下校中の男女がいた。2人は友人同士だ。 「猫って可愛いなぁ」 「なんだよ急に」 「私、将来は猫飼いたいんだ」 「猫はやめとけ」 「どうして?」 「俺、猫エレルギーなんだよ」 「え??なんで私と一緒に住む前提なの??」 「……」 「1つ、聞いてもいい?」 「はい」 「犬なら大丈夫?」
最近どういう訳か、20代後半の男女グループの宿泊客が増えている。どれも30人くらいの大所帯だった。旅館側が言うのもなんだけど、大人ならもっと、良い旅館に泊まれるだろうに。気になったので、どういう集まりなのか聞いてみた。 「昔、コロナで行けなかった修学旅行を今、取り戻してるんですよ」
「N〇K受信料の集金です」 「ウチ TV無いんで」 「嘘。一緒に住んでたんだからわかるよ」 「君が出てってから、捨てちゃったんだよ」 「どうして?」 「…このTVで一緒に映画とか見てたなぁ…って思い出すの、辛くて」 「…また一緒に、映画見よ?」 後日 一緒にTVを買いに行った。 受信料は払わされた
医者「残念ですが手術は出来ません。あなたには、異常に麻酔耐性が出来てるようで…」 毛利小五郎「なぜ…」
シゲルは、ゲームのボス戦で負けそうになると、すぐリセットする困った奴だった。 そんなシゲルが受験に落ちたらしい。家に行くと、シゲルは意外と元気そうだった。でも、机の上の新品のカッターが気になった俺は、それを盗んだ。 大人になって、同窓会で彼にこう言われた 「あの時は、ありがとう」
彼女を亡くした友人は、ギャルゲーに没頭していた。まるで、彼女を亡くした悲しみを埋めるように、彼女と同じ名前のヒロインにのめり込んでいた。 「…おい、辛いと思うけど現実見ようぜ。いい人がきっと見つかるよ」 友人は画面を撫で、呟いた。 「そうだね。また この子と同じ名前の子を探さなきゃ」
『Bot確認です。以下の問いに答えて下さい』 「なんだ?全問簡単な算数じゃないか…むしろBotの得意分野だろ」 選択肢の中から回答を選ぶ。 「…待て、全問答えがAになっちまった…どこか計算ミスってないか?」 暫く悩んでると画面が切り替わり、次に進めた。俺はBotじゃないと判断されたらしい。
「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」 通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。 翌日、× ×駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。
会社をクビになったと言えず、妻の弁当を、今日も公園のベンチで食べる。なんて惨めなんだ。無職の夫など、捨てられるに違いない。弁当を食べようと、包みを開くと、カードが落ちた。そこには一言、こう書かれていた。 『辛い時こそ、一緒にいようね』 大人になって初めて、声を上げて泣いた。
「リア充爆発しろってよく聞くけど、この期に及んでなんで他力本願なんだろうな」 「そりゃ爆破するって言ったら捕まるからな。本物はただ、黙々と実行するのみだよ」 友人が懐からスイッチを取り出して押すと、遠くで大きな爆発音がした。 「……今のは?」 「福音さ」 「……」 「Xmasの夜に、乾杯」
「なぜ何時間も考えた話がバズらなくて、1分で考えた話がバズるんだ…」 「先生、違います」 「!?」 「何時間も苦悩した日々があるから、たった1分で優れた発想が湧く日も来るのです。迷走と言う名の鍛錬無くして、名作は生まれません」 「……」 いきなり部屋に現れたコイツが怖くて、私は110番した。
「ねぇ、スマホの動きが遅いんだけど見てくれる?」 機械に疎い姉が、またなんか言ってきた。見てみると、重いアプリをいくつも同時に立ちあげてるし、ブラウザのタブもめちゃくちゃ開いてる。 「あぁ…明らかにメモリ不足だね」 「え?友達との写真や動画は一杯あるよ?」 「そのメモリーじゃくてね」
「おい、今度の修学旅行先の宿、すげぇぞ!」 「どうした?」 「ネットで評判眺めてたんだけど、混浴だってよ!」 「マジ!?」 渡されたURLを見てみる。 「…これ昔の話じゃねぇか。今は違うっぽいぞ」 「……マジかよ…クラスの女子と…入れると…思ったのに」 「おい、正気に戻れ。ウチ男子校だぞ」
〝独りが好きな人〟オフ会に参加してきた。 店を貸し切り、全員独りで座り、黙々と酒と食事を楽しむ会だ。勿論、話しかけるのはご法度。沈黙に始まり、沈黙に終わる。 そんなオフ会も、今や参加しているのは俺だけだ。俺は〝蟲毒〟の作り方を思い出しながら酒を飲んだ。毒のように、美味い酒だった。
田中 弘 本庄 綾子 白鳥 啓介 全力院 玉蹴之助 神田 淳史 山田 由香里 「まただ…登場人物一覧ページの時点で、もう犯人わかっちまった」 「どうしてわかるの?」 「この推理作家、せっかく謎は面白いのに、同じ名前の子が現実でイジメられないようにって、犯人には必ず存在しない名前つけるんだよ」
【続き】 新人「課長は、こんな会社にいるべき人ではありません」
妻と付き合い始めた経緯ですか? 高校の頃、カンニング疑惑で呼び出されたんですね。テストで、間違った箇所が隣の女子とぴったり一致してたんです。勿論、カンニングなんてしてません。ですが、あまりに息がぴったりで、これは運命だと感じましたね。ええ、その時僕を叱ってた先生が、今の妻です。
宿題もせず遊ぶ息子に怒り、ゲームは鍵付きの箱に入れた。宿題を済ますまで鍵は開けない。それ以来、息子は必死に勉強した。そして見事にピッキングで鍵を開けられるようになった。思えば、それが奴の最初の〝盗み〟だった。 今や大泥棒となった奴を、俺は止めねばならない。 刑事として、父として。
「予告通り、今日、お前の命を取り立てる」 死神が鎌を振り上げるのを見て、俺は目を瞑る。 「あぁ。おかげで、人生で最も充実した1年間だったよ」 「どうだ?まだ『死にたい』か?」 「…いや、生きたい」 俺達の間に、沈黙が流れた。 「今までのお前は、今、死んだ」 目を開くと、死神の姿は無かった
「1024円か…キリの悪い数字ですね」 「いえ、2の10乗ですので、とてもキリの良い数字です」 「では、343は?」 「7×7×7。7は神秘的な数字です」 ふと気になったので、聞いてみる事にした。 「博士の1番好きな数字は何ですか?」 「1029です」 「どんな計算なのです?」 「私と妻が出会った日です」
同窓会でAさんに会った。俺の初恋の人だ。友人が俺とAさんの前で軽口を叩く「そう言えばお前、Aの事好きだったよな」酒の席とは言え、本人の前でかつての恋心を暴露されるのは良い気分じゃない。Aさんも反応に困ってる風で、苦笑いを浮かべていた。 帰り際、Aさんは俺の耳元でこう囁いた。 「今は?」
1番印象に残ってる就活生? 志望動機で「金」と言い切ったやつだな。奴は終始、金への執着と、その期待値が最も高い弊社へのビジョンを述べてやがった。「最後に何か質問はありますか?」と人事が聞くと役員の俺にこう質問しやがった。「あなたの年収はいくらですか?」ってな。今では奴が俺の上司だ。
愛犬が死んだ。私の孤独を支えてくれた、大切な家族だった。有給理由を書いて申請すると、案の定却下された。上司から電話だ。 『犬が死んで1日休みたい?何言ってるんだ?』 もう、いっそ辞めてしまおうか。 『家族だったんだろう?もっと休め』 枯れたはずの涙が、また溢れて、愛犬の遺影に落ちた。
女友達のマンションで、3Fから落下して大怪我をした男性が出た。男の手は、なぜか油でヌルヌルだった。 女友達は語る。 「女の一人暮らしって、色々怖いのね」 「そうだな」 「私の部屋、3Fだけどまだ安心できなくて…。ベランダの手すりに油を塗ってみたの。そしたら、こんな事になるなんて…」
「この病院 "出る"んだってよ」 入院初日から 隣のベッドの爺さんが脅してくる。 「冗談ですよね…」 翌日 目が覚めると 隣のベッドは空だった。看護師曰く そのベッドの人は既に亡くなっていたらしい。 恐怖に怯えていると 昨夜の爺さんは向かいのベッドでニヤニヤしていた 故人のベッドで悪戯するな