみえた。ベルトを奪った後に知ったが、寄付金の殆どは、その好敵手からのものだった。
205
「私はランプの精。さぁ願いを3つ叶えてやる」
「お願い!私の彼氏を生き返らせて」
「うむ」
後日
「残る願いは2つだ」
「私の彼氏を生き返らせて」
「また死んだのか?いいだろう」
後日
「最後の願いを言え」
「彼を生き返らせて」
「またか?」
「えぇ。あの男は、何度殺っても足りないから」
206
「この度は弊社がご迷惑をおかけしてしまい…申し訳ありません…」
「誠意が感じられんなぁ…」
「誠意?」
「日本にはあるだろう?両手と頭を地面につける、伝統的な謝罪方法がさぁ…」
悔しさに歯を食いしばりながらも、俺は従った。
「この度は申し訳ありません!」
「うん、三点倒立じゃなくてね」
207
ふと見上げると、マンション2Fの窓から、ヌイグルミがこっちを見つめていた。窓一面を覆わんばかりの、大きなクマのヌイグルミだ。きっと親からのプレゼントが嬉しくて、通行人に見せつけたいのだろう。微笑ましいじゃないか。よく見るとクマのお腹に貼られた紙に、何か書いてあった。『たすけて』
208
「~以上が、御社を志望した理由です」
よし、練習通り言えたぞ。面接官は満面の笑顔だし、手応えアリだ!憧れの大企業に入れるかもしれない。ただ、面接官がずっと指で机を叩いているのが気になるな。
トン・トーン・トン……
これはまさか…モールス信号?
『ニゲロ ココ ハ ブラック キギョウ ダ』
209
「僕と結婚して下さい」
「嬉しい…夢みたい…」
「頬っぺたでも抓ってみるかい?」
抓ってみると、目が覚めた。
え、本当に夢?
嘘でしょ…?
抓らなければよかった…。
「起きて~!朝ご飯できたぞ~」
リビングから、夫の声がする。
もう少しあの時の幸せに浸っていたかったけど、まぁ、いいか。
210
私事で恐縮ですが、この度、結婚しました。娘と息子を授かり、2人とも今では立派な社会人です。子供達が自立し、趣味の裁縫に没頭する老後は、とても穏やかでした。娘と息子は今、孫達と共に私の周りで泣いています。そろそろお迎えが来たようです。久しぶりに夫に会えます。では皆様も、良い人生を。
211
『総プレイ時間:292時間』
これ程の時間ゲームしてしまったのか…と凹むゲーマーも多いらしい。全く共感できない。俺はむしろ「そんなに楽しんだのか」と そのプレイ時間に充実感を覚えるタイプだ。俺の目の前にケーキが運ばれる。「82歳の誕生日おめでとう!」そうか、もう、そんなに楽しんだのか。
212
「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ?」
「はい。ですので、今日は辞表を持ってきました」
懐から辞表を取り出すと、課長は悲しそうな顔を見せた。
「…でもな、俺にとってはお前しかいないんだ」
そう言って、課長は俺の辞表を破り捨てた。
「課長…」
俺は懐から代わりの辞表を取り出した。
213
社内のネットワーク管理者である俺には、社員が業務PCでどんな検索をしてるのか丸わかりだ。すると こんな検索結果が並んだ。
『見ているな?』
『貴様見ているな?』
『この覗き魔が』
『わかってるぞ』
『見るんじゃねぇ』
『仕事辞めたい』
『その仕事代わって』
うるせぇ。
いいから仕事しろ。
214
「なんだこれ?」
届いた書留を夫が開くと、中身はご祝儀袋だった。私も首を傾げた。私達はもう結婚7年目なのに。だけど差出人である先輩の名を見て、私は彼の言葉を思い出した。
『ごめん…金無くて結婚式行けない…俺が人気作家になったら、必ずお祝いするから』
ご祝儀袋には、100万が入っていた。
215
「お前、まだあんな陰キャとつるんでんの?悪い事言わねぇからあんなのと縁切れって。スクールカースト底辺に落ちてねぇの?最近のお前が死んだ魚の目してんのも、ぶっちゃけアイツのせいだろ(笑」
ついに我慢の限界を迎えた俺は、この男を殴った。
「友の侮辱は構わないが、俺を侮辱するのは許さん」
216
「博士。進化したポケモンを、元に戻す事は出来ませんか?」
「残念じゃが、それは不可能じゃ。なぜそんな事を聞く?」
「…ヒトカゲからリザードンって、大分、大きくなりますよね」
「そうじゃな」
「ピカチュウを抱っこしていると、リザードンが時々、羨ましそうな目でこっちを見ているんです」
217
朝登校すると、親友は裸足だった。
「…お前もしかして、イジメられてんの?」
親友は首を横に振る。
「じゃあ上履きは?」
「下駄箱、見てないんだ」
「なんで?」
「俺が確認しない限り、チョコが在るのと無いの、2つの可能性が共存するだろう?」
なるほど。
確認したら、チョコは無かった。
218
シゲルは、ゲームのボス戦で負けそうになると、すぐリセットする困った奴だった。
そんなシゲルが受験に落ちたらしい。家に行くと、シゲルは意外と元気そうだった。でも、机の上の新品のカッターが気になった俺は、それを盗んだ。
大人になって、同窓会で彼にこう言われた
「あの時は、ありがとう」
219
僕の彼女はいつの間にか、肩に僕の名前の刺青を入れていた。本人曰く、変わることのない永遠の愛の証だそうだ。ちょっと重かったけれども、それ程までに愛されるのは正直嬉しかった。
元カレの名前を消せなくなったから、同じ名前の相手をずっと探してただけだと知ったのは、彼女と結婚した後だった。
220
「でね、3泊4日で旅行に行くって言ったらこう言われたの『俺の飯はどうするんだ?』って」
「うわぁ出た!いるよね、そういう夫。そんなの無視して旅行いっちゃいなよ」
「うん…もう飽きたし、そうするね」
後日 彼女の家から夫の死体が見つかった。夫は首輪で繋がれ〝飼われていた〟様子だった。
221
私は小さい頃、ポケモンが大好きだった。将来の夢はポケモントレーナーになることだった。勿論、それは叶わなかったけど、私はポケモンから大事なことを学べた。おかげで今、ずっと好きだった人と付き合えているの。本当にゲットしたい時は、相手をとことん弱らせてから、手を差し伸べるのが大事。
222
「失礼、警察です。貴女の恋人に殺人容疑がかかっておりまして…」
「え?」
「逃走中の彼について、お話しを聞かせていただきたく…」
ショックで茫然とする私を見かねて、刑事達は質問もそこそこに帰っていった。
彼が…殺人鬼だったなんて……探されちゃう…彼をもっと遠くに…埋め直さないと……。
223
「ヤバ…鍵かけたっけ?」
家まで戻って確認すると鍵はかかっていた。よかった、これで安心して買い物にいける。
夕方、歩き疲れて帰宅する。
「……え?あれ?」
取り出した鍵が、何度やっても鍵穴に入らない。不思議に思ってよく見ると、間違って実家の鍵を持ち出していた事に気付いた。
224
濡れながら帰宅してると、男の人が傘を差し出してきた。
「あの…よかったらコレ使って下さい」
「え?いえそんな、悪いですよ」
「僕の家すぐそこなんで、遠慮せず。まだ歩きますよね」
「えっと…じゃあ、ありがとうございます」
傘を受け取ると、男の人は去っていった。
親切な人もいるんだなぁ。
225
『俺と……………付き合ってくれない?』
『その前に、言いたい事が5つあるの。
1: LINEで告白はやめようね。
2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。
3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。
4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。
5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』