401
「ドラ〇えもん、日誌なんてつけてるのか…ちょっと見ちゃえ」
【1月5日】
の〇太君の経過は非常に順調。今回こそセワシ君の未来を変えられそうだ。タイムマシンで戻る度、〇び太君の『初めまして』を聞く事に僕はもう堪えられない。どうか…今回こそ…
「……表紙の〝81回目〟って、もしかして…」
402
「ねぇママ。魔族の定義って何?」
「あぁ、賢い私の坊や。私達に害を成すのが魔族よ」
「でも、熊さんも襲ってくるけど、魔族じゃないよね?」
「坊や、熊は喋らないでしょう?」
「じゃあ、言葉を喋って、僕達を襲うのが魔族なんだね!」
「そうよ。彼らは、自分達をヒトと呼んでるみたいだけど」
403
『やたらに人に弱味をさらけ出す人間のことを私は躊躇なく「無礼者」と呼びます』
三島由紀夫のこの言葉を、友人は座右の銘としていた。
ある日、そんな友人が急に私の家にやって来た。「どうしたの?」と聞くと「…愛犬が他界した」と呟き、私の前で号泣してくれた。私はそれを告白と受け取った。
404
そろそろ夫を毒殺することにした。
しかし、料理に毒を入れても「調味料変えた?」と言われるだけでピンピンしている。話を聞くと、夫は幼少期から毒見要員として育てられた生き残りらしく、毒耐性が強いらしい。
「今、人生で一番幸せなんだ」
そう言われた私は、すっかり毒気を抜かれてしまった。
405
ある日、俺は瞬間移動能力に目覚めた。
俺は人生の勝ち組を約束されたようなものだ。
さっそくこの能力をフルに活用して舞台に立つ。しかし観客からは「脱出系マジックとか見飽きたよ」との冷たい声しか上がらなかった。
能力の使い道は他にあったかもしれない。でもマジシャンは、俺の夢だったんだ。
406
「…チェンジ」
後ろからポーカーを観戦していた俺は驚愕した。Aの4カードが揃ってたのにチェンジだと!? 何たる度胸…これが勝負師と言うものか…
「驚くのも無理はない」
常連らしきギャラリーが俺に耳打ちしてきた。
「あいつロイヤルストレートフラッシュしか知らないから、それしか狙えないんだ」
407
コロナも落ち着いて約2年ぶりの出社解禁だ。何やら上司達がゲートでキャッキャしてる。なんだろう?聞き耳を立ててみた。
「いやぁ いいですなぁ!」
「いいですなぁ!」
「久しぶり過ぎて、新卒時代を思い出しますなぁ!」
「わかります!ゲートを潜る時のあの高揚感!」
「よし、もう1回通ろう」
408
なんだか教室が騒がしい。集合写真に幽霊が写り込んだとかで、盛り上がってるみたいだ。
「見ろよこの陰気な目。間違いなく、生前は陰キャだったね」
なんて声が聞こえてきて笑えた。
「陰キャは、自分から写真に入ったりしないよ」
そう呟いたが、誰にも聞こえてないようで、僕は窓から教室を出た。
409
「母さん?オレオレ」
「え、この声…ツヨシ?」
「そうそう、ツヨシ」
「そんな…どうして…ちゃんと産め…!」
「は?」
「…そんなハズない。アンタ、詐欺でしょ?」
「チッ」
そこで俺は電話を切った。
さっさと次行こ。
だが、向こうの言いかけた言葉が気になった。
産め……
……………埋め?
410
現代文の問題用紙を開くと、我が目を疑った。俺の書いた小説が載っていたからだ。
なんで??
これは夢か??
しかし夢ではなく、俺はその問題を解くしかなかった。当然 全問正解だ。
後日、入試問題に著作物を利用する場合、作家への許可は不要で大抵は事後報告だと、俺の担当編集者が教えてくれた。
411
俳優の夢を諦めた時、人生が一気に色褪せた。
どうやって死のうかと毎日考えてた俺に友人が言った。
「死ぬ前に、この漫画読んどけ」
それが、尋常じゃないくらい面白い。あっという間に最新刊まで読んだが、まだ完結してないらしく、親友に聞いてみた。「なぁ、HUNTER×HUNTERの続きいつ出るんだ?↓
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ピッチャーマウンドに立つと脳内に声が響いた。
『聞こえるか?』
この声は…先週 事故で亡くなった山田!?
『この試合…どうしても投げたかったんだ…頼む…体を貸してくれ』
俺は少し考え、頷いた。本来ここに立つべきは山田だったのだから。
そして試合に勝った。
未だに山田は体を返してくれない。
413
最近、家のwi-fiがやたら重い。もしやと思ってパスワードを変えたら軽くなった。おそらく、お隣さんがウチの電波を使って動画でも見てたんだろう。
後日また重くなった。もしやと思って問い詰めたら、お隣にパスワードを教えてるのは息子だった。wi-fi使用料として、月千円をお隣から貰ってたらしい。
414
茂みの段ボールの中に、捨て猫がいた。誰かから餌をもらってる形跡がある。もしや、飼うに飼えず、しかしどうすべきかを知らない子供が餌をあげてるのかも…。
『この猫は保護(ほご)しました』と書き置きを残し、一応、電話番号も添えた。
後日 そこには拙い字で『ありがとう』と書き足されていた。
415
「お前、まだあんな陰キャとつるんでんの?悪い事言わねぇからあんなのと縁切れって。スクールカースト底辺に落ちてねぇの?最近のお前が死んだ魚の目してんのも、ぶっちゃけアイツのせいだろ(笑」
ついに我慢の限界を迎えた俺は、この男を殴った。
「友の侮辱は構わないが、俺を侮辱するのは許さん」
416
一流企業に入る奴は馬鹿だね。
優秀な場所には、優秀な奴が集まる。世の中、上には上がいるんだ。自分が築いたチンケなプライドは、ズタズタに引き裂かれる。だから、そこそこの会社で無双してる方が、ずっと幸せな人生を築けると俺は考えた。それが御社を志望した理由ですって言ったら落とされた。
417
「見ろよ。『底無し沼』だって。本当かな?」
「試してみれば?ヤバかったら引き上げてやるよ」
すると、友人は「ヨシ」と言って底なし沼にドボンした。
「…あ、やべ、これやべぇ!引っ張って!早く!早くぅ!!」
「わかったから落ち着け、ビビリ過ぎだろ」
「違う!何かが俺の足引っ張ってる!!」
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私は、辛くて本当に死にたくなった時、近くの山の中を訪れる。獣道を進んだ先に、先人がいるのだ。先人は今日も、枝から一本のロープでぶら下がっていた。ある日、先人を見つけて死を思い止まった私は、時々こうして会いに来る。彼は命の恩人だ。
日が経ち、また会いに行くと、先人の姿は消えていた。
419
私には一流企業で働く彼氏がいる。イケメンでエリート。でも私は他の人を好きになってしまった。平日だけど、今日はその人の家でデート。彼氏は今頃一生懸命働いているのに、私は他の男に会っている。その罪悪感が私の心をスパイスした。頼んでたUberが来たみたい。ドアを開けると、彼氏が立っていた。
420
『Bot確認です。以下の問いに答えて下さい』
「なんだ?全問簡単な算数じゃないか…むしろBotの得意分野だろ」
選択肢の中から回答を選ぶ。
「…待て、全問答えがAになっちまった…どこか計算ミスってないか?」
暫く悩んでると画面が切り替わり、次に進めた。俺はBotじゃないと判断されたらしい。
421
へー。今時は、外出中でもペットの様子を見れるカメラなんてあるんだ。いくつか買って家に設置した。さっそくスマホで確認してみる。目を覚ましたポチが私を探して家の中をウロついている。可愛い。ポチは玄関まで来ると、施錠した扉を叩きながら叫んだ。「誰かぁ!頼む!ここから出してくれぇ!」
422
「お前、目のクマひどいな」
「最近眠れてなくて」
「なんで?」
「『あなたを誹謗中傷で訴える』ってDM来てさ…脅しだと思うんだけど」
「SNSでそういう事するからだろ」
「ちょっとストレス溜まってて…」
「…DM届いたの、3日前の19時32分?」
「え?なんで知ってんの?」
「お前だったのか」
423
「パパ、赤ちゃんはどこからやってくるの?」
「コウノトリさんが運んでくるんだよ」
「じゃあコウノトリさんの赤ちゃんは?」
「コウノトリさんが運んでくるんだよ」
「……パパ、僕の名前言える?」
「コウノトリさんが運んでくるんだよ」
「ねぇ、パパ……」
「コウノトリさんが運んでくるんだよ」
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『助けて!誰かぁ!』
アパートの住人が一斉に廊下に出ると、そこにはスピーカーがタイマーでセットされていた。そんな悪戯が何度もあり、住人達はうんざりしていた。
「いやぁ!誰かぁあ!」
今じゃすっかりとお馴染の悲鳴を住人は気にも止めなかった。翌日 アパートの一室で他殺体が見つかるまでは。
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「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」
通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。
翌日、XX駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。