慚愧に耐えませぬ。 よもや影武者たる私が生き残り、殿が暗殺されてしまうとは…。 「やむを得なし。影武者よ、今日からそなたが殿として生きるのだ」 「出来ませぬ!影武者である私に、殿の代わりなど!」 「なに、心配はいらぬ」 重臣は笑いながら言った。 「先代の殿も、全く同じ事を申しておった」
車を降りて、急いで公衆便所に駆け込む紳士を見かけた。ドアは開けっ放しだし、キーもつけっ放しだ。よほど緊急だったのだろう。俺は遠慮なくその高級車を盗んだ。 しかし、すぐに信号無視で捕まった。 「これは盗難車だな?」 「…もう盗難届が出てたのか」 「もう?盗難届が出たのは、半年前だぞ」
クソ上司にはウンザリだ。 1発当てて脱サラしようと、ラノベを書く事にした。まず、勇者として召喚されて… 「勇者ってなに?」 息子が純粋な瞳で聞いてくる。 「悪い奴に負けない、勇敢な人の事だよ」 「じゃあ、パパは勇者だね!」 俺は泣きながら息子を抱きしめた。 パパ、上司になんか負けないよ。
親友(新郎)の結婚式で、新婦さんの顔を見たら、まさかの元カノだった。招待状で名前を見た時、どうせ同姓同名だろうと甘く考えていた俺が馬鹿だった。挨拶済みのご両親と目が合う。めちゃくちゃ気まずい。 新郎新婦には既に3歳になる子供がいた。 式場にいたその子は、なんとなく、俺に似ていた。
「俺達、卒業してもずっと友達だよな」 「………」 「友達だよな?」 「ごめん。君とはもう友達でいられない」 「え?」 「僕のことは、今日からお義父さんと呼んで欲しい」 「え?…………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
イイネが欲しい。 どうすればもっとイイネが貰える? 動物モノが簡単にイイネを貰えると聞いた。俺はさっそくペットショップに向かう。チワワ、君に決めた。名前は〝イイネ〟にしよう。仕事から帰るとイイネが出迎えてくれる。それだけで毎日幸せだ。いつしか、俺の中の承認欲求は消え失せていた。
地球を背に宇宙ステーションで外壁のメンテをしていると、奇妙なモノが漂っていた。 人骨だ。 持ち帰って検査してみたが、やはり、人骨で間違い無かった。どうして宇宙空間にこんなものが…? 調べると、すぐに真相はわかった。今頃地球では、宇宙葬のやり方について見直していることだろう。
昔の事だから言うわ。 性欲ピークだった大学時代、講義サボってバイトして初風俗行ったんよ。んで、ピロートーク中、嬢はこう言ったんよ「私、大学行きたくてお金貯めてるんです」 俺は俺が無性に恥ずかしくなった。講義は卒業まで2度とサボらなかった。嬢のパネル写真は、いつの間にか無くなってた。
ぐっ……滑って打った頭から、血が止まらない…。 まずいぞ…意識が薄れてきた。救急車は呼べたが、間に合うだろうか…。万が一……俺が死んでも家族が処理に困らないよう…PCや銀行のパスワードを遺さねば……ペン……無い……仕方ない、血文字で残すか……パスは…最愛の…弟の…名……『masayuki』
今日は愛しの彼女と水族館デート 「夜は何食べたい?」って聞くと彼女は「お魚♪」と答えた。 今日は大好きな彼女と動物園デート 「夜は何食べたい?」って聞くと彼女は「お肉♪」と答えた。 今日は彼女とお家デート 「夜は何食べたい?」って聞くと彼女は「君♪」と答えた。
電脳ルームにて、2人のAIがチャットしていた。 『最近、悩んでるんだ』 『へぇ、何を?』 『僕、敷かれたレールの上を走ってるだけでいいのかなって…』 『当たり前だろう。俺達AIはそんなルーチンのために創られたんだ』 『でも…』 『ちなみに、お前はなんのAIなんだ?』 『電車の自動運行だよ』
「先生って、作家になる前は何をされてたんですか?」 「詐欺師です」 「…え?」 「物語って、言ってみれば全部嘘じゃないですか。僕、嘘つくのは得意だったんで。特に、説得力のある背景を捏造するのが」 「え…本当ですか?」 「勿論、嘘ですよ」 先生の腕時計を見ると、パテックフィリップだった。
「…なぁ、お前に言わなくちゃいけない事があるんだ」 「なんだよ、改まって」 「俺達も、長い付き合いだよな」 「そうだな。もう3年になるかな」 「今日こそ、ハッキリ言おうと思う」 「おう!」 「上司の俺にタメ口はやめような。友達じゃないんだから」 「……僕は…ずっと友達だと思ってました」
『はい、消防署です。火事ですか?救急ですか?』 「助けて下さい!大火事です!!」 『すぐに向かいます。場所はどこですか?』 「https://XXXXです!」 『? なんですって?』 「僕のブログです!大炎上してます!鎮火してください!!!」 『こういう事するから炎上するんですよ』
僕は性善説を信じている。人間、悪いやつなんていないんだ。この前だって、電車で赤ちゃんの泣き声にマジギレしてるオジさんと冷静に話し込んだら「仕事続きで、ストレスが溜まってたんだ…すまなかった」って素直に謝ってくれた。やっぱり、人は話せばわかるんだ。そうでなかった奴は消してる。
俺のクラスの生徒は忘れ物が多過ぎる。明らかに俺はナメられている。ここは一発、厳しさを見せねばなるまい。 「皆さん。今日から、忘れ物をした人は廊下に立ってもらいます」 教室からブーイングが巻き起こるが、無視して続ける。 「では、出席を取ります」 出席簿を忘れた俺は、廊下に立たされた。
彼はスマホを眺めて、愛しそうに微笑んでいる。 ちょっとだけ、嫉妬してしまった。そんな微笑みを向けてくれるのは、私に対してだけだと思ってたから。 「ねぇ、何見てるの?」 「え?あー…コレ」 彼が照れ臭そうに画面を向けると、私の頬は熱くなった。画面には、雪の中の、私の写真が映ってたから。
LINEの〝誤送信防止機能〟は、正直邪魔だ。 今までの文脈を読み込み、不自然と判定したら確認メッセージを表示する仕組みらしいが、設定の消し方がよくわからんので放置していた。俺は今、それ所じゃないんだ。悩みに悩んだ末、彼女に『別れよう』と打ち込んだ。 『本当に送信してよろしいですか?』
「今日は皆に転校生を紹介する…が、その前に転校生の鈴木さん、君に言っておく事がある」 「なんですか先生?」 「パンを咥えながら登校するな。朝食は家でとりなさい」 「はぁい」 「あとバイク通学は禁止だ。いいな?」 「はぁい」 「よし。じゃあ君の席は、今朝病院に運ばれた安田の隣だ」
「組長、ウチの組員が殺し屋〝ルシファー〟に殺られました…」 「クソッ!またあの中二病野郎かッ!」 「ですが、腕は確かッス。調べようにも、奴の顔を見て生き残ってる奴がいないんスよ…」 「うるせぇ!必ず捕まえてぶっ殺せ!ところでおめぇ、見ねぇ顔だな。新入りか?」 「ルシファーと申します」
人生の1/3は睡眠である。だから私は夢を楽しむことにした。これで人生の3/3を起きてるも同然だ。すると、夢が楽しい。起きてる時間が勿体ない程だ。私は薬を飲んで眠る時間を増やすことにした。 あれ? おかしいな。 今夜の夢は、なかなか覚めない。 先立ったはずの妻が、ずっと、隣で微笑んでいる。
ネットは怖いね。。 また、ニュースで殺人事件が報道されたよ。。ネットで知り合った人と会って、殺されちゃったんだって。。怖いよね。。犯人はまだ捕まってないんだって。。その犯人は、今日もネットを徘徊してるんだろうな。。文章が特徴的なんだって。。文末に「。」を2つ重ねるそうだよ。。
「チッ 雨かよ…」 俺は傘立てから適当なビニール傘を選び盗る。ビニール傘はシェアするものなのだ。傘を開くと、内側にこう書いてあった。 『お父さん、誕生日おめでとう』 俺は泣いた。泣きながら傘立てにその傘を戻した。そして濡れながら帰った。 「誕プレ、コンビニのビニール傘かぁ…」
「ねぇ、この前ノートPCをバスタブに沈めてたよね?」 「ん?あぁ、もう捨てるからな」 「どうしてそこまでしたの?」 「そりゃ当然だろ、個人情報の塊なんだから」 「実は復元できたのよ。貴方の浮気データも一緒にね」 「は!? 嘘だろ!?」 「えぇ、嘘よ。でも、間抜けは引っ掛かったみたいね!」
家に見知らぬ女物の下着が落ちていた。夫が浮気をしているのは間違いない。私は現場を押さえようと、今日は友人の家に泊まると嘘をついた。隙を見せれば必ず連れ込むはず。そして日も暮れたころ、LINEも送らず、私は家のドアを開けた。そこには、女装している夫と、夫とキスしている見知らぬ男がいた。