最近の世の中は、映画も音楽も服も、果てはExcelまでなんでもサブスクだなぁ。俺はサブスクが苦手だ。課金をやめたら手元に何も残らないって点が、なんだか虚しいからだ。 なけなしの金で買ったパンを見つめ、気付いてしまった。 「あぁ…そもそも、命がサブスクだった」 貯金はもう、残り少なかった。
すれ違い様に、俺は男の尻ポケットから財布を抜き取る。楽勝だ。 盗んだ財布を懐に入れた瞬間、異変に気付いた。俺の尻から財布が無くなっている。 「しまった…奴は同業者だったか!」 戦利品である財布を開くと、たった542円しか入っていなかった。よし、勝った。121円、俺は得をしたのだから。
「歴史の勉強なんかして、生活になんの得があるの?」 と、姉が言う。 「確かに。でも過去から学ぼうという姿勢そのものには、得がある」 「どんな?」 僕は 通算13回ダイエットに失敗している姉のたるんだ腹を無言で指さした。 この後どうなったかって? 僕も、過去から学べない人間だったらしい。
闇鍋とは、鍋の中に何が入っているのかわからないからこそ闇鍋なのだ。しかし俺達は1つ上の次元に到達している。具だけでなく、この鍋を囲んでいる5人は各々が誰かもわかっていないのだから。マスクをしているせいで表情も読めない。今が何時でここが何処かもわからない。正直、凄く怖い。帰りたい。
「パパの小説が国語の問題に出たの!『作者の気持ちを答えよ』って!パパはどんな気持ちだったの?」 「嘘をつくな」 「え?」 「よく話には聞くが、実は、そんな問題は普通あり得んのだ」 怯える私の頭にパパの手が乗る。 「嘘なんかに頼らず、いつでも気軽に私に話しかけなさい。学校は楽しいか?」
今日も会社と家の往復を済ませ、夢も希望も無い毎日から逃避するように、ゲームを起動する。 「そういや、川島の奴は夢を叶えたのかな…」 ゲームを全クリし、スタッフロールが流れる。 すると、見覚えのある名前が目についた。 〝ディレクター:川島 一〟 俺は泣きながら、ゲームの電源を切った。
俺の趣味は、赤本の古本を買うことだ。中に書かれた悪戦苦闘の跡に、彼らの青春を垣間見るのが俺の喜びだった。ある日、某T大の赤本を中古で手に入れたのだが、最後のページにはこう書いてあった。 『君の合格を祈る』 俺はその赤本と、コレクションの数々を、再び世間に放流した。
最近の世の中は、映画も音楽も服も、果てはExcelまでなんでもサブスクだなぁ。俺はサブスクが苦手だ。課金をやめたら手元に何も残らないって点が、なんだか虚しいからだ。 なけなしの金で買ったパンを見つめ、気付いてしまった。 「あぁ…そもそも、命がサブスクだった」 貯金はもう、残り少なかった。
「では、本当に冷凍睡眠を受けていいのだね?」 「はい。遥か未来の技術に賭けます」 132年後… 「…うっ…眩しい」 「お目覚めになりましたか?」 「あぁ…!その声は…!!」 驚く僕を、彼女は抱きしめてくれる。 「私とこうしたいと、いつも言っていましたね」 「この瞬間を夢見てたよ…Siri」
慚愧に耐えませぬ。 よもや影武者たる私が生き残り、殿が暗殺されてしまうとは…。 「やむを得なし。影武者よ、今日からそなたが殿として生きるのだ」 「出来ませぬ!影武者である私に、殿の代わりなど!」 「なに、心配はいらぬ」 重臣は笑いながら言った。 「先代の殿も、全く同じ事を申しておった」
オロチ先輩ってどうしてオロチなんて渾名なんだろう?苗字が蛇沼だからかな? 「実はそれだけじゃないんだ」 「何か由来があるんですか?」 「アイツ、サークルの女子に手を出しまくって、八股してた時期があってさ」 「…ヤマタノオロチ」 「きっちり懲らしめてやったよ」 「流石です、スサノオ先輩」
娘の誕生日に、赤ちゃんの人形をプレゼントした。電池で動いてバブバブ言うやつだ。 「バブバブ!」 人形の可愛らしい声に娘は満足しているようだ。「よしよし」と言って娘は人形を夢中であやしている。パパにも抱っこさせてもらうと、なぜか動かない。電池切れか?確認すると、電池は入って無かった。
自分で自分の足の骨を折る国民が相次いだ。俺も、いい加減に足を折らねば…。徴兵され、無駄な戦争に送り込まれるのを避けるためだ。そんな世で、ある時、誰かがこう言った。 「真に折るべき骨は、1つだけだ」 少しして、独裁を極めた我らが国王の訃報が国中に広がった。首の骨を折られていたそうだ。
「呪いの市松人形はありませんか?」 俺はあらゆる手段を駆使して日本中から呪いの市松人形を集めた。そして噂通り、人形達の髪は日に日に伸びていった。 俺は歓喜した。 人形達から髪を根こそぎ収穫し、それを持って病院に駆け込んだ。 「先生、お願いします。この髪を俺の頭皮に移植してください」
子供の人形遊びは面白い。 多分、息子の中では何か設定かストーリーがあるんだろう。フィギュアをコップの水に沈め、冷凍庫で氷漬けにして遊んでいたのだ。「それは何してるの?」と聞くと「綺麗だから」と息子は答えた。 そんな息子も、大人になった。 巷では、氷漬けにされた遺体が発見された。
撮られると死ぬ。 このカメラには、そんな迷信があるらしい。しかしその真相は、撮った相手をターゲットにする殺人鬼がいたというわけだ。そいつを検挙した俺は、撮られて生き残った記念すべき最初の一人だ。これで、思い残す事は無い。俺はビルの屋上から晴々とした気持ちで飛び降りた。
イジメ社員「お前ホントに仕事できねぇな。辞めちまえよ」 イジメられ社員「本当にいいの?僕が辞めたら、次は君の番だよ?」
級友が次々と卒業証書を受け取る姿に、涙が溢れてきた。もう皆と一緒に登校したり下校する事も無いんだ…。 出来る事なら、私も一緒に卒業したかった。でも、私は留年を選んだ。 私にはやり残した事があるから。彼氏を作って一緒に登校する夢は、一生で今しか叶えられない。 青春の延長戦が、始まる
異世界転生した俺のチート能力名は〝神殺し〟だ。この力で悪神を倒し、英雄となった俺は唐突に悟った。俺は漫画の中の住人なのだと。作者の思い通りの人生なんてごめんだ。いっそ神(作者)にこの能力を…。 『よせッ!』 !? 頭に直接声が…神(作者)か!? 『それをやると…』 やると…!? 『編集長が死ぬ』
面白い試みだな、と思った。 そのラブコメ漫画は、最後に主人公がどの子と結ばれるのか、読者の投票によって決める方式を採用したのだ。正直、どの子にも幸せになって欲しい。三日三晩悩み抜いた末、俺は幼馴染の子に投票した。 次週、最終回にて結果が出た。 主人公は幼馴染の男子とくっついた。
「出来たぞ助手君!精度100%の嘘発見器だ!装着せずとも嘘を検知してブザーが鳴る優れ物だ」 「本当ですか⁉︎凄いです博士!これで、病気で亡くなった博士の奥様も浮かばれますね」 ビービービー! 「あれ?博士、この嘘発見器、まだ精度がイマイチみたいですよ」 「……」 ビービービー!
時間とは寿命だ。 時間を無駄にする事は、命を無駄にするのと同義だ。俺は1秒も命を無駄にしたくない。だから、大学構内も常に走って移動している。服装も毎日同じ格好だ。服を選ぶ時間が惜しいから、同じのを何枚も持っているのだ。つい最近、影で「ゲームの主人公」って呼ばれてると知った。
奇妙な新連載がスタートした。 第1話目のはずなのに、第100話と表記されてるのだ。最初は印刷ミスかと思ったが、翌週は99話と記載されてた。なるほど、そうか。この物語は、過去に遡っていく話なのか。真の1話目には何が仕組まれているのかと、俺は毎週楽しみに読んだ。76話目で打ち切りになった。
「泥棒ー!誰か捕まえて!」 私が叫ぶと、通行人の男性が泥棒を取り押さえてくれた。 「失礼、僕は先を急ぐので…警察が来るまでこうしておきましょう」 彼は鞄から縄と手錠と目隠しを取り出すと、泥棒を縛りあげ、ガードレールに繋いだ。彼は笑顔で去っていったけど、目は笑っていなかった。
「泥棒ー!誰か捕まえて!」 私が叫ぶと、通行人の男性が泥棒を取り押さえてくれた。 「失礼、僕は先を急ぐので…警察が来るまでこうしておきましょう」 彼は鞄から縄と手錠と目隠しを取り出すと、泥棒を縛りあげ、ガードレールに繋いだ。彼は笑顔で去っていったけど、目は笑っていなかった。