幼馴染と俺の中身が入れ替わって5日になる。いつになったらお互いの体に戻れるんだろう。 「お母さん。俺…あ、私 今日 晩ご飯いらないから」 「懐かしいわね」 「?」 「覚えてないわよね。アンタ小さい頃、1人称をよく間違える時期があったの」 もしかして… 今、俺達は入れ替わってるんじゃなくて…
ノートとペンが道端に落ちていた。ノートは真っ黒で異様な存在感を放ってる。ページを捲るとびっしり人名が書かれていた。調べると全て犯罪者の名前で、全員死亡済だ。僕は怖くなってノートを燃やした。後日 学校のテストで名前を書くと、意識が薄れ僕は倒れた。使ったのは、あの時 拾ったペンだった。
「本当にいいんですか?この物件は、幽霊が出ると評判ですが…」 「いいんです」 俺は荷物の開封を終え、部屋の中を見て回った。柱にはペンで120cmと書かれてる。身長を測った跡だ。ふと、人の気配がして振り向いたけど、誰もいなかった。 母さん? ただいま 俺、今はもう178cmもあるんだよ
息子がプロゲーマーになりたいと言い出した。 「馬鹿言わないの!叔父さんを知ってるでしょう?あの人もプロ目指した挙句、30超えて何の職歴も無いのよ?あんな風になりたくないでしょう?」 すると息子は俯き、呟いた。「うん…なりたくないよ」そしてこう続けた「夢に挑戦した人を、見下す大人には」
「編集者さん。私、恋愛感情がよくわからないんです」 「だから、先生の作品は恋愛描写が弱いのですね」 「編集者さんは今、誰かに恋してますか?」 「はい。妻に恋しています」 「ご結婚されてたんですね」 後日、新作を執筆して編集者さんに見せた。 「良いですね。失恋の切なさが良く出ています」
彼女の母姉父は、プロゲーマーだった。 結婚を認めてもらうために、某格ゲーで家族全員に勝つ条件が課せられた。死に物狂いで特訓した結果、なんとか、俺は母姉父に勝つ事が出来た。恋人を抱き締めようとしたら、彼女はコントローラーを手に取った。 「黙っててごめんなさい。一番強いのは、私なの」
「ねぇパパ、大人になると幽霊って怖くなくなるの?」 「うん、昔よりは怖くないな」 「どうして?」 「そうだなぁ…大事な人とか結構 向こうにいっちゃったからかな。幽霊を怖がってちゃ 可哀想だろう?」 仏壇の前で、そんな父の言葉を思い出していた。 お盆くらい、姿見せてくれてもよかったのに。
おかしいな。 そろそろ、子供達がお菓子を貰いに来るはずなのに、全然来ない。引率の方に電話すると『え、いただきましたよ?お婆様が出てくださいましたが…』と言われた。 そっか。 お婆ちゃん、毎年、この日を楽しみにしてたもんね。 遺影に目を向けると、お供えしていたお菓子が無くなっていた。
「チッ 腹減ったなぁ」 ノック音が聞こえる。 「おっせぇんだよババア!」 ドアを開けるといつも通り飯が床に置かれていた。今日は紙切れが2つ添えてあった。 1つは『お願いだから、働いて』と震えた字で書かれていた。もう1つは、幼い俺の字でこう書かれていた。 『なんでもママのいうことをきく券』
奇妙な新連載がスタートした。 第1話目のはずなのに、第100話と表記されてるのだ。最初は印刷ミスかと思ったが、翌週は99話と記載されてた。なるほど、そうか。この物語は、過去に遡っていく話なのか。真の1話目には何が仕組まれているのかと、俺は毎週楽しみに読んだ。76話目で打ち切りになった。
「豚さん壊したくない…」 娘は豚型貯金箱に愛着が湧いてしまったらしい。しかし、壊さねばお金は取り出せない。 「娘ちゃん」 「?」 「お金を取るか、豚を取るか、選ぶんだ」 「……」 月日は流れ、娘は高校生になった。 「あ~…お金欲しい…」が娘の口癖だが、豚さんは今も、娘の机の上にいる。
「僕、本気で漫画家目指すんで、学校辞めました。漫画の勉強に集中したいので」 なんて馬鹿な事をと周りは呆れたが、俺は彼の目の奥に、熱く固い意志を見た。 「頑張れよ。俺は応援してるからな」 「ありがとうございます!」 「お前なら、第二の手塚治虫になれるかもな」 「手塚治虫って誰ですか?」
元SEの祖父は大層な助兵衛で、膨大なエロデータをPCに蓄えていた。 そんな祖父が亡くなった。 俺は遺品整理のついでに祖父のPCを漁った。さっそくそれっぽいファイルをクリックしてみる。次の瞬間、色んな処理が走り、全データは消え、1つのtextファイルが残された。 『宝は自分で掴め。達者でな』
俳優の夢を諦めた時、人生が一気に色褪せた。 どうやって死のうかと毎日考えてた俺に友人が言った。 「死ぬ前に、この漫画読んどけ」 それが、尋常じゃないくらい面白い。あっという間に最新刊まで読んだが、まだ完結してないらしく、親友に聞いてみた。「なぁ、HUNTER×HUNTERの続き、いつ出るんだ?」
僕の友人は紛れもない天才俳優だ。 役に没入するあまり、日常生活の中ですらその役になりきってしまう程だ。そんな友人と飲んでいた僕は、つい愚痴を漏らした。「僕も君みたいに、何か才能があればなぁ…」 「何言ってんだ、お前は天才だろ。役作りは順調か?確か今度は『天才俳優の友人』役だっけ?」
筋トレはマジでオススメ。 上司に怒鳴り散らされても「お前が無事でいられるのは、俺が我慢してやってるからだぞ?」と精神的優位を築ける。 だがもう限界だ。 俺は上司に殴りかかる。 上司は掌で俺の拳を受け止め、恐ろしい握力で握り、こう呟いた 「お前に本当のパワーハラスメントを教えてやろう」
俺は恐怖していた。 お隣のOLさんの部屋から、毎朝7時におぞましい悲鳴が聞こえてくるんだ。 尋ねると「私ホラー映画マニアで…悲鳴をアラームにしてるんです…すみません」と恥ずかしそうに言った。 「今朝の悲鳴は、『死霊のはらわた2』?」 「わかったんですか!?」 それが、妻との出会いだった。
長年付き合った彼氏にフラれた姉は、死ぬほど凹んでいた。心配になって部屋に様子を見に行くと、泣きながらPCのキーボードを一心不乱に叩いていた。 「何してるの?」 「今の気持ちだからこそ書ける文章が、ある気がするの」 姉が作家志望だと、初めて知らされた。 きっと、姉ちゃんならなれるよ。
「見てごらん、この美しい夜景を」 50Fのレストランから見える街並みは、闇に包まれていた。 「…これのどこが美しいの?」 「この景色に至るまでに、どれだけの人が辛酸をなめてきたか…。僕は、この真っ黒な夜景を誇りに思う」 「だから、どうして?」 「わからないか?誰も残業していないんだ」
押し入れの奥から古いジーンズが出て来た。捨てたと思ったけどこんな所にあったのか。まだ履けるかな?調べるとポケットに何か入っている。使用済みの映画の半券だ。懐かしいなぁ…元カノと観た映画だ。確かその後、喧嘩しちゃったんだよな…。捨てる前に見せてあげると、今妻は懐かしそうに微笑んだ。
彼女の母姉父は、プロゲーマーだった。 結婚を認めてもらうために、某格ゲーで家族全員に勝つ条件が課せられた。死に物狂いで特訓した結果、なんとか、俺は母姉父に勝つ事が出来た。恋人を抱き締めようとしたら、彼女はコントローラーを手に取った。 「黙っててごめんなさい。一番強いのは、私なの」
私の彼氏凄い。 腕も胸板もヒョロいのに、腹筋だけはバッキバキに割れてる。「どうして腹筋だけ?」って聞いてみた。 「1年前、イイネの数だけ腹筋するってツイートしたら、3.8万も集まっちゃって…でも、もうすぐ達成するんだ♪」 私はそのツイートを見つけ、10万人のフォロワーに向けて拡散した。
『俺と……………付き合ってくれない?』 『その前に、言いたい事が5つあるの。 1: LINEで告白はやめようね。 2: 3点リーダで溜め過ぎてなんかキモい。 3:先月失恋して凹んでたくせに立ち直り早いね。 4:彼女作る前に部屋は綺麗にした方がいいよ。 5:送り先は確認しようね。私はあなたの母です』
最悪だ。貰ったチョコが先生に見つかり、没収されてしまった。 「先生!返してください!」 「すまんが、規則なんでな」 「人生初の…バレンタインチョコなんです」 「……ん?すまん装丁が可愛いから間違えた。これは〝筆箱〟だった。そうだな?」 そう言って先生はチョコの入った箱を返してくれた。
「ひっ…!」 私は恐怖した。 捨てたはずのフランス人形が、今日も玄関前に戻ってきていたからだ。 私は監視カメラを設置して真相を確かめる事にした。 もう1度捨てると、やっぱり人形は戻ってきた。 映像を確認すると、人形を戻していたのは夫だった。 私は恐怖した。 夫は、もっと前に捨てたのに。