「ドラ〇えもん、日誌なんてつけてるのか…ちょっと見ちゃえ」 【1月5日】 の〇太君の経過は非常に順調。今回こそセワシ君の未来を変えられそうだ。タイムマシンで戻る度、〇び太君の『初めまして』を聞く事に僕はもう堪えられない。どうか…今回こそ… 「……表紙の〝81回目〟って、もしかして…」
「ねぇママ。魔族の定義って何?」 「あぁ、賢い私の坊や。私達に害を成すのが魔族よ」 「でも、熊さんも襲ってくるけど、魔族じゃないよね?」 「坊や、熊は喋らないでしょう?」 「じゃあ、言葉を喋って、僕達を襲うのが魔族なんだね!」 「そうよ。彼らは、自分達をヒトと呼んでるみたいだけど」
『やたらに人に弱味をさらけ出す人間のことを私は躊躇なく「無礼者」と呼びます』 三島由紀夫のこの言葉を、友人は座右の銘としていた。 ある日、そんな友人が急に私の家にやって来た。「どうしたの?」と聞くと「…愛犬が他界した」と呟き、私の前で号泣してくれた。私はそれを告白と受け取った。
そろそろ夫を毒殺することにした。 しかし、料理に毒を入れても「調味料変えた?」と言われるだけでピンピンしている。話を聞くと、夫は幼少期から毒見要員として育てられた生き残りらしく、毒耐性が強いらしい。 「今、人生で一番幸せなんだ」 そう言われた私は、すっかり毒気を抜かれてしまった。
ある日、俺は瞬間移動能力に目覚めた。 俺は人生の勝ち組を約束されたようなものだ。 さっそくこの能力をフルに活用して舞台に立つ。しかし観客からは「脱出系マジックとか見飽きたよ」との冷たい声しか上がらなかった。 能力の使い道は他にあったかもしれない。でもマジシャンは、俺の夢だったんだ。
「…チェンジ」 後ろからポーカーを観戦していた俺は驚愕した。Aの4カードが揃ってたのにチェンジだと!? 何たる度胸…これが勝負師と言うものか… 「驚くのも無理はない」 常連らしきギャラリーが俺に耳打ちしてきた。 「あいつロイヤルストレートフラッシュしか知らないから、それしか狙えないんだ」
コロナも落ち着いて約2年ぶりの出社解禁だ。何やら上司達がゲートでキャッキャしてる。なんだろう?聞き耳を立ててみた。 「いやぁ いいですなぁ!」 「いいですなぁ!」 「久しぶり過ぎて、新卒時代を思い出しますなぁ!」 「わかります!ゲートを潜る時のあの高揚感!」 「よし、もう1回通ろう」
なんだか教室が騒がしい。集合写真に幽霊が写り込んだとかで、盛り上がってるみたいだ。 「見ろよこの陰気な目。間違いなく、生前は陰キャだったね」 なんて声が聞こえてきて笑えた。 「陰キャは、自分から写真に入ったりしないよ」 そう呟いたが、誰にも聞こえてないようで、僕は窓から教室を出た。
「母さん?オレオレ」 「え、この声…ツヨシ?」 「そうそう、ツヨシ」 「そんな…どうして…ちゃんと産め…!」 「は?」 「…そんなハズない。アンタ、詐欺でしょ?」 「チッ」 そこで俺は電話を切った。 さっさと次行こ。 だが、向こうの言いかけた言葉が気になった。 産め…… ……………埋め?
現代文の問題用紙を開くと、我が目を疑った。俺の書いた小説が載っていたからだ。 なんで?? これは夢か?? しかし夢ではなく、俺はその問題を解くしかなかった。当然 全問正解だ。 後日、入試問題に著作物を利用する場合、作家への許可は不要で大抵は事後報告だと、俺の担当編集者が教えてくれた。
俳優の夢を諦めた時、人生が一気に色褪せた。 どうやって死のうかと毎日考えてた俺に友人が言った。 「死ぬ前に、この漫画読んどけ」 それが、尋常じゃないくらい面白い。あっという間に最新刊まで読んだが、まだ完結してないらしく、親友に聞いてみた。「なぁ、HUNTER×HUNTERの続きいつ出るんだ?↓
ピッチャーマウンドに立つと脳内に声が響いた。 『聞こえるか?』 この声は…先週 事故で亡くなった山田!? 『この試合…どうしても投げたかったんだ…頼む…体を貸してくれ』 俺は少し考え、頷いた。本来ここに立つべきは山田だったのだから。 そして試合に勝った。 未だに山田は体を返してくれない。
最近、家のwi-fiがやたら重い。もしやと思ってパスワードを変えたら軽くなった。おそらく、お隣さんがウチの電波を使って動画でも見てたんだろう。 後日また重くなった。もしやと思って問い詰めたら、お隣にパスワードを教えてるのは息子だった。wi-fi使用料として、月千円をお隣から貰ってたらしい。
茂みの段ボールの中に、捨て猫がいた。誰かから餌をもらってる形跡がある。もしや、飼うに飼えず、しかしどうすべきかを知らない子供が餌をあげてるのかも…。 『この猫は保護(ほご)しました』と書き置きを残し、一応、電話番号も添えた。 後日 そこには拙い字で『ありがとう』と書き足されていた。
「お前、まだあんな陰キャとつるんでんの?悪い事言わねぇからあんなのと縁切れって。スクールカースト底辺に落ちてねぇの?最近のお前が死んだ魚の目してんのも、ぶっちゃけアイツのせいだろ(笑」 ついに我慢の限界を迎えた俺は、この男を殴った。 「友の侮辱は構わないが、俺を侮辱するのは許さん」
一流企業に入る奴は馬鹿だね。 優秀な場所には、優秀な奴が集まる。世の中、上には上がいるんだ。自分が築いたチンケなプライドは、ズタズタに引き裂かれる。だから、そこそこの会社で無双してる方が、ずっと幸せな人生を築けると俺は考えた。それが御社を志望した理由ですって言ったら落とされた。
「見ろよ。『底無し沼』だって。本当かな?」 「試してみれば?ヤバかったら引き上げてやるよ」 すると、友人は「ヨシ」と言って底なし沼にドボンした。 「…あ、やべ、これやべぇ!引っ張って!早く!早くぅ!!」 「わかったから落ち着け、ビビリ過ぎだろ」 「違う!何かが俺の足引っ張ってる!!」
私は、辛くて本当に死にたくなった時、近くの山の中を訪れる。獣道を進んだ先に、先人がいるのだ。先人は今日も、枝から一本のロープでぶら下がっていた。ある日、先人を見つけて死を思い止まった私は、時々こうして会いに来る。彼は命の恩人だ。 日が経ち、また会いに行くと、先人の姿は消えていた。
私には一流企業で働く彼氏がいる。イケメンでエリート。でも私は他の人を好きになってしまった。平日だけど、今日はその人の家でデート。彼氏は今頃一生懸命働いているのに、私は他の男に会っている。その罪悪感が私の心をスパイスした。頼んでたUberが来たみたい。ドアを開けると、彼氏が立っていた。
『Bot確認です。以下の問いに答えて下さい』 「なんだ?全問簡単な算数じゃないか…むしろBotの得意分野だろ」 選択肢の中から回答を選ぶ。 「…待て、全問答えがAになっちまった…どこか計算ミスってないか?」 暫く悩んでると画面が切り替わり、次に進めた。俺はBotじゃないと判断されたらしい。
へー。今時は、外出中でもペットの様子を見れるカメラなんてあるんだ。いくつか買って家に設置した。さっそくスマホで確認してみる。目を覚ましたポチが私を探して家の中をウロついている。可愛い。ポチは玄関まで来ると、施錠した扉を叩きながら叫んだ。「誰かぁ!頼む!ここから出してくれぇ!」
「お前、目のクマひどいな」 「最近眠れてなくて」 「なんで?」 「『あなたを誹謗中傷で訴える』ってDM来てさ…脅しだと思うんだけど」 「SNSでそういう事するからだろ」 「ちょっとストレス溜まってて…」 「…DM届いたの、3日前の19時32分?」 「え?なんで知ってんの?」 「お前だったのか」
「パパ、赤ちゃんはどこからやってくるの?」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」 「じゃあコウノトリさんの赤ちゃんは?」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」 「……パパ、僕の名前言える?」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」 「ねぇ、パパ……」 「コウノトリさんが運んでくるんだよ」
『助けて!誰かぁ!』 アパートの住人が一斉に廊下に出ると、そこにはスピーカーがタイマーでセットされていた。そんな悪戯が何度もあり、住人達はうんざりしていた。 「いやぁ!誰かぁあ!」 今じゃすっかりとお馴染の悲鳴を住人は気にも止めなかった。翌日 アパートの一室で他殺体が見つかるまでは。
「僕、人の未来が見えるんです。貴女の家に盗聴器を仕掛けました」 通りすがりの男は突然私にそう告げると、足早に去っていった。余りに気持ち悪いので、家に警察を呼んで調べて貰った。今日デートだったのに…。 翌日、XX駅で刃物を持った男が暴れたとニュースにあった。私が向かっていた駅だった。